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13 人間大の虫って怖くないだろうか

 低ランクの依頼書を見ていて気になるものがあった。

 依頼・スケルトン、ゾンビ等の討伐。場所、コータリ村跡

 跡ってことはもうないんだろう、滅んでスケルトンやゾンビが出るようになったのか、それともスケルトンとゾンビに滅ぼされた村なのか。

 なんにせよ報酬がいい。これは美味しい依頼なんじゃないだろうか。

 キリに相談してみる。


「それはレイスがいる可能性があるから高くなってるんだと思うよ。」


 基本的にスケルトンとゾンビだけならばたいして脅威ではないらしい。

 しかしそこにレイスがいると一気に難易度が跳ね上がる。

 レイスは普通の攻撃が効かないらしい。魔法や特殊な武器、もしくは聖水などが必要となるらしい。

 パーティーに魔法使いがいれば受けるかもしれないが、それでも放置されることは珍しくないらしいのだ。


「一応、聖魔法を覚えていればずいぶん楽になるみたいなんだけど、めったにいないからね。」

「聖魔法?」

「教会に行って多少のお布施をしたら授けてもらえるらしいよ。聖魔法の才能があれば使えるようになるみたい。」

「へぇ、そんなに高いものでもないのならためしに行ってみるか?」

「いいけど、たぶん無駄だと思うなー。」

「まぁまぁ、もしかしたら使えるようになるかもしれないじゃん。物は試しだって。」


 これまではどの魔法も使えなかった。

 俺が使えるのは聖魔法なのかもしれない。そんな気がする。

 ようやく伝説が始まるのだ。


 教会は結構あちこちにあるらしい。

 というのもこの世界は人族の種類がすごく多い。

 大まかに分けて人、エルフ、ドワーフ、獣人、魔族、虫人といる。

 虫人とは獣人の虫バージョンだ。どこかになにがしかの虫の特徴を受け継いでいたりする。

 ちなみに魔族も特に敵対していない。おとぎ話になるほど大昔は種族ごとに争ったりしていたらしいのだが、今は基本的にどの種族も好きに暮らしている。

 もちろん種族主義がいないわけではない、そういう主義はいつの時代にも存在する。ただごく少数というだけだ。

 教会がたくさんあるのはそれぞれがいろいろな神様を敬ったり、先祖を敬ったりと目的が微妙に違ったり、病院の代わりをしているために数が必要になったりといろいろな理由があるらしい。

 ちなみにその教会のなかでも特に敬われる人が先祖返りをした者たちだ。

 混血が進んでいる中で稀に表れる、たとえば猫の獣人なら見た目が獣人というより二本足で立ってしゃべる猫とかがその種族の一番の祖先だとされて敬われている。そういう人が教会のトップにいたりするのだ。

 正直そこらへんの感性はよくわからん。

 立って歩く牛とかに話しかけられても俺は戸惑うだけだ。


 長々と話したが俺が言いたいのは目の前に人間大の喋るカマキリがいるってことだ。

 メチャクチャ怖い。

 お布施をして、なんだっけ?あぁ聖魔法を授けてもらうんだった。

 隣でキリが普通にしゃべってるのが信じられない。


「どうしました、震えてらっしゃいますね。緊張しなく手に大丈夫ですよ。すぐに終わりますから。」


 優しい人なんだろう。それは伝わってくるのだが、にっこりと笑う姿が捕食してやるぞという前ぶりにしか見えない。


「ふふふ、さぁ体を楽にしてこの魔法陣の中に立ってください。」


 光っている魔法陣に入る。


「準備は整いました。この聖水を飲んでください。適性があればそれで使うことができますよ。」


 何も考えず渡されたものを飲み干す。

 特に変化はない。

 俺もキリも聖魔法は身につかなかったようだ。残念。


「なかなか適性のある方はいないものです。気を落とされませんよう。おや?」


 カマキリの司祭さんがシロに目を移す。


「ふむ、この子は聖魔法が使えるのではないですか?素晴らしい適性を感じる気がするのですが。」

「そうなの?シロ。」

「シャー。」


 優しい光が部屋を包んだ。


「おぉ、これは素晴らしい。最初からこれほど使える人はそういません。将来が楽しみですね。」


 優しいと思われる目でシロを見つめる。

 そうか、シロは聖魔法も使えたのか。くっ、うらやましい!


