32 ニューシルンへ向けて
ギルドで依頼を受けるのにも慣れた。
ずいぶんと依頼をこなしてきたし、最近はそこそこ安定して戦えている。
だからこそ俺は新境地を開拓したい!
「と、いうことで相談があるんだ。」
「うん。なにがと、いうことなのかわからないけど何かな?」
「相談ね、なにかしら。」
「俺たちはスタッカルドでだいぶ依頼を受けてきたと思う。だがスタッカルド以外では依頼を受けたことがないと思ったんだ。」
「チームとしてはそうね、私は他のところでも一応は受けたことはあるわ。」
「私も受けたことあるよ。」
二人は他の街でも依頼を受けたことがあるのか。
「まぁ、二人はそうなのかもしれない。でも俺はないんだよ。そこでほかの街にも行ってみたいなと思ったわけだ。うまいものがあるかもしれないしな。」
「確かにいろいろなところを見てみるのはいい経験になるわ。」
「前はそんなに食べ物も見てなかったから、見てみるのもよさそうだしね。」
「だろう?もちろんスタッカルドが嫌になったわけじゃないぞ?いろいろな経験を積むためにいこうってわけだ。そこで二人はいいところを知らないか?」
「うーん、ここからだと近いのは王都かニューシルンかな?」
「そうね、どちらも馬車が出てるから行きやすいわ。」
馬車があるのはいいな、移動時間が短くなるし体力を温存しておける。
不満なのはお尻が痛くなることだ。
仕方ないことなんだろうが、何とかしてほしい。
「王都か、王都は何でもそろってそうではあるな。」
「そんなことは無いわよ。ただ私たち低ランクハンターにとっては少し厳しいかもしれないわ。」
「そうなのか?」
「えぇ、治安維持のためにも王都付近の魔物はすぐに狩られるの。だから依頼の多くは、結構遠出になるわりに収入がそこまでよくないの。」
仮にも王都だもんな、付近に魔物がいっぱいいたら問題か。
わざわざ収入がよくない場所に行くこともない。
そういうのは余裕ができてからで十分だ。
「それじゃあ王都はもう少しハンターランクが上がってからのほうがいいか。」
「そのほうがいいわ。」
「それじゃあニューシルンに行ってみるか、どんな場所かは知ってるか?」
「いいえ、知らないわ。」
「私もよくわからないかな。」
二人も知らないのか、それなら楽しめそうだ。
せっかく行くなら全員で楽しめるほうが絶対にいいからな。
「よし、準備ができ次第ニューシルンに行ってみよう。」
「うん。」
「わかったわ。」
俺はどうするか、準備って言っても特にないんだよな。
たまには剣と鎧でも点検してもらいに行ってくるか。
鍛冶屋までの道のりもずいぶん慣れたものだ。
はじめて鍛冶屋に行ったときは扉を開けるのが怖かったものだ。
鍛冶屋のイメージっていったら頑固なドワーフのおっさんっていうイメージがあったからな。
事実そのイメージは間違ってなかったわけなんだが。
「おやっさーん、いるかー?」
「おう、どうした。」
「またしばらくスタッカルドを離れると思うから、武器の点検でもしてもらおうと思ってさ。」
「ほう、今度はどこに行くんだ。」
「ニューシルンってとこ、どんな依頼があるのかとかいろんな経験をしに行ってくる。」
「なるほどな。どれ、武器を見せてみろ。」
タイトビートルの剣とボーグさんからもらったナイフを渡す。
両方大切な相棒だ、手入れはかかしてない。
「ふむ、手入れはしっかりやっているようだな。少し待っとれ、軽く調整をしてきてやる。」
さすがはプロだ、頼もしい。
俺にできるのは所詮日々の手入れだからな。しっかりと調整してもらえるに越したことは無い。
お、これはいつだったか持ってきたバーサーカーの剣だ。
しっかりと磨き上げられて立派な武器になっている。
俺がこれを使うとしたら両手で持たないと無理だな、それでも使いこなせる気がしないけど。
