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6 キリ

 あれから一ヵ月近くたった。

 詳しくはわからないがおそらくそれくらいだろう。

 これまでいろいろなことがあった。

 薬草を取ったり、ゴブリンを倒したり、薬草を取ったり、まぁおもにそれくらいかもしれないが。

 靴を中古で買ったり、水筒を買ったりと装備は順調に増えている。

 そして今日はついにお金が貯まったので武器を買う日だ。

 長かった、こん棒は持ち手から折れることもあってナイフで戦ったこともあった、あの時はやばかった。

 ちなみに武器は迷ったがショートソードにした。鍛冶屋のおやっさん、ドゴラと話し合ってみて、盾とショートソードが一番いいんじゃないか、という結論になった。

 理由は俺の技術と筋力、特に特出したものもないし、経験があるわけでもないなら安定はするだろうということになった。

 安定、いい響きだ。


「これまでに貯めた金が全部とぶけど、安全にはかえられないしな。それにこれで俺もようやくハンターって感じだろ。」


 日課であるランニングを終えたら朝食を食べて鍛冶屋に向かう。

 このランニングも効果が出ている気がする、塵も積もれば山となる、継続していこう。


「おやっさん、武器買いに来たぜー。」


 これまでに何度も足を運んでいるので気楽なものだ。おやっさんも50歳くらいの気のいいドワーフだ。話しやすい。

 ちなみに結構会話もできるようになってきた。言葉が分からないってことがみんな知っているので、話しかけてくれることも多かった。

 馬鹿にしている人もいたと思うがそっちは気にしない。わからないし。

 多くの人に助けてもらっているのだから恵まれていると思う。


「前から頼んでたやつ頼むよ。」

「おう、ショートソードに木の盾だな。何度も言ってるが手入れをしっかりやるんだぜ?それだけでぐっと長持ちするからな。」

「あぁ、一日に一回は必ずするよ。買い替える金なんてしばらく手に入んないからな。」


 せっかく買ったのにすぐダメになってしまってはたまらない。

 もっといいものが買えるようになるまで使い倒す予定だ。

 グリップは前に直してもらった。絶対に買うからっていう熱意を汲んでくれたんだろう。

 ショートソードを受け取る。ズシリと重さが来る、しばらくはこれを満足に振り回せるように練習しないと。素振りだな、筋トレももっと増やすか。

 盾も構えてみる。そこまで大きいわけではないがやっぱり重い。こんなものを装備して走り回るというのだから、みんなすごいことをやっているよ。

 ちなみにこの盾は借金のかたに置いていったものらしく、それを買い取ったから格安だ。

 でも剣と盾を装備したことで強くなった気分だ。

 こん棒よりもはるかに安心感がある。こん棒と一緒にしたら失礼かもしれないが、こん棒も今まで俺を守ってきた武器であることに違いはない。感謝をしようと思う。


「んー、よし、これで俺もこん棒生活からおさらばだぜ。」

「こん棒でよく生き延びたな。まぁお前さんなら危険なとこにはいかんだろうが、それでもなにがあるかわからないのがハンターってもんだ。運がよかったな。」


 確かに運がよかった。慎重に立ち回っていたが、万が一囲まれでもしたらそこで終わっていただろうことは想像に難くない。

 ウルフに会わなかったのも大きい、盾と剣をうまく使えば勝てるかもしれないが、こん棒では捉える自信がない。勝てたとしても大けがをしたら負けと一緒だ。

 ここまでは運がよかった。だが運だけでずっと生きていけるわけがない。

 ここからはきちんとした準備が必要だ。後、仲間・・・仲間か。


「うーん・・・」

「どうした。」

「いや、装備も最低限整ったから仲間をって考えたんだけど、その・・・」

「前から言ってたやつのことか、組んでみればいいじゃないか。試しに組むってのはありだと思うぞ。」


 そう、仲間のあてはあるんだ。一人だけど。

 二週間くらい前にゴブリン相手にけがをしたことがあった。

 何とか倒せたんだけど、わき腹に噛みつかれて結構血が出てた。

 そのときにたまたま通りかかったドワーフのキリって年下の女の子に治してもらった。

 その時は礼を言って別れたんだけど、それ以来ギルドなどで少しづつ話すようになっていった。

