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50 ワイバーンと緊急依頼

 翌日。

 何もない日ってのもたまにはいいもんだな。

 俺たちは三人で屋台を回りながらご飯の代わりに色々なものをつまんでいた。


「屋台のスープも意外と美味しいな、もっと大雑把な味だと思ってた。」

「そんなことないよ。もちろんお店によるけど。美味しいところは美味しいよ。」

「私はこの魚の塩焼きが気に入ったわ。身がホロホロとして優しい味よ。」

「私はオークサンドかな。タレが濃くて美味しい。」

「シャー。」


 キリの頭からシロがオークサンドの肉を頂戴ってキリを見つめてる。

 キリも少し迷ったみたいだが一口あげることにしたようだ。

 美味しかったんだろう、シロがくねくねしてる。

 可愛いな。


 エリィはお酒が欲しくなったみたいで酒屋に入る。

 俺はこの世界のお酒には詳しくないが、エリィは四本選ぶと会計をすました。


「お気に入りのお酒なのか?」

「いいえ、飲んだことがないお酒よ。当たりか外れか楽しみなの。」


 結構勝負する方なんだな。でも楽しそうだからいいか。

 そのまま引き続き屋台をめぐっているとギルドの方にたどり着いた。

 ギルドは大通りにあるから適当に歩いていても目に入っちゃうんだよな。

 せっかくの休日にわざわざ会社を見に来た気分で微妙だ。


「何だか忙しそうね。」

「昨日ワイバーンが現れたっていう情報が入ったからな。それでじゃないか?」

「今頃高ランクのハンターに声を掛けて回ってるんでしょうね。」

「それにしても顔色がよくないね。」

「うーん。事情だけでも聞いてみるか?」

「そうだね。知らないよりは知ってた方がいいかもしれないしね。」


 ギルドの扉を開ける。

 ちなみに俺たちの恰好はアーマーは外しているが武器は持っている。

 休みだけど武器くらいは何かあったときのために持ち歩くことが多い。

 ギルドを見渡してみるとどうにも暗い雰囲気だ。

 いつものようにソアラさんに聞いてみる。


「何かあったんですか?いつもより暗い感じですけど。」


 そういうとジトっとした目線を向けられた。


「ワイバーンの件で、です。」

「あぁ。でも高ランクのハンターなら何とかなるんじゃないんですか?」

「そうなんですけど、その高ランクのハンターの方たちがほとんど依頼でいらっしゃらないんですよ。」

「そうなんですか?」

「はい。なので討伐できるのがいつになるのか、まだ目途がつかないんです。」

「まだスタッカルドから距離はありますからね。その間に戻ってきてくれますよ。」

「そうだといいんですが、ワイバーンにしてみればそれほどの距離ではないですからね、安心はできません。何かあった場合すぐに来るかもしれないと考えると頭が痛いです。」

「もしかして我々に緊急の討伐依頼が出るなんてことはないですよね?」

「……現状だとゼロとはいえません。」

「マジですか。」

「あくまでも今すぐにワイバーンが向かってきたらの話ですよ。可能性は限りなく低いです。」

「それなら大丈夫かな?取り合えず高ランクのハンターがすぐにでも戻ることを祈ってます。」

「そうしてください。」


 思ったよりもよくない状況のようだ。

 万が一討伐依頼が出た場合どうするべきか、いや、無理だろう。

 死にに行くようなもんだ。

 可能性は低いから大丈夫だと思うけどさ。


「取り合えず出るか。」

「そうだね。」


 ギルドを出てぶらぶら歩く。


「万が一緊急の討伐依頼が出たらどうする?」

「受けるしかないんじゃないかしら。」

「緊急の場合ってほぼ断れないからね。」

「マジか。」

「行かないとその後がつらいと思うよ。」

「なるべく前線には出ないようにして立ち回るしかないか。」

「そうね。私の場合は遠距離から魔法を使えるけど、二人は接近しないといけないから無理するのはよくないわ。」


 接近か、相手飛んでるんだよな。

 俺はあまり役に立てそうもないな。

 その後、屋台を回りながらまたブラブラすることにした。

 今日は休日と決めたんだからそのつもりで行動することは間違いではないはずだ。

