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14 ゾンビとスケルトンと上位種と

 野宿の最中にゴブリンが二回襲ってきた。

 両方ともシロが一番最初に気が付いた。シロにもピット機関みたいなものが付いてるのかな?それともほかの能力かもしれない。

 なんにせよお手柄だ。朝食のお肉は少し多めにあげよう。


「結構いるな。」

「そうだね。この村の人数以上いそうだよ。」

「ってことはゾンビどもに村を滅ぼされた可能性が高そうってことか。」

「そうなるね。」

「レイスはいないか。」

「ここから見る分には見当たらないね。これだけいるなら少しくらいいてもおかしくないけど。」

「シャー。」

「ふふ、そうだね、レイスがいたらよろしくね。」

「それじゃあはぐれてるやつから少しずつ倒していこう。」

「うん。」


 倒しやすいやつから倒すべく近づいていく。

 うっ、臭い。まだ多少距離があるのにこの匂いか。仕方ないとはいえ鼻が曲がりそうだ。

 少し厄介なのは多くのゾンビやスケルトンがクワや鎌をもっていることだ。

 力はそこまでないだろうが、武器になるものを持っているだけで脅威度はずいぶん違う。気を付けよう。

 スケルトンの動きは遅い、一度攻撃を防いでから剣をたたきつければ意外とあっさり倒せた。

 生前カルシウムを取っていなかったのかもしれない。ご飯のバランスは大事だ。

 動きはゴブリン以下だ、なるべくサクサク倒していこう。


 群れから離れている奴らはだいたい倒した。問題はここからだ。


「村に行かないとな、さすがに囲まれそうだ。こういう場合なにかいい手はあるのか?」

「ゾンビやスケルトンなら釣りだせばいいんじゃないかな。足も遅いから囲まれることなく倒せると思うよ。」

「なるほど、それでいこう。」

「それで、ちょっとお願いがあるんだけど。」


 お願い?珍しいな、なんだろう。


「私、ハンマーだからゾンビを倒すと腐肉をふりまいちゃうと思うんだよね。そうすると足場が不安定になりそうだし。だからできるだけスケルトンの相手をしたいなって思ってるんだけど、ダメかな?」


 なるほど、たしかにキリは豪快に振り回すからな。俺に腐肉がかかっても嫌だし了承しておこう。


「わかった。それじゃあゾンビはなるべく俺が倒すよ。」

「うん、ありがとう。」

「シロはレイスがでたらよろしくな。」

「シャー。」


 釣りだしは俺がやることにする、少しは役に立ちたいしな。

 村に入ると自分たちのテリトリーだと思っているのか、こっちに向かってくる。

 数が多いから結構な迫力だ。


「さぁこい!相手になってやるぜ。」


 相手が理解できるかは知らないが挑発してみる。これで少しでも釣れれば上出来だろう。

 十五匹くらいがついてきた。このままの距離を保ちつつキリのほうへ向かう。

 よし、俺が狙うのはゾンビだ。

 ゾンビはスケルトンよりもさらに動きが鈍い、その代わりにパワーがある感じだ。

 斧を振り下ろされるとかなり怖い。

 これまでのように受けてから倒すんじゃなくて、なるべく先に攻撃したほうがよさそうだ。

 死んでいるとはいえ人に剣を向けることになるとはな、気分のいいものではない。

 ゾンビに刃が食い込むときにぐちゃりと嫌な音を立てる。

 あぁ、早く終わらせたい。

 

