28 バーサーカーとの死闘
四階。
階段付近から離れるのは初めてだ。
とりあえず岩山あたりを探索することになった。
「今なら宝箱もあるんじゃないかな。」
「ふふ、いいものが出るといいわね。」
お宝が見つかることに期待がかかっている。
いままで三階で見つけたものは大したものはなかったからな、少しでもいいものを拝みたいものだ。
岩場に来るのは初めてだが、それほど大した魔物はいない、やはり四階で一番強いのはグリーンマンティスか。
「なかなかないなー。」
「こっちには出現しなかったのかな?」
「見つかりにくいところに出現するらしいから見落としてるんでしょうね。」
「岩の隙間とかもみてるんだけどね。」
「今までに見つかったのは?」
「回復薬三本と鉄の槍よ。」
「もう少しいい成果が欲しいよな。」
「そうね、でも下級ダンジョンだしこんなものかもしれないわね。」
こんなものかー。できれば小さくていいから魔法のバッグとか手に入らないかなとか思ってたんだけど、甘いか。
もしくは魔法効果の付いたアイテムが欲しい。
今のところハンターとして何とかやっていけてるけど、快適なハンターライフってわけではないからな。
夜営を楽にしてくれるアイテムとか出てくれたら言うことないんだけど。
「それにしても魔物の数が増えてきたな。」
「そうだね、グリーンマンティスが複数で現れると気を付けないといけないね。」
「訓練にはなるからいいけど、囲まれたらつらいな。」
「そうなりそうだったら魔法で吹き飛ばすわ。」
「そうだね。囲まれそうになったら姉さんにお願いしよう。」
「ふふ、任せて。」
頼もしいな。
もっとも、そうなる前にキリが吹き飛ばしそうな気もするけど。
俺も勝てるようにはなってるけど、一度に相手をするのは二匹が限度だろうな。
それでも最初にグリーンマンティスにあったときと比べれば、格段に良くなったほうだろう。
岩山はあまり成果がよくなかったので場所を変えてみる。
「次はあそこの山に行ってみましょうか。」
「うん。」
「頂上には何かあると期待したいね。」
山に向かって歩いている時にシロが何かに気付いた。
「シャーーーー!!」
シロは異変に気付くのが早い、今回はただ事ではない感じだ。
全員臨戦態勢になる。
「なんだ?」
「なにかいるんでしようね。」
「シロ、敵か?」
「シャー。」
コクコク。
敵らしい、それならこの場からそっと移動してやり過ごせるかもしれない。
と、思ったときに奴は現れた。
「バーサーカー!」
「もう一匹いたんだ・・・」
「これはマズいわね、逃げられる距離じゃないわ。」
「そうだな。くそっ!やるしかないか!」
ダンジョン内にはレアな魔物は出現しにくいんじゃなかったのか!?
なんでよりによってこのタイミングで現れる?
ダンジョンでは何が起こるかわからない、確かにそうだ。身に染みる。
なんにせよこの場を何とかしなくてはならない。
「キリ、はさむぞ!エリィ、撃てると思ったらいつでも撃て!」
「わかった!」
「わかったわ!」
盾を捨てる。皮の盾じゃとてもじゃないがバーサーカーの攻撃は防げない。
俺ごと真っ二つにされるのがオチだ。
ならば両手持ち、正面から受け止めるというよりは弾き、いなせばいい。
「いくぞ!」
こちらから仕掛ける。
間合いは詰めすぎない、いいものを一撃もらったら終わりだ、なるべく射程範囲ギリギリで戦う。キリも同じだ。
『ヴォォォォ!』
力任せに横なぎに剣を振ってくる。
当たったらアウトだな。
だが隙が全く無いわけではない、空ぶった後に攻撃を入れていく。
ダメージになっているとは思えないが。
『ヴォォォォ!』
次は縦切りか、全力で剣で軌道を逸らす。
グリーンマンティスと何度も戦った甲斐があった、全く見切れないわけではなさそうだ。
その間にもキリもハンマーで一撃を加えていく。
だがその一撃もバーサーカーに剣で防がれてしまったようだ。
あの一撃を耐えるとは恐ろしい。
いや、若干だがキリのパワーのほうが押してるか?
チャンスとばかりに切りかかる。
「オラァ!」
背中に一撃入った。
そのまま二撃目をと欲張ったのがよくなかった。
『ヴォォォォ!』
バーサーカーが大振りで剣を振り回してきた。
ザクッ!
