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44 ランクアップと食べ放題

「これはまた沢山持ってきましたね。」


 受付嬢が半分呆れたように声をかけてきた。

 沼キノコもビックトードも大量だ、そう言われるのも仕方ないかもしれない。


「意外と大量にありましてね。換金お願いします。」

「わかりました。あちらへどうぞ。」


 荷車を引いて買取場に向かう。

 買取場にいたおじさんに荷車ごと渡して、荷車の返却も頼んでおく。


「あぁ、重かった。」

「ビックトードが六匹だもんね、結構大きいし。」

「そうだな。俺の想像よりも随分でかかった。」

「攻撃力が無かったのが幸いではあったわね、あれで強力な爪とか持っていたら危なかったわ。」

「確かにな。結局はただただ腹が立った魔物だったよ。」

「思い出すだけで鳥肌が立つよ。」


 キリは顔面に舌をくらったからな、あれは可哀想だった。

 俺は背中だったからまだマシだ。

 もう戦いたくはないけどな。


「「エスプレッソ」さん。お待たせしました。」

「はい。お願いします。」

「まずこちらが報酬になります。後、お三方ともランクアップになりますのでギルドカードを出してください。」

「お、ランクアップですか。」

「えぇ。主に前回の依頼の功績が認められまして、今回ランクアップという形になりますね。」

「わかりました。お願いします。」


 前回って言うと行方不明事件の奴か。

 依頼として処理してくれたみたいだし、響いたんだろうな。

 三人でギルドカードを渡す。

 低ランクは比較的上がりやすいとはいえ、まぁまぁのスピードでランクアップ出来てるんじゃないだろうか。

 これからも無理のない範囲で上がっていければ十分だな。


「お待たせしました。ジュンさんとキリさんはEランク。エイリィーナさんはFランクですね。パーティーとしてはEランクとして扱われることになります。

このEランクは平均的な実力を備えているとみなされますのでハンターとしては一人前ですね。そのことを自覚してこれからも頑張ってください。」

「わかりました。」


 ついに一人前のハンターと呼ばれる位になったか、とはいえ一流まではまだまだ遠いからな、油断せずに行こう。

 このくらいのランクが一番人がいるらしいから依頼も多くなってくるだろうし、今までやらなかったものにも挑戦してみるのもいいかもしれないな。


「私はまだFランクだけどパーティーとしては一人前になれたわね。」

「そうだな。エリィもEランクのうちにランクを合わせられるだろうし気にしなくてもいいんじゃないか?」

「うん。大丈夫だよ。」

「そうね。今はランクアップを喜びましょう。」

「だな。乾杯は無理にしても何か食べに行くか。」

「それならちょっと気になってるお店があるんだけどいいかな?」

「いいんじゃないかしら。そこにいってお祝いしましょう。」

「ちなみにどんなお店だ?」

「ピザのお店だよ。何度か話してるのを聞いて、行ってみたいって思ってたんだ。」


 ちなみにこの世界にピザは普通にある。

 まだ食べたことは無いがある程度人気のある料理とのことだ。

 そこらへんは地球と変わらないようだな。

 ただ材料が大きく違うだろうから、どんなピザがあるか楽しみだ。


「なんで話題になってたんだ?」

「定額で食べ放題らしいからだよ。」

「ふふ、それは嬉しいお店ね。」

「うん。だから一回行ってみたいなって思ってたんだ。」


 ピザ食べ放題か、キリなら間違いなく元を取る気がするけど、俺とエリィはそこまで食べないからな。ごく一般的なくらいだ。

 まぁ食べ放題なんてのは楽しんで食べることができればいい。

 元を取るなんてのはそこまで考える必要のないことだ。

 そういいながら腹がパンパンになるまで食べたりするんだけどね。

 あれは不思議なものだ、なぜかもう一枚、もう一枚と食べ続けてしまう。

 きっと俺は根っからの貧乏性なんだろう。


「わかった。それじゃあ行ってみようか。」

「やった。」


 向かったお店は既に混雑していた。

 座る場所があるかわからないが取り合えず店員さんに声をかける。


「すみません。」

「あ、はい。いらっしゃいませ。何名様ですか?」

「三人と一匹なんですが大丈夫ですか?」

「はい。こちらへどうぞ。」


 どうやらこのお店のメニューは定額一つだけのようだ。

