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114 瘴気

 あれから何日歩いたのかわからないが、どうやら元々結界を張っていた場所まではたどり着いたようだ。

 ここまでは特に苦労もなくこれた。

 昼は妖精が索敵してくれるからほとんど魔物に会うこともなく進んでこれたし、夜も見張りを手伝ってくれたから二人体制にしないで済んだ。

 順調すぎるほど順調だ。


「問題はここからか、例の魔物を見つけないといけないから今までと違って探さないといけないからな。」

「そうですね、ですが手分けして探せばそれほど時間はかからないでしょう。」


 これだけ妖精がいればそうかもしれないが分散させて大丈夫なのか心配ではある。

 とはいえ妖精のことは俺よりセレンさんのほうがよく知ってるんだから、任せられるといえばそれに従うだけだ。

 セレンさんは指示を出して半分くらいの妖精が散らばっていく。

 おそらく探しに行ったんだろう、見つかることを祈るばかりだ。

 しばらく歩いていると黒いモヤのようなものがあちこちにみられるようになった。


「お気づきでしょうがこの黒いモヤが瘴気の残りです。魔物は瘴気を飛ばしてここらを自分の住みやすい環境に変え始めているんでしょう。」

「触ったらまずそうだな。」

「どんな影響があるかはわかりませんが、触らない方がいいと思います。」

「うーん、でもこれが瘴気の残りならシロで消せるんじゃないか?残りが消せないようなら本体も消せないだろうし。試してみるか、シロ。」

「シャー。」


 シロは頷くと体から光を放った。

 なんだかいつもの聖魔法とは少し違う気もする、別の魔法なのかな?

 シロの光に当たった黒いモヤはだんだん薄くなって消えていった。


「これくらいなら消せるみたいだな。シロ、本体を見たら瘴気を消せるかどうかわかるか?」

「シャー。」


 コクコク。

 わかるらしい。

 それなら遠目に見て消せるか確認してみないとな、消せないようだったらそもそも戦いに持ち込めないだろうし。


「素晴らしい力ですね。」

「黒いモヤを消す手段は今までなかったの?」

「はい、ありませんでした。魔物も厄介でしたが、この黒いモヤも厄介だったのです。」

「魔法で吹き飛ばすことも出来そうにないわよね。シロがいてこそ解決できることなのかもしれないわね。」

「私もそう思います。シロさんも特殊な存在なのでしょう。神聖な雰囲気も感じますし。」


 この食いしん坊な蛇が特殊な存在なのか?

 じっとシロの顔を見る、かわいいな、でも神聖さのかけらも感じられない。

 まぁ誰にどんな雰囲気を感じても自由だ、セレンさんはシロに神聖さを感じたんだろう。

 俺にとっては大切な仲間だ、変わりはいない。それで十分だ。

 偵察に行ってた妖精が少し戻ってきたようだ。


「大精霊様!瘴気を纏った魔物が増えてます!」

「それは本当ですか?」

「はい。大きさは例の魔物よりも小さいんですけど、何匹か近くにいるのを確認しました。」

「・・・他にも同じようなものが現れたとは考えにくいですね。おそらく似たようなウルフ系の魔物に黒いモヤがとりついたのではないでしょうか。近い種族なら適性があるのかもしれません。

