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110 精霊の森に出発

 妖精がいるってことに驚いて基本的なことをしていなかった。

 改めてまずはお互い自己紹介をした。

 妖精の名前はルルというらしい。

 俺のイメージでは妖精と言えば羽の生えた小さい人って感じだったんだが、どう見ても光の玉にしか見えない。

 どうやって話したりしているのか気になるが、そこはファンタジーの不思議パワーがあるんだろうな。


「それで、精霊の森に行くのは構わないけど何か必要なものはあったりするのか?」

「特別必要なものは無いわ。いつもより長旅になるから食料を多めに用意しておくことくらいかしら。」

「途中で食料を調達できればいいんだけどね。」

「そこは運しだいだな。」

「携帯食料ばっかりになるのは嫌だなぁ。」

「大丈夫、それは誰も一緒だ。とにかく食料を買って出発するか。急いだほうがいいみたいだし。」

「なるべく急いでほしいわ。それと街から出るまでは私をどこかに隠してくれない?」

「確かに妖精は珍しいから見つかると面倒なことになるかもしれないわね。街を出るまではリュックを背負っておくから入ってていいわよ。」

「ありがと。街から出ればどうにでもなるからそれまでよろしくね。」


 買い物を終えてスタッカルドを後にした。

 一応精霊の森まで道は続いているらしいんだが、大きな道ではないみたいで人通りもそんなにないらしい。

 盗賊はいないだろうが、魔物は色々といるかもしれないな。

 あまり強い魔物に会わないことを祈るばかりだ。


「で、これが精霊の森まで続く道か?」

「そうよ。時々ハンターが使うくらいだから他の道に比べて頼りないけど、ちゃんと着くはずよ。」

「それじゃあルルは上空から魔物がいないか索敵してくれ。危険そうな魔物は避けていくつもりだ。」

「わかったわ。まかせてよね!」

「魔物が近くにいたら教えてくれよ?」

「わかってるわよ!」


 上空から見ててもらえばいきなり戦闘になるってことは無いだろう。

 気を抜きすぎるのも問題だけど、長旅だから気を張り詰めすぎてもきついから助かるな。


「今回の事、ジュンが受けるって言うと思わなかったわ。」

「そうだね、ちょっと意外だったかな。」

「まぁいつもの依頼に比べて危険そうだし、不確定な要素が多いのは怖いんだけど、もし何とか出来たら見返りは大きい気がしてな。大精霊に貸しをつけられるのは今後、どこかで助けになるかもしれないなって思ったんだよ。」


 大精霊が何か役に立つアイテムを持ってるかもしれないし、もしかしたらミスリルを貰えるかもしれない。

 大精霊がどんなもんかはわからないけど見返りが小さいことはないはずだ。

 仮に物がもらえなくても知識が役に立つかもしれないし、可能なら何とかしたい。


「普通は会えない存在だからね。何をしてもらえるかは分からないけど、確かに見返りは大きいかもしれないね。」

「問題は魔物よね。シロがいれば何とかなるって言ってたけど、どうなのかしら。そこの判断がよくわからないのが不安ね。」

「シロ、今回は頼りにされてるみたいだよ。倒せそうだったら頑張ろうね。」

「シャー。」

「無理そうなら退散すればいいさ。そこまで無理は言わないだろうし。命の方が大事だからな。」


 出来る事と出来ないことがある。

 そこの線引きは間違えないようにしておかないとな。

 初めて見る魔物の場合、どうやって見極めればいいのか難しいところだけど、みんなの意見を参考にすれば方向性は決まるだろうし、そういった能力も今後必要になってくるだろう。

 今回の魔物はちょっと特殊らしいけど、いい経験になる。


「ねぇ、前にゴブリンが八匹くらいいるわよ。」

「ゴブリンか。このまま歩いてればぶつかりそうか?」

「多分ぶつかるわね。」

「それじゃあ仕方ない、倒していくか。ゴブリンくらいなら避けていく方が面倒だ。」

「私はまた上で新しい魔物が来ないか見てるわ。」

「わかった。」


 そのまま歩いていくと、ルルの言った通りゴブリンが八匹いた。

 便利だな。いきなり戦闘になるよりは余裕をもって対処できる。

 俺とキリでサクッと倒して先に進む。

 もちろん魔石は回収済みだ。

 食べられる魔物じゃなかったのは残念だけど、このままの調子でいければ何の問題もないだろうな。

 いっそ食べられる魔物を探してきてもらうのも手か?

