29 ダンジョン終了とパーティーの目標
ダンジョンから出て簡易ギルドに向かう。
「すみません。」
「はい、買取ですか?」
「いえ、報告したいことがありまして。バーサーカーがもう一匹いました。」
「それは本当ですか!?」
「はい、四階で討伐されたと思うんですが、その後もう一匹確認しました。」
「ではすぐに依頼を王都とスタッカルドへお願いしないと!」
「いえ、その必要はありません。何とか討伐できましたから。これがバーサーカー討伐の証明です。」
そう言って首を見せる。
「確かにバーサーカーですね。二匹出ることは今までなかったんですが。」
「今回は運が悪かったのかもしれませんね。それでも何とか生きて戻ってこれたのでよかったですけど。」
「ここ、下級ダンジョンでバーサーカーは滅多に出現しませんからね、討伐できたのはすごいことですよ。」
「ありがとうございます。一応その報告と、後は買取をお願いします。」
「わかりました。買取はあちらでお願いします。」
換金を終えてギルドを去る。
報告もしたし、これで大丈夫だろう。
「よし、これでひとまず終了だ。スタッカルドへ戻ろうか。」
「そうだね。だいぶ長いこといたしそろそろ戻りたいね。」
「戻るのにまた三日か。」
「疲れたことだし、今回は乗合馬車を使いましょうよ。」
馬車か、そういえば今まで歩いてばっかりだったけど馬車もあるんだった。
そろそろ馬車に乗るお金くらい問題なくなってきたし、馬車で戻るか。
「そうだな。ここから出てるのか?」
「えぇ、ここは出ているみたい。」
「なら馬車で戻ろう。確かにできれば歩きたくない。」
長かったダンジョン生活も終わりか。
得るものはいっぱいあった。
少なくとも以前よりは間違いなく強くなったし、一つ死闘を乗り越えることができたのも大きい。
あとはお金だな、ちまちまと稼いで使わなかったから、しばらく休めるくらいの余裕がある。
数日くらい休日にしてもかまわないだろう。
乗合馬車に揺られてスタッカルドに向かう。
どうやら間に一度夜営をはさむらしい。
他にもハンターがいるから危険はそこまでないだろう。
「馬車は楽だね。」
「あぁ、これなら行きも使っておけばよかった。」
「そうね、ついいつもの癖で歩いちゃったわ。」
「これからはもう少し馬車も使っていこうよ。そろそろそれくらいの余裕はあるんじゃない?」
「そうだな。装備もひと段落したし、急いで必要なものもないから大丈夫だと思う。」
「それならこれからのパーティーの目標も決めてもいいんじゃないかしら?」
「目標?」
「えぇ、私たちのパーティーは何を目指して活動していくのか。たとえばAランクを目指すのもいいでしょうし、ランクよりはお金を重視しているパーティーもいるでしょう。そこらへんを考えてみてもいいんじゃないかしら。」
「うーん。」
正直生きることで精いっぱいだったからそこまで考えてなかった。
これからのパーティーの目標か。
やっぱりトップであるAランクを目指すか?いや、いっそ伝説的なSランクを!
うーん、個人的にはそこまで興味はないな。
そもそも現代日本人である俺が、この世界の基準でどこまで強くなれるかもわからないしな。
ならお金か、多少の余裕は欲しいけど目標とするにはテンションが上がらない。
「二人は何かないか?」
「うーん・・・」
「そうねぇ、考えてみるわ。」
急に言われてもそうなるよな。
でも確かに目標はあってもいい。
人生に張りが出るし、楽しくなるだろう。
ならば俺の趣味から探してみるか、ゲームなんてないし本もマンガなんてないだろうし娯楽小説もあっても少ないだろう。
この世界でもできること・・・飲み物とかどうだろう?
そこまで詳しいわけではないがコーヒーも紅茶も好きだ。それらを楽しむってのはどうだろう?