 お礼を言って教会を後にする。

 正直、人間大のカマキリと話をしただけで、冒険を終えたぐらいに疲れた。

 異世界だってわかってたけど、今日ほど強く感じたことは無い。協会は俺にとって鬼門かもしれないな。


「さて、どうしようか。」

「なんだか疲れてない?」

「アハハ、ちょっとね。」


 苦笑いでごまかすしかない、こっちの人にはあれが普通なのだから。


「シロが聖魔法を使えることが分かったし例の依頼でも受けてみるか?」

「うーん、シロ、レイスが出てきても倒せそう?」

「シャー。」


 シロは自信満々にうなずいている。


「大丈夫だって、受けてみようか。」


 ギルドに行って確認してみる。まだあった。

 受付のソアラさんに受注すると伝えるとやんわりとやめたほうがいいと言われた。


「この依頼はレイスが出てくる可能性があるんですよ。魔法使いのいるパーティーなら問題はないんですけど、接近戦でのお二人だと、聖水を買い込んだりしないといけなくなるかもしれませんのでお勧めできません。」

「忠告ありがとうございます。実はこの子、シロって言うんですけど聖魔法を使えるんですよ。なので大丈夫です。もしそれでもきついようだったら逃げてきますので。」

「この子がですか?うーん、それなら大丈夫かもしれませんけど。無理はなさらないでくださいね。」

「はい、ありがとうございます。」


 場所は歩いて一日とちょっとといったところらしい。

 まだ何日もの遠出は無理だ、これくらいの距離が精いっぱいだからちょうどいい

 用意をしたら早めに向かおう。


 さぁ出発だ。

 シロは俺の腕に軽く巻き付いている。

 ここら辺ならそこまで危険もないだろう。好きにさせておく。

 っとまたゴブリンか、最近少し多くないか?隠れて薬草を取ってないからそう感じるだけなのかもしれないな。

 一匹だけだったので俺がやる。

 ゴブリンが向かってくる。さすがにゴブリン相手には慌てなくなってきた。

 さっとかわす。その時シロがゴブリンに噛みついた。


「え?」

「シャーーーー」


 様子を見るとゴブリンは起き上がれないようだ。

 毒。

 蛇なんだから毒があってもおかしくはない。

 観察しているとしびれているように見える、麻痺毒というやつかもしれない。

 そのまま見ているともう一度噛みついた。

 するとほどなくしてゴブリンは息絶えた。

 シロは麻痺毒と普通の毒が使えるようだ。


「シロ、そんなことができたんだな。すごいぞ。」

「シュロロロ。」


 どことなく得意そうだ。頭を撫でてやる。

 キリも驚いたのだろう、ゴブリンの状態を確かめたりしていた。


「すごいね、もう立派にパーティーの一員だよ。」


 うん?一番何もできてないのって俺じゃないのか?

 キリはパワーファイターと回復。

 シロは魔法と毒での状態異常

 俺は・・・あれ?荷運びもキリに負けてるしな。

 いやいや、俺はこれから伸びる、焦る必要はない。でも剣技は磨いていこう。あとパーティープレイだな。俺にしかできないこともきっとある。

 ここでヤケになったらだめだ、幸いにもいい関係を築けているんだから俺の頑張り次第のはずだ。


「よ、よし。先に進もうか。」

「うん。」

「シャー。」


 素直だな。

 一緒に戦えるように頑張ろう。


「あんまり村に近づくとスケルトンとかに襲われたりしないのか?」

「多少距離を取ったほうがいいかな、匂いもするしね。」

「あぁ、ゾンビか。」

「そう。そこまで規模が大きくなければいいんだけど。」

「ついてみないとわからない?」

「うん。村だから小さいとは思うんだけどね。」


 大規模だったらもっと高ランクの依頼になるみたいだしそこまで規模は大きくはないだろう。

 聞いた話によるとあの丘が目印になるそうだ。

 シロも眠くしている。

 今日はここらへんで野宿の用意をするかな。

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