47 対オーク
翌朝。ギルドで荷車を借りて目的地に向かう。
討伐数は五匹以上だ、腐らせたくないから長くても二日で終わらせたいところだな。
「荷車を借りれるのは嬉しいけど人力なのがつらいよな。」
「でも皆同じだよ。」
「魔法のバッグがあればなぁー。」
「もっとランクの高いダンジョンに行かないと難しいわよ。そこでも運によるでしょうし。」
「分かってるんだけどさ、持ってる人もいると思うと羨ましいなって。」
「ふふ、そうね。」
せめてチートでそれくらいくれても良かったんじゃないか。
裸で岩の上に放り出したんだから何かあってもよさそうなんだけどな。
心の中で愚痴っても現状は変わらない、厳しいものだ。
「ここがその森か。」
「もう他のハンターが入ってるみたいだけど、いつ魔物が来るか分からないから注意していくわよ。」
「うん。森の奥から魔物が出てきてるって言ってたし注意しようね。」
もうここは森のそばだ。
いつ魔物が出てきてもおかしくない。
俺たちの依頼はもう少し先だ。
このまま何事もないまま進めればいいんだが。
と思った矢先にフォレストウルフが四匹やってきた。
なんだ、フラグでも立てちゃったか。
「キリ、二匹ずついくぞ!」
「うん!」
向かってくるフォレストウルフを一撃で斬り飛ばすと、二匹目は盾で弾き飛ばす。
すぐに起き上がるが、こっちも体勢は万全だ。
こちらから距離を詰めて盾で視界をつぶし首を切り落とす。
キリの方はハンマーで見るも無残なことになっている。
ご飯の時に使えそうな奴は、まぁ俺が倒したやつだけでいいか。
このくらいなら数が極端に多くない限りは大丈夫だな。
俺も落ち着いて対処できるようになってきた。
俺が倒したフォレストウルフを荷車に載せる。
キリは自分が倒したものも載せるか迷っていたようだが結局やめたようだ。
「これで今日の肉も確保出来たな。」
「うん。食事は大事だからね。」
「干し野菜も買ってあるからしっかりと食べるのよ?」
そう言われるとキリは苦い顔をする。
相変わらずだな、野菜が嫌いってわけじゃないんだけど肉を優先したがるんだよな。
ま、好みはそれぞれだ。偏り過ぎないように注意しておこう。
それにしてもこの森は結構薬草が生えてるな。
魔物がちょっと強いから新人のハンターはこっちに来ないのか。
前の俺だったら大喜びで薬草採取をしてそうだな。
もっともこん棒でここら辺まで来るのは自殺行為以外の何物でもないか。
こん棒のみでフォレストウルフに囲まれたら生き残る自信なんてない。
今の装備でも四匹に同時に襲われたらどこか怪我をする可能性はあるし。
「一応聞いておきたいんだけどオークってどんな魔物だ?」
「二メートル以上ある人型の魔物だよ。力が強くて数が多いと結構脅威になるかな。」
「後はゴブリンと一緒で集落を作ることもあるわ。その場合上位種がいる可能性もあって危険よ。」
「魔法とかは使ってこないのか?」
「使ったっていうのは聞いたことないかな。上位種なら使う可能性もあるだろうけど。」
「なるほど、いつぞやのゴブリンの上位種みたいなもんだと思っておけばいいか。」
「それでいいと思うよ。」
想像してたのとそんなに変わりはないみたいだな。
肉は美味しいし、金銭的にも美味しいらしいからなるべく持って帰りたいところだ。
安定して倒せるならオークは非常にいい獲物と聞いたことはある。
ただし、そこそこの群れにあたったらつらいようで、三匹くらいまでが狙い目だって先輩のハンターが話しているのを聞いた。
それにしても二メートル以上か、でかいな。
今更それくらいでビビったりはしないが、それでも一撃いいのもらったらそこで終わりそうだ。十分気を付けないとな。
「んー、ここらへんで大丈夫か。」
「そうね。だいたいこの辺りでいいんじゃないかしら。」
「それじゃあ少し休憩したら森に入ってみるか。」
「うん。シロ、水お願い。」
「シャー。」
俺も水を貰おう。
こうして飲み水に困らないのは本当にありがたいよな。
俺も何か魔法が使えればいいのに。
多少強くなったんだから今なら使えるものもあるかもしれないか?
