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20 エリィ

「うーん、いい依頼ねーなぁ。」

「そうだねー。」


 あれから数日、休養と練習、常設依頼をこなしてそろそろ何かをやろうかって話になった。

 なったのはいいのだが手ごろな依頼がない。

 まだ遠出をしたいとは思わないし、低ランクハンターは依頼に一部制限がある。

 何でも自由に受けられるわけだはない。

 ふと一枚の依頼に目が留まる。

 依頼・洞窟に魔物が住み着いた、目撃情報によるとインプが確認されている、討伐を頼む。


「なぁ、これなんてどうだ?」

「うーん?うーん、私たちには向いてないかもしれないよ。」

「どういうことだ?」

「インプってとこが相性悪いかもしれないんだよね。インプの中には魔法を使ってくる個体もいるし。」

「そういえばゴブリンには魔法使ってくるのいなかったな。」

「ゴブリンの場合は、ゴブリンマジシャンっていう上位種にならないと魔法は使わないよ。でもインプは使ってくる場合があるんだよね。私たち遠距離攻撃できないし。」

「あー、確かにな。」

「かわしながら戦うにしても洞窟はせましね。」

「うーん、やめといたほうがいいか。」

「そうだね・・・でもインプの魔法自体はそこまで強力じゃないから、ここで体験しておくのもありかもしれないけど・・・」

「洞窟もまだ行ったことないしな。」

「うん。」


 結構悩ましいな。

 相性は悪い、でも体験しておくには丁度いいかもしれない。

 これからランクを上げていくってなると洞窟も避けては通れないだろうし。

 やっぱりもう一人くらい仲間が欲しいな。


「遠距離攻撃ができる仲間を募集してみるか?」

「え?」

「俺たちは弓も使えないから戦える手段が限られてる。それだと困ると思うんだ。明らかに合わなそうな人なら断ればいいと思うし。」

「うーん、そうだね。近距離しかできないと困るのは確かだもんね。募集してみようか。」

「よし、募集していい人がいたら洞窟の依頼を受けてみよう。」

「うん。」


 そうときまれば日帰りでできそうなものや、常設依頼をこなしながらキリとスパーリングをこなしていった。

 二日後一人の女性に声をかけられた。


「パーティー募集してるのって貴方たちよね?」

「はい、1人募集してますけど。」

「やっぱり、私をパーティーに入れてほしいの。」

「えっと、お名前を聞いても?」

「あら、失礼したわ。私はエイリィーナ、エリィって呼んで頂戴。」

「わかりましたエリィさん。」

「さんはいらないわ。敬語も不要よ。」

「あー、わかったよ、エリィ。」

「えぇ。」

「それでうちのパーティーに入りたいってことだけど。」

「えぇ。今、私ソロなの。魔法使いなんだけど魔法使いでソロはきついのよ、だからお願い。」


 うん、理由はまともだ。見た目は美人さん、少し年上かもしれない。

 個人的には入ってくれたらうれしいけど。

 うーん、一度一緒に依頼を受けてみてから決めるか?相性もあるしな。

 キリにそんなやり方でどうかと言ったらOKをもらえた。


「では一度一緒に依頼を受けましょう。お互いによさそうならば正式に加入ということでどうでしょうか?」


 エリィの表情が少し曇った。なにか気になることがあったか?

