64 出来立てのダンジョン探索5
休憩中は襲われることは無かった。
この階層はそこまで動きの速い魔物はいなかったから、こっちまで動いてこなかったんだろう。
今のうちに宝箱から出たアイテムの整理をする。
といってもなるべくかさばらないように小さくまとめるだけだが。
よくわからない指輪はともかく皿なんかは場所を取る。
結構邪魔だ。仕方ないが。
「よし、準備はできたな?出発するぞ。」
「大丈夫だよ。」
「わかったわ。」
階段を下りて地下四階に下りる。
そこは沼地だった。
「遺跡は地下三階だけだったか。」
「宝箱をもう少し探したかったんだけど、残念ね。」
「私はお肉が手に入りそうなのがうれしいよ。」
「なるべく足場のしっかりとしたところを歩こう。沼に足を取られると戦闘になったときに大変だ。」
「うん。」
沼地といっても全面沼地というわけではなく、普通に歩く地面も存在している。
魔物が沼に潜んでいる可能性も考えれば、なるべくしっかりとした地面を歩くべきだろう。
「どこから魔物が来るか分からないからドキドキするね。」
「そうね。どんな魔物がいるかわからないから怖いわね。」
「一階下りたら、一気に強くなることってあるのか?」
「ないことはないと思うわよ。」
「それは確かに怖いな。」
ダンジョンでマップが変わると敵が強くなるのはわかるけど徐々に強くしていってほしい。
せめて撤退できるくらいの相手であってほしいもんだ。
沼にも木が生えていて見通しが悪いところがチラホラある。
そういったところに隠れられると厄介だな。
「魚とか普通にいるね。」
「魚型の魔物かもよ?」
「あれが魔物だったら楽でいいんだけど。多分餌になってるのかも。」
「魚を食べるような奴がいるってことか?」
「どうかしらね。魔物は雑食性のものが多いから食べていても不思議ではないけど。」
「釣りの道具とか持ってくれば魚が食べられたかもしれないのか。」
「沼地の魚は少し臭いそうね。」
「それもそうか。たまにはいいかと思ったんだけどな。」
「場所によっては美味しい魚もいると思うよ。」
「そうね。普通に川とか流れている場所もあるとおもうしそっちで取ったほうが美味しい気がするわ。」
それなら今度釣り針と糸だけでも持ち物に加えておくか。
肉ばっかりだと飽きてくるし、たまには魚を食べることができれば気分も変わるだろう。
釣り針と糸くらいならそこまで場所も取らないしな。
餌は現地調達でいいだろうし、いい考えなんじゃなかろうか。
「じゃあ今度から釣り針と糸をもってこよう。うまくいけば魚も食べられるぞ。」
「そうね。いいと思うわ。」
「私はお肉の方がいいけど、無いときもあるもんね。あってもいいかも。」
「よし、それじゃ今度買っておこう。」
魚が好きってわけじゃないけど、肉ばっかりよりは体にもいいはずだ。
塩焼きにすればお手軽で美味しいしな。
考えてたら無性に魚が食べたくなってきた。
これも干し肉ばっかりの食生活の弊害だな。
今日は新鮮なものが食べたい。
「ジュン!後ろからオークが三匹来てるよ!」
「わかった!」
少し自分の考えに気持ちが向かってたな。
にしてもオークか、少しづつ敵が強くなっているな。
三匹なら問題ないだろう。
「よし!一匹を同時攻撃ですぐに倒して残りを一対一だ!」
「わかった!」
「エリィはいつも通り緊急時に魔法を頼む!」
「わかったわ!」
今回のオークは三匹ともこん棒を持っている。
武器があるだけ割と厄介だが、なんとか対処しよう。
まず先頭にいるオークに二人がかりで襲い掛かる。
オークはこん棒を振り上げてくるが、盾で受け流す。
パワーがあるから正面から受け止めたら吹き飛ばされそうだ。
隙ができたところに剣とハンマーを叩き込む。
まだ生きているようだが、動くことは出来そうもない。
