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33 ニューシルン到着と異変

 馬車を走らせて二日目。

 さすがにみんな黙っているのも限界で、客同士いろいろ話し始めていた。

 これから嫁ぎに行く人がいてみんなでささやかにお祝いしたり。

 元ハンターのおばあさんからエリィが魔法の制御について教わっていたりと話が弾んでいた。

 俺はニューシルンに住んでいる人がいたからその人から美味しいものは何かを聞き出していた。

 どうやら最近は麺類の食べ物が流行っているらしい。

 それならラーメンやソバ、うどんやパスタが食べられるかもしれない。

 そう思うと楽しみだ。

 そんな話をしていると護衛のハンターが叫びだした。


「盗賊だ!外に出てくるなよ!」


 馬車の中から様子を窺う。

 どうやら盗賊は数が多いらしい降伏勧告をしている、こちらの護衛は四人だった。分が悪そうだ。

 俺たちは顔を見合わせると頷いて馬車から躍り出た。


「ハンターです!手伝います!」

「助かる!敵は十五人くらいいる、気をつけろ!」

「わかりました!」


 囲まれているな、前のほうは護衛の四人に任せていいだろう。

 俺たちは後ろのほうにいる奴らをやるか。

 敵はそこまで装備はよくなさそうだ、バーサーカーに比べればなんてことないだろう。


「キリ、いくぞ!」

「うん!」


 まずは手入れもされていないであろう剣を持っている男を切り飛ばす。

 ここで敵も一気に動き出した。

 数的優位があるんだから囲んで殺せばいいと思ってるんだろう。

 だが俺に集中して向かってくるなら俺は逃げる、もといひきつけたまま距離を取る。

 その間にキリが二人、三人と行動不能にしている。

 キリが合流した、こうなれば敵も分散しなくてはならない、俺だって多少の数を相手にすることはできるからな。

 盾で受けて胴を突き刺す。さらに切りかかってきた奴の剣を弾き飛ばした。


「逃げろ!退却だ!」


 明らかに自分たちの手に負える相手ではないとわかったんだろう。わずかな生き残りは逃げて行った。

 初めて人を斬った割には何とも感じないな、今まで人型のものをあれだけ倒してるんだから今更といったところなのかもしれない。


「すまない、助かった。」

「いえ、こちらもたまたま乗っていただけですので。」

「ここらへんで襲われるとはお互い運がなかったようだ。」

「そうなんですか?」

「あぁ、比較的安全な道だからな。もちろん何があるかわからないから、こうしてハンターを護衛に雇っているんだろうが。」

「なるほど、でも何事もなくてよかったですね。」

「まったくだ。」


 相手のリーダーは苦笑いをする。

 本当なら自分たちだけで何とかしたかったところだったんだろうな。

 でも数が多ければ仕方ない、守るにも人手が取られるから厳しい戦いになってたかもしれないし。

 その日の晩飯はお礼に肉を多めに分けてくれた。


 その後は特に何もなく順調な旅だ。

 盗賊を追い払ってからさらによく話すようになっている。

 捕まってたら良くて奴隷として売られることになっただろうから、安心したんだろう。

 元ハンターのおばあさんも自分が現役だったらあっという間に追い払ってやったのにと鼻息も荒く言っている。

 このおばあさん、今でも十分強そうなんだけどね。

 魔法を使わないでも、杖だけで敵をバッタバッタと倒しそうだ。


「見えてきましたよ、ニューシルンです。」


 御者が声を上げる。

 ニューシルン、スタッカルドに比べれば少しだけ小さい街かな?

 それでも主要な街の一つではあるのだろう、門の前に順番待ちの列ができている。

 それぞれ身分証を見せて街に入る。

 馬車のみんなとはここでお別れだ。

 ちなみに盗賊を退治したことで運賃を無料にしてくれた。やったぜ。


「さてまずは宿をとるか。」

「そうだね、ギルドに行ってお勧めでも聞いてみる?」

「そうするか。」


 早速ニューシルンのギルドに向かう。

 それにしても出歩いている人が少ない気がするな、そんなもんなのかな?

 ギルドは、うん、建物はそんなに変わらないな、雰囲気も一緒。

 入ってみる。ちらっとこっちを見る人がいるがすぐに興味をなくす。

 別に俺らは不思議なパーティーじゃないからね。

 依頼はどんな感じかな?


