35 貴族との話
門に近づくと衛兵が駆け寄ってくる。
「そいつらはどうした。」
「盗賊です。捕まえて来ました。」
「ふむ、わかった。こちらで預かろう。」
「いえ、ロランド・フロランス様からの依頼でして、そのように取り計らっていただきたいのですが。」
「ロランド様の・・・わかった。少し待て。」
そういうと衛兵は走ってこの場を去っていった。
「話は通じてるみたいだな。」
「そうじゃないと困るわね。」
「早く渡して街に入りたいね。」
ほどなくして騎士っぽい人がきた、お連れの人も結構いるな。
鎧の上からでもわかる体つきでいかにも強そうだ。
「貴方たちが依頼を受けたハンターで間違いないか。」
「えぇ、盗賊を捕まえるという依頼を受けました。」
「うむ。よく六人も捕まえてきてくれた、礼を言う。今回の報酬にプラスして盗賊どもを奴隷として売った時の金の一部を受け取る権利がある。おって連絡しよう。」
「ありがとうございます。」
「あとは後程、後日かもしれないのだが話を聞くことになるかもしれん。泊まっている宿を教えてもらえるか?」
「わかりました。」
泊っている宿の名前を教えたら騎士っぽい人は去っていった。
話を聞くとのことだったが何を聞くんだろう、特に話すことなんてないと思うんだけど。
まぁその時が来てから考えよう。
「強そうだったな。」
「そうだね、でもジュンもあれくらいは強くなれるよ。」
「いや、どうだろう。」
「あら、自信がないの?」
「あの体つきを見るとなぁ、俺じゃちょっと無理な気がする。」
「体つきが同じようにはならないだろうけどね、順調に強くなってるんだから大丈夫だよ。」
「そうだといいけどさ。」
強くはなりたいけど、ムキムキマッチョマンにはなりたくないなぁ。
いろいろな強さがある、できればスマートな強さが欲しいものだ。
「とりあえず報告に行こうよ。」
「そうね、そのあと何か食べたいわ。」
「そうだな、俺も腹が減った。」
ギルドに報告に行く。
ギルドにとっても面倒な依頼だったようで片付いてほっとしているようだ。
やっぱり貴族からの依頼は少し面倒な部類に入るんだろう。
報酬を受け取ってギルドを出る。
飯はキリにお任せだ、キリの嗅覚なら外れは引かないだろう。
今回は丼ものだった。
その店の名物らしくオーク丼を食べた。タレがパンチが効いていてどちらかというと男が好む味になっていたと思う。肉自体は柔らかく美味しかった。
俺と普通盛り、キリは特大を食べていた。エリィは普通盛りでも少しきつそうだったかな。その分シロが食べてたけど。
食べ終わってから防具屋に来た。
理由は俺の盾のしっくりくるものがないかを探すためだ。
正直、皮の盾のままはこの先つらくなるのは目に見えている。というかもうつらい。
でもいいものがないんだよな。
ここでもしっくりくるものが見つからない。
いっそ両手剣にするかとも考えたけど、俺の力では振り回されるのがオチだ。
また素材を持って行って、合うように作ってもらうのがいいんだろうか。
盾の問題は先送りだな。
「どうするの?」
「うーん、あの騎士っぽい人が後で聞きたいことがあるかもしれない、みたいなことを言ってたから宿で待ってるってのもアリかなとは思うんだけどな。」
「そうね。そのほうが面倒ごとにはならないと思うわ。」
「だよね。いなかったら、なんでいなかった?とか言われたくないもん。そんな人には見えなかったけどね。」
「まぁな。ただ、来る人がそういう人かもしれないから戻っておくか。」
「そうだね。」
「わかったわ。」
宿に戻って受付の人に聞いたところまだ来客は無いようだった。
とりあえずは間に合ったようだ。
しばらく話していると来客があった。
初老の男性で、ビシッとしていていかにもどこかの執事ですって感じだ。
「はじめまして。私はフロランス家で執事をしております、タガンと申します。エスプレッソの皆さまですね?」
本当に執事だった。
おまけに依頼人だったフロランス家のものらしい。
「はじめまして。エスプレッソのリーダーをしているジュンです。」
「キリです。」
「エリィよ。」
「お疲れのところ申し訳ありませんが、ロランド様がお話を伺いたいと申しております。御足労願えませんでしょうか。」