残りは一対一だ。
仲間のオークがやられたからか怒りの声を上げて襲い掛かってくる。
盾で受け流しながら切り付けていきたいが、オークに武器がある分、距離がありなかなか攻撃に移れない。
かわせる攻撃はかわしながら距離を詰めていく。
後少しというところでオークが距離を取った。
このオーク、意外と賢いのかもしれない。自分に有利な距離を把握しながら戦っているようにみえる。
それならこっちも少し頭を使おう。
距離を取られたところからさらに距離を取る。
お互いの武器が届かないくらいの距離だ。
オークは踏み込んで攻撃してくる。
それに合わせて俺も踏み込み、攻撃をかわしながら顔面に突きを放った。
練習していたカウンターのようなものがうまくいったな。
「それにしてもオークに頭を使われたな。」
「低ランクの魔物じゃないんだからそういうこともあるわよ。」
「でもなんだろう。無性に腹が立った。」
「別にからかわれているわけでもないんだよ?」
「そうなんだけどさ。一瞬でも手のひらで転がされたと思うと切ない。」
「ふふ。でも前よりも随分スムーズに倒せるようになってると思うわよ。」
「そうだね。今回は割とすぐに倒したもんね。」
「そうか?そうだといいんだけど、どうだろうな。」
オークを相手にするのが初めてじゃないってこともあると思うし、多少慣れてたのかもしれないな。
俺も少しは強くなってるんだろうけど、なかなか実感するのは難しいもんだ。
「それよりもようやく新鮮なお肉だよ!」
「そうだな、解体して持っていこう。」
「しばらく携帯食料ばかりだったから楽しみね。」
「シャー、シャーー。」
「シロも嬉しいか。今日はいっぱい食べていいからな。」
「シャー。」
余るのはもったいないがオークのなるべく美味しい部分を取ってその場を離れる。
後は他の魔物や動物が食べてくれるだろう。
「この沼地にはオークがいることは分かったから、もうご飯の心配はしなくていいね。」
「いや、肉に関してはな。干し野菜とかはまだあるけど底をつく前に戻りたい。」
「そうね。肉が多めになるのは仕方ないにしても、なるべくなら他のものも食べたいわ。」
「後何階か下りてみてまだ先があるようなら戻ったほうがいいだろうな。」
「その場合、魔物も強くなってるだろうからね。」
「それもそうか。もうそろそろ終わりだといいんだが。」
何階まであるかわからないってのは不便だな。
そういえばどうなったら終わりなんだ?階段が見つからなければか?
「なぁ、ダンジョンの最後ってどうなってるんだ?もう階段がないだけなのか?」
「二種類あるわ。まずはジュンが言った通り階段が無くて終わりの場合。もう一つはそのダンジョンのボス部屋がある場合ね。」
「ボス部屋?」
「ええ。この場合、ある程度ランダムらしいんだけど、強い魔物が現れてそれを倒すと宝箱が出るみたいね。」
「へぇ、前のダンジョンはボス部屋はなかったのか?」
「無かったわ。」
「今回はどうなんだろうな。ボス部屋があればそこまでってわかりやすくていいんだけど。」
ボス部屋か、どれくらいの強さの敵が出るか気になるな。
入ってみたい気もするし、入ってみたくない気もする。
宝箱があるってのは魅力的なんだけど。
倒したら地上に転移とかしてくれないのかな?
「ちなみに倒したら地上に転移ってしてくれないの?」
「そんな話は聞いたことないわね。どこで聞いたの?」
「いや、そうだったらいいなって思っただけ。」
「確かにそうだったらいいよね。」
「でもそう甘くはないってことか。」
この世界のダンジョンは厳しいな。
どうあがいてももう一度虫ゾーンを通らなくちゃいけないわけだ。
そう考えるだけで気持ちが落ち込む。
せめてそれまでにいいアイテムが拾えることを祈っておこう。




