22 極彩スズメと踊り
「ほう、こいつはなかなかいいものを取ってきたじゃないか。銀のタイトビートルはレアだからね、いいものができるよ。」
ミミールさんの防具屋に来ている。
銀色はレアだったらしい、儲けものだ。
やたらと固かったからな。その分いい装備になってくれるだろう。
「でしょう?これらを使って防具をお願いします。」
「いいだろう、ただ盾の分は足りないね。この量だと鎧を三人分がいいところだと思うよ。それでいいかい?」
「はい、お願いします。」
「約束通り値段はまけてやるからね。」
「ありがとうございます。」
「この角はどうするんだい?」
「角ですか?」
「あぁ、非常に硬くてね、武器なんかにも使われるんだよ。ドゴラのところにでも持って行ってみたらどうだい?」
「そうですね、せっかくなのでおやっさんのところに持って行ってみます。
ちなみに防具はどれくらいでできそうですか?」
「そうだね、普通のタイトビートルなら二日だったんだけど、銀のタイトビートルを持ってきたからね、四日欲しいかね。」
「わかりました、よろしくお願いします。」
「あぁ任せときな!」
ミミールさんの防具屋を出てドゴラのおやっさんの鍛冶屋に向かう。
「おやっさんいる?」
「おう、どうした?」
「こいつを見てほしくてさ。」
「んー?こいつはタイトビートルの角じゃねーか、それもレア物だ。こんなもんをどこで手に入れた?」
「ミミールさんのところで防具を新しくするために倒してきたんだよ。その中に銀色の奴がいてさ、おやっさんなら武器にできるから、見せてみたらどうかって言われて持ってきたんだ。」
「なるほどな、よし!ワシに任せとけ、立派な剣にしてやろう。」
やっぱりおやっさんなら剣にできるらしい。
それも今使ってるものよりだいぶいい剣になりそうだ。
今使ってるのはハンターになったばっかりの奴が使う一番安いやつだ。
ようやく卒業できる。
「完成はいつくらいになりそう?」
「そうだな、三日あれば大丈夫だ。」
あと三日で俺の攻撃力が多少改善される。
これで少しは攻撃でも役に立てるようになればいいが。
ドゴラのおやっさんのところを出てギルドに向かう。
おやっさんのところにきたのは俺一人だから二人はギルドで何か食べてるだろう。
「いたいた、おまたせ。」
「角はどうだった?」
「剣にしてくれるってさ。これで俺の武器も強くなるぜ。」
「ふふ、その分これから稼がないといけないわね。」
「三人分の装備を一気に新しくしたからね、お金がもうない。」
今は寂しく何かわからない豆をポリポリと食べている。
食事くらいはそこそこいいものを食べたい。
「そこで耳よりの情報があったのよ。」
「なんだ?」
「どうも近くの水辺に極彩スズメが集団でいるらしいのよね。」
「極彩スズメ?」
「極彩スズメは魔物ではないんだけど、きれいで高く売れる鳥なんだよ。貴族や裕福な商人がよく欲しがってるんだ。」
「なるほど、それを捕まえに行こうと。」
「でも問題もあるのよね。極彩スズメは臆病で少しの異変でもすぐに逃げるほどなの、だから捕獲は難しいのよ。」
「決まった捕獲方法とかは無いのか?」
「一つあるわ。踊りをするのよ。」
「踊り?」
「えぇ、極彩スズメにとって踊りはコミュニケーションらしいの、そこでこちらも踊りをすることで近づいてもらおうってことよ。」
「ただ、どういう踊りがいいのかっていうのはわかってないんだよね。だからやってみるしかないんだよ。」
「で、気に入ったらこっち来るから捕まえようってことか。」
「そう。」
「まぁいい依頼もないし、やってみるか。」
踊りね。わからないけど歌のPVでやってたやつを思い出しながらやればいいだろう。
というか二人は踊れるのか?
話を振ってきたってことは多少は踊れるんだろうな、期待しておこう。
とりあえず近場の水辺に向かうことにした。
「なんか大勢で変な儀式をしているようにしか見えないんだけど?」
「うん。ちょっと怪しいよね。」
「ふふふふふ。面白いわ。最高の見世物ね。」
エリィ、見学したくて来ただけだったんじゃないのか?
「今からその見世物に混ざるんだけど?」
「うっ。大丈夫よ、あそこまではひどくならないはずよ。」
水辺では踊りというよりポージングのほうが多い気がする。
ほかには鳥の真似をしたり犬の真似をしたり、それは踊りじゃなくて物まねだろう。
踊ることをあきらめて極彩スズメに愛を叫んでる人もいる。
いや、中には単純にナンパしている人もいるな。
周囲にはちらほらと酒瓶を片手に眺めている人もいる、いい見世物だ、さぞかし酒も進むだろうよ。
ごくまれに捕まえられる人もいるみたいで喜びの声も聞こえるけど、何がよくって近寄って行ったのかさっぱりわからない。
混沌とした場だ。
「それじゃ、気が進まないけどやるか。」
「うん。」
「ええ。」
二人とも自信満々だな、俺は自信ないぞ?