いや、これは俺の目標であってパーティーの目標ではないな。
うーむ。
「ジュン、なにか思いついた?」
「あぁ、個人的には一個あったんだけどパーティーの目標ではないなって思ってさ」
「そうなの?参考に聞かせてくれないかしら?」
「俺は飲み物、コーヒーや紅茶が好きなんだよ。だからそれらを楽しむってのはどうかなって思ったんだけど、あくまでも俺個人の目標って感じだから違うなって思ってさ。」
「あはは、なるほどね。でもそれも悪くないかも、私も食べることが大好きだし、目標にしてもいいかもね。」
「ふふ、それなら私はお酒ね。しばらく飲めてないから飲みたくてね。いろいろなお酒を楽しんでみたいわ。」
意外と似たり寄ったりの目標もあったりするもんだ。
それならいっそのことパーティーの目標にしてしまうのもありか?
飲食にこだわるパーティー「エスプレッソ」か。うん、食べたり飲んだりすることは楽しみに繋がる。個人的には悪くない。
「それなら俺たちは、美味しい飲食を追い求めることを目標にしているパーティーってことでどうだろう。」
「うん。私はいいよ。珍しいものとか食べてみたいしね。」
「ふふ、私もいいわよ。お酒を求めて旅ができるなんて贅沢じゃない。」
「他のパーティーとは毛色が違うかもしれないけど決定だな。」
こうして俺たちのパーティーの目標が決まった。
せっかくの異世界だ、おいしいコーヒーや紅茶もあるだろうし楽しませてもらおう。
そう考えたら楽しくなってきたぞ。
「そうなると今までよりお金が必要になるわね。」
「まぁ毎日贅沢は出来ないさ。たまにの楽しみを目指していこう。」
「そうだね、でもこれから依頼を受けるときは、できたらその目標も考えてうけるようにしたいね。」
「だな、美味しいお酒がある街からの依頼なら受けてみるとかでもいいし。」
「なかなかそんなに都合のいい依頼はないと思うわ。」
「それならそれでしっかりハンターとして活動していればいいさ。」
あくまでも目標というか指針だ。
きつく考えずにゆるくやっていければそれでいいと思ってる。
とりあえずは街にあるコーヒーでも楽しんでみるか、今までそんな余裕なんてなかったからな。
そんなことを話しながら二日でスタッカルドについた。
「あー戻ってきた―。」
「今回は長かったからね。」
「これからは多少の遠征もできそうね。」
「確かに連続での夜営も少しは慣れた気がするな。」
「さて、宿にむかう?」
「悪いけど二人で先に取っておいてくれないか?」
「ジュンは?」
「俺はこいつをドゴラのおやっさんに見せてくる。」
こいつとはバーサーカーの剣だ。
俺には大きくて使いこなせそうもないが、おやっさんなら直して売ることもできるから、買い取ってもらえるんじゃないかと思っている。
「わかった、ジュンの分も取っておくから。」
よろしくお願いして二人と別れ、俺はドゴラのおやっさんの鍛冶屋まで来た。
「おやっさーん、いるー?」
「なんだ、お前さんか。剣の調子はどうだ?」
「あぁ、すごくいいよ。おかげで助かってる。」
「そいつは何よりだ、それで今日はどうした?」
「実はこいつを買い取ってくれないかと思って持ってきたんだ。バーサーカーの剣だ。」
「ほう。これまたすごいのと戦ったな。」
「あぁ、死ぬかと思った。」
「そうだろう。よく倒せたものだ。」
「でこいつは買い取ってもらえるのか?」
「あぁ、構わん。手入れをすれば十分に売れるだろうしな。」
「それじゃあよろしく頼むよ。」
よかった、わざわざ持ってきたかいがあったというものだ。
いつかバーサーカーと一対一で戦える日が来るんだろうか。
今は想像できないな、少なくともしばらく会いたくない。
お金を受け取っておやっさんのところをお暇する。
「さて、今日はやることもないし飯を食って早めに寝よう。」
キリとエリィを誘って夕飯を食べに出かけた。
やっぱり街のご飯はうまい。
ダンジョンでは基本的に肉・肉・肉だったからな。
バランスよく食べられる幸せをかみしめる。
今日は井戸でよく体をふいて寝よう。久々にさっぱりしてぐっすりできる。




