11 発光する植物
オユーグ山についた。
そこそこいい時間だが、これから一休みして夜に探索することになる。
睡眠不足は敵だからな。なるべく体調は維持しておこう。
山の手前で交互に睡眠をとって夜に備えた。
夜。
松明をつけてオユーグ山に月美草を探しに向かう。
「ぱっと見た感じ光ってはいないよな。」
「多分淡く光るんじゃない?」
「よく見ないとわからない可能性もあるわけだ。」
「そうだね。とりあえず一つ見つかればわかるようになると思うんだけど。」
夜の山を歩く。
日本と違って星明りと松明しかないからすごく怖い。
炎の揺らめきでできる影が何かの生き物に見える。お化けでもでそうだ。
「魔物も出ないな。」
「出ないことはないんだけど、魔物も夜は休んでることが多いからね。よく出るとしたらスケルトンとかゾンビとか、後は一部の虫系も出ると思うよ。」
「あんまり戦いたくないな。」
「そうだね、魔石以外は実入りもそこまでないし。だから夜の依頼はそんなに人気はないかな。」
「だから採取の割には金額が少し高めなのか。」
「そういうこと。」
暗くて不意打ちを食らう確率も上がるし、いいことないな。
今回は夜営もやってみたかったし、夜にも慣れる必要があったから受けたけど、基本は明るいうちにできるものがいいな。
「何かあっちでぼんやり光ってないか?」
「ほんと?いってみようよ。」
行ってみると青く光ってる植物を発見できた。
想像していたよりきれいな光り方だ、やや暗めだが。
個人的にはホタルくらい光ってるのかと思ってたけど、どちらかというと海の深海生物やクラゲが光っている感じに似ている。
「きれい。」
「なんか毒がありそうだな。」
「・・・・・」
我ながらよくないコメントだな。
心なしかシロの俺を見る目も非難しているように感じる。
でも毒も薬も似たようなものっていうし、案外的外れな意見じゃないんじゃないかと思ってキリを見ると、あきれたような表情でこっちを見ていた。
「ジュンはモテないね。」
うるさいわ。声に出して反論できないところがつらい。
モテたことなんかないわ、誰かモテ方を教えてください。
「ま、まぁきれいだけどさ、取らないとな。」
俺にできることは話を逸らすことだけだ。
こういうときに下手なことを言うとさらに立場が悪くなる。俺は自分の力のなさを知っている、無理なことはしない。
キリはため息をつきつつ月美草を摘み取った。
「一つ見つけることができたから、もうどれか迷わないで済むな。」
「そうだね、それじゃあ明るくなるまでに取れるだけ取ろう。」
山の中腹あたりまで行くと月美草の量が明らかに増えた。
どうやらここら辺はまだそこまで採取されていないようだ。
「いっぱいあるね。」
「そうだな。こういう時って少し残しておいたほうがいいのか?」
「出来れば残しておいたほうがいいね。全部取っちゃうと生えてこなくなるかもしれないから。」
「じゃあ適当に残しつつ取っていこう。」
「うん。」
それからは取りすぎじゃないかっていうぐらいの量が取れた。
担いでいる袋が発光している。色が違うけど蛍にでもなった気分だ。
キリが担いでいる袋も結構いっぱいになってきた。持って帰らないといけないんだからそろそろ限界だろう。
ちなみに俺よりキリのほうが袋がだいぶ大きい。単純に力の差だ。悔しいが。
はたから見たらいい大人である俺が普通の袋を担いで、見た目小さい少女が馬鹿でかい袋を担いで納品しにいかないといけない。嫌だ。
でもキリの力は強いんだよな。
俺はキリのハンマーを少し持ち上げることだけで精いっぱいだった。
俺は俺のできることを頑張ろう。
「そろそろ山を下りようぜ。」
「そうだね、袋もいっぱいになったし予定より早いけど戻ろうか。」
みんなで軽く朝食を食べてから岐路に向かう。帰りにも祠にお供えをしておこう。
「結構とれたんじゃないか?」
「たぶんね、運がよかったと思うよ。」
運がよかったのか、誰も受けてなかったからなのか。
俺たちにとっては美味しい依頼になったな。
なにより仲間も増えたしな。
よしよし、シロはいい子だなー。
最初はよかったが草も袋いっぱいにあると重い。
休み休み行く。キリが持とうかって言ってくれたけど、トレーニングにもなるからと断った。
さすがに2袋担がせて俺は何も担がないのは耐えられない。
