ハイパー☆ラブホおじさんの日常
ラストマゲドンへと帰ってきてから一ヶ月程過ぎた気がします。
今日もいつも通りの晴天に恵まれている。
そんな暖かな日差しを浴び脂汗を額ににじませている中年独身男性元非正規労働者こと現在異世界転移先でのびのびと生活をしている腹巻清45歳こと【ハイパー☆ラブホおじさん】とは私の事だ。
いつも通りラブホテルで仕事をしていると急に異世界ゲゲロード・ポポログマへと転移させられてしまい、成り行きで元ラストダンジョンであり現在は商業都市として栄え始めているラストマゲドンにて穏やかな生活を送っている次第である。
ただ穏やかなのはここ最近の事であり転移してから直ぐは命の危険に晒されてばかりで魔法の集中攻撃を受けるわ巨大なゴーレムには食べられそうになるわ自分より大きな蜂の魔法で腹に大きな穴を開けられて死にかけるわとエトセトラエトセトラ。
兎に角元の世界ではとても味わえない様な危険と沢山戯れる事となり私の人生の中でも今が一番青春を謳歌しているといっても過言ではないだろう。
いや勿論”青春”なのかどうかは千差万別あるわけであって決して私の都合のいい様に湾曲してそう言っているわけではないと願うばかりだ。
そんな青春を今更謳歌している風に装う私がこの異世界に転移させられてしまった事も未だに謎のままで何か大きな使命があるとかどうもそう言った”宿命”の様なものがあるのかもわからず仕舞い。
というのも既に私と同じ世界からの転移者によってこの異世界ゲゲ・ポポで猛威を奮っていた魔王だの聖王だのというラスボスどころか裏ボスすら倒されてしまっていてこの世