プロローグ
カクヨムと並行連載です
とある学園の昼休み。春の暖かい日差しが校舎の中庭を照らし、ポカポカと眠気を誘う陽気が漂っている。
その中に、中庭に設置されているテーブル席にて、昼食を取っているグループがいる。この時代では珍しく、男二、女一の比率であり、片方の男は周りよりも頭二つくらい飛び抜けて身長が高く、女に至っては、周りが思わず振り返ってしまうほどの美少女である。
進藤翔太、槙野いろはは、目の前にいる大切な幼馴染ーーーー白石緑を見て、顔を見合せた。
「はぁ………」
「………なぁ緑、どうしたよ今日は」
「そうだよみーくん。具合悪いの?」
明らかなため息の多さ、箸の進み具合の遅さ、途端にぼーっ、と空を眺める多さ。どれを見ても、普段見ている幼馴染の姿からは掛け離れている。
「いや、具合は悪くないけど………」
鈴を鳴らしたような可憐な声に反応した緑。
「なに……柄にもなく、彼女欲しいなぁって思っちゃって………」
翔太といろはが持っていた箸が、音を立ててテーブルへ落ちた。箸が離れたあとも、その指は箸を持っている形で硬直し、いろはに至ってぷるぷると震え始めた。
一般男子高校生では、当然のように思うこと。人間であれば、1度は絶対に思うことだろう。
だがしかし、あろうことか緑の目の前にいる幼馴染は、顔を驚愕の色に染め、いろはに至ってはどんどんと顔が青くなっていっている。
「…………どっ、どうした緑!?風邪か!?」
思わず、と言った感じで大声を出し、緑の方へ身を乗り出す翔太。そんな翔太を片手で耳を抑えながら、近づいてきた翔太の顔を押し返す。
「大袈裟だろ……彼女欲しいと思うのさ普通だろ?お前も言ってたじゃん」
「いや、そうだけどよ!お前、今までそんな話してなかったろ!だからお前は恋愛興味無いと思ってたんだが!」
「いや、まぁそうだけど。ただ、ちょっと心変わりがあっただけだ」
その理由は昨日テレビでたまたま見た恋夜もののバラエティ番組である。感動してついつい涙を垂らしてしまった緑である。
「…………………………………」
そんななか、いろはの指の震えは体全体にも浸透し始める。
「……いろは?」
それにめざとく気づいた緑は、いろはに声をかけるが、その声はいろはには届いていない。
(……みーくんが…)
幼い頃より、ずっと秘めている緑への恋心。時間をかけてゆっくりと調きょーーーー攻略していこうと思っていたいろはに取っては、危機を感じるヤバい宣言だった。
「……みーくんが」
「………?」
「みーくんが、本気出しちゃう!?」
「…………は?」
本気とはなんぞや?と思う緑を無視し、涙目になったいろはは、緑を睨み、顔を赤くしてこういった。
「みーくんのーーーーーバカァァァァァァァ!!」
「あ!?おい!いろは!?」
そうして、超絶ダッシュで中庭をかけて行くいろは。もしここが中庭ではなく、教室だったらクラス中のみんなから絶対零度の冷ややかな視線を浴びていたこと間違いなしである。
「………とりあえず緑、いっぺん殴らせろーーーいや、殴る」
「なんで!?」
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