61 出来立てのダンジョン探索2
あれからダンジョンスパイダーがチラホラと見つかり、倒して牙を取っていた。
当然魔石も取っているけど、そこまでランクの高い魔物じゃないからどれだけお金になるかは微妙なところだ。
そうして歩いていると地下に下りる階段を見つけた。
「階段があったけど、下りたほうがいいのか?それともこの階をもう少し調べたほうがいいのか?」
「下りましょう。ある程度のマッピングはしたわ。後は他の人に任せればいいわよ。」
「それよりも先に何があるかの方が情報の重要度は高いからね。」
「わかった。なら下りよう。」
地下一階。いやこの場合は地下一階をスタートとして地下二階とするべきか。
なんにせよ地下二階に着いた。
ダンジョンの構造自体は地下一階と変わらない。
ごく普通のダンジョンだ。ただ少し雰囲気が変わった気がするが。
「特に変わりはないな。」
「まだ地下二階だからね。」
「新しくできたダンジョンってのはどれくらいの深さがあるもんなんだ?」
「一概には言えないわね。浅ければ一階で終わることもあるでしょうし、深ければ十階くらいまであってもおかしくないわ。」
「そこまで深かったら難易度は高くなっていきそうだな。」
「そうでしょうね。基本的に深い階層の方が魔物は強く、罠は凶悪になっていくわ。」
「まだ地下二階だしそこまででもないと思うけど、油断はせずに行こう。」
「もちろんだよ。」
地下二階のマッピングを開始する。
ちゃんとやっておかないと帰るときに道が分からないなんてことにもなりかねないしな。
地下二階もサクサク行きたいものだ。
「進む前にご飯にしようよ。」
「いいけど今日は肉が取れてないからな。携帯食料で我慢だぞ。」
「そうだった。でもお腹がすいたら力が出ないからね。多少は食べておかないと。」
「それじゃあさっさと用意するわよ。シロ、お水お願いね。」
「シャー。」
簡単な硬いパンと干し野菜を入れたスープ、干し肉で食事をとる。
シロも少し不満そうだが、今は我慢してもらうしかない。
「やっぱり魔物の肉を食べれるってのは食事の質が大きく変わるよな。」
「そうだね。いつも食べられるわけじゃないのが残念だけど。」
「干し肉はちょっと味気ないわよね。保存を重視しているから仕方ないけれど。」
「今日中には食べられる魔物を狩りたいところだな。」
飯は重要。モチベーションにもつながるし。
この階に食べられる魔物がいることを願おう。
「さぁ、食べ終わったら行くぞ。」
「わかったわ。」
キリは物足りなさそうだが今は我慢してもらおう。
腹いっぱいにすると動きが鈍ったり、ダメージを受けた時に響く恐れがあるからな。
動けるだけの食事をするのが丁度いいって先輩方に教わった。
食事も終わり地下二階を歩いていく。
今回は魔物が早めに出た。
「粘着イモムシね。」
「うっ。」
「ジュン?」
「いや、このタイプの虫はちょっと・・・」
一メートル近くのイモムシが三匹こっちに向かってくる。
気持ち悪い。全身の鳥肌が凄いことになっている。
「粘液を出して動きを阻害してくるわ。その後に体当たりや牙での攻撃をしてくるわよ。」
「ううっ。了解。」
「ジュン、しっかりして。ここは多分粘着イモムシはそこそこいると思うよ。」
「う・・・」
この状態だけでも嫌だってのに、倒しても倒しても次から次へと湧いて出てきたら、それは地獄だ。
さっさと倒そう。それ以外道は無い。
「よし、エリィ、魔法だ。」
「ダメよ。こんなの相手に使ってたら持たないわ。」
「じゃあキリ。」
「一緒に戦うよ。」
「くっ、じゃあ俺は左から、キリは右からで。」
「わかった。」
距離を詰める。
すると粘液を吐いてくる、それを何とかかわすが、次の瞬間粘着イモムシが体をググっと縮めて突撃してくる。
盾で受け止めるが、多少ブヨブヨしていて感触が気持ち悪い。
はじき返して剣で斬りつける。
―ズシュ!