「そこまで大きくは変わらないわね。」

「そうだね。」

「もうちょっと見たことがないものもあるかと思ったんだけどな。」

「あら?行方不明者の捜索がやけに多くない?」

「そういえばそうだね。スタッカルドではこんなになかったのに。」

「あんたらよそものかい?」


 近くにいたハンターが話してきた。

 情報はいくつあってもいい、聞くだけ聞いてみよう。


「あぁ、ニューシルンは初めてなんだ。何か起こってるのか?」

「ここ最近のことだが、夜に人が行方不明になる事件が多発してるのさ。それで被害者の家族が捜索依頼を出してるってわけだ。」

「それは衛兵のやることじゃないのか?」

「そうなんだが一切見つかってないらしい。ハンターにまで依頼が出回って来るくらいになってる。」

「なるほどね、見つかった人は一人もいないの?」

「一人もいないらしい。」

「きな臭い話ね。」

「まったくだ、だから最近じゃ夜はほとんどで歩く人なんかいやしねぇ。あんたらも気を付けるんだな。」

「あぁ、いい情報をありがとう。これは礼変わりだ。」


 一杯飲めるお金を握らせる。


「へへ、悪いな。」


 それにしても人が行方不明になっているってのは気味が悪いな。

 タイミングの悪いときに来たのかもしれない。

 でも聞いた話だと夜が危ないらしいから、昼は大丈夫なのか?

 ならば昼楽しむか。


「道理で街に人が少ないと思ったわ。こんな事件があるんじゃ出にくいでしょうからね。」

「そうだね、どうしようか。」

「とりあえず宿を確保しよう。夜は出歩かないでおくとして、昼は構わないだろうし。」

「そうね、すぐにスタッカルドに戻るのも悔しいわ。せめていくつか依頼を受けてから戻りましょう。」

「うん。」


 宿はギルドお勧めのところをとった。

 こういうときにもギルドは便利だ、変な宿屋は紹介しない。


「とりあえずニューシルンは麺料理が流行ってるらしいんだ。食べに行かないか?」

「いいわね。どんなものがあるか楽しみだわ。」

「私もいいよ、おなかもすいたし早く行こう。」


 そういえば今日はまだ大したものを食べてなかったな。

 意識するとさらに腹が減ってくる、不思議だ。


「適当に入るか?」

「いい匂いのところに入りたい、せっかく食べるんだから美味しいところがいいよ。」

「そうね、誰かに聞いてみるのもいいかもしれないけど。」

「私の鼻を頼ってもいいよ?」

「じゃあキリに任せようか。」

「ええ、お願いね。」

「任せて!」


 キリが気合の入った顔をしている。

 俺は特に鼻がいいわけではないからな、こういうのはお任せだ。


「うん、ここがいい気がする。」

「よし、入ってみよう。」


 俺も腹が減ってるから早く食べたいんだ。

 あんまり長く引っ張られなくて助かった。


「すみませーん。」

「いらっしゃい。」

「三人と一匹で。」

「はい、こちらへ。」


 いいにおいがするな、混ざり合ってて何の匂いかわからないけど。

 他の席を見る限り太めのパスタといったところか。

 メニューをみてもよくわからない、写真が付いてないから想像できないんだよな。

 俺はとりあえず人気のあるものを、キリは肉が多めのものを、エリィは少しスパイシーなものを頼んだ。


「麺の食べ物を食べるのは初めてか?」

「うん、私は初めてだよ。」

「私は前に食べたことあるわ。その時のは美味しかったわよ。」

「ジュンは?」

「俺も食べたことはある。多分今回のも似たようなものは知ってるんじゃないかとは思ってる。」


 まったく知らないものが出てきたらそれはそれで面白いから構わないんだけどな。

 俺としては美味しければ何でもいい。

 おっと、できたようだ。

 全員に配られる。

 俺のは緑の不思議なソースがかかったパスタだな。キリのはなんていうかパスタに肉を入れたんじゃなくて肉にパスタを入れた感じだ。エリィはスープパスタっていうのか?よくわからない。

 食べてみる、うん、うまい。

 ハーブを使っているのかさっぱりした後味だ。鼻に抜ける風味も悪くない。

 癖がないから食べやすい、女性にも人気がありそうだ。

 麺はモチモチとした触感だ、日本のものとは違うがこれはこれでありだな。

 キリもエリィも美味しそうに食べている。

 キリは時々シロに肉をあげているな。

 俺のも食うか?いらないか。


 値段もそこまで高くない、いいお店だった。

 キリの鼻はさすがだな。

 これでおなかは満たされた、満足に動けそうだ。

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