十二話
「す、好きです!俺と付き合ってください!」
「ごめんなさい!」
放課後に響く、勇気ある告白の声と、それを秒でぶった斬る声。
告白をしている男子は、三年生。サッカー部のキャプテンとして期待され、女子人気も高く、それなりのイケメンである。
それの告白を受けているのは、亜麻色の髪、端正な顔立ちで、10人中10人は絶対に振り返る美人。
そう、槙野いろはである。
放課後、靴箱にこれまたなんとベターな方法として、『放課後、体育館裏で』という、いかにもこれから告白しますよというラブレター。
それも、あのイケメン先輩からだとなれば、少しくらいは同じクラスの女子や、学年の女子が色めきだす。
しかし、いろはに至ってはその話は同学年の中では起きない。もっと言うなら、そもそも同学年でいろはに告白をするバカはいない。
なぜなら、見せつけられるからである。1度はその美貌に必ず目を奪われ、何となく好意を抱くが、いろはと緑の、もはや熟年夫婦が醸し出す雰囲気にやられ、その後、同じくやられた男子に慰められ、『二人を見守り隊』に入るのだ。
よって、必然的に、いろはへ告白するのは上級生か下級生。
「ど、どうしてだい!?」
まさか断られると思ってもいなかったイケメンが慌て出す。
「その……私、あまり貴方のこと知りませんし……そして、貴方に魅力を感じないからです」
「っ!?」
イケメンの拳に力が入った。実はいろは、こう見えて結構ズバズバ言うタイプである。なぜなら、これ以上付き纏われたくないから。
だって、いろはには緑がいる。緑以外の男なんて願い下げである。
「ごめんなさい」
もう一度、ぺこりと頭を下げてその場を立ち去るいろは。
「…………自分が可愛いと思って調子乗りやがって!!」
「っ!」
フラれて、逆上したイケメンが拳を振り上げ、いろはへ迫る。それに気づいたらいろはが、衝撃に備え、目を閉じる。
だがしかし、お忘れではなかろうか?
いろはが告白をされるのである。その事実に、幼馴染が見張らないわけが無いだろう?
「……てめぇーーー誰に手を出そうとしてんだ……?」
殴ろうとしていたイケメンの拳を片手で受け止める緑。
ずっと身を潜めていた草かげから忍者のごとく現れた緑。いろはのためなら人類の限界など軽く超える男である。
「ヒッ………」
緑の殺気に怯え、1歩2歩と下がるイケメン。しかし、下がると誰かにぶつかる。
「よぉ、犯罪者」
「し、進藤翔太!?」
幼馴染二人目、進藤翔太である。
「お前がいろはに襲いかかろうとしたのはしっかりと録画してある……次にまたいろはに接触しようとしたらーーーー」
緑がガッ!とイケメンの胸ぐらを掴み、引き寄せた。
「………社会的にも、男としても潰すぞ」
「ヒッーーーーーー」
ヒイイイイイイ!!と体育館裏から、情けない声が響いた。
白石緑。いろはを守るため、護衛術を8年間習っていた。
それはもう惚れる(確定)。
イケメンが情けなく逃げるのを見送った緑と翔太。緑がポケットからウエットティッシュを取り出して、先程胸ぐらを掴んだ手をしっかりと念入りに拭く。
「みーくん!」
「……っとと」
助けてくれた緑の胸の中に勢いよくダイブするいろは。緑はそれを軽くターンしてからしっかりと受け止めた。
「よしよし……」
優しく抱きしめ、頭を撫でる。それされれば、先程襲った恐怖など、軽く吹き飛ぶいろはである。
「みーくん……それと、翔太くんもありがとう」
「あぁ。すまないな翔太。わざわざ部活に行くのを遅らせてしまって……」
「構わん。いろはのためだ」
翔太の優先順位的に、美咲が一位で、二位が緑といろはが同率で並び、その次にバレーである。
ちなみに、緑は言わずもがないろはに振り切っている。はよ付き合え。
「それじゃあな緑。今日の夜期待しとくわ」
「おう、任せな」
いろはを抱きしめたまま翔太を見送る緑。ちなみにだが、ここは体育館裏であるため、バレー部はすぐそこの体育館で練習している。
「さて飯塚。撮ってたな」
「バッチリさ」
緑が視線を体育館倉庫の窓へ目を向けると、そこからひょこっと飯塚が現れた。
「い、飯塚くん!?」
「やぁ槙野さん。さっきは大変だったね」
飯塚公平。セコム三人目であり、今回の新しい協力者。
「サンキュ。今度高総体の時はお前専用のレモンの蜂蜜漬け作ってやるよ」
「ありがとう。きっちりと僕も校長先生や、サッカー部顧問の先生に報告しておくよ」
「おう頼んだ」
そしてまたひょこっと顔を引っ込めた公平。今回、緑達から話を聞いて逆上の可能性があることを聞いて、協力することを決意した。
「………飯塚くんにも協力してもらってたの?」
ちなみに、緑と翔太が見張っているのはいろはも容認済みである。なぜ容認しているかは……まぁ、言わなくてもいいだろう。
「まぁな。潔く諦めるなら何もしなかったがーーーーま、お前に手を出したのか間違ーーーいや、人生の間違いだったな」
と、優しくいろはを撫でる緑。
さて、この二人はいつ付き合うのか………。




