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10 白蛇との出会い

 最近の日課はランニング、筋トレ、素振りだ。

 日本にいたときはやっていなかったが生き延びるためには意外と出来るものだ。


 あれからいくつかの依頼を受けて個人のハンターランクがHからGにあがった。

 一番下のHランクはあくまでも適性を見るって感じらしく、ランクアップはそんなに厳しい条件ではなかったらしい。難しくなるのはここからなんだろう。

 ちなみにパーティーとしてはGから動いていない。パーティランクは下に引っ張られる傾向があるので少なくとも俺がもう一ランク上がらないとFには行けない。

 もうしばらくはここで頑張る必要がありそうだ。


 今日の依頼は月美草という草を取りに行くことだ。この月美草は名前の通り月が出ている時に美しく光るらしい。そして状態異常の回復薬になるとのことだ。

 夜に見つかりやすい草なので、今回は野宿をしないといけない。

 初野宿、必要なものの買い出しは終わったが見張り番が怖い。

 それに虫が嫌だ、虫よけスプレーなんてない、あぁ、想像しただけでかゆくなる。


「それじゃ、いこうか。」


 今回の月美草は山に生えるらしく、少し遠出をする。今回の目的地はオユーグ山というところだ。

 しばらく美味しいご飯はおあずけか。

 歩いているとゴブリンが襲ってきた。こいつらは本当にどこにでもいるな。

 ここしばらく練習しているおかげか、以前よりスムーズに倒せる。攻撃できるタイミングを少しずつ、つかめてきたのかもしれない。


「キリは月美草は取りに行ったことはあるのか?」

「ううん、ないよ。夜光ってるところはきれいらしいからそれも楽しみなんだよね。」

「それを取らないといけないんだけどな。」

「それは仕方ないよ、仕事だもん。」


 どうせならたくさん光っているところを見てみたい。

 一輪だけ光っているのもきれいかもしれないが、たくさん光っているのも幻想的な気がする。お金にもなるし。


「今回は初めての野宿だからちょっと心配だわ。」

「野宿するには二人は少ないからね、中には一人でするひともいるけど。」

「怖くないのかね。」

「経験とか罠とか、後はそういうときに便利なアイテムもあったりするから、上手にやってるんだろうね。」

「はぁー、真似できそうにないぜ。」


 予定では三泊、一日では目的の場所につかないから、行きと帰りにも野宿がある。

 盗賊が出たという情報もないらしいし、魔物に気をつけておけば多分大丈夫だろう。

 街道沿いにあるわけではないので、目印の場所から歩いたら小道に入る。

 今日は小道沿いで野宿になりそうだ。

 ちなみにテントなどはない、キリは女の子なので必要かと思ったんだが、二人だしお金の無駄だと一蹴された。


「そろそろ暗くなるから場所を見つけて枯れ木でも集め始めよっか。」

「おう。」


 岩があるところにいい場所が見つかったしと燃やすための木はすぐに集まった。

 木って結構重いんだよな、最近は体も鍛えてるから大丈夫かと思ったけど、重いものは重かった。

 ふと岩のそばに小さな祠があった。

 初めての夜営だし守ってくれないかなっていう下心と、今までなんとかなってきたお礼も込めて携帯食料の乾燥した肉を置いておいた。

 こういうのは気持ちだ、特に神様を信じているわけでもないのに、なんだかうまくいきそうな気もしてくる。


「それじゃあ見張りの順番を決めようか。って言っても先か後しかないけどな。」

「私それじゃあ先に寝させてもらおうかな。何かあったらすぐに起こしてね。」

「わかった、ゴブリン一匹でも起こすから安心して寝ててくれ。」


 ゴブリン一匹は微妙だったか、キリは苦笑いして横になった。


 火を焚いてると生き物が寄ってこないのは本当らしい。

 何もないのはとてもいい、でも暇だ。何も変わらないものを見てると正直眠くなる。


「シャー。」


 うん?

