62 出来立てのダンジョン探索3
イモムシとの連戦を終えてようやく地下三階に向かう階段を見つけたところでちょっとした問題が起きていた。
「だから、下りたところが危ないところだったら大変だからここで休んでから行ったほうがいいと思うのよ。」
「でもイモムシがいるところで休めるとは思えない。」
「でも下じゃもっと休めないかも。」
「イモムシがいるところよりは休めるはず。」
「大分倒したからさっきから襲ってくる数は少ないよ。大丈夫だってば。」
「いや、あいつらはきっとまだいる。寝てるときに群れを成して襲ってくるんだ。」
そろそろ少し睡眠をとろうという事になって、キリとエリィは危険の少ないこの階で、おれはイモムシのいないだろう次の階で睡眠をとりたいと意見が分かれた。
まぁ俺のわがままともいうが。
結論から言うと俺が折れることになった。
女性二人には勝てないし、そもそも危険かもしれない次の階より、倒すことのできているこの階で休むというのは正論だ。
それでも俺としてはイモムシが嫌だったんだが。
「わかったよ。でも先に休ませてくれ。いろいろ限界だ。」
「そうね。ジュンは最後の見張りをお願いしようと思うわ。」
「ひどい顔をしてるもんね。最初に見張りをやれとは言えないよ。」
どうやらひどい顔をしているらしい。
次から次へと巨大なイモムシと戦っていればひどい顔にもなるってもんさ。
俺は日本で生きてたんだからこういうのには慣れていない。
二人が平然としていることにびっくりだよ。
「それじゃあ早く食べて休もう。とにかく疲れた。」
「わかったわ。」
「とりあえずお水でも飲みなよ。シロ、出してあげて。」
「シャー。」
水を貰う。あぁ、さっぱりする。
もう少し水を出してもらって体に付いたイモムシの体液を拭き取る。
これだけでも随分違う。さっきまでの不快感が少しだけ薄れていくようだ。
それでも外でできる事には限りがある。
しばらくは我慢だな。
結局肉は取れなかったから、変わりのない携帯食料を食べてテントに潜り込んだ。
朝。いや、ダンジョン内だから朝かどうかは分からないんだけど、気分的に朝。
二度ほど襲撃があったが、両方とも単体での襲撃だったためそれほど大したことにはならなかった。
「それじゃあ地下三階へ向かうぞ!」
「嬉しそうだね。」
「少なくともイモムシはいないだろうからな。俺としてはそれだけで行く理由になる。」
「分かってはいたけど、よっぽど嫌いなのね。」
「ああ、もうこの階には来たくないってくらいには嫌いだな。」
「帰りがあるけど・・・。」
「そこは考えない、今は前に進むことだけを考えよう。」
「はいはい、それじゃ用意もできたし行きましょうか。」
若干呆れられながらも、地下三階へ進む。
地下三階は遺跡のような場所だった。
「これはまた、随分と雰囲気が変わったな。」
「そうね。遺跡エリアは罠があることが多いって聞いたことがあるわ。気を付けて進むわよ。」
「よし、今まで覚えたことを活かす時がきたな。」
「私はその辺わからないからよろしくね。」
「俺とエリィでなるべく罠を見つけるようにする。後方の注意は任せるぞ。」
今までより慎重に進む。
罠の見方を教えてもらったとはいえ、まだ素人もいいところだ。
注意深く見ていく。
しばらく歩くと床が若干浮き上がっているように見えるところがあった。
「まってくれ、罠かもしれない。」
「あそこね。」
「どこ?」
「あの少し床が高くなっているところよ。」
「あ、本当だ。」
「踏まないように行けば問題ないだろうが、今後のためにも解除の練習をさせてくれ。」
「わかったわ。」
ツールを床に差し込み少し持ち上げる。
この時持ち上げすぎると作動することもあるから極力少しがいいらしい。
すると中に紐が引っかかっていて、踏むとその紐が切れるという仕掛けのようだ。
ツールを使って紐を外す。
簡単な罠だからこれでいいはずなんだが、解除されたのか分からない。
