18 大規模依頼の帰り道
終わった。
後片付けは戦闘よりも疲れたかもしれない。
死体をまとめて燃やすのはまだ持ちやすいから集めやすかった。
でも村を解体するってとんでもなく大変だ。
大まかにわけて魔法で燃やすんだけど、なるべく集めないといけない。
木って重いんだよ。重いの。
みんな一生懸命にやった、終わった。疲れたの。
それで、なんで馬車に上位種の死体が乗ってんの?
俺たちが乗るべきだと思う。
なにか間違っていないだろうか。やり場のない苛立ちだ。
「よう。」
ボーグさんだ。
「どうした、不満そうな顔して。」
「いえ、疲れてるのに何で馬車に死体を乗っけてるんだろうと思いましてね。」
「はっはっは!そういうことか、それは仕方ない。
ギルドも俺たちに報酬を払わないといけないからな。依頼金だけでは十分だと判断できない場合もある。
特にこういった大規模依頼の場合は危険も大きいから、それだけ報酬も大きくなるわけだ。その分を埋めるためにも換金できる素材が必要だったりするんだよ。
あとは民衆に確かに倒してきたぞって言う証明としての効果もある。耳だけ見せられても普通の人にはわからないからな。
そんなわけで大規模依頼の場合は持ち帰るものがあったりするんだよ。」
なるほど、決して私利私欲のためではないわけだ。額面上はだが。
「それにしてもお前さん達、上位種を倒したって?ちょっとした話題になってたぞ。」
「ええと、傷を負ってた上位種が二匹きたので、俺とキリで受け持ったんですよ。万全だったら無理だったと思いますし、そんな大したことは・・・」
「いや、なかなかのもんだ。手負いとはいえ上位種と二対二で倒したやつがいるって聞いてな。まさかお前さんのことだとは思わなかったが。ハンターをはじめてそれほどたっていないのにそこまでできるとは大したもんだ。」
「だな。」
話に入ってきたのはボーグさんと同じ「銀の爪」の虎の獣人ターニャさんだ。
「まさかあの裸の男がハンターとしてやっていけるとは思わなかったが、そうでもねーみたいだな。」
裸の男のところでキリがこっちをチラッとみる。
話すのも恥ずかしいから気付かないふりをしておこう。
「薬草の取り方を教えてナイフを渡しといたって聞いた時には、いいとこ盗賊になるんじゃねーかと思っていたけどな。大したもんだ。」
そういうとターニャさんはニカッと笑う。
「盗賊になることは無いだろうって言っただろう。もともとそんな奴には見えなかった。」
「食べることができなくなると、何でもするようになる奴なんて珍しくないんだよ。」
わからなくもない。薬草で何とか食べていけることができたからこうしていられるだけで、もし食べていけなかったらどうなっていたか。
「なんにせよ、こうして食べていられるのは皆さんのおかげですよ。ありがとうございます。」
「アタシは何もしてねーよ。アンタの頑張りさ。そっちの嬢ちゃんはパーティーメンバーかい?」
「はい、キリっていいます。」
「そうなのか、ところで、さ。その頭に乗ってるやつは何なんだい?」
「シロって言って私たちのパーティメンバーです。」
そんな話をしているとボーグさんがこっそりとターニャさんは可愛いものが大好きだと教えてくれた。
シロが気に入ったのかな?それならちょっと誘導してみよう。
「シロは賢い子なんですよ。敵じゃなければ襲い掛かったりしませんしね。持ってみますか?」
「あ?あぁ、そうだな。せっかくそう言ってくれたんだし持ってみるか。」
可愛いもの好きは隠してるのかな?うれしそうな雰囲気が全然隠せていないけど。
ボーグさんなんて笑ってるよ。
「へぇ、おとなしいじゃないか。」
「戦闘では頼りになるんですよ。毒とか麻痺毒を使えますからね。」
「そりゃすごい。ちびっこいのにやるもんだなー。」
しばらく撫でたりしてから返してくれた。
「ロッシュさんとサインフォートさんは一緒じゃないんですね。」
