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創造神は騒々しい  作者: 忌野希和
創造神は仰々しい
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無差別加護

 奇妙な二人組だった。


 一人は活発な女の子ですごく可愛いくて、すぐに仲良くなった。

 もう一人は女の子の従者の男の人で、彼は掴み何処が無い。


 見た目は細くて隙だらけなのだが、たまに気配を見失う。

 二人には不思議な共通点が二つある。


 一つは会話や動作の端々に教養を感じるということ。

 しかし上品で優雅という感じではないので、神官や貴族とは違う。

 強いて言えば商人が近いかもしれない。


 もう一つは度胸があるということ。

 <闇の眷属>に襲われても緊張一つしていなかった。

 魔獣に慣れていない神官や貴族だったら恐怖で動けなくなるし、これは商人でも同じだ。


 それにたとえ冒険者でも全く緊張しないというわけにはいかない。

 緊張しすぎも良くないが、適度に緊張していないと咄嗟の対応が遅れてしまう。


 狼人ごときに遅れは取らないが、初対面の冒険者を全面的に信頼しているというのも変な話だ。

 ……信頼だとしたら嬉しいけど。


 狼人に脅威を感じていなかった、と言った方がしっくりくるかもしれない。

 というのがカンナとカルマに対するルカの感想である。


「うう、名残惜しいよ。この手触りの良い耳と尻尾がぁ」

「ほら離れてください。ルカさんも迷惑しているでしょう」

「うがー」


 カルマに首根っこを掴まれて、カンナがルカから引き離される。

 主従関係だという割りにカルマがカンナに取る対応は結構雑だ。


 この辺りもやはり神官、貴族、商人のどれにも当てはまらない。

 もし貴族の従者がこんな無体を働いたら斬首ものである。


 カンナに撫でられている間もルカは無表情だったが、口下手で表情も変わらないだけで、撫でられるのは決して嫌いではい。

 しかもカンナに撫でられると妙に心地良いのだ。


 周りからは不機嫌そうだと誤解しているに違いないと本人は思っているが、親しい者は感情豊かなその尻尾を見て判断しているので、全然そんなことはなかった。

 会って間もないカルマも尻尾の事を見抜いていた。


 しかしカンナは全く気が付いていないので、あえて気付いていないふりをする。

 気付けばまた調子に乗って撫でまくるに違いない。


「ルカさんはこのまま護衛を続けるのですか」

「うん、そう」


 街と街を繋ぐ乗合馬車は何日もかけて、いつくもの街を中継する。

 カンナとカルマは途中下車となるが、今回のルカの護衛依頼は次の街までの契約だった。


 護衛依頼が終わり次第ルカは拠点としている街に戻る予定だが、実はルカの拠点はカンナとカルマが降りた街アリミラである。


 なので運が良ければまた会えるだろう。

 二人に見送られながらルカと乗客を乗せた乗合馬車は出発した。


「あの二人、何者なんだろうな。身なりも綺麗だしやっぱり貴族様かな。高そうな剣持ってたし」


 カルマたちと入れ替わりで馬車の護衛に就いた、人種の少年がルカに話しかける。

 護衛の補充要員で、ルカとも顔見知りの少年で名をダリデという。


 ルカより二年後輩で新人冒険者の彼の目には、二人は貴族に映ったようだ。

 確かに一見すると貴族のような二人だったが、様々な乗客を見てきたルカは先に述べた通り違和感がある。


「ルカぐらい強い加護があれば貴族の護衛として雇ってもらえるだろう?うまくやれば騎士に出世して、運が良ければ名誉男爵も夢じゃないのに」

「私がアリミラを離れられないのは知ってるでしょ」

「そりゃ知ってるけど、もったいないなと思ってさ。俺も強い加護が欲しかったなぁ」


 【武闘神の加護】を持つダリデが嘆く。

 【武闘神の加護】は様々な武具の扱いや技能に恩恵があり汎用性の高い加護だが、ダリデの授かった加護は弱めだった。


 仮に加護を持たない一般的な冒険者の膂力と比較するなら、ルカの加護は鎚系統に限っては一般冒険者の二倍から三倍に相当する膂力補正がある。

 対してダリデは様々な武器で恩恵も受けるものの、膂力換算としては精々二割から三割増しだった。