「これで解除されたはずなんだけど。」
「見た目には変わってないね。」
「うーん。試しに踏んでみていいか?解除されているはずだから大丈夫だと思う。」
「ちなみにどんな罠だったの?」
「多分矢が飛んでくる罠じゃないかな。もしくは何か落ちてくるか。」
「それなら踏んですぐ離れてみればいいんじゃないかしら。」
「そうだな、そうしてみるよ。」
床を踏んで飛び退く。
何も起こらない。
「うん。どうやら解除はうまくいったみたいだ。」
「初めてだけどうまくいったね。」
「多分一番簡単な罠だったからな。それでも見つけられて良かった。」
「これで罠があることはわかったわ。より気を付けて進むわよ。」
「そうだな。」
罠に気を付けて進む。
途中、いくつかの罠があったが無視できるものは無視して、時々練習がてら解除するといったことを繰り返していった。
途中、宝箱を見つけたりしながら進んでいくと。
「ん、足音がしたよ。」
「前か?」
「前だね。もう来ると思うよ。」
戦闘準備を整える。
曲がり角から現れたのはマミー、ミイラ男とも呼ばれる魔物だ。
「マミーね。よかったじゃない、虫じゃなかったわよ。」
「そうだな、俺としては嬉しい限りだ。」
「ゾンビより動きも早いし力もあるから気を付けてね。」
「あぁ、なかなかいい体格をしているからな。油断はしないよ。」
相手はマミー四体、俺とキリで二体ずつでやってみるか。
「キリ、二体ずつやろう。」
「そうだね。」
言い終わったら先手必勝とばかりに駆け出す。
ゾンビに比べれば早いが、このくらいのスピードなら対処できないほどでもない。
相手の攻撃をかわしながら隙のあるところに斬りつける。
思ったよりも硬い。
まずは一体を何とかしないとな、二体だと思わぬところから攻撃を食らう恐れもあるし。
狙いを絞って首に斬りかかる。
だがマミーも首は急所なのか、腕でガードをする。
腕ごと斬り飛ばせれば話は早いんだがそこまでの力はない。
腕に狙いを変える。
マミーの攻撃も威力はなかなかだが新しくなった盾の前には通用しない。
パンチを受け止めてその腕を斬る。
硬いから一撃じゃ切り落とせなかったが、何度も斬ることで腕を切り落とすことに成功した。
後はガードできない方から首を切り落とすだけだ。
「はっ!」
攻撃の隙をついて首を切り落とす。
するとマミーは動かなくなった。
残りは一体、同じようにして倒してもいいんだが、こいつにはカウンターで首を狙う練習台になってもらおう。
これまでは堅実に戦ってきたが、数が多いと多少リスクをとっても早めに減らさないといけないこともある。
一撃で首を落とす練習には丁度いい。
マミーの攻撃をよく見る。どちらかというと大振りだ、カウンターはしやすいはず。
右パンチを避ける、同時に首に剣を振る。
が、威力が足りなかったのか半ばまでしか届いていなかった。
普通の人間なら致命傷だが、マミーにとってはそうでもないらしい。
剣が首に刺さったまま腕を振るう。
俺も仕切り直しとばかりに首から剣を抜き、距離を取る。
再び振るわれる拳に合わせて全力で剣を振り切ることでマミーの首を飛ばすことができたのだった。
「何か練習してたみたいだけどどうだったのかしら?」
「ああ。一撃で首を飛ばせないかと思ってさ。結果は見ての通りだけど。」
「ジュンの剣は短いの使ってるからね。もう少し長くしてみれば?」
「うーん、それも考えてみるかな。最初のころと違って多少は振れるようになってきたし。」
「少し長さを変えるだけでも威力が変わるからね。試してみるのは悪くないと思うよ。」
「それも素材が手に入ってからだな。今はこいつで十分だ。」
「そうね。その剣も悪いものではないし急ぐことは無いかもしれないわね。」
「おやっさんが作ってくれたもんだ、やっぱり使いやすいんだよな。今度おやっさんにも相談してみるか。」
「それがいいよ。」
今後の課題を考えつつ、地下三階の探索は続く。




