60 出来立てのダンジョン探索1
早朝。
準備を整えて洞窟に潜ることになった。
「それじゃあ行くぞ。」
洞窟かダンジョンかは入ればすぐにわかることが多いらしい。
まず、洞窟は暗い道が続いているだけだ。
それに比べてダンジョンは壁や天井が明るかったりする。また、中に入ったのに草原に出た、なんて時も間違いなくダンジョンだ。
時々暗いダンジョンも存在するらしいが、その場合は地下に下りる階段を見つければダンジョンだとわかる。洞窟には階段なんて存在しないから。
それを頭に入れて洞窟に潜る。
「んん?明るいな、ダンジョンで間違いなさそうだ。」
「そうだね。一階はごく普通のダンジョンかな?」
「通路が続いてるだけだからな。一応罠には気を付けて行こう。」
「そうね。そのために勉強したものね。」
「俺とエリィは一応簡単な罠なら見つけられるはずだからな。実践するのは初めてだからゆっくり行こう。」
下級のダンジョンには罠が仕掛けられていることは少ないらしい。
出来立てだから下級だと思うがそこは油断せずに行こう。
実は中級以上のダンジョンだったってこともあり得ないわけじゃないしな。
とりあえず魔物が出てきてくれれば参考になるんだが。
「中は意外と広いんだな。」
「入り口の大きさのままだったら魔物も住みにくいわよ。」
「確かにそうか。俺たちとしては移動しやすくて助かるんだけどさ。」
「そうだね。ただ、大きい魔物が出ないといいけど。」
「ま、やばそうなら即時撤退だな。これは忘れずに基本でいこう。」
「無理して命を失ったら意味がないものね。」
マッピングをしながら歩いていく。
もういう時に自動でマッピングしてくれるマジックアイテムがあれば便利なんだろうな。
今のところ複雑な道じゃないから大丈夫だけど。
「それにしても魔物が出ないね。」
「そうだな、って言ったそばから出てきたぞ。」
「本当だ。ゴブリンだね。」
「そんな気はしてた。」
「どこにでもいるから仕方ないわよ。」
サクッと倒して先に進む。
「ゴブリンが出てきたってことは下級ダンジョンってことか?」
「そうとも言えないわ。ゴブリンは上級ダンジョンでも出るみたいよ。」
「他の魔物の餌ってことなのかもね。」
「なんだかかわいそうになってくるな。」
「それだけ増えやすいし丁度いいのかもしれないわね。」
確かにすぐに増えるしどこにでもいるからな。
ゴブリンじゃ参考にはならないってことか、なら他の魔物が出てくるまでこのダンジョンの難易度は分からないか。
「あ、宝箱。」
「あら、まだ人が入ってないから見つけやすいわね。それじゃ早速。」
「まった、俺にやらせてくれないか?」
「ジュンも宝箱を開けるの?」
エリィが少し悲しそうにこっちを見てる。
多分エリィは宝箱を開けるときのワクワク感が好きなんだろうな。
でもここは俺の経験のために開けさせてもらおう。
「これからも宝箱はエリィにメインに開けてもらうよ。ただ俺も練習のために少しくらい開けさせてほしいんだ。」
「そう・・・、仕方ないわね。わかったわ。」
しぶしぶと宝箱から離れるエリィ。
そんなに開けたかったのか、少し罪悪感がくるな。
ただ、俺も練習しておかないといざという時に困るかもしれない。
十徳ナイフみたいなピッキングツールを取り出してカギ穴に差し込む。
このタイプの宝箱は基本的に中の引っかかりに気を付けて奥にある解錠する場所を外せばいいはずなんだが、これが結構難しい。
エリィって実は凄い器用なのかもしれない。短時間で開けてるし。
二十分以上格闘してようやく開けることができた。
「ふぅ、やっとあいた。難しいな。」
「初めてなら仕方ないと思うよ。私は出来る気がしないし。」
「開いただけでも凄いわよ。それで、中身は何かしら?」
「えっと、中身は短剣一本だな。」
「普通の短剣みたいだね。」
「まぁ、まだ一階だからさ。」
それでも初めて宝箱を開けた中身だ。
なんだか特別なものに見える。
エリィの気持ちも少しだけわかる気がしてきた。