 強くはないが、そこまで弱いわけではない。

 冒険者を目指す者としては及第点だし、武器を選ばない分ルカより様々な依頼に対して柔軟な対応ができる。


 それにルカは小柄なので素の身体能力は低い。

 ダリデは人種の中でも体格が良いほうなので、鍛錬次第では一般冒険者よりも身体能力は高くなる可能性が十分ある。


 加護以外も含めた総合的な戦闘能力は、ルカと比較しても思っている程の差は出ないはずだ。

 若さゆえに分かり易い強さに惹かれるのは理解できるが、もっと自分自身を見つめ直して欲しいものだ。


 ダリデに今そのことを説教しても聞く耳を持たないので、数年後にまだお互いが生きていれば教えてあげようとルカは思っている。


 ルカ自身に成り上ろうという野心は無い。

 孤児である自分を生かし、育ててくれた孤児院に恩を返したいだけである。


 ルカの育った孤児院は常に経営難だった。

 地母神を司る神殿の直轄だと運営も楽らしいのだが、アリミラの孤児院は領主が運営している。


 孤児院の先輩の義姉曰く、神殿直轄だと地母神の信者が運営することになるが、領主がそれを嫌ったからだそうだ。

 領主は孤児などどうでもいいようで、最低限の運営資金しか支給しなかった。


 それが経営難の理由である。

 孤児の受け皿が出来れば良しということで、孤児院が設立されたのを確認して神殿は引き下がってしまった。


 どうせなら運営を監視して欲しかった。

 そうすれば孤児たちがひもじい思いをすることは無いのに。

 おかげでルカと義姉は孤児院のために日銭を稼ぐ事に必死になっていた。


 無論孤児院のために働く事に異存はない。

 しかし義姉との二人の稼ぎだけでは孤児院の運営が潤沢とまでは言えない。

 ルカが成人する前の、義姉一人で孤児院を支えていた時よりはましではあるが。


 現在孤児院出身で成人しているのは義姉とルカの二人だけで、今後成人が増えてもその子たちに孤児院の運営費を負担させるつもりはないというのが二人の総意だ。

 義姉より優れた加護をルカは持っていたため、ダリデの言う通り貴族の御眼鏡に適う可能性はあった。


 ただし獣人でなければだが。

 アリミラがあるオレスター王国は亜人差別が根強い。


 領主が神殿直営を嫌ったのは、神殿が差別撤廃を謳っているからという側面もあった。

 差別の少ない他国に行けば成り上がれるかもしれないが、それでは孤児院の支援が出来なくなり本末転倒だ。


 結局地道に稼ぐしかないという結論に至り、割が良くて安定している乗合馬車の定期便の専属護衛としてルカは働いていた。

 稼ぐだけならもっといい仕事はある。


 例えば冒険者としてパーティーを組み迷宮に潜り、財宝や貴重な魔獣の素材を持ち帰れば、馬車の護衛の数回分の収入になる。

 ルカほどの加護の持ち主であればパーティー勧誘も引く手あまただ。


 しかし迷宮に潜ると長ければ半月は費やさなければならないし、必ず財宝や素材を手に入れられるとも限らない。

 最悪下手を打って死んでしまえば、路頭に迷うのは孤児院の子どもたちだ。

 安定した収入を得られて、比較的安全で、且つ定期的に孤児院に戻れる仕事となると条件が厳しい。


 そこで見つけた仕事が乗合馬車の定期便の専属護衛である。

 専属ということで通常の護衛よりも報酬が上乗せもされているのだが、雇う側にもルカとの専属契約は利点があってのことだった。


 先に述べた通り迷宮に潜ったり魔獣を討伐したほうが稼げるため、馬車の護衛は冒険者の仕事としては割りの良い仕事ではない。

 また街道沿いで遭遇する魔獣は基本的に弱いため、報酬と難易度の両面から新米冒険者向けの仕事となる。


 だが稀に強い魔獣が現れて新米冒険者では対処しきれず、馬車と乗客に被害が出ることがある。

 片道の移動手段として熟練冒険者が依頼を受けることも稀にあるので、運が良ければ被害が出ないこともあるが、それは更に稀なことだ。


 ルカの実力なら強い魔獣も撃退することが可能なので、ルカが護衛する馬車はまだ一度も被害を出したことが無く評判が良い。


 評判が良いと利用者が増え、利益も増える。

 雇う側と雇われる側、双方にとって得のある良好な関係と言えよう。

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