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17 大規模依頼 下

「なんてことだ・・・」


 中ランクハンターが呟く。


「二匹は俺たちが受け持つ、残りの二匹は倒せなくてもいい、時間を稼いでいてくれ!」


 中ランクハンターは即断すると二匹の上位種に向かっていく。

 他のハンターは動きが止まってしまっている。

 無理もない、圧倒的に通常のゴブリンと強さが違うことが分かるのだから。

 そして、そうしているうちにもゴブリンは門から出ようと殺到してきている。

 ここは覚悟を決めるしかない。大丈夫、戦ったことはある。時間を稼ぐくらいならできるはずだ。

 幸い、この二匹の上位種は手負いだ。片方は片腕がなく、もう片方は足を引きずっている。いける。


「残りの二匹は俺たちが受け持つ。みんなは門からゴブリンが出ないようにしてくれ!」

「わ、わかった。すまないが頼んだ。」


 よし、これでやるしかない。


「すまん、キリ。巻き込んだ。」

「いいよ。手負いみたいだから前回よりは楽だと思うからね。」

「どっちを受け持つ?」

「じゃあ私は足を引きずっているほうかな。」

「分かった。俺は片腕の奴を狙う。あくまでも時間稼ぎに徹しよう。」

「チャンスがあれば倒しちゃおうよ。」


 キリがいたずらっ子のような顔でそんなことを言う。


「前線復帰できたほうがいいし、この間の借りも返したいんだよね。」

「いや、それはそうだけどさ。まぁ無理はしないでくれよ?」

「うん。あくまでもチャンスがあれば、ね。」

「よし、やってみるか。」


 お互いに狙いの上位種をひきつけながら対峙する。

 いざというときにカバーをできるようにはしたいが相手に合流されるのも厄介だ。

 そこそこの距離をとって戦おう。


 俺の相手は片腕だ。相手の攻撃の合間を狙って切り付けていく。

 相変わらず固いな、前よりはダメージが通ってる気がするけど、それでも倒すには至らない。

 ちなみにシロは俺の腕にくっついている。

 切り付けプラスシロの毒で長期戦の構えでいこう。


「シロ、無理はするんじゃないぞ。行けるときだけでいいからな。」

「シュロロローー。」


 相手の殴りつけが俺を襲う。

 パンチなんてきれいなものじゃない、力任せの攻撃だ。

 だが、それがこわい。あたれば当然骨折はするだろうし下手したら一撃でお陀仏だ。

 とはいえここまでの戦いで相手も疲れているのだろう、スピードは見切れないほどじゃない。

 かわしてから残ってる腕や胴体を切り付けていく。


「くっ!」


 危ない、蹴りがとんできた。

 避けることができたからよかったが、すごい音だ。

 一対一だからシロもうかつに噛みつけない。ちなみに魔法に関しては攻撃に使えるほどじゃない、飲み水として出してもらっているくらいだ。いつか強くなったらいいなとは思っているが。

 膠着状態が続く、キリもリーチの問題でなかなか決定打が放てないようで似た状態か。

 門は・・・まだ混戦が続いている。もうしばらくはこらえないといけないだろう。

 ここで盾を手放すことにした。

 上位種の威力を盾で受けるのは今の俺には無理だ。

 ならば避けて両手持ちで切り付けたほうがいい気がする。

 なにより身軽になれるからな。

 ―ブゥン!

 おぉ、今までより怖いがよけやすい、後は少しづつ削っていくだけだ。

 おそらく盾を手放したことがよかったんだろう。こちらの手数が明らかに増えた。

 シロもその牙を何度も突き立てている。

 麻痺毒が回り始めてきた。チャンスだ。

 だが俺に決め手はない、ならば。


「キリ交代だ!こっちの奴には麻痺毒が回り始めてきてる。動けなくなったところをとどめを刺してくれ。そいつは俺が引き受ける!」


 決め手がなければ決め手のある仲間に任せればいい。

 俺は相手を変えて再び持久戦だ。


「わかった!気を付けてね!」


 よし、これで片腕を倒せれば二対一に持って行ける。

 とはいえまだ麻痺毒が回りきっていないだろうから少しは時間がかかるだろう。


 今度の相手は足を引きずっている奴だ、両手が健在だから間合いに入るのが怖い。

 いや、片腕はキリのハンマーでつぶされているな。交代しなくても時間の問題だったか?

