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37 話し合いと捜査

 フロランス邸に来た。

 門番に引き留められたので、ハンターであるエスプレッソが大切な話があると伝えてほしいと頼んだ。

 しばらくすると執事であるタガンさんがやってきた。

 相変わらず隙のなさそうな人だ。


「ようこそいらっしゃいました。何やら大切な話があるとのことですが、いかがされました?」

「例の事件のことで、一つ直接お耳に入れたいことができまして。」

「さようでございますか。少々お待ちくださいませ。」


 いきなり会えるわけはないか。

 もし会えなかったら出直そう。

 でも獣人の少年のことはどうすればいいんだろう。

 ほどなくしてタガンさんが戻ってきた。


「ロランド様がお会いになるそうです。こちらへどうぞ。」


 前と同じようについていく。


 ―コンコン


「エスプレッソの皆さんをお連れしました。」

「入ってもらってくれ。」

「失礼します。」


 二度目だからか昨日よりは緊張してないな、してないか?


「お忙しいところ、お時間を取っていただいてありがとうございます。」

「うむ、昨日の今日だというのになにかあったのかね?」

「はい。あの後我々も微力ながら協力できることは無いかと思いまして知恵を絞りました。そして街からさらったものはまだ街にいて、盗賊にさらわれたものも、この街に集められているのではないかというように考えた次第です。」

「ふむ、この街から出て行ってはいないと考えたわけか。」

「はい。奴隷として売るならば街中でさらうのは非効率的ですし、衛兵の目もあります。ならば盗賊が襲ったほうがリスクとしては低いのではないでしょうか。」

「確かにその通りではあるな。」

「なので逆に集められてると考えて門で見張ってみました。我々には人を隠し持つなどわかりませんが、このシロがそれを暴いてくれました。そして助け出すことができたのが獣人の少年である彼です。」

「ほう。」

「彼は馬車に乗っている時に盗賊に襲われたと言っています。ある意味ではニューシルンに外でさらわれた人が集められている証明になるのではないかと考え連れてきました。」

「なるほど。たしかにそう考えることができるな。ちなみにどこに連れていかれたのだ?」

「街の商店です。」

「商店か。なるほど言いたいことはわかった、そしてそれを証明もして見せた。見事である。」

「恐れ入ります。」

「これからその商店に立ち入り調査をしなければならないな。ようやく見せたしっぽだ、必ず仕留めて見せよう。」

「はい。あ、あとこのペンダントなんですがそこの商店の店長が身に着けていたものなんですが、どうにも気になって持ってきてしまいました。御存じではありませんか?」

「む?それは!」


 ロランド様の顔色が変わった、このペンダントは何かのシンボルなのかもしれない。


「そのペンダントは教団「黒のアギト」という集団のシンボルだ。」

「教団ですか。」

「うむ、伝説の暗黒竜を蘇らせようとしている集団らしい。これまでも様々な事件を起こしている。今回の事件の黒幕も黒のアギトなのかもしれぬ。こうなると厄介なことになるかもしれん。」

「厄介とは?」

「連中は狂信者の集まりだ。何をしでかすかわからん。当然負けることは無いだろうが、どのようなことを企んでおるのか・・・」

「何をするのかわからないということですか。」

「その通りだ・・・そなたたちに頼みがある。」

「何でしょうか。」

「そなたたちは今回の事件について詳しく知っている、だから頼みやすい。戦力として力になってもらえないだろうか。」

「我々がですか?」

「そうだ、無論騎士も出る。だが高ランクのハンターは別件でおらん。信頼できる中堅のハンターにも頼むと思うが個人的にそなたたちにも頼みたいのだ。」


 そういわれると断れない。

 元々断るなんて選択肢は存在しないだろうけど。

 これも一種の大規模依頼になるんだろうか?