直撃は剣で防いだが腕を深く切ってしまった。
このままでは戦闘は難しい。
バーサーカーもここをチャンスとばかりに詰め寄ってくる。
「ジュン!」
「任せて!いっけーーー!」
エリィの魔法が放たれた。いつもより抑えることをしていないんだろう、凄い威力だ。
「ジュン!腕を出して、回復するから!」
「あぁ、すまない。」
エリィが魔法で弾幕を張っている間に傷をいやしてもらう。
今のは失敗だった。
もっと慎重に立ち回らなくては。
「ふぅ、ある程度は効いたみたいね。でもまだ戦えそうよ。」
「わかった。引き続き同じように頼む!」
「わかったわ。」
あれだけ魔法を叩き込まれたというのにバーサーカーは倒れていない。だが確かにダメージはあったようで片腕が使えなくなっているようだ。
「キリ、はさみながら使えなくなっている腕のほうへ回り込み続けるぞ。」
「うん。」
相手の弱点を突くのは基本中の基本、これは生き残りをかけた戦いだ。
バーサーカーも俺よりキリを脅威と見たんだろう、俺に背を向けることが多くなってきた。
それなら俺にも考えがある。武器を持っている無事な方の腕を後ろから隙を見て切り続けることにした。
さすがに両手使えなければ、脅威も半分以下だ。
キリも俺の狙いが分かったんだろう。
バーサーカーがこっちを向いている時に腕を狙い始めた。
最初は勢いよく振り回していたバーサーカーだがだんだんとその腕に力が入らなくなってくる。
それでも俺たちは腕を狙うことをやめない、まだ一撃の威力が馬鹿にならないことが分かっているからだ。
「まだまだ油断するなよ、武器を落とすまでは腕を狙う!」
「うん、わかった!」
「エリィ!武器を落としたら魔法を撃ってくれ、もう防御は出来ないはずだ!」
「わかったわ!」
さすがはバーサーカーといえばいいのか、腕が血まみれになってきているにもかかわらず、武器を離そうとしない。
キリの攻撃も防いではいるが押されっぱなしだ。
バーサーカーがこっちを向いた瞬間、キリの頭の上からシロがバーサーカーの背中に噛みついた。
シロは噛みついたままだ、毒を送り続けているんだろう。
バーサーカーも片手ではシロを振りほどけない。
俺とキリは当然攻撃をやめない、シロに当たりそうで怖いときもあるんだが。
それから何分の攻防が続いただろうか、ついにバーサーカーが膝をついた。
剣こそ最後まで落とすことは無かったが、激しく動いた分シロの毒がよく回ったんだろう。
シロが戻ってくる。
「よくやったね、シロ。」
キリはシロを撫でながらねぎらっている。
あとはとどめだ、しかしバーサーカーはまだ武器を持っているんだから近づきたくはない。
となれば選択肢は一つだ。
「エリィ、とどめを頼む!」
「わかったわ!」
エリィの魔法の爆音とともにバーサーカーとの死闘は終わった。
「ふぅー、何とか勝ったな。」
「そうだね。凄い力だったよ。」
「私の魔法の一撃で倒せなかったのは初めてだったわ。」
「二人には助けられたよ。腕を切られたときはもうだめかと思った。」
「なんとか魔法が間に合ってよかったわ。」
「急いで回復したけど痛みとかはない?」
「あぁ、大丈夫だ。」
「シロも頑張ったね。」
「シャー。」
「最後は毒で何とか出来た感じだもんな、シロ、ありがとうな。」
「さて、バーサーカーはなにを取っていけばいいんだ?」
「なんだろうね?」
「私もわからないわ。」
「とりあえず討伐に来てたパーティーは頭持ってたから頭と、剣もらっていくか。」
「ほかには使えそうなところはなさそうよね。」
「それくらいでいいんじゃないかな。」
「それじゃあ、これでとりあえず戻ろう。一応、バーサーカーのことも報告しとかないといけないし。」
「そうだね、疲れたよ。」
「えぇ、この上ないいい経験になったわ。」
何とかバーサーカーとの死闘を終えて、ダンジョンから立ち去ることになった。
経験を積むという意味ではこの上ない収穫だとポジティブに考えておこう。