 皆さん、力を貸してくれませんか?」

「なるべく力を貸したいとは思ってる。でもまずは見てからだ。」

「わかりました。案内をお願いします。」

「こっちです。」


 妖精の案内についていくと、黒いモヤに包まれた謎の魔物がいた。

 今まで見たことのないタイプの魔物だ。

 こいつらがここら辺を荒らしている奴らってことで間違いないだろう。


「いましたね。」

「ああ。シロ、どうだ黒いモヤを消せそうか?」

「シャー。」


 コクコク。

 いけるらしい。


「ちなみにモヤを消した後、俺たちで勝てそう?」

「シャー。」


 コクコク。

 勝てそうらしい。

 まぁ参考までに聞いただけだ、特に理由は無い。


「よし、エリィの魔法の準備が完了したら、シロにここから黒いモヤを消してもらって戦ってみよう。」

「わかった。例の魔物よりも小さいみたいだし、この魔物に勝てないようだったら多分私たちの手に負えないだろうしね。」

「私は集中するわ、準備が出来たら教えるからね。」

「頼んだ。」

「皆さんありがとうございます。少々予定とは違いましたが、ここで加護を差し上げます。」

「いいの?」

「はい。皆さんを信じます。」

「一番断りにくくなる奴だね。」

「ここで戦うって決めたんだ、勝ったら挑むことになるだろうし、負けたらそもそも命があるかわからない。もらえるものはもらっておこう。セレンさんよろしく。」

「はい。すぐに終わりますので。」


 セレンさんは手を合わせると何やら呟いた。

 その瞬間淡く輝いたと同時に、光の玉が四個飛んできて俺たちに吸い込まれていった。


「これで加護は差し上げました。少しではありますが全体的に能力があがっていると思います。」

「ありがとう、セレンさん。」

「後は戦闘の時に確認してみるか。」


 普通にしていてもよくわからない。

 でもセレンさんが嘘をつくとは思えないし、実際に上がってるんだろうな。

 どれくらい上がっているのか楽しみだ。


「準備出来たわよ。」

「わかった。シロ、頼む。」

「シャー。」


 さっきより強力な光を放つと魔物にとりついていた黒いモヤが消えていく。

 中から現れたのは。


「フォレストウルフ?」

「そうみたいだね。でも黒いモヤの影響で強くなってるかもしれないから油断は禁物だよ。」

「だな。よし、行くぞ!」


 俺とキリはフォレストウルフ三匹のもとに走っていく。

 フォレストウルフもそれに気が付いたようで迎え撃つ体勢をとった。

 一撃剣を振るう。

 普通のフォレストウルフならこれでおしまいだが、やはり黒いモヤでパワーアップしてるんだろう。

 横に飛び避けた後、こっちに向かってくる。

 盾で防いで横から蹴り飛ばす。


「やっぱり強くなってるみたいだね。」

「そうだな。でも対応できるレベルだ。」


 続いて噛みついてくるが、今度はカウンターで切り裂く。

 これで一匹。

 続いて横から襲い掛かってくるが、盾で防いで剣を突き刺す。

 これで二匹。

 もう一匹はキリが吹き飛ばして終わっていた。


「本体がフォレストウルフで良かったな。」

「本当だね。これでもっと強い魔物がさらに強くなってたら大変だったかもしれないもんね。」

「出番はなかったわね。」

「さすがにこれくらいはな。素材はどうしようか。」

「何か変わってるんだったら解体してもいいと思うけど、どうなの?」

「正直よくわからない。」

「なら別にいらないんじゃないかな。フォレストウルフの毛皮をわざわざ持っていくのもね。」

「そうね。お肉はまだまだあるし、特に必要ではないわね。」

「なら次だな。セレンさん他に似たような報告はあったのか?」

「いえ、今のところはありません。そんなに増えているとも思えませんし、いても少ないと思います。」


 それならいいんだけどな。

 とりあえず他の魔物が見つかるまで待機することになった。


「皆さんありがとうございます。」

「まだ元凶になってる魔物は倒してないよ?」

「そうですが私たちだけではこうはいきませんので。それに倒そうとしようとしているのは伝わってきますから。」

「全てはシロにかかってるかな。シロの魔法が効かなかったら俺たちもお手上げだ。」

「そうですね。でもシロさんの力なら大丈夫だと思います。」


 確かにシロの力は凄かった。

 黒いモヤを一気に取り払って、フォレストウルフを見せてくれたからな。

 これで元凶もフォレストウルフなら楽なんだけど。

 ま、そう都合のいい話はなかなかないよな。

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