52 Bランクの実力
「さっきの魔法は連発できないのか?」
「魔力を集中させる必要がありますね、なのでしばらくは撃てないでしょう。」
「そうか、あれが連発できるんなら楽になると思ったんだがな。それでもいい威力だ、次のタイミングには攻撃を合わせよう。」
「そうですね、それがいいと思います。」
リーダーとの少しのやり取りをした後、ワイバーンの突進に備える。
わずかとはいえダメージを与えたんだから突進の勢いも鈍ってくれればいいんだが、それは期待しすぎか。
ワイバーンが四つん這いのまま突進してくる。
完全に俺がターゲットになってるな、全力で回避しないとここで終わる。
右にダッシュして、近くなったら切り返して反対側に逃げる。これしかなさそうだ。
最悪でも牙にさえ捕まらなければキリに回復してもらえるかもしれない。
「全力で回避する、もし吹っ飛ばされたら回復を頼む!」
「わかった!」
右にダッシュだ。
ワイバーンが口を開けて迫ってくる。
牙だけは絶対に回避だ、近づいてきたタイミングで切り返し、左に全力で走りながら回避する。
ワイバーンは巨体だから急な方向転換が苦手だと思ってたが、その通りだった。
ギリギリで回避に成功する。タイミングが少しでもずれていたら弾き飛ばされていたかもしれない。
「あぶねぇ!」
「よし、ワイバーンの足が止まったらチャンスだ!」
皆、武器を構える。
止まった瞬間に近くにいたハンターが殺到する、しかしワイバーンもその隙を狙ってくるのが分かっていたかのようにしっぽを振り回す。
なかなか賢いな、さすがは竜種といったところか。
俺たちも振り回されるしっぽによって近づけない。
「くそっ!横から行けないか!?」
「無理だ!今は隙が無い!」
「やっぱりしっぽを斬るべきじゃないのか?」
「俺たちの武器じゃ厳しい!」
魔法がワイバーンを襲っているが、隙を作り出すには至っていない。
そうしているうちにワイバーンは体勢を整えてハンターに襲い掛かってきた。
「くっ。ワイバーンが接近戦をしてきたぞ!牙と爪に気を付けろ!」
「前に集中している間なら隙もできるはずだ!囲って攻撃だ!」
「狙われている奴は無理をするな!回避を重視しろ!」
危険も大きいがチャンスでもある。
俺とキリはさっき攻撃したところのそばを取れるように立ち回る。
一進一退。
誰かが隙を見てダメージを与えていくが、ワイバーンの腕やしっぽに薙ぎ払われる人も出てくる。
それぞれが回復しながら包囲戦を続けていく。
「エリィ!まだか!?」
「もう少しよ!」
包囲できている状態でエリィの魔法を当てることができたら大きなチャンスになる。
それまでは何とか耐えていきたいところだ。
大きな声を出したことが仇になったのか、ワイバーンがこっちを向いた。
マズいな。どこまで避けることができるか。
大きな口を開けて噛みついてくる。
後ろに飛んで回避する、これは距離を詰めすぎるとあっという間にやられるな。
爪の攻撃も当たったらおしまいだ、一撃かすりそうになったから盾で防いだら皮の盾が紙のように切り裂かれた。
集中して避ける。
俺がよけている間は他の仲間たちが攻撃をしているはずだ。
ならば俺は手を出す必要はない。
時々爪がかするが致命傷にはならないように気を付ける。
そうしてしばらくたった時にエリィの声が響いた。
「撃つわよ!!」
轟音と共に訪れる魔法の嵐。
俺も正面にいると危険だから横に回り込む。
やっぱりエリィの魔法は効果があるようだ、ワイバーンは再び体勢を崩す。
「今だ!!行くぞ!!!」
一気にハンター達が攻撃を加えていく。
俺はキリと一緒に前脚に攻撃をする、突進がしにくくなれば儲けものだ。
「離れろ!」
今回はかなりのダメージになっただろう。
なにせ包囲している状態から一気に攻撃できたんだから。
ワイバーンが起き上がる、顔色はわからないが少し苦しそうにも見える。
「いけるぞ!このまま包囲を続けろ!」
「「「「「おう!!!!」」」」」
最初に比べてしっぽの動きに勢いがなくなっている気がする。
よく見れば体の数か所から血を流しているのもわかる。
確実に攻撃が効いている。
とはいえまだまだ余裕もありそうだ。
あの巨体にとって流した血はまだ多くはないだろう。
