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異世界転移ハイパー☆ラブホおじさん   作者: ラブホおじさん
第一章 誕生!?ハイパー☆ラブホおじさん
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異世界就職活動編 その1

腹巻 清 45歳。異世界で就職活動始めます。

先程までとは全く別人の美人聖職者が真剣な面持ちと口調で私を諭すかのように話す。


「汚いキヨシさんあなたがいくらお人好しだとしても自分が売り込もうとしている商品を他人の前に晒してしまうのは商人失格ですよ。いえ、いくら私のことをそんなに信用してしまったからと言ってカーパ教も今では一枚岩ではないのです。そうですそうです、いくら私がそんなに立派な神官だからってキヨシさんそんなに私のことを信用してくれているのですね。人族のお役に立つことこそがカーパ教神官としての誉れであり有り様なのですが感謝をされるのはいつも気持ちのいいものです。あぁまた一人汚いおじさんとはいえ魅力してしまいました。」


真剣だった顔から涎を垂らしつつ完全に顔面を崩壊させながら悶えているのはあの美人のメアリーだ。


こんなにも自分に酔える人は出会ったことがないからこそ呆れるなんていうよりただただ感心してしまった。


だが彼女の言い分に自分の行動の愚かしさを痛感させられたのは事実。


ボールペンなんてこの世界にないかもしれないと何故考えつかなかったのか。


自分の当たり前が当たり前ではない、やはりここは異世界なのだと確信を得た瞬間であった。


「そ、そうですよねっ!はははっ」


メアリーと会話をしようと振り絞った言葉とあまりにも歪な愛想笑いと声をしてしまったと反省しかできない。


ただそんな私の表情を顔面崩壊から帰還した美人は目を細めながらじっと見つめると一呼吸口を開く。


「さてさてこのラストマゲドンも日々商業は活発化しております。魔法の水で自殺しようとしていたキヨシさんにも元々売り込もうとしていた商品開発能力はあるようですしお仕事を見つけるお手伝いをさせてください。いえいえお気になさらず、このラストマゲドンまでやってくる皆様方はなにかの事情を抱えた方も多いのは重々承知でございます。悩みは打ち明けたくなってからで結構!もう既にキヨシさんからの多大な信頼を獲得してしまった、このっ!清くっ!正しくっ!美しいーーーっ!カーパ教ラストマゲドン支部(仮)神官代表(仮)の才女メアリーがあなたを導いて差し上げまーす!」


才女としての自分をなんとしてでも名乗り口上として名乗らずにはいられないメアリーはまた一人ミュージカルを展開している。


私は自殺をしようとしていたわけではないけれども否定すると余計話が拗れそうなのでこのままにしていよう。


それよりも勝手に色々解釈してもらって今のところわからないことが多すぎて救いが欲しい私には正に渡りに船。


そんなわけで今まさにメアリーミュージカルの最後に私の目の前に差し出された温かい綺麗な手を取るのだった。


_______________________________


「さぁ汚いキヨシさん、あなたには最後の砦としてこの才女メアリーがついていますよ!なんにもない汚いキヨシさんには失うものもありませんっ!手当たり次第仕事を探すだけ!何も悩む必要もなくなりましたねなんにもない汚い不細工なキヨシさん!それでは早速こんな可哀想な汚い不機嫌なキヨシさんにあるかもしれないお仕事をご紹介していただけますか。いや無ければないで結構ですので、あれですその本当にこのおじさんなんにもないらしいんです、いえ何かを作り出せる訳でもないのですがとにかく自殺だけはさせたくないのでお仕事をお願いします。そうだこの汚いおじさん代表野キヨシさんは正直者なので嘘がつけないんです!そうですそうです正直者っていうのがこの汚い代表のキヨシさんの良いところなんですよっ!」


応援をしているつもりかもしれない言葉で心を完全に折られている私腹巻清。


それもそのはずでボールペンを開発したわけではないことをカーパ教支部(仮)を出るときに白状していたのだ。


その時のメアリーのリアクションは本当にゴミを見るかのような冷たいものでしかなく


「じゃあ本当に夢と希望だけ抱いてきてしまったのですね。可愛そうな汚いおじさんのキヨシさん。」


と完全に棒読みで言われてしまった。


あぁもうだめだ恥ずかしいとかそんなんではなく元いた世界でも味わっていた屈辱が異世界でもすぐに再現されてしまった、悲しいとにかく悲しい。


今までメアリーが救ってきた人たちはそれなりにやれることがあったのかは聞いていないし聞きたくない。


だけれど彼女の言い分と反応から思うに私ほどなにもない者はいなかったのかもしれない、と隣の美人から浴びせられたほぼほぼ罵声により少し忘れかけていた悲しみがまた私の心を濁らせた。


「いやいやメアリーちゃん、いくらなんでも本当になんにもない人がこんなラストマゲドンなんて未だにくるのが難しいとこに来ないでしょ。それにそんな言い方したからおじさん顔を手で覆っちゃてるじゃないか。確かに君が今まで連れてきてくれた人は曲者が多かったけど今ではそれぞれ仕事を見つけているわけだし。ねっおじさん元気出して、俺もおじさんに合った仕事一緒に見つけますから。」