 麻痺毒が回っているほうが倒しやすいだろう、これでよかったと思おう。

 どうするか、ヒットアンドアウェーはカウンターが怖いから却下。

 ・・・よし、足を使おう。

 キリがつぶしてくれた腕のほうへと回り込み続ける。これなら相手は手を出しにくいだろう。

 俺は足を狙う。動けなく出来れば勝ちは確定だ。

 シロも隙を見て噛みついている。

 毒が回るのが先か、足にダメージが蓄積するのが先か。

 

 ―ドォォン!!!


 音のしたほうを見るとキリが毒の回っていた上位種を倒したところだ。

 これで二対一。

 挟み撃ちで危なげなく倒すことができた。


 上位種は倒したが戦闘は終わっていない。早く戻らないと。


「怪我はないな?」

「うん、大丈夫だよ。ジュンは?」

「俺も大丈夫だ。あ、盾を拾ってくる。」


 危ない、普通のゴブリン相手なら盾があったほうがはるかにやりやすい。


「よし、急いで戻ろう。」

「うん。」


 門ではまだ戦闘が繰り広げられていた。

 どうやら一緒に来た残りの上位種は倒されたらしい。

 俺も素早く戦線に復帰する。


「戻りました!」

「おぉ、無事だったか!上位種はどうした?」

「手負いだったので何とか倒せました。」

「すごいじゃないか、よくやった!だいぶ数は減ってきている、後ひと踏ん張りだ、頑張るぞ!」

「わかりました!」


 中に入った高ランクハンターは大暴れしているらしい。

 終わりのないように思えた戦いも、ようやく終わりが見えてきたことだろう。

 ここが気合の入れどころだ。


「よう、無事戻ってこられてなによりだ。」

「あぁ。仲間に助けられた。」

「ここにいる間は全員が仲間だ、また前線で抑え込もうぜ。」

「おう。」


 さっきまで隣で戦ってたやつだ。こいつも多少の怪我はしているが、まだまだ頑張れそうだ。

 前線に入ってゴブリンの相手をする。

 上位種に比べれば力も迫力もない、切り捨て、蹴り飛ばし、盾で押さえつける。

 噛みつきにだけは注意しないとな。


 やがて門に向かってくるゴブリンの数が少なくなってきた。

 中ランクハンターも中に入って残りを討伐することになったらしい。

 俺たち新人ハンターは引き続き門の守りだ。

 ここまで来たら一匹も逃がしたくはない。


「ようやく落ち着いてきたな。」

「そうだね。私たちも上位種を倒せたし、十分な成果じゃないかな。」

「とどめは両方お願いしちまったけどな。」

「武器をもう少しいいのにしたらたおせてたかもね。それで考えたら十分すぎるほどの立ち回りをしたと思うよ。」

「そう言ってくれるとありがたいよ。シロもよくやってくれたな。」

「シュロロローー。」


 まだ戦闘が終わっていないんだが残りが少ない上に、高ランクハンターたちが大暴れして俺たちの出番がほとんどない。

 もはやただの待機状態だ。

 それにしてもすごい、ゴブリンが紙切れのように舞っている。

 よく見ると上位種もあちこちに倒れている、どれだけの数を高ランクの人たちは倒したんだろうか。

 今はほぼ最後の詰めだろう、大きな建物を強襲している。

 落ちるのも時間の問題だろう。


 日が落ちる前に全てのゴブリンの討伐が終わった。

「みんな!ゴブリンどもの殲滅は終わった!我々は勝ったのだ!」

「「「「「オォーーーー!」」」」」

「これから上位種を回収、そのほかのゴブリンを一か所にまとめて燃やして処分する。最後にこの村の解体だ。村の解体は明日行うことにするとして、回収と処分を急げ!」

「「「おぉ!」」」


 どうやらこれだけの死体だと新たに魔物を呼ぶらしいので処分が必要のようだ。

 普段、数匹倒したくらいでは特に処分する必要はない。例外もあるらしいが。

 さっさと回収と処分を終わらせよう。疲れたから早く寝たい。

 と思ってまわりを見渡すとおびただしい数のゴブリンの死体がある。

 え?これを全部処分するの?マジで?


「はじめて大規模依頼を受けたやつはみんな同じ顔をするよ、がんばれ。」


 唖然と見ていた俺に、中年のハンターは肩を叩いてから死体の処理に向かっていった。

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