「ひとまず終わったか。」

「村にはまだまだいるけどね。」


 わかっているけど認識したくない事実だ。

 同じことを何度も繰り返さないといけないのがつらい。いや、一気に来られるほうがつらいか。

 少し休憩を入れる。

 とはいえ何も食べない。食べたくない。


「割のいいい依頼だと思ったけど、考えを改めたよ。」

「あはは、こういう系統は人気ないからね。でもギルドへの貢献度にはなるからいいんじゃないかな。」

「それでも好き好んで受けたくはないな。」

「私もだよ。倒したところで売れるものなんて魔石くらいだしね。」

「俺は匂いがつらい。食欲がわかなくなるわ。」

「でも意外だね。」

「ん?」

「死体とはいえ、もっと人を切ることに抵抗があるのかと思ってたんだけどさ。」

「あぁ、前にゴブリンで吐いたんだ。多分その時に人型のものを切ることに少し耐性ができたのかもしれない。うれしくないけど。」

「なるほどね、盗賊が出た時に大丈夫かなって心配だったけど問題なさそうかな?」

「その時になってみないとわからないけど、戦えないことは無いんじゃないかな。もっとも、強くならないと勝てるかのほうが心配だ。」

「そうだね。今はなるべく安全な道だけ選んでるけど、もう少しランクが上がったらそうはいかなくなるもんね。練習には付き合うよ。」

「あぁ、よろしく頼むよ。さぁ再開しようか。」

「うん。」


 水分の補給だけして討伐に戻る。

 三度も同じことを繰り返したらさすがに数が減ってきた。

 もう村に入って戦っても大丈夫だろう。


「レイスはいないのかね」

「そうかも、今のところはいないね。」


 一軒ずつ中にいるゾンビたちを倒していく。

 室内はひどいありさまだ。においも充満して今日はご飯を食べれるかわからない。


「最後はここだよな。」

「お墓だね。」

「なんか浮いてるよな。」

「あれがレイスなのかな。」

「見たことないの?」

「ないよ。」

「襲い掛かるのも何か違うよな、もしかしたらただの先祖の霊かも?」

「うーん、レイスなら退治。霊なら成仏させてあげたってことでいいんじゃない?」


 なるほどね。間違ったことにはならないんだからシロに先制攻撃させちゃえばいいわけだ。

 思い切ったことをするね。


「シロ、聖魔法で消す。ううん、浄化してあげることはできる?」

「シャー。」


 本音だだもれだな。

 まぁ禍々しい感じがするし間違った対応ではないだろう。


「じゃあシロ、頼む。」

「シュロロローー。」


 シロが聖魔法を使ったとたんにレイス(?)は淡い光に包まれて消えていった。


「え?終わり?」

「シャー。」

「すごいな。えらいぞー、シロ。」


 シロの頭を撫でてやる。

 弱点特攻でもあったのかもしれない。最後の最後でシロ大活躍だったな。


「終わったことだし帰るか。」

「そうだね、もういないと思う。」

「じゃあ昨日と同じところで夜営してスタッカルドに戻ろう。」

「うん。」


 結局その日は何も食べれなかった。

 キリは食べないと力が出ないから食べないとだめだと言っていたがどうしても胃が受け付けなかったんだ。許してほしい。

 そのかわり朝食は食べた。まだ気持ち悪かったが、無理やり詰め込んだ。

 そしてスタッカルドに向かう。


 スタッカルド近くまで来て変わった魔物に会った。

 いや、その魔物自体はよく知っている。ゴブリンだ。

 大きさが大人と同じかそれ以上。そしてめちゃくちゃマッチョだった。

 俺の知るゴブリンは子供の大きさで、そこそこ引き締まってるかなというくらいなのに明らかにおかしい。

 キリが呟く。


「ゴブリンの上位種だ・・・」


 どうやらゴブリンの上位種らしい。はっきり言って同じ魔物とは思えない。


「どうする?迂回するか?」

「ううん、もう気付かれたみたい。」

「まじか。」


 どうやら戦うしかないらしい。

 間違いなく今までで一番の強敵だ。相手が一匹なのが唯一の救いか。

 気持ちを落ち着けて上位種と向き合う。

 キリが横から殴りつけた。が、上位種はそれを予想していたらしくかわす。

 ならばと俺が切りかかる。あたったのは腕だ、それでもたいして切り裂けていない。普通のゴブリンに比べ防御力も桁違いのようだ。

 だがそのすきにシロが噛みついた。おそらく毒を流し込んだだろう。少しずつ効いてきてくれればいい。

 相手の攻撃は大振りだ。あたらないとは思うが非常に怖い。キリも珍しく慎重に戦っている。

 何度か隙をついて攻撃したんだが腕を切り落とすこともできない。

 俺が切り落とす腕を持っていたらここまで苦戦はしなかったはずだ。そう思うと悔しくてたまらない。

 シロが何度も噛みついて毒を送り続けた効果がついに出た。

 上位種の体がふらついたのだ。

 ここぞとばかりにキリがとびかかる。

 だが上位種もそのタイミングを逃さなかった。

 とびかかったキリに大振りのパンチを放ったのだ。

 それを見て体が勝手に動いた、盾にすべての力をこめて横からパンチに体当たりをした。

 どうだ?

 どうやらキリは無事のようだ。キリの渾身の一撃が当たって上位種も倒せたらしい。

 キリがこちらへ駆け寄ってくる。


「大丈夫!?」

「あぁ、直撃したわけじゃないからな。」

「今、回復するから!」


 大げさなと思っていたが左腕が折れていた。

 正面からじゃなくてこれかよ。上位種ってのは伊達じゃないな。


「治ったよ。」

「あぁ、ありがとう。」

「ううん、こっちこそ。チャンスだと思ってちょっと焦っちゃった。」

「まぁお互い無事で何よりだ。」

「うん・・・でも。」


 なんだ?

 そう思ってキリが視線を追った先にはバラバラになった木の盾があったのだった。



「で、ほんとにこの上位種の頭を持っていくの?」

「うん、上位種が出たってことはゴブリンが村を作ってる可能性があるってことなんだよ。討伐部位と魔石だけでもいいんだけど、街から近いから確実な証拠として出したいんだ。」

「なるほどね、じゃあ早めに戻ろう。」

「そうだね、急いだほうがいいかも。」


 最近ゴブリンが多いと思ってたけど、なんだか面倒くさそうなことになりそうだ。

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