「さ、次に行こう。まだ何かあるだろうし。」
「そうね。次に期待しましょう。」
「気を付けてね?罠があるかもしれないんだから。」
「そうだな。魔物もまだどんなのがいるか分かってないからな。」
引き続きマッピングをしながらダンジョンの中を歩き回る。
途中何度かゴブリンが襲って来たけど全て返り討ちにした。
ゴブリンの肉はシロも食べたがらない。
本当に役に立たない奴らだ。
「止まって。」
「どうした?」
「今音がしたわ。魔物だと思うわ。」
「どっちから音がしたかわかる?」
「前ね。分かれ道になっているから、おそらくそのどちらかにいると思うわ。」
「少し待ってみるか?不意打ちを仕掛けるつもりかもしれない。」
「そうだね。少し様子を見てみるのもいいかもね。」
しばらく止まって耳を澄ませていると時々カサカサって音が聞こえる。
今まであった魔物とは音が違う。
「おそらく左の通路にいるわね。」
「そうだね。動かないのか動けないのか、全く移動してないみたいだけど。」
「これだけ音を出してるんだし不意打ちって線は無いんじゃないか?」
「・・・そうね。慎重に進みましょう。」
「よし、いきなり襲い掛かられても大丈夫なようにしておこう。俺が盾を構えながら先に進むから、何かあったら援護を頼む。」
「わかった。」
「わかったわ。」
T字路になっているから、曲がり角まで慎重に進む。
そして何かいるであろう通路に盾を構えながら飛び出す。
まず目に飛び込んできたのは糸に捕まったまま死んでいるゴブリンの姿。
そして次に見えたのが天井付近に一メートルを超す大きさの蜘蛛だった。
「蜘蛛だ!天井に蜘蛛がいる!」
その声と共に二人も飛び出してくる。
「あれはダンジョンスパイダーね。その名の通り、ダンジョンに住み着く蜘蛛の魔物よ。」
「そこまで強くはないはずだけど、罠を張って待ち受けるタイプだから、こっちからは手を出しにくいんだよね。」
「あと牙に毒があるから、それにも気を付けるのよ。」
「ってことは向こうから仕掛けてくるのを待った方がいいのか?」
「そうね。もしくは魔法や矢で倒してしまうのが一番いいんだけど、私たちのパーティーだとちょっとね。私がもっとうまく魔力をコントロール出来れば楽に倒せる相手なんだけど。」
「それは仕方ない。襲い掛かってこないんならほっとくのも手なんじゃないか?」
「そうだね。それでもいいかも。追いかけてくれば倒せばいいし。」
俺たちはじりじりと距離を取ることにした。
ダンジョンスパイダーはそれに気が付いたようで目をこっちに向けている。
だいぶ距離が離れたところでダンジョンスパイダーが動き出した。
見逃すには惜しい獲物だとでも思ったのかもしれない。
一直線に向かってくる。ちょっと気持ち悪い。
「来たわよ。さっきも言ったけど牙の毒には気を付けるのよ。」
「わかった。俺が足止めをする。キリは横から叩いてくれ。」
「うん。」
ダンジョンスパイダーが天井から糸を出してくる。
だがそこまでの丈夫さが無いのか、剣を振るだけで糸はあっさりと切れる。
しばらく糸を出し続けていたが、このままでは埒が明かないと思ったのか、地上に降りてきた。
一メートル以上の蜘蛛だ。なかなかの迫力だが、今までに戦ったやつらに比べればなんて言うことは無い。
しっかりと盾を構えて対峙する。
ダンジョンスパイダーがとびかかってくる。
牙に盾を押し付けて足を切り落とす。
力自体はそこまで強くは無いようだ。
牙に気を付けて反対側の足も切り落とす。
足が二本無くなった影響か体勢を崩したところにキリのハンマーが叩き込まれた。
「これくらいの奴なら何とかなるな。毒はちょっと怖かったけど。」
「見ている分には危なげなかったわよ。」
「これは、どこが素材になるんだ?」
「牙と毒腺ね。毒腺に関しては容器がないから諦めておいた方がいいわね。」
「それじゃあ牙だけ取っておくか。」
ダンジョンスパイダーの解体をさっさと終わらせ、先を進むことになった。




