side いろは
(……あ、みーくん)
いろはは、試合の待機中、男子の方のコートを見やる。
「あ、そろそろ始まるんじゃない?」
隣にいるいろはの友達がいろはに声をかけた。コート中では、12人の男子が各々気合いを入れている。
いろはは当然、一番最初に探すのは、大好きな幼馴染である緑の姿。普段はのほほんとしているが、もう一人の幼馴染である翔太とやる時にだけ見せる、あの獰猛な目。そのギャップにいつものようにやられてしまう自分がいる。
ーーーーーーーまぁ、普段の姿も大好きであるが。
(……かっこいいなぁ)
姿を見るだけだ、身体が熱くなり、心臓が忙しなく働く。どれだけ好きなのだろうと、おもわず笑ってしまう。
「お、今日もお熱ですなーいろはちゃん」
「ねー。白石くんしかその目に写ってないよね……あんなに地味なのに」
「じ、地味じゃないもん!」
好きな人を悪く言われているようで、思わず反論してしまういろは。
(…………しまった!)
しかし、二人のにやにやしている顔を見て、嵌められたことに気づいたいろは。
「……んもっー!いろはちゃんはかわいいにゃー!!」
「ねー!大丈夫だよ!地味なんて思ってないから!」
「~~~~~っっ!!」
顔を赤くし、為す術なく友達二人に抱きしめられ、ゆりゆりした空間が形成される。
「~~っ!もう!バカ!」
「「ごめんごめん」」
謝ってはいるが、その瞳にはまだまだからかいの色が残っている。む~~~!と思いながらも二人を赤い顔で睨むが、まるで全然怖くなく、むしろ二人のからかい欲を促進させる。
まだなんかからかってやろうか……と、二人がアイコンタクトをした瞬間、ダン!ダン!とバレーボールが二回打ち付けられた音が聞こえた。
「……ねぇ、あれ飯塚くんじゃない?サーブ打つの」
「……ホントだ。去年、確かユース候補の合宿に言ってたよね?進藤くんと一緒に」
「……しかもあれ、完全に白石くん狙ってるでしょ。あからさまに指さして…………大丈夫?」
単純な力なら、翔太をも上回るほどの力を持つ公平。多分そこら辺の一般人が彼の本気サーブをレシーブしたら腕がもげるだろう。
まぁでもーーーーーー
「大丈夫」
ピッ!と教師が笛を吹くと、三秒後にフワッ、とボールを高くあげる。
「んげっ!?ジャンプサーブ!?」
「日本代表1歩手前が素人にしていいものじゃないでしょ………」
「大丈夫」
ドパン!と強力な音が体育館を響かせる。その音がいかに強力かは、バレーを全く知らない人でもわかるだろう。
だがしかし、いろはは緑を信じている。
だって、彼が幼馴染とともに積み上げてきたことを知っているから。
「ちょっといろは!いくら白石くんのことが好きだからってーーーーー」
「いっっっ!!」
「「!?」」
フラフラ、と不格好ながらも、しっかりと上がるボール。
「ナイスだ緑!」
それは、既に助走を開始し、跳んだ翔太によって誰にも触れられずに地面へと叩きつけられた。隣にいる友達が二人は、信じられない!と言った顔つきであり、いろはがこっそりとドヤった。
ーーーーー緑は、人にしては珍しく、積み上げた経験値がかならず結果に反映する稀有な才能を持っている。
その気になれば、どの競技でも世界トップレベルにまで通用するポテンシャルを秘めているが、本人は面倒くさがりなので、真面目に練習しない。故に《《器用貧乏》》。
しかし、中学の頃、バレー部でもないくせにほぼ翔太と練習していたバレーに関しては、それなりのーーーーそれこそ、日本代表1歩手前には届かなくとも、全国レベルの実力はあるのだ。
「頑張って、みーくん………」
いろはは、愛しい人のために、応援をする。
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たくさん付いたら出版社からお声がかかります。多分