「待たせたな。手入れは今までのままでいい、サボらずにやれよ。」
「わかった、ありがとう。」
「うん?そういえばそいつはお前さんが持ってきたんだったな。」
「あぁ、まだ売れてなかったんだな。」
「品はいいんだが使いこなせる奴は一握りだ。使いこなせん奴に売る気はない。」
「でもそれじゃいつまでたっても売れないんじゃないのか?」
「さぁな、こういったものは縁だ。必要としているものが現れると思っている。」
「なるほどね。」
使いこなせないやつが買っても、自分の身が危なくなるだけだし正しいんだろうな。
俺だったらすぐに売ってしまいそうだ。
「おやっさんありがとう。また来るよ。」
「あぁ、いってこい。」
次はミミールさんの防具屋だな。
「失礼します。」
「おや、よく来たね。なんかあったかい。」
「これからしばらくスタッカルドを離れるんで防具の調整をお願いしようと思いまして。」
「なるほどね、軽く見た感じ痛んではいないようだが。どれ、貸してみな。」
「はい。」
普通の皮の鎧よりこの作ってもらったタイトビートルの鎧のほうが動きやすいんだよな。
防御力もあるだろうし。
グリーンマンティスとの戦闘ではお世話になった、あいつら攻撃が早いから慣れるまで防御が間に合わなかったりしたんだよな。
この鎧がなかったら大怪我してたかもしれない。
「気になるほどじゃなかったけど軽く手入れをしておいたよ。」
「ありがとうございます。」
「またいい素材があったら持ってきな、命を守る防具だ。いいものであるに越したことは無いよ。」
「そうですね、その時は持ってきます。」
「あぁ、待ってるからね。」
これで武器と防具は問題ないな。
いや、盾を買い替えたいってのはあるんだけど、なかなかこれっていうのがないから使い慣れてる皮の盾を使ってるんだよな。
なんだかんだで俺の装備に一番お金使ってるしな。盾くらい宝箱から出ればよかったのに。
まぁ使いやすい盾があったら買い替えも検討しよう。
後はハンターギルドにでも顔を出しておくか、しばらくスタッカルドを離れるって言っておけば死亡説なんて流れないだろうし。
「こんにちは、ソアラさん。」
「こんにちは。今日はどうされましたか?」
「しばらくスタッカルドを離れるので一応ご報告にと思いまして。」
「そうなんですか。どこにいかれるんです?」
「ニューシルンへ行ってきます。」
「ニューシルンですか、わりと近めですね。」
「えぇ、スタッカルド以外の街に行くのは初めてなのでまずは近場から行ってみようと思いまして。」
「なるほど、気を付けて行ってきてくださいね。」
「はい、戻ったらまた連絡しに来ますよ。」
「わかりました。」
これで必要なところはあらかた終わったかな。
後は二人の準備しだいだ。
とりあえず宿に戻ろう。
「用意はできたか?」
「うん、私は大丈夫。」
「私もよ。」
「なら明日の時間が一番早い馬車でいくか。」
「そうだね、それが一番楽だと思うし。」
「ニューシルンは徒歩なら五日だろ、馬車なら早めに出るものに乗れば三日くらいで着くかね?」
「そうね、トラブルもなければ着くんじゃないかしら。」
「ならぜひスムーズに行ってほしいもんだ。とりあえず明日は早い、今日は早く寝ておこう。」
「そうだね。」
翌日。
ランゲさんに、しばらく戻らないことを告げる。
戻ってきたときはまた部屋を借りたいから、またよろしくお願いしますと言って宿を出る。
「馬車はあれか、意外と乗る人いそうだな。」
「街から街への移動はよく使われるからね。そこまで人も少なくないよ。」
「そんなもんか、とりあえず乗ろう。」
護衛のハンターもついてるしめったなことは起こらないだろう。
のんびりいければ文句ないな。