とりあえずお手並み拝見だ。
最初はキリか、どれどれ。
「うぇああああぁぁーー!!!」
え?
舌を出したり足を踏み鳴らしたりしだした。体を叩いて・・・これってもしかしてハカみたいなもの?
小さい少女が一生懸命ハカをやっている。
残念ながら迫力はない。が、顔は大まじめだ。
まわりも何事かとみてるじゃないか。
そもそも俺の知っているハカは集団でやるものだ、1人で、それもこんな子がやるなんて想像したこともない。
いかん、こみ上げてくるものがある、笑うな俺。
キリはまじめだ。
どうやら終わったらしい。
やりきった感じがすごいある。
俺の顔面は大丈夫か?ポーカーフェイスには自信はないがここは笑ったらいけないところだろう。
キリがこっちを見る、極彩スズメが来なかったのが残念そうだ。
よし、俺のことは気付かれてなかったな。
キリ、お前の新しい一面を見れた気がするよ、でも急にやりだすのはやめてほしいかな。
「キ、キリ。残念だったな。」
「そうね。急に叫びだしたからびっくりしちゃったわ。でもよかったわよ。」
よかったのか。
この状態で何かやるのつらいな、他のみんな動きとめちゃってるじゃん。
「あー、次はエリィいく?」
「いいわよ。」
揺るがない自信だな。任せよう。
エリィはおもむろに片腕で勢いをつけて回りだす。
その状態でバウンドしたり足を上げたり入れ替えたり。
こっちはブレイクダンスか。
それにしてもうまいように感じる。
エリィ魔法使いだよね?格闘家としてもやっていけるんじゃないの?
ずっと動いてるな、おぉ、足を上げてポージング。
お、腰で回りだした、そこからステップをはさんで頭で回りだす。
あれ?頭を抱えて戻ってきた。
「石にぶつけた・・・」
「あぁ、それは痛かったな。」
「姉さん大丈夫?」
結局キリに回復魔法をかけてもらっている。
次は俺か、二人ともやりきったし俺がやらないってのはダメだろうな。
仕方ない、PVくらいテレビで見てたしそれっぽくできればいいだろう。
やったことないけど。
「よし、行ってくる。」
まずはステップ、一・二・一・二
あれ?足がうまく動かない。
なんかこう軽快にフワッと、スマートにイメージしてるんだけど。
体も曲げるんだっけ?とりあえず曲げとこう。
腕は伸ばして、まげて・・・・
だめだ!わからん!
よし方針転換。
うろ覚えのラジオ体操にしよう。
あれも音楽に合わせて体を動かしてるんだから踊りだ。ということにしておこう。
全然覚えてなかったけど、とりあえず終わりだ。
二人のところに戻る。
二人の顔が微妙だ。俺も微妙だと思うから受け入れるよ。
やりきった感じもないしね。
「お疲れ様。変わった踊りだったね。」
「そうね、最初おじいさんになったと思ったら、急に準備運動っぽくなって。」
「あはははは、俺の地元であった踊りをしようと思ってたんだけど、無理だった。」
「結局、極彩スズメは来なかったわね。」
「そうだね、もう少しやる?」
「俺は心が折れた。」
「ふふ、それじゃあちょっと休んだら戻りましょうか。」
「うん。」
他のハンターたちは諦めずに何かやってる。
心が強いのか、そもそも感覚が違うのか。
ボーっとしてるとシロがキリの頭から飛び降りた。
「どうしたの?シロも踊ってみる?」
「シャー。」
なんかくねくねしてる。なごむが踊りかと言われると踊りじゃないだろう。
そんなことを考えていると「チュン」と聞こえた。
極彩スズメだ。
シロの踊りが気に入ったらしい。
「シロ、そのまま踊ってて。」
極彩スズメがどんどん近づいてくる。
すぐそばまで来たところを、キリがそっと捕まえて檻に入れた。
「シロ、お手柄だよ。」
「よくやった。」
「すごいわね。シロちゃん踊りの才能があるのかしら。」
シロは誇らしげだ。
檻の中の極彩スズメと仲良く喋ってる。
極彩スズメは光の角度によってきれいに色を変えるくらいで、名前ほどけばけばしい感じはしない。
これは確かに売れるだろう。
「とりあえず一匹手に入れることができたし戻るか。」
「うん、そうだね。」
後はこの極彩スズメをどうするかか、少しでも懐に余裕が出ればいいが。




