十七話
翔太が戻ってきたが、あまりにも美咲が翔太を狙い撃ちにしてしまうために、急遽罰ゲームはなしになった。美咲、完全に目的を忘れていた。
2時間程して、そろそろいい時間なので、昼飯を作ることになったのだが………。
「え?翔太が作ってみたい?」
「おう」
いつもの如く、緑といろはがエプロンを装着しようとした瞬間、そこに待ったをかけたのが翔太である。
「ほら、俺ってさ……いつも二人に飯作ってばっかりだし………たまには俺がさ作ってやりたいって思ってよ」
「別に気にしなくていいんだぞ?」
「そうだよ。翔太くんのためだもん」
大事な幼馴染が活躍するのは嬉しい。だからこそ、活躍をさせるための最大限のバックアップは自分たちが。そう思っていた緑といろは。
「いいから!二人は大人しく待っとけよ!」
「ちなみに、一応私も補助に着くわ」
と、美咲が翔太の援護射撃にでたので、緑といろはは顔を見合せた後に、頷いた。
「………そうか、じゃあお言葉に甘えさせてもらおうか」
「うん!美味しいの期待してるね!」
「任せな!」
ドン!と逞しい胸を叩く翔太。美咲が冷蔵庫から材料を取り出し始める。
「ところで、何を作るんだ?」
「昼だからな。チャーハンを作ることにした」
まだまだ翔太は料理初心者。レシピを見ながらならば、ようやく作れると言った腕前である。
しかし、それでもたまには失敗をするため、今回は傍で美咲が着くということになったのだ。
コトっ、と二人の目の前に皿が置かれる。緑達の対面には翔太達が座り、翔太の顔はどことなく緊張している。
パクリ、と緑が一口食べる。
「………うん、ちゃんと美味いよ翔太」
「うん、美味しいよ」
「お!ほんとか!」
「ほんとほんと」
そのまま一口二口と食べていく緑といろは。それを見て、翔太が安心しきって背もたれに思いっきり背中を預ける。
「あとお前、こっそり練習してただろ?」
「げっ……なんでバレたんだよ」
「当たり前だ。翔太はレシピ見ながらしか作れないからいちいち手順を確認しながらだが、さっきは何も確認しなかっただろうが」
「それに、動作もそこそこスムーズだったし。あまり美咲ちゃんも大きくは手伝ってないからかな」
「……はぁ、敵わないな。お前らには」
その後も和気あいあいと食べ、美咲と翔太があーんしているのに対抗したいろはが緑に対して同じようなことをやったり、やり返されたりして、昼食が終わる。
そして、午後からは学校から出された課題を三時間ほどやることになっている。
ここで教鞭をとるのが、鳴声高校でもTOP10に入るほどの学力を持ついろはと、通っている学校は違うが、成績優秀な美咲がそれぞれ緑と翔太を教えながら黙々とやっていた。
「……あ、みーくん、ここ文法間違えてるよ?」
「………む?」
「ほら翔太。ここ公式当てはめ間違えてる」
「は?」
そんなこんなで三時間たち、夜ご飯の買い出しに行く時間になったのだがーーー。
「いいのか?任せても」
「おう、任せな」
自ら買出し班に立候補した翔太と美咲。もちろん、これにも意図があるのは説明しないでもわかるだろう。
「メモは持ったか?サイフは?それと護身用具ーーー」
「だから母ちゃんかお前は!あと護身用具はいらねぇ!」
しつこく緑が翔太に忘れ物チェックをしていた。
「それじゃ美咲ちゃん。翔太くんのこと、お願い」
「任せて」
「おい!そこ二人!?」
翔太の嘆きの声が聞こえたが、三人は無視した。
「……ったく。どれほど信用ねぇんだ俺は……」
「え?」
「だって……」
「あなた1回全部やらかしてるじゃない」
「うぐ………」
撃沈。ちなみに、護身用具のくだりは、中三の頃、ストーカー被害にあっていた美咲を助け、軽い怪我をしてしまったからである。
「……ったく。行ってくる」
「おう、気をつけろよ」
緑の言葉を聞いてから家の外へ出る二人。それを見送った緑といろは。
「………さて、何しようか」
「だねぇ……」
暇人である。