 この事件も見届けたいし受けておくか。


「わかりました。微力ながら力になれればと思います。」

「感謝する。今すぐには動けないがなるべく迅速に動くことになると思う、そのつもりで準備しておいてくれ。」

「はい。」

「そこの獣人の少年はこちらで保護しよう。話も聞かせてもらいたいしな。」

「よろしくお願いします。」

「それにしてもそなたたちが私の依頼を受けてくれたことは、ありがたいことであったな。こうして事件解決のために大きく力になってもらえるとは。正直助かっているよ。」

「私たちはするべきことをしただけです。」

「ふふ、そういうことにしておこうか。それでは近いうちに呼ぶと思う、よろしく頼む。」

「はい。」


 フロランス邸をあとにする。

 一気に進展したな、ちょっと無茶をしすぎた感じもあるけど結果良ければすべてよしだ。

 これで外れてたらシャレにならないけど、実際に運ばれている少年も保護できたし、間違いはないだろう。


「後は黒幕を捕まえるだけね。」

「そうだな、後は例の教団が何をしてくるかだな。」

「聞いたことがないからよくわからないけど、武装した集団もいる可能性があるもんね。」

「そうなれば戦えばいいわよ。もっとも、騎士や他のハンターもいるから、私たちに出番が回ってくるかわからないけどね。」

「出番がないならそれでもかまわないな、俺としては解決するのを見届けることができれば文句はない。」

「そうだね。でもここまで来たら相手の親玉の顔くらいは見てみたいかも。」


 親玉ね。暗黒竜を蘇らせようとしているってのもすごいよな。

 蘇らせて何をしようってんだか、まぁそういうのは偉い人が何とかするだろう。

 俺はせいぜい怪しい教団には近づかないように気を付けるくらいだ。


 宿に戻ってくつろいでいるとタガンさんが来て、集合する時間と場所を教えてくれた。

 明朝、門の前に集まってから商店に突入。一気に終わらせるらしい。

 随分と急いで手配をしたようだ。うまく信頼できるハンターもいたらしい。

 たしかに逃げ隠れされたら面倒だもんな、素早く動く必要があるか。

 俺たちの出番があるとも思えないが、早めに休んで備えておこう。


 明朝。

 門の前に集まっているのは前に見た騎士らしき人と兵士が五人、ハンターが一パーティーだ。商店に行くというだけなのに随分と物々しい。

 お互い挨拶を済ませる。騎士らしき人は本当に騎士だった。

 当然指揮は騎士がとる。

 早速動き出すらしい、俺たちは邪魔にならないように最後尾だ。


「商店に行くだけでこの編成ってことは相当警戒してるわね。」

「そうだね。普通はハンターを雇ったりしないと思うし。」

「例の教団が何かしてくる可能性が高いんでしょうね。」

「うん。昨日私たちに、さらった人を奪還されているから、警戒もしてるだろうしね。」

「確かにな、下手をするともう逃げていてもおかしくないわけだ。」

「そうだね。放棄できない理由があるならともかく、ないなら逃げてるかもね。」


 商店に着いた。

 店主はまだいるようだ。逃げてなかったのか。

 騎士が話しかける。


「そなたが店主だな?」

「は、はい。何事でございましょうか。」

「我々はある事件を追っていて、そなたがその一味に加担している疑惑がある。大人しく捜査を受けられるがよい。」

「そ、そんな!私は何もやましいことなどしておりません!」

「それはこれからわかる。物を壊したりなどしないから安心しろ。ただちに調べ上げろ!」


 店主の顔色は悪い。おそらく逃げるに逃げれなかったのだろう。

 探せば何か出てきそうだ。

 許可を取って俺たちも邪魔にならないように不審なものがないか探し始める。

 それにしても匂いがきついな、何の匂いだ?

 しばらく探したが品物があるところには何も見つからなかった。

 それなら奥の部屋だ、獣人の少年も奥の部屋に連れていかれていたし、何かあるとしたら人目につかないところだろう。

 奥の部屋に行く、ここでは在庫を管理したり書類を書いたりするところなんだろう。

 俺が見つけたいのは人をさらってからどうしたのか、その手がかりだ。

 見つからずに人を移動させる手段など限られている。

 馬車もその一つだ。

 しかし、俺たちが見張っていた馬車はここで少年を下した。

 ということはここが目的地のはずだ、ここからさらに馬車に乗せるくらいなら、最初からその場所にいけばいい。

 だからここには何かあるはずだ。


「特に怪しいものはないわね。」

「こっちにもないよ。」


 何もないはずはないんだが・・・ん?

 歩き回っていると不意に違和感があった。

 ―コツコツトントンコツコツコツコツ

 あぁ、あれだ、テンプレだ。

 床の音が違ったのは・・・ここか。よく見ると何かを引っ掛ける穴のようなものもあいている。

 間違いない、隠し階段だ。

 とりあえず勝手に開けるのもよくないと思うから騎士のところに知らせに行った。

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