54 お手入れは大事
ワイバーンを次々とギルドに運び入れる。
後は換金して報酬を受け取るだけだが、俺たちはここまでで話し合って、報酬の一部を素材で受け取ることに決めた。
ワイバーンの牙と鱗を少々。
もう少し欲しかったが、同じような要求をしたパーティーは他にもいるので、お互いほどほどのところで手を打つことになった。
ギルド側との話し合いも終わって、後は職員たちが解体を終えれば貰える手はずになっている。
ギルド内で待っているとソアラさんが話しかけてきた。
「今回の緊急依頼を受けて頂いて助かりました。ありがとうございます。」
「あー、次は無いように祈りたいですね。」
「そうですね。こちらとしましても厳しい決断を迫られていましたので、次は無いことを祈りたいものです。」
「それにしてもなぜ我々が受けることになったんですか?ほかにも有望なパーティーはいそうなんですが。」
「総合的に評価してのことです。今回選ばれたのはバーサーカーの討伐に成功していたことと、ニューシルンでの事件の功績とでも言いましょうか。そこらへんの戦闘経験があり、共に無事討伐していることを評価させてもらいました。」
ニューシルンに関しては全部を言えないように口止めされているのか少しぼかして言われたが、そのあたりのこともしっかりと共有されているみたいだ。
「なるほど。それにしてもまだEランクですからね。正直勘弁してほしいとは思いましたよ。」
仕方なかったこととはいえこれぐらいは言っても許されるだろう。
実際、銀の爪が来なかったら危ないところだったんだから。
「そうですね。それについては申し訳なかったと思ってます。ですが同時に間違った判断でもなかったとも思ってます。今回の戦いでも活躍されたみたいですしね。」
いい笑顔で言う。
確かに俺たち、というかエリィがいなければもっと厳しい戦いになっていただろうとは思う。
でもそれとこれとは別の話だ。
ため息をついて話を変える。
「まぁ今回のことはここまでにしておきましょう。」
「はい。ですが忘れないでください、皆さんは力を合わせこのスタッカルドに迫る脅威を排除したんです。そのことは胸を張ってください。」
「わかりました。」
そう言い残しソアラさんはカウンターに戻っていく。
迫る脅威を排除した、か。
そう言われれば悪い気はしない。
お世話になった人もいる街だ、なんとかできてよかった。
その後、素材と報酬を受け取りギルドを後にした。
ちなみに報酬は奮発してくれたようで、当分の間遊んで暮らせるほどのお金がもらえた。
「さて、今日はもういい時間だな、休むか。」
「ミミールさんのところはいいの?」
「あぁ、おやっさんのところで剣の様子も見てほしいし、まとめて明日にするよ。」
「今日は疲れたものね。私も早く休みたいわ。」
「それじゃあ宿に行こう。明日から少なくとも装備が整うまでは休みだ。」
ようやくまとまった休みが手に入る。いくら娯楽が少ないとはいえゆっくりする時間も欲しい。
またコーヒーも飲みたいし。
それぞれやりたいこともあるだろう、丁度いい。
少し早めの夕食をもらって、早めに床に就いた。
翌日。
「じゃあ話し合った通りワイバーンの鱗は盾にさせてもらうな。」
そう、俺の皮の盾がついに壊れてしまったので代わりを作ろうという事になった。そしてそれならワイバーンの鱗で作ればいいじゃないかという話になり今に至る。
今、三人でミミールさんのところに向かっている最中だ。
盾を作ってもらうために、後は三人の鎧の点検をお願いしに行くためにだ。
「それでいいと思うよ。しっくりくるのが無かったからって、いつまでも皮の盾は危ないと思ってたし。」
「そうね。いい機会よ、いいものを作ってもらって頼れる盾を手に入れておきなさい。」
「あぁ。俺としては助かる。ずっと何とかしたいと思ってたからさ。」
ミミールさんの防具屋に入る。
「いらっしゃい。」
「どうも、ミミールさん。」
「今日はどうしたんだい?」
「ついに盾が壊れちゃいましてね、作ってもらおうと思って来たんですよ。」
「長持ちしたねぇ。あの皮の盾も本望だろうさ。それで作るってことは素材でも手に入れたのかい?」
「はい、これを見てください。」
「これは、ワイバーンの鱗かい。よく手に入れたもんだ。」
「昨日、緊急依頼がありましてね。そこで何とか手に入れて来ましたよ。」
「ほう、話は聞いてるよ。なんでもどっかの馬鹿がワイバーンを引き連れてきたんだってね。いい迷惑さ。そうかい、あんたたちも依頼に巻き込まれたのか。」
巻き込まれたってところが的確で苦笑しか返せない。
本当にいい迷惑だった。
「何とか他のパーティーと力を合わせて戦ってたところでボーグさん達「銀の爪」が援護に来てくれましてね。倒すことができたので素材も分けてもらうことができたんですよ。」
「なるほどね。で、この鱗を盾にしようって事かい。」
「ええ、お願いします。後、俺たちの鎧もしばらく使っているので見てもらいたいっていうのもあります。」
「わかったよ。まずは鎧から見ていこうじゃないか。」
一人一人点検していく。
大きな問題は無いみたいだが、ベルトが痛んでいたり、歪んでいる部分を直したりする必要があるみたいなので一度預けることになった。
後は新しい盾の大きさや形などを話し合っていく。
「よし。それじゃあまとめてみといてやるからね。盾は楽しみにしておきな。」
「お願いします。」
次はおやっさんのところだ。
「ワイバーンの牙はまだ使わない方がいいのかなぁ。」
「うん。一応竜の牙だからね。普通の鉄に混ぜるのはもったいないよ。どこかでミスリルを手に入れてから作ったほうがいいって言われると思うよ。」
ワイバーンの牙については少し問題があった。
俺は俺とキリの武器を新しくしたらどうかと思ったんだが、キリが反対した。
竜種の中では弱いとはいえ竜の牙だ。ミスリルに混ぜたほうがいいだろうと言って譲らなかった。
武器に関してはキリのほうが遥かに詳しい。一応おやっさんにも確認してみるが多分同じことを言われるだろう。
ちなみにエリィにも作ろうとしたんだがワイバーンの牙では魔法の威力は変わらないらしく俺とキリの分だけとなった。
ミスリルを手に入れたら三人分作ろうと考えている。
「おやっさーん、いるかー?」
「おう、ジュンじゃねーか。今日はどうした?」
「ちょっと大きな戦闘をしたから武器の調子を見てほしくてさ。後は相談に乗ってほしいってとこかな。」
「武器を見るのは構わねぇが相談?」
「ああ、ワイバーンの牙を手に入れたんだ、そこで武器に使いたいって思ってるんだ。どう思う?」
「ワイバーンの牙か。普通の鉄に混ぜるのはもったいないってのが俺の意見だな。どうしてもってんならやるが俺としてはミスリルに混ぜるのがいいと思うぞ。」
「ね?」
「だったな。」
「うん?嬢ちゃんも同じ考えだったのか。」
「うん。一応竜の牙だからね。」
「そうだな。鉄に混ぜるにはもったいねぇ。ミスリルを手に入れたらいいとこを紹介してやるよ。」
「え?おやっさんが作ってくれるんじゃないのか?」
「作ってやりたいところなんだが、ミスリルと竜の牙になるとここの窯じゃ少し物足りねぇな。ドワーフの街に行ったほうが絶対にいい。」
「そうなのか。」
「もちろん手入れくらいはしてやれる。だが剣を作るってなるとちょっとな。」
「わかった、その時は頼むよ。」
「おう。それじゃあ剣の様子を見よう。」
「ああ、頼むよ。」
剣を渡す。
鎧も剣もつけてないと心細く感じるな。
「あー、少し手入れが必要だな。少し待ってろすぐにやってくる。」
ワイバーン相手に斬りつけたから少し刃に歪みでも生じているのかもしれないな。
それでも何とか戦えたんだ、いい剣だと思う。
しばらく店を見てるとおやっさんが戻ってきた。
「待たせたな。剣自体は無事だ。ただ少し歪んでたな。大きな戦闘をしたって言ってたが、確かにそうだったんだろう。剣自体が物語ってたぞ。」
「おやっさんが作ってくれたこいつが無かったら危ないとこだったよ。」
「手入れ自体もしっかりやってるようだし、このままならまだしばらくは持つだろうよ。」
「それは助かるな。また何かあったら来るよ。」
「おう。」
これで装備の点検と盾の製作のお願いは済んだな。
ようやく休みに入れるぞ。