 だが納得したのだろう。


「わかったわ。それでお願いするわ。」

「ではよろしくお願いします。」


 メンバー募集の紙は取り下げておく。

 エリィで決定かもしれないからね。

 以前あった洞窟に魔物が住み着いたっていう依頼がまだあったのでそれを受けてみることにした。


「割と近場なんで相性を見るには丁度いいかもしれないね。」

「そうね、私の力を見せてあげるわ。」

「私もがんばるよ。」

「シャー。」

「あら、その子は?」

「この子は私たちの仲間でシロって言うんだよ。」

「へぇー。私はエリィ、シロちゃんよろしくね。」

「シャー。」


 シロがエリィをペロペロしてる。うらやましい。

 そんなことを考えてたら洞窟についた。


「まわりにはいないみたいだな。」

「そうだね。」

「おそらくは中にいるんでしょうね。」

「よし、準備をして中に入ろう。」


 松明に火をつけて中に入る。


「そういえば明かりをつける魔法は使えないのか?」

「え、えぇ。ちょっと苦手なのよ。」

「得意不得意はあるからね。」

「そうなのよ、ごめんなさいね。」

「ん?音がするな。」


 そっと覗いてみるとインプが二匹飛んでいる。


「あれくらいなら俺とキリでいけるな?」

「そうだね、一回戦ってみるにもちょうどいい数だしやってみよう。」


 頷きあうと一気に駆け出して距離を詰める。

 インプもすぐに気が付いたようだ。

 魔法を使う間合いではなくなったんだろう、爪を使って攻撃してくる。

 落ち着けば爪の攻撃もそこまでのスピードはない、盾で受け切って一撃で仕留めることができた。


「ふぅ、ゴブリンより柔らかい気もするな。」

「大きさもゴブリンより小さいからね。」


 エリィも駆け寄ってくる。


「やったわね。」

「あぁ、ありがとう。」

「爪の剥ぎ取りも忘れないでね。」


 おっと、忘れてた。

 爪と魔石を取る、多少でもお金になるんならうれしいもんだ。


「それじゃあ次はエリィの番かな?」

「えっと、私は敵がある程度多いほうがいいかもしれないわ。」

「そうなの?」

「えぇ、その・・・少し特殊でね。」


 若干気になるが敵が多いほうが使いやすいというのも心強いか。

 少数なら俺とキリで戦っていこう。

 次の少し広いところには三匹いる。

 一匹は奇襲で仕留められそうだが、残り二匹は遠い。

 魔法を使ってくる相手の練習になりそうだ。


「次も似たような感じで行こう。距離があるから魔法を食らわないように気を付けながらな。」

「そうだね。なるべく早めに近づきたいね。」

「そうだな。よし、いくぞ!」


 近くのインプに切り付ける。

 だが思ったよりも反応がよくかわされてしまった。


「すまん、はずした。」

「わかった、一匹ずつ確実に減らそう。」


 遠目の二匹のインプがファイアーボールらしきものを放ってきた。

 盾で防ぐ。いける、これくらいなら防げる。

 その間にキリがそばにいたインプをつぶす。

 ここからは二手に分かれる、さっきと同じだ。

 ファイアーボールを防いだりかわしたりしながらインプとの差を詰めていく。

 近づきさえすればそこまで脅威ではない。

 二匹とも倒して素材をいただく。


「意外と魔法も盾で防げるんだな。」

「インプくらいのならね、もっと強いのになると良い盾をつかうか避けるしかなくなるからね。」

「まぁいまはこれで十分ってだけでもいいさ。次に行こう。」


 二人はうなづいて先に向かう。

 しばらくすると大部屋があった。

 インプが十匹はいるんじゃないだろうか、これは俺とキリだけじゃあ辛い。


「エリィ、出番がきたみたいだぜ。」

「うん、ここは先制でお願い。」

「そ、そうね。」


 エリィは答えるがなかなか魔法を使おうとしない。

 もしかして魔法を使えるのは嘘だったのか?

 そんな疑惑が頭の中で膨らんでくる。


「エリィ?」

「・・・えぇ、そうねまかせなさい!」


 物陰から出てインプたちに堂々と体を見せる。

 奇襲での魔法じゃなかったのか?と思った瞬間エリィのほうから凄まじいプレッシャーが押し寄せてきた。

 これが魔力なのだろう。

 どんどん魔力を練り上げていき、ついに。


「おりゃーーー!!!!」


 ズドドドッドスパンドンガガガガガボゥンゥン!!!!!!!!!!


 恐ろしいほどの数の魔法が放たれた。

 俺とキリが顔を見合わせて、大部屋のほうを見るとそこには何も残っていなかった。


「なんでここまでしたの?」


 キリは少し怒っているようだ。

 下手をしたら崩落していたかもしれない。そりゃあ怒りもするというものだ。

 エリィは正座をしている。


「私の出番だって言ったから・・・」

「だからってここまでやらなくてもいいんじゃないかな?生き埋めになるかと思ったよ。」

「その、その、実は私・・・・」


 そこまで言ってエリィは泣き出してしまった。


 どうやら最後の大広間が最後だったらしく洞窟から出ることになった。

 ちなみに素材は全部吹き飛んだ。

 エリィが落ち着いくのを待って話を聞いてみると事情が分かった。

 どうやらエリィは魔力を多く持っているらしい。

 しかし、そのコントロールが壊滅的に苦手なそうだ。

 ファイアーボールを出そうとしても何が出るかわからない、さらに魔力をおさえるのも下手だから流れ続けてしまう。結果、おさえきるまでいろいろな魔法が連発されてしまうらしい。

 もちろん素材も残るかは運しだいになる。


「そんなだから私とパーティーを組んでくれる人もいなくって・・・」

「ぐすっ。わかるよ。ハンターの中で情報が共有されると、なかなかいれてくれないんだよね。」


 キリがエリィの苦労をわがことのように理解し始めている。

 キリも元々素材をダメにしてしまうからパーティーを抜けたんだったな。

 共通点もあるわけだ。

 なんだか意気投合してるしこのまま仲間になりそうな感じだな。

 どうするか、魔法使いとして使い勝手がいいとは言えないのが正直なところだろう。

 でもここぞというときに高威力を出せるのは心強い。

 なによりここまでの流れで、断るという雰囲気がかけらもなくなっているのがなぁ。

 これは断れないだろう。断ったらキリからもシロからもすごい目で見られそうだ。

 うん、考えるのをやめて流れに身を任せよう。それがいい。


 数分後、正式にメンバーとして加入が決定された。


「あー、まぁなんだ。よろしくな。」

「えぇ、これからよろしくお願いするわ。」

「姉さん、よろしくね。」


 いつのまに姉さんなんて呼び方になったんだ。

 仲が悪いよりはいいか。


 パーティーが増えた喜びと、今後への不安を抱えながらスタッカルドに戻ることになった。

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