 キリは俺と同じくソロでやっているらしい、パーティーをくんだこともあったらしいんだがうまくいかなかったと聞いた。

 話していて理由を聞いた。

 キリはドワーフで武器はハンマーだ。本人は回復魔法も持っている。

 キリはドワーフの中でも力が強いようだ。そのため素材をダメにすることがよくあったらしい。

 強いのはうれしいが素材が売れないと金欠になる。そしてパーティーとしては悩みどころにはなるわけだ。

 そういう理由でパーティーから離れることになったらしい。

 俺が仲間のあてがあるといったのはこのキリだ。俺も金銭に余裕があるわけではない、どうするべきか。

 話していて嫌な奴ではない、楽しく話せるし素直だ、何より敬語を使わないで気楽にしゃべれる。俺の言葉が上達したのはキリのおかげもあると思っている。

 一人よりは二人のほうがいいと思うし、話を持ち掛けるだけ持ち掛けてみるか?

 俺自身駆け出しで弱いんだから、そもそもむこうが了承するかわからない、まず話してみるか。


「誘ってみるよ。断られるかもしれないけどさ。」

「そうか、お前さんから聞いた話だと悪い子じゃなさそうだ、うまくいくといいな。」


 装備のこまごまとした調整をしてもらって鍛冶屋を出る。

 とりあえずギルドに行ってみるか。まだ時間も早いしいるかもしれない。

 いた。さてどうなるかね。


「いいよ、よろしくね。」


 あっさりOKがでた。


「今ソロだしね、ジュンなら一緒にやってみてもいいかもって思ったの。」

「そうか、知ってるだろうけど俺はまだ駆け出しで、武器も今ようやく買ったところだ。頼りないと思うけどよろしく頼むよ。」

「こん棒は卒業したんだ。最初は正気かなって思ってたよー。これで一応ハンターらしくなったんじゃないかな?」

「まだ練習してないから不安だけどな、なるべく早く慣れるように頑張るよ。」


 こんな感じですんなりとパーティーを組むことができた。


 今までにギルドのシステムで分かったことはI~AそしてSまでのランクがあること、俺はHだ。

 というのもIは子どもが街での依頼を受けるためだけにあるランクだから、大人はHからとなっている。

 Eまで行けば一応の一人前として見られる。Cまで行けば一流だ。とりあえずEを目指したい。

 人数としてもE~Cが一番多いらしいから地道にやっていけばなんとかなると信じよう。

 ランクアップ自体は依頼の成功数とギルドへの貢献度、その他もろもろが加味されて決定されるらしい。

 パーティーを組むと個々のランクはそのままだがパーティーとして受けられるものは平均化される。

 今回は俺がHでキリがF、この場合パーティーとしてはGになる。

 そうかキリはFだったんだな、よくOKしてくれたものだ。

 ちなみにパーティー名は「エスプレッソ」キリにはネーミングセンスがなかったようなので俺のコーヒー好きから関連した名前になった。


「まだ武器もなじんでないし、簡単なものがいいんだけどいい?」

「いいよ。うーん・・・武器に慣れるんならこの、村にゴブリンがでたっていうのでも行ってみようか。書いてある情報だとむちゃくちゃ多いわけでもなさそうだし。」

「あ、ああ。俺は依頼を受けるの初めてだからよくわからないんだ、すまないけど任せるよ。」

「こん棒だったもんね。でもこん棒で今までやってこれたんだから、これくらいなら何とかなると思うよ。大丈夫、ケガしても回復してあげるから。」


 とりあえず村に現れたゴブリンを退治する依頼を受ける。

 いつもこん棒を担いでいたのに今日はショートソードだったことに驚いた受付嬢のソアラさんに挨拶する。この人も怪しかっただろう俺に対して親切にしてくれた人の一人だ。


「おはようございます。ソアラさん、依頼の受付いいですか?」

「はい、いいですよ。えっとゴブリンの退治ですね。村までは歩いて一日くらいなので今から向かったら、日が暮れるまでには着くと思います。」

「わかりました、初依頼ですけど頑張ってきますね。」

「えぇ。新しい武器もお似合いですよ。無理はなさらないでくださいね。」

「ありがとうございます」


 はじめての依頼の受付は緊張した。二度目からは大丈夫なんだけど最初ってなんだか緊張するんだよな。

 よし、保存食などをそろえてすぐに出発しよう。

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