最後の言葉と同時に肩に手を当てて励ましてくれるナイスガイ。


彼はこのラストマゲドンの仕事斡旋場【エアーベイトサービス】の受付の人らしい。


所謂元の世界のハローワークの様な場所へ転移してこうもすぐ連れて来られてしまうとは。


励ましの言葉は本来ならば嬉しいはずなのだが本当に自分ができることが何一つなさそうなのでその励ましすら心に棘となって突き刺さる。


しかも今までの人たちはそれなりに出来ることがあったようだ。


その事実がメアリー以外の人物から語られてしまい死体蹴りも良いところ、心へのダメージは完全に許容量を超えている。


---もう泣いてもいいよね---


心が爆散しほぼ半泣き状態で顔を隠していた私を尻目にメアリーと受付男性の話は進んでいたのだが後ろから聞き覚えのある声が響く。


「あんちゃん昨日ぶりだなっ!おらだよおらっ!やっぱりホーリバリアが使えるような立派なお人は神官様と打ち合わせでもしてるんだか?いやーそりゃゲドン大森林から落ちてきた時はおどれーたけれどもっ、なーんだあんちゃんやっぱりラストマゲドンでは立派な地位のお方だったんけ。それならあんちゃん話がはえーおらの街の特産品ココ石欲しがるようなとこ知らねーけ?昨日の夜市場でそれなりに売れたけんども今度また来たときに売れるお得意様っちゅーのを作りたいんだわぁ!」


あいさつをする暇さえ私には与えず好き勝手に話し続けるサンタクロース風のおじいさんの言葉にメアリーが何かに気づいたらしい。


「ちょっとまってください。聞き捨てなりませんねっ!なんにもない汚い不細工おじさん代表のキヨシさんがホーリーバリアを使えるなんて、そんなばかなっ!おじいさんいくらなんでもその話は認められません。なんにも取り柄のない正直者成分だけで構成されているこの汚い不細工不機嫌おじさんキヨシさんが魔法をっ、それも扱うには膨大な魔力を保有していないと発動すらできない聖科の魔法を扱えるだなんてっ!この人は昨日自殺しようとしていたんですよっ、そうですよねキヨシさん!あれっ、でもっ、まさかっ!ゲドン大森林でも死ねなかったからあんな大胆なことをしようとしていたんですか!?ちょっとキヨシさんどーなんですかちょっとキヨシさん!!」


もうなにがなんだかわかりません助けてくださいと思いつつメアリーは激しく私を揺するというか胸ぐらを掴んでそんなに激しくしないでぇー。


サンタクロース風のおじいさんも何故か白熱して謎の舌戦が繰り広げられているが私にはもうお手上げだ。


「またあのカーパ教のタカ派かよ」

「あのザンタってじいさん始まりの村ココの魔術技工士とか言い張ってたがココでいくらでも拾えるココ石売ってるだけじゃねーか。それに人の話なんて全く聞かずに一方的に話しやがる。商売人なんてもんじゃなくただの押し売り人だぜありゃ。」

「メアリーとかいうお嬢ちゃんは俺ら魔族のこと未だに敵視してるカーパ教のやつだろ?ラストマゲドンじゃただ迷惑なだけなやつがエアーベイトサービスでも迷惑を起こすのか、勘弁してほしいな。」


二人の舌戦をよそに既に蚊帳の外に置かれてしまった私には周りの声が自然と聞こえてくる。


驚いたことにこのエアーベイトサービスで今注目を集めている二人にはかなり冷ややかな言葉を向けている人が多いようだ、何より人ならざる彼らからも人と同じ様に嫌う声が放たれていたのは衝撃てある。


「うんやっ!あんちゃんはおらがこの【朝日の灯火】がないと会話ができなかっただ。だからこそ相当な魔法の使い手なのはまちげぇねっ!」


サンタクロース風のおじいさんザンタ爺さんというらしいが手に昨日のランタンなようなものをもつとメアリーも反論をするでもなく押し黙った。


それだけではなく周りの人々もそれに続いて話をやめる。


「皆も知っての通りこの【朝日の灯火】は魔力が高い者と言語による意思疎通が可能になるラストマゲドンの特産品だ!これを通してしかこのココ村一番の魔術技工士ザンタが言葉を聞き取ることができなかった。それだけでも十分な証明になるべぇか?違うかな美人の神官様。」


確かにと周りも頷きメアリーですらもうなにも言おうとしない。


あの時ザンタ爺さんが取り出したランタンのようなものは【朝日の灯火】という道具らしい。


あれがあったから意思疎通ができたのか未だによくわからないが兎に角あのやかましいメアリーですら私を見つめて黙っているこの状況だけで色々と納得できるものがあるのは確かだ。


「酒場でもないのに盛り上がってると思ったら何でもない話じゃないか。そんなの手っ取り早く本人に実演してもらえばいいだけだろ?俺はそのおっさんが魔法を使える方に賭けるぜ?」


私がメアリーと見つめ続けている間にいかにも屈強な男が勝手に私をダシに賭け事を開始していたのだった。

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