白いトロトロした液体がぶちまけられる。帰りたい。
それでもまだ生きているようで粘液を飛ばしてくる。
この粘液、意外と動きが阻害されて戦いにくい。
早めに近づいて頭に剣を叩き込む。
その瞬間を狙っていたかのようにもう一匹が牙で襲い掛かってきた。
盾で牙を押し返して下から剣を突き刺す。
丁度いいところに刺さったみたいで二匹目も倒すことができた。
キリの方を見るとそこには直視できないほどの悲惨な光景が広がっていた。
イモムシがキリのハンマーを受け止められるはずがなく、爆発四散していたからだ。
久々にこみ上げるものを何とか我慢しつつイモムシの液体から逃れる。
「お疲れ様。戦いはスムーズだったけど精神的にちょっときているみたいね。」
「ああ・・・。」
「シロ、水を出してあげて。」
「シャー。」
「すまん。」
あんなものと連戦したくない。でも逃げるわけにもいかない。
せめてこの階層は早めに突破しようと心に決める。
「素材はどうするの?」
「素材なんてあるのか?」
「牙と一応肉ね。」
「牙はわかるけど肉?」
「一部の人に珍味として食べられているそうよ。食べられないわけではないってことでハンターの中にも食べる人はいるし。」
「二人はまさか食べないよな?」
多分、俺は凄い顔をしていたんだろう。
二人は一歩下がって頷いた。
わかってる、そういう文化があることも。否定する気もない。
ただ俺自身はどうしても無理なだけだ。
「え、ええ。食べないわ。」
「私も別に食べないよ?」
「そうか、ならいいんだ。牙と魔石を回収してさっさと立ち去ろう。」
「わかったよ。」
解体を終えて移動する。
行く手に何度か粘着イモムシが現れたが何度も無様な姿を見せるつもりもない。
俺なりに攻略方法を考えた。
あいつらは体を切ってもなかなか死なない。
だが頭を斬り飛ばせば割と簡単に倒せる。
したがって突進か噛みつきを誘発して盾で受ける。
その後、盾で抑え込みながら頭を斬り飛ばせば体液が出るのも最小限で済む。
俺は淡々とその作業を繰り返していた。
そして出会った、おそらくはその芋虫が羽化したやつと。
「ビックモス、さっきのイモムシが成長した魔物よ。」
「だろうな。」
「羽から毒の粉をまき散らすから近接攻撃とは相性が悪いわ。吸い込まなければ大丈夫だから速攻で勝負を決められるかがポイントね。」
「よし。キリ、今回は一気に行くぞ。」
「うん。」
返事を聞いた瞬間に走り出す。ビックモスはまだ壁にへばりついていてチャンスだ。
後五メートルといったところでビックモスが動き出す。
羽を広げると二メートルにもなる大きな蛾。
羽ばたいて毒の粉をまき散らす。
「息を止めるぞ!」
吸い込まなければ大丈夫ならまずはその羽を斬り飛ばしてから倒せばいい。
向かってくるビックモスに向かって剣を振り下ろす。
完全には斬り飛ばせなかったが、飛ぶには不自由になっただろう。
キリの方は羽をぐちゃぐちゃにしている。
一度距離を取って呼吸をし直す。
とどめだ。
地面でもぞもぞと動いているビックモスの頭に剣を叩き込んだ。
「ふぅ、まだなんとかなる魔物だな。それにしてもこのダンジョンは毒を使ってくる魔物が多いな。」
「もしかしたらそういう系統のダンジョンなのかもしれないね。」
「そういう系統?」
「ダンジョンによって傾向がある場合があるのよ。今のところこのダンジョンは毒を持った虫が多いように思えるわね。」
「最悪なダンジョンだ・・・。」
「ジュンは本当に虫がダメなんだね。」
「全部が全部ってわけじゃないんだけどな。こう、気持ちの悪いのは無理だ。」
「私も好きじゃないけど、ジュンほど苦手ではないかな。」
「人それぞれ得手不得手はあるわよ。ジュンにはこういったのは合わなかったのね。」
「ああ、本当にしんどいわ。早く地下三階に行きたい。」
多分地下三階からは違った魔物が出てくるはずだ。
俺はそう期待をしたいぞ。
もしもこのダンジョンがすべて虫尽くしだったら俺はどうなるんだろうか。
考えたくない。




