十一話
「お疲れ」
「おう!」
トロフィーを大事に抱え、こちらにやってくる翔太を出迎える緑達。
あの衝撃的スパイク後、ついにゲスブロッカーを見事に躱し続けた翔太。日凛を下したあとも、並み居る強豪たちもバッタバッタなぎ倒し、見事優勝をもぎとってきた。
「……お前、本当にそれ持ってきたのな」
キラリ、と夕日を受けて紅く輝く優勝トロフィー。それは、翔太の腕の中で大事そうに抱えられている。
「おう、いつもレモン漬け作ってもらってる幼馴染の所に一日だけ飾りたいって言ったら貸してもらったぞ」
「えぇ………?」
ちなみに、満場一致だったと言っておく。
「ま、緑の家に飾れるのは今日だけだけど……ほれ」
すっ、と翔太から差し出されるトロフィーを、渋々とだが受け取る緑。ズッシリとした、重さが伝わる。
万が一落とさないようにしっかりと抱きしめる。それを見ていろはが嫉妬した。
(………いいなぁ、あんなにしっかりと……)
無機物に嫉妬するいろはである。
「…さて、帰るか。あ、翔太はしっかりと美咲ちゃん送って帰れよ」
「おう、分かってるよ」
「ならよし。いろは」
「あ、うん。それじゃあね!美咲ちゃん!翔太くん!」
緑が名前を呼ぶと、その意図をすぐに察して、緑の隣へ並ぶ、その際に、ちょこんと服をつまんだ。
「………何あれ?熟年夫婦?」
「名前だけで意図を察せるものなの……?」
それを見た二人は、ぽかんとして二人を見送った。
暫くした後、翔太と美咲はくるりと体を回転させ、歩き始めた。
「それで美咲、メールで送ったと思うがーーー」
「えぇ」
それは、さりげなくいろはに緑のどんなところが好きか聞いてくれというメール内容だった。
「その……ごめんなさい。翔太に見蕩れてて聞くのを忘れていたわ………」
「あらまぁ………」
翔太は苦笑いをした。理由が理由なために、なかなか翔太も言いづらい。
やはり、バカップルである。
「でも安心して翔太。明日、いろはちゃんとお出かけする約束を取り付けたわ」
「さすがだぜ美咲」
翔太は、ギュッ、と美咲の手を握った。
「お前がいろはで」
「あなたが緑くん」
「健闘を祈っている」
「任せなさい」
この二人の行動理念は、とっとと二人を付き合わせて、幸せになって欲しいという思いからである。
中学の時、二人の相談を親身になって聞いていた緑といろはのために。今度は俺たちが相談に乗ってやるんだ!という強い意志で動いている。
こうして2人は、『ドキッ!両片思いの鈍感幼馴染をくっつけよう大作戦!』を開始するのであった。
「ごめんなさいいろはちゃん」
「大丈夫だよ美咲ちゃん。私も暇だったし」
次の日、早速美咲はいろはを連れて喫茶店に来ていた。とりあえずコーヒーを頼み、来るまでの間何を食べようかとメニューを開く。
「さて、いろはには悪いけどーーーー尋問を開始します」
「………尋問?」
コーヒーが届き、ズスズと可愛らしく両手でコーヒカップを飲んでいるいろは。そこで、美咲がぶっ込んだ。
「えぇ、あなた緑くんのどこが好きなの?」
「ブー!!!」
美少女ーーーいや、女の子として有るまじき効果音を出してしまい、咳き込む。
「けホッ……こホッ…美咲ちゃ…げホッ……なん、で……」
「はい、一旦落ち着きましょうね」
隣に素早く移動し、背中を摩る美咲。数秒ほど激しく咳き込み、やっと落ち着いた。
「……その、話しを振っておいてごめんなさい。そこまで慌てるとは思わなくて……」
「いや……その…うん」
ビックリするぐらいいろはの顔が赤くなっている。きっとそれは、先程咳き込んだ以外の要因も明らかに関係していた。
「……それで美咲ちゃん。なんで私が……」
「………え?貴方、あれで隠し通せているつもりだったの?」
「…………え?」
実は意外だと思うが、いろは明確に緑のことを好きだとは明言していない。ただ、言葉では言ってなくても、どうしても隠しきれていない『みーくん好き好きオーラ』が溢れ出ているのだ。
まぁ?実際に思いを向けてる緑が気づいていないため、緑に関しては上手くいっているとは思うが。
多分だが、緑がいろはの気持ちに気づいた瞬間、速攻ゴールインである。
「………あうあうあう……」
どんどん顔が赤くなり、落ち着くかせるようにちびちびとコーヒーを飲む。
(……まぁ落ち着かせるわけないのだけど)
「それで?いろはちゃん……好きなんでしょ?緑くんのこと」
「………………」
たっぷりと五秒くらいかけた後、赤い顔のままこくり、と頷いた。
(………やだこの子。物凄い可愛い。もっといじめたい)
と、美咲のちょっとしたS心が顔をのぞかせたが、そっと蓋をした。
「翔太から聞いた。緑くん、彼女欲しいって呟いたそうね」
「………うん」
悲しそうに頷くいろは。声と一緒にどんどん体を小さくなっているような気がする。
「……ダメよいろはちゃん。諦めてはダメ」
「………美咲ちゃん」
「諦めたら試合終了ってどこかの偉い人も言ってたわそのために私と翔太がいるの。だからーーー」
ーーーーーー私にも、あの時の恩を返させて?
その言葉は、いろはの胸に響いた。
「………美咲ちゃん。それ、漫画の人のセリフだよ?」
「いいのよ。セリフ引用したからと言って、著作権は取られないわ」
こうして、いろはは美咲を味方につけ、緑を攻略していくのだった。
一方こちら、緑サイド………。
「………お前、何読んでんの?」
「ファッション雑誌」
こちら、緑邸。とりまイメチェンっしょと言う軽い気持ちでファッション雑誌を読んでいる緑。しかし、読見すすめる度に、顔がどんどん険しくなっていく。
「………どうした?」
「さっぱりわからん。あと俺には合わねぇ」
と、ポイッと雑誌を投げ捨てた。
「時間の無駄だったな。掃除してた方が100倍マシだ……ったく。詐欺かよ」
(………こっち何もしないでいいかもな)