 祠のほうに小さい白い蛇がいた。これは縁起がいい。白い蛇は神様の使いだとか言われたりしてるんじゃなかったか。

 これだけ小さければ特に問題もないだろう。ほっておくことにする。

 すると近くに寄ってきた。


「なんだ、腹でもへってるのか?少しだけなら肉をやるよ。」


 白蛇は少しためらった後肉を丸のみにした。


「小さくても蛇なんだな。俺たちは今日夜営させてもらってるんだ。朝になったら出ていくからそれまでお邪魔させてくれよな。」


「シャー。」


 返事でもしてくれたのか?何となく敵意は感じない。

 もう白蛇はすぐ近くにいる。

 なんとなく頭を撫でてみる、おとなしいな。すべすべしてる。

 手に乗っけてみる。おぉ、絡みついてきた。白蛇を装備してる感じだ。

 かわいく見えてきた。


「人懐っこいなー。噛むのはやめてくれよ、小さくても牙はあるんだろうからなー。」


 本当に人懐っこい。蛇の生態には詳しくないんだよな。

 あっ、そういえば頭を撫でられるのは好きじゃないって聞いたことがあったような。でもさっき撫でても大丈夫だったし。大丈夫な子なんだろう。

 蛇の扱い方はよくわからない、この子の主体性にまかせればいいか。

 少なくとも害はないんだからそれで十分だ。

 見張り番の時間は白蛇と戯れながら過ぎていった。


「キリ、そろそろ時間だよ。」

「うぅ、わかった。」


 キリはそこまで寝起きがいいほうではない。俺も人のことは言えないが。

 あれ?襲われたら大丈夫なのかこのパーティー。

 そんなことを考えている間に目が覚めたようだ。


「あれ?その子どうしたの?」

「さっき友達になった。結構人懐っこい子だぜ。」

「へぇ、朝食ってわけじゃなかったんだね。」


 ひどいことを言う。そもそもそんなに食べるところなんてないだろう。

 俺の不満が伝わったんだろう。手をひらひらしながら話を変える。


「冗談だよ。その子がいたくらいで変わったことはなかったってことだよね?」

「そうだな、何もなさ過ぎてびっくりしたくらいだ。」

「まだ半分だからね。朝になったら起こすからそれまで寝といて。」

「あぁ、そうさせてもらうよ。おやすみ。」


「おきて、朝だよ。」

「んん、もう少し・・・」

「朝ごはんなくなるよ?」

「わかった、おきるよ・・・」


 だめだ、夜営は眠れる時間が少なくてつらい。

 布団もないし、あー体がバキバキいう。

 仕方ない、体に鞭打って起きよう。


「オハヨウ。」

「おはよー。眠そうだね。」

「どうしてもね、動き出せば大丈夫、多分。」

「とりあえずご飯を食べようよ。スープは出来てるから、肉3人分よろしくね。」

「助かる。・・・三人分?」

「その子にだけ食べさせないのもかわいそうでしょ?」

「おぉ、まだいたんだ。」

「ずっといたよー。私も仲良くなったしね。」

「よし、じゃあ三人分だな。」


 俺とキリと白蛇のぶんの乾燥肉を切り分けて朝食にする。白蛇は小さいから肉も小さめだ。


「それじゃあ片づけて出発しようか。」

「そうだな。お前も元気でいるんだぞ。」


 簡単に片づけをして先に向かう。


「シャー」


「ねぇ。」

「あぁ。どうしようか。」


 白蛇が付いてくるのだ。

 連れて行っていいものか?こっちは危険なハンター生活だ。キリにも意見を聞いたほうがいい気がする。


「どうしたほうがいいと思う?」

「私は連れて行ってもいいと思うよ。せっかく仲良くなったんだし。街にも登録をしておけば入れることができるしね。」

「そうか、街にも入れるなら連れて行ってもいいかな。よし連れて行こう。」


 振り向くと、すぐそばまで白蛇がきていた。


「俺たちはハンター、エスプレッソ。一緒に来るか?」

「シャー」


 相変わらずしっかりと返事をしているみたいだ。


「よし、これから俺たちは仲間だ。俺はジュン、よろしくな。」

「私はキリだよ、よろしくね。」

「シャー」


 かわいい。戦闘は出来ないだろうけど仲間だ、大切にしよう。


「名前どうする?」

「名前かー、すぐには思いつかないな。」

「んふー、へびへび丸ってどうかな?」


 ネーミングセンスが幼稚園だ。却下する。

 とはいえ俺もネーミングセンスに自信があるわけではない。

 何時間もの話し合いの末「シロ」に決まった。犬か。

 安直と笑わば笑え、センスのない人だけだと知恵を絞ってもこんなもんなのだ。

 唯一の救いはシロ自信が嫌がっていないことだろう。

 そのシロは今キリの頭の上でとぐろを巻いている。

 白くてよかったな、茶色かったら別のものに見えていたところだ。

 そんなことを思ったのを感じ取ったのかキリが「なに?」と聞いてきた。

 なんでもないと答えつつ、新しい仲間とともにオユーグ山に向かった。

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