 前払いのようなので先にお金を渡す。

 システムとしては焼き立てを店員さんが持って、各席を歩いて回るタイプのようだ。

 何を焼くかは店次第だから自分の好みに合ったものが来るかは運に左右される。

 ちなみに日本でよくあるドリンクバーなんてものは無い。水だけだ。


「んー、お腹いっぱい食べることができるなんていいお店だなぁ。」

「食べ過ぎて腹を壊さないようにな。」

「ふふ、そうなるところは想像できないわね。」

「でも今回はお腹いっぱい食べるつもりだからね!」

「ああ。金額が変わるわけでもないし食べられるだけ食べればいいぞ。」

「お待たせしました。今回はオークとトマトのピザですがいかがですか?」


 早速店員がピザを持ってきた。

 今回はいたって普通のピザって感じだな。

 取り合えず三人とももらう。

 キリは三枚頼んでいたが、一回につき一人一枚までらしく残念にしていた。

 食べてみる。

 うん。オーク肉が味が濃くジューシーだがトマトがその濃さをさっぱりとしたものにしている。王道はやはり強い。そしてチーズもそれに負けてない。

 ぺろりと食べられるな。オーク肉は一つシロにもあげておこう。


「なかなか美味しいじゃないか。」

「だね、食べ放題って言ってたからどんなものが出るのかなって思ってたけど、思ったよりもずっと美味しいね。」


 その後も次から次へと店員さんがピザを持ってくる。

 鶏肉のピザや野菜だけのピザ、デザートのピザなんかもあって美味しく食べた。

 ただ俺は虫のピザだけはダメだったな。育った環境なんだろう、どうしても体が受け付けない。

 ビックトードのピザは挑戦した。意外と癖が無くて、食べやすかった。

 ここのピザで驚いたのはソースの豊富さだった。

 俺の中ではピザといえば基本はトマトソースっていうイメージがあったんだが、そんなことは関係ないとばかりに色々なソースが塗られていた。

 個人的に気に入ったのは少し酸味のある緑色のソースだ。

 多分、何かのハーブが使われているんじゃないかと思うんだけど、そのソースが具材をとてもさっぱりとまとめてくれていた。

 あのソース単品で欲しいくらいだ。

 それにしてもキリは凄い食べる。

 今まで店員さんが来て断ったことがないのにまだまだ平気そうだ。

 俺は頼んだり断ったりしながらゆっくりと食べることになってきているし、エリィに至ってはさっきから全然頼んでいない。


「もう結構食べたんじゃないか?苦しくなる前にやめておけよ。」

「ううん。まだまだ大丈夫だよ。さっぱりしたものも来るからそこまで一気にお腹にたまるわけじゃないし。」

「そうか、無理してないならいいさ。俺はほどほどに食べてるよ。」

「うん。」


 エリィは苦笑いだ。

 ちなみにこのピザ一切れが結構でかい。

 日本でよくある食べ放題の小さい一切れじゃなく、デリバリーで頼んだ時の一切れくらいの大きさがある。

 俺は自分で食べたり、シロに食べさせたりしながらキリを眺めることになった。

 シロもかなり食べてるな、小さくて可愛い白蛇がいまではツチノコに進化をし始めている。食べるだけ与えてるけどこれ以上与えない方がいいんだろうか。

 持ち上げてみる。

 ズシッとくるな、あの軽いシロがこんなになったのは初めてだ。


「シロ、もうそろそろやめておいた方がいいんじゃないか?」

「シャー。」


 フルフル。

 まだ食べられるらしい。どうなってるんだこの一人と一匹は。

 その後も勢いそのままに食べる食べる。

 キリを見る店員さんの表情も、心なしか苦笑いになってきている気がする。

 どれくらい経っただろう。食べ続けているのはキリだけになってしばらくしていたころ、ようやくキリがそこそこ満足したらしい。


「うん、美味しかった。そろそろやめておくね。」

「満足したか?」

「そうだね、まだ入るけどちょうどいいくらいでやめておくよ。」


 まだ入るらしい。

 その小さい体の中にどうやって入ってるんだ?

 俺なんて明らかに食べ過ぎだ。体が重い。


「よし。それじゃあ行こうか、次のお客さんも待ってることだしな。」

「そうね。行きましょうか。」

「うん。」


 こうして食べ放題は終わった。

 ちなみにシロは食べ過ぎてとぐろを巻けなくなっていたので手で持って運んだ。

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