「あぁ、あいつらは御者だ。御者の人数が足りなかったらしいからあいつらもやることになったんだ。」
「せっかくなのでお礼を言いに行ってきますね。」
「あぁ、あいつらも喜ぶだろうよ。」
いたいたロッシュさんだ。
「ロッシュさん、お久しぶりです。」
「あー、ジュン君だっけ。話は聞いてるよ、活躍したらしいじゃない。」
「いえ、そんなことないですよ。」
「またまたー。一緒にいた子も強かったらしいし順調なんじゃない?」
「そうですね、キリには助けられてます。」
「うんうん、謙虚なのはいいことだよ。」
「銀の爪のみなさんもすごかったですね。」
「一応Bランクだからね、情けないところは見せられないよ。これでモテれば言うことないんだけどなー。」
「モテそうですけどね。」
「ありがとう。でもなかなか運命の人に巡り合えないんだ。あぁ、これも恋の試練なのかな。そうだ、間違いなく試練だ。試練を超えてこそ運命の人に巡り合う。そうだろう、未だ見ぬ君よ・・・」
あ、だめだ自分の世界に入っちゃった。これは恋に恋してる感じなのかな。そっとしておこう。
「すみません、サインフォートさんにも挨拶してきますね。」
「あぁ、手を取り合って遠くの国に旅に出たい・・・」
一応断ったから問題ないだろう。
サインフォートさんは、いた。
「どうも、サインフォートさん。」
「やぁ、ジュンか。お疲れ様。」
「お疲れ様です。以前はお世話になりました。」
「いや、あれはたまたまのこと。気にしなくていい。」
「それでも助かりました。あの出会いがなければ死んでいましたから。」
「わかった、感謝は受け取っておこう。だがその後何もないところから生きてきたのは、ジュン自身の力だ。誇っていい。」
「ありがとうございます。」
「あぁ、これからは我々と同じハンターだ。よろしく頼む。」
「はい、よろしくお願いします。」
日本の文化の影響でエルフは無口な印象があったけどそんなことないな、普通の人だ。
戻るか。
「どうだった?」
「挨拶は出来ました。ロッシュさんは自分の世界に行っちゃいましたけど・・・」
「はっはっは、あいつはしょうがないな。まぁそのうち目が覚めるだろう。ほっといてやってくれ。」
そして黒歴史になるんですね、わかります。
「俺たちも他の奴らの様子を見てくるわ。」
「わかりました。」
「おう、またな。」
ボーグさんとターニャさんが別の場所に行く。
「いい人たちみたいだね。」
「恩人だからな。」
「気になるワードもあったんだけど?」
「俺が黙秘したいと思うだろうことじゃなければ聞いてくれ。」
「・・・・・」
やっぱり裸の男が気になってたか。
そりゃそうだ、反対の立場だったら俺だって気になる。
「これは一日ではスタッカルドに着かないよな。」
「うん、無理だね。」
「今日中に帰りたかった。」
「気持ちはわかるけど、仕方ないよ。これだけ上位種の死体を乗っけてるんだもん。」
「だよなー。」
今日は夜営か、人数がいるから時間が長くないのが救いだ。
あぁ、体を洗いたい、ベッドに入って寝たい。
「何を考えてるか丸わかりだね。」
「あぁ、今の俺は欲望を垂れ流している自信がある。」
みんなもそんなものじゃないのか?
周りを見てみるがそんなことは無かった、ちょっと気を引き締めよう。
帰るまでが遠足だ。
途中で夜営をしてスタッカルドに向かう。
夜営の間は特に何もなかった。これだけの人数を襲う魔物なんてそうそういないのだろう。
俺の敵は近くの人の大きないびきだった。
翌日。
「スタッカルドが見えたぞー!」
やっとだ。なかなかにハードな依頼だったな。
でもいい経験になった。
集団戦を経験できたのは財産になるはずだ。それぞれの役目を理解しての戦闘は普段とはまた違った難しさがあった。
「ねぇ、なんだかやり終えてる感じになってるけどもう一仕事あるからね。」
「え?」