 今はワイバーンのことなんて忘れて買い食いと、露店で何か掘り出し物がないか適当に見て回ることにする。


「なんか調味料でも売ってないかね。」

「今は塩だけだもんね。」

「かさばるのは困るけど少しくらいなら持てるからな、もう少し味付けが欲しい。」

「胡椒はちょっと高かったからね。手ごろなものがあればいいけど聞いたことないなぁ。」

「店で使ってるタレは売ってもらえなかったし。」

「難しいわね。それにタレなんて持ち歩きにくいわ。せめて粉じゃないと。」

「そうなるとやっぱり塩なんだよな。」


 仕方ないとは思ってるし、それで十分だと思ってる。でももう少しだけ美味しく食べたいという思いはなくならない。

 娯楽が少ないから余計に食事にこだわりたくなる。

 カレーパウダーとかあればすぐにでも買うんだけどな。

 ないものは仕方ない、諦めて露店から出よう。


「ジュンさん!」

「ソアラさん?」


 どうやら俺たちを探していたらしい。


「ゼロではない確率が現状のものとなってしまいました。緊急依頼です。」

「ワイバーンが?」

「ええ、こちらに向かっているのが確認されました。今、他のハンターの方にもお願いしているところです。」

「なぜ急に…」


 大丈夫だと思っていたところですぐにこれだ、言葉が出ない。


「どうやらハンターの方が戦いながら逃げてきているみたいです。当然ワイバーンもつられてこちらに向かってきているわけでして。」

「もしかして自分たちが倒すって言って向かっていった奴らか?」

「可能性はありますね。その場合スタッカルドに危機をもたらす悪質な行為とされて処罰される確率が高くなります。襲われて逃げた場合とは違いますからね。」

「それで俺たちはどうすればいい?」

「準備を整えてただちにギルドまで来てください。そこで説明させていただきます。」

「わかった。」


 あいつらが連れてきたんだとしたらいい迷惑だ。

 俺たちはワイバーンなんかと戦いたくはないってのに。


「仕方ない、宿に戻って装備を整えよう。」

「うん。」


 準備自体はすぐに終わる。

 防具を付けて武器を持つ。慣れた作業だ。

 今回は他のアイテムは一切いらないだろう、何せスタッカルドのそばで戦うことになるんだから。


「よし、行くぞ。」


 ギルドの扉を開く。

 ピリピリした空気だ、おそらく同じように緊急依頼を言い渡された人が他にもいるんだろう。

 Eランクの俺たちにまで声を掛けてくるくらいだ、人が足りないのはよくわかってる。

 あとは出来るだけ高ランクの人がいることを祈るだけだな。


「集まりましたね。今回の緊急依頼を受けて頂きありがとうございます。今回の標的はワイバーン、討伐ではなく撃退です。

 参加するパーティーはCランク一パーティー、Dランク三パーティー、Eランク一パーティーになっています。Dランク以下はその中でも優秀な者を集めたつもりです。

 現状の戦力では討伐は不可能、もしくは損害が大きくなりすぎると考えたため、撃退とさせていただきました。

 ワイバーンは今現在、街に向かってきている状態です。なので街道で戦うことになると思います。

 何か質問はありますか?」


 おそらくCランクのリーダーであろう人が声を上げた。


「戦力に不安がある。増援は期待できるのか?」

「Cランク以上のハンターが戻ってきた場合、状態に応じて増援に向かわせるつもりではあります。

 それ以外では逆に足を引っ張ってしまうと考えられますので増援は無いと思ってください。」

「そうか…わかった。」


 何?俺たちはギリギリ戦力になるっていう評価なの?

 うれしいんだけど、今回に関してはその評価がうれしくない。

 追い払えばいいって言ってるけど、周りの様子を見る限り絶望的な雰囲気しかない。

 今回ばかりはマズいかもしれないな。


「仕方ない。いいかお前ら!追い払うだけでいいんだ、気合を入れていくぞ!」

「「「「「おう!!!」」」」」


 こうして俺たちはワイバーンとの戦いに参加することになった。

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