これは事実上の命令だよな、相手貴族だよ、逆らうなんて無理だもん。
「わかりました、伺います。」
「ありがとうございます。今からでも大丈夫でしょうか?」
「はい、問題ありません。」
「かしこまりました。それではご案内させていただきます。」
「よろしくお願いします。」
貴族がわざわざ聞きたいことってのはなんだろうか。
依頼で特にへまはやらかしてないはずだし。
あー、いかん。こういうのは悪い方向に考えちゃうな。
堂々としていよう、怪しまれることなんてないもんな。
執事さんがいる中で気楽な話ができるわけもなく、ほぼ無言でフロランス家の館にたどり着いた。
でかい屋敷だ、その中をタガンさんの後をついていく。
目的の場所についたらしい、ドアをノックする。
「ロランド様、エスプレッソの皆様をお連れいたしました。」
「わかった。入ってもらってくれ。」
ドアの先にはまだ三十歳にもなっていないだろう人がいた。
体つきは引き締まっていて、すぐにでも戦えそうだ。
冒険者をやっていたというのも頷ける。
「急に呼び立ててしまってすまない。少々聞きたいことがあってね。座ってくれたまえ。タガン、飲み物を。」
「かしこまりました。」
すすめられたとおりに座る。
やばい、緊張してきた。
手汗がすごい、脇汗もすごいことになってそうだ。
「そう緊張しないでいい。といっても不可能かもしれないが。」
というとロランド様は苦笑いをした。
わざわざ気を使ってくれるくらいだ、貴族の割に話しやすい人なのかな?
なんにせよ失礼なことは言わないように気を付けよう。
「申し訳ありません。こういう場には慣れていなくて。」
「そうか。たしかにそうあることではないかもしれないな。」
「はい、話し方もおかしいかもしれませんがお許しいただけると幸いです。」
「あぁ、普通にしてくれて構わない。そこまで気にしないでくれ。」
「ありがとうございます。それで聞きたいことがあるとのことでしたが。」
「あぁ。君たちが盗賊を捕獲したときに何か変わったことは無かったかと思ってね。」
「変わったこと、ですか?」
「そうだ。なんでもいい、些細なことでもいいんだ。何かないか?」
変わったこと?なんでそんなことを聞きたがる?
いや、それはどうでもいいか、変わったことがあったかどうか。
あの時は街道に出る盗賊を狙っていたからな、それで明るいうちは森に入ろうってことになったんだ。
それで盗賊を先に見つけて先制攻撃を、いや、そうだった魔物がいないのがおかしいっていう話もしていたな。
これを言うか?一応言っとくか、些細なことでもいいって言ってたしな。
「変わったことといっていいのかわかりませんが、盗賊を捕獲しに森へ入ったときに魔物が一匹もいませんでした。」
「魔物が?」
「はい。ゴブリンすらいないのは異常だったといってもいいかもしれません。」
「ふむ・・・」
「・・・もう一つ気になることがあるわ。」
「なんだね?」
おいぃー、敬語!
心臓に悪いから、少しでいいから敬語を使って!
「私たちは馬車できたの。そしてその時にも十五人くらいの盗賊の襲撃を受けたわ。今回捕獲した場所とほとんど同じ位置でね。」
「それで?」
「その時ほとんど倒したのよ、数人逃げられたけれど。でも依頼を受けて数日後に行くと人数がまた同じくらいになっていた。元々三十人だったのかもしれないけれど、それなら一度目に出てくるのはもっと多かったはずよ。」
「つまり数日の間に補充されていたと?」
「そうも考えられるということよ。」
「なるほど、確かに異常ではあるな。」
なるほど。気にしてなかったけど確かにおかしい。
同じ場所を選んだのは残党狩りのつもりだったんだ、それなのにあれだけの人数がいた。
ロランド様も何か考え込んでいるようだ。
「その、聞いてもいいでしょうか?」
「なんだね?」
「なぜそのようなことをお聞きになるんですか?」
もちろん関係のないことだと言われれば引き下がる。
これはあくまで好奇心からだ。
「うむ・・・そうだな、いいだろう。君たちはここ最近起きている謎の行方不明者が出ている事件のことを知っているか?」
おっと?何やら面倒ごとに首を突っ込んだか?