 それで万が一はぐれたりしても面倒だし、疲れちゃってもかわいそうだ、やめておくか。


「妖精がいるって助かるね。魔物に急に襲われる心配もないし、先に発見できるからだいぶ楽だよ。」

「確かに不意打ちだとどんな魔物でも油断できないから助かるわね。精霊の森までは比較的安全に行けるんじゃないかしら。」

「精霊の森ってどんなところか姉さん知ってる?」

「あんまり詳しくは無いわ。時々採取の依頼が出るって聞いたことがあるくらいかしら。」

「それじゃあどんな魔物がいるかわからないね。ちょっと不安だな。」

「特別な魔物がいるとも聞いたことは無いし、もし私たちじゃ辛そうな魔物がいたら避けていけばいいわよ。ルルがいるんだからそれくらいはできると思うわ。」


 問題は森の中だと見通しが悪くなるから、不意の遭遇がありそうなんだよな。

 カオススパイダ―の時も思ったけど森の中は気が抜けない。

 いつもなら発見できる魔物でも、木々に隠れて見えない時もあるからいきなり戦闘になったりする。

 いくらルルがいるからって油断はできない。


「そういえば妖精が珍しいって言ってたけど、そんなに珍しいものなのか?」

「昔は普通にいたらしいんだけど、人に捕まえられるようになってから姿を消したのよ。今では一部の森の奥深くや、山の険しい場所とか人の出入りがない場所にしかいないって言われているわ。そういうところに行ってもすぐに姿を消すらしいわね。」

「それがスタッカルドまで来たってのは珍しい事なんだろうな。」

「それだけ危機的な状況なんだと思うわ。そうじゃなきゃ絶対に来ないはずよ。」

「ちなみになんで捕まえてたんだ?」

「素材として見だしたんじゃないかしら。薬にならないかとか試そうとしてたなんて聞いたことがあるわ。」

「それは姿を消すわけだ。完全に魔物と扱いが一緒だな。」

「今では禁じられているけどね。だからといって姿を現すかって言ったら現すわけがないわ。」


 何をしてんだよって思うわ。

 これは解決してもそんなに褒美は期待できないかな。

 恨みつらみがたまってるんなら力を貸してくれるとは思えないし。

 なんだか帰りたくなってきた。

 でも一度受けるって言ったからにはせめて見るとこまではいかないとな。

 まぁ俺には関係ない昔のことだ、相手の出方もわからないし気にしたところで仕方ない。

 俺たちと個人的な関係を築けるようにすればいいや。


「また魔物がいたわよ。今度はコボルトね。」

「コボルトか、何匹くらいだ?」

「さっきと同じくらい。」

「それならこのまま行こう。それくらいなら問題ない。」

「わかったわ。」


 他の道に比べて魔物が多い気がするな。

 時々しか使われないなら魔物も増えるか。

 この分だとスタッカルドから遠くなるにつれて群れに会う可能性が高くなりそうだ。

 ルルにも気を付けてもらわないとな。

 気が付いたら魔物の群れに襲われてるなんてことにはなりたくない。


 その後も何度かゴブリンなどと戦うことになった。

 まだ歩いて一日目だというのにこんなに遭遇したのは初めてだ。

 今後の夜営のことを考えると頭が痛くなってくる。

 また見張りを二人体制にする事も考えないといけないかもしれないな。

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