日が暮れたところで夜営だ。見張りの順番は前回と逆にした。これも経験を積むためだ。
今回も何も襲ってこない。夜行性の動物や魔物はここらへんには少ないのかもしれないな。平和な分には構わない。
俺が遅い見張り番だったので謎のスープを作る。キリを起こすか。
「キリ、朝だぞ。」
「うぅん、わかった。」
ドワーフだからか見た目が完全に子供にしか見えない。シロも眠そうだ。
「食べたら早めに出よう、すまないが多分休憩をはさみつつ行くことになると思うからな。」
「わかったー。」
肉を分ける。そんなに量もないからすぐに食べ終わる。
食事を楽しむのはスタッカルドについてからだ。
「さぁいこうか。」
「うん。」
ここからはゴブリンやコボルトがちらほら襲ってくる。荷物を担ぎながらは相手をできないのでさっさと片付ける。
やっぱり体が重い。気を付けないと思わぬダメージをもらいそうだ。
サクッと討伐証明と魔石を取り出して先を急ぐ。
「やっと街道まで来た。」
「ここまでくればあと少しだね。」
「さっさと行こう。ベッドで休みたいぜ。」
「その前に納品だね。劣化する前に納品しないと価値がずいぶんと下がるから。」
「そうだな、これだけあれば文句もないはずだ。気が楽だ。」
大きな街道だけあって人の行き来もある。危険も少ないから楽なものだ。
あぁ、街が見えてきた。なんて安心できることだろう。はやくその懐に抱かれたい。
「顔が変だよ。」
「街って母親みたいだなって思ってさ。」
「そ、そう。」
シロも理解はしてくれないみたいだ。大丈夫、ちょっと疲れているだけだ、すぐに戻るさ。
今は見逃してもらおう。
「着いたー!」
「まずは門番さんにシロのことを説明しないとね。」
「そうだった。」
登録自体は簡単に終わった。どうやら危険度が低いとみられたらしく簡単な手続きをして、登録してますよーっていう証明の首輪を付けることで終わった。
もっとも首輪を首につけるとご飯が食べれないのでしっぽのほうにつけることで許してもらったが。
「それじゃあギルドに行こうか。」
「あー、その前にちょっと寄りたいところがあるんだけどいいかな。」
「いいけど、どこ?」
「蛇と薬ってとこのマーリンさんのとこに寄りたいんだ、お世話になってるから、必要としてるならいくらか下せないかなって思ってさ」
「マーリンさんのところね、私もお世話になってるしいいよ。いこっか。」
キリもマーリンさんにお世話になっているみたいだ。面倒見もいいし腕も確からしいから人気店ではあるんだよな。多少人を選ぶ店ではあるかもしれないけど。
「はぁーい、いらっしゃーい。」
「こんにちはマーリンさん。」
「あらん、ジュンちゃんにキリちゃんじゃない。どうしたのかしら?」
「えっと私たち月美草の採取に行って来たんだ、もしマーリンさんのところで不足してたら売ろうかなって思ってきたんだよ。」
「月美草ね。ちょうど在庫が心もとなかったのよ。売ってもらえるだけお願いしようかしら。」
「私の袋の分だったら構わないかな。ジュンの分はギルドの納品に回すから。」
「それはうれしいわね、ちょっと色を付けて買い取らせてもらうわね。」
「いつもありがとう。」
「うふふ、こちらこそ。ちょっと待っててね。」
仲よさそうだな。やりとりはキリに任せよう。おれはシロと遊んでよ。
「おまたせ、代金よ。ってなぁにその子。かわいいわ!」
「え、えぇ今回の旅で仲間になったシロって言うんですよ。ほらシロよろしくって。」
「白い蛇なんて珍しいわねー。シロちゃん、よろしくねん。」
「シャー。」
「あら、返事してくれたわ。賢いのね、シロちゃん。」
どうやらシロはマーリンさんを気に入ったようだ。撫でられるままにされている。
その後マーリンさんのところを失礼してギルドに報告に行った。
どうやら俺の袋の分だけでも十分多かったようでソアラさんは驚いていた。
十分な量を納品出来てホクホクだ。
打ち上げで前に行ったお店でご飯を食べてキリと別れた。
シロはどっちについていくか迷っていたがキリについていくことにしたようだ。さみしくなんかない、ないったらない。
なんにせよ今日は屋根のあるところでゆっくり眠れる。三日とはいえずいぶん体に来ていたからしっかり休もう。
おやすみなさい。