今度暇があったら試してみてもいいかもしれないな。
「そろそろ行くわよ。」
一息ついてから森に入る。
ここからはより一層気を引き締めないといけない。
初めての場所で初めての魔物と戦うというのもそうだけど、ソアラさんから聞いた話だとちょっとした異変もある感じだ。何が起こるかわからない。
何が起こるかわからないけど相変わらずゴブリンは襲ってくる。
ウォーミングアップ代わりにサクッと倒して周囲の探索に入る。
この森は俺が薬草採取でお世話になった森より木々の間隔がまばらだ、大型の魔物がいるとこうなるのか?
そのせいもあって視界がいい。
知らないうちにオークがそばにいたなんてことにはならないだろう。
そのかわり逃げるのは大変そうだけど。
「お、あれがそうか?」
「そうだね、オークが二匹いるね。」
「最初の相手としては丁度良いんじゃないかしら。」
「そうだな。俺とキリで一匹ずつ、エリィはいざという時に備えておいてくれ。」
「わかったわ。」
このランクでやっていくことができるかどうかの平均的な相手だ。気合を入れてやってみるか。
オークはこっちに気付いていない、ならば先制攻撃のチャンスだ。
距離を一気に詰める。が、途中で気付かれた。
『ブモオオオオオオオ!!!!』
「チッ、まぁいい。丁度いい相手だ、かかってこい!」
オークの巨大な腕が振り回される。
当たったらアウトだな。結構怖いぞ、これは。
ただしスピードはそこまで速くない、打ち終わりに切り付けていけば何とかなると思う。
『ブモオオオオ!』
パンチがとんでくる。
しっかりとかわして胴に切り付ける。
いける。
パンチもしっかりと見れているしかわすことも出来ている。
オークはバーサーカー以上という事は無いからな。後は平常心でどこまで戦えるかだ。
攻撃をかわして切り付けるタイミングを自分の中でより良いものに変えていく。
てこずるわけにはいかない、これくらいは安定して倒せるようにならないと。
ダメージが蓄積してきたんだろう、少しずつ大降りになってきた。
よく狙って大振りの後に首を斬りつける。
しばらく動いていたがやがて静かになった。
今回は驚くほどうまくいったな。
このランクでも何とかやっていけるんじゃないかって気がしてきた。
「ジュンも強くなったね。」
後ろを見るとキリがすでにオークを倒してこっちを見ていたらしい。
キリと戦っていたオークは腕と頭がつぶされていた。
このランクでもキリの力は十分すぎるほど通用するみたいだ。
「そっちも終わったみたいだな。」
「うん。今までよりは強いかなって思ったけど、私たちも強くなってるからね。何とかなったよ。」
「ふふ。二人ともお疲れ様。」
「エリィ、出番がなくてすまなかったな。」
「それだけ安定してたってことよ。いいことだわ。」
「そう言ってもらえると助かるよ。」
荷車にオークを二匹載せる。ノルマは後三匹だ。
出来ればもう少し倒して資金に余裕を持たせたいところだが、それは贅沢ってもんか。
大きな群れに当たらないようにしてしっかりと倒していこう。
「いないな。」
「そうだね、あれから出てくるのはフォレストウルフとかゴブリンばっかりだもんね。」
「先に来たハンターが倒したのかしら。一度森から出て夜営の準備をするのもいいかもしれないわね。」
「そうだな、そうするか。」
森から出ると夕方近くになっていた。
準備をするにはいい時間だ、場所を見繕ってテントを広げる。
「うん?何か声がしない?」
「そうね、戦ってるような感じの声ね。」
「これは、森からか?」
「多分。追われてるのかも、どうする?」
「助太刀がいるなら手を貸すさ。俺たちに何とかできそうなことならな。」
「わかったわ。それじゃあ戦闘準備をするわよ。」
森から出てきたのはハンターのパーティーとオークが七匹だった。