ワイバーンが羽ばたいて空に逃げる。
前脚もしっかりとダメージになっているのか飛ぶ姿も最初に比べ頼りない感じだ。
「このまま逃げてくれればいいんだが。」
リーダーが呟く。
まわりを見ても皆満身創痍だ。
俺としてもぜひお帰り頂きたい。
だがワイバーンは距離を取ると再び降りてきた。
「くそっ!まだか。いいか!ワイバーンはダメージが貯まっている。今までのようには突進できないはずだ!よく見てかわせ!」
突進してくるが、確かにさっきに比べて勢いがない。
だがこちらも体力は減っている。お互い様だ。
狙われた人は何とか避けたみたいだが、その姿はフラフラだ。
「よし!また囲って戦うぞ!」
有利に戦えていたんだから、戦い方を変える必要はない。
再びワイバーンを囲う。
ワイバーンも体力が少なくなってきているんだろう。攻撃の頻度が減ってきている。
このまま行けるかと思った時、ワイバーンが底力を見せた。
今までにないほど強烈にしっぽを振るってきた。
俺たちは攻撃された場所にはいなかったが、攻撃された人は吹き飛ばされ気を失っているように見える。
これでだいぶ人が減ってしまった。
爪での攻撃も激しさを増している。
残しておいた力の差が出てしまった形だ。
このままだと俺たちもそう遠くないうちにやられてしまうだろう。
そう思ったとき、離れて戦っていた魔法使いの方から声が届いた。
「おい!援軍だ!援軍が来たぞ!!」
目を離すことができないが援軍が向かってきてくれたらしい。
絶望的な状況で、この援軍は大きい。
なるべく高ランクであってほしい。
「援軍は「銀の爪」だ!Bランクだ、いけるぞ!」
ボーグさん達か、これは心強い。
ワイバーンから少し距離を取りチラッと目を向けると馬が四頭、こっちに向かっているのが見えた。
もうすぐに来てくれる。変わらずにやるべきことをやらないと。
「おい、聞いたな!援軍だ!気合を入れて持ち直すぞ!」
「「「「おう!!」」」」
ここでやられたら元も子もない、慎重に回り込んでわき腹、もしくは前脚を狙う。
ワイバーンの底力も凄いが、ハンター達も負けていない。
少しづつ、だが確実にダメージを与えていく。
俺が攻撃したところからも血が噴き出してきている。何度も攻撃した甲斐があったというものだ。
「待たせたな!俺たち「銀の爪」が正面は引き受ける!みんなは回り込んで攻撃してくれ!」
「「「「おう!!」」」」
素早くボーグさん、ロッシュさん、ターニャさんが正面に回り込む。
サインフォートさんは後方で魔法を使うために距離を取った。
サインフォートさんの魔法がワイバーンを襲う。
さすがはBランク、一撃で隙を作り出す威力だ。
そこをすかさず全員で攻撃する。
ボーグさんとロッシュさんは左右の前脚を、大剣持ちのターニャさんは首を狙っているみたいだ。
ワイバーンも銀の爪の面々を相手をすることで精いっぱいになっているのか、隙が大きくなっている。
横に回り込んだ全員が積極的に攻撃していけるようになった。
一気に楽になった、これがBランクの力か。
「撃退でいいって言ってたが、ここまでダメージを与えてたんなら討伐しちまった方がいい!畳みかけるぞ!サインフォート!どんどん撃て!」
サインフォートさんの魔法の手数が少しづつ増えていく。
それに合わせてターニャさんが首を斬ろうとするが、ワイバーンも必死にかわしていく。
周りでは次々にワイバーンの体に斬りつけ、突き刺そうとしているハンター達。
進退窮まった中でワイバーンは飛んで逃げようとしだした。
「くそっ!逃がすな!落とせ!」
その時、タイミングが良かったのか狙ったのか、サインフォートさんとエリィの魔法が同時に放たれた。
一撃の威力ではサインフォートさんに勝てないが、エリィの魔法は一度放たれたら止まらない。
二人の威力が合わさってワイバーンの行動を大きく阻害することができた。
そしてその大きな隙を逃すターニャさんじゃない。
チャンスと見るや力を溜め、その大きな大剣でワイバーンの首を落とすことに成功した。
「よし!俺たちの勝利だ!!!」
「「「「「おおーーーー!!!」」」」」
こうして俺たちとワイバーンの戦いは幕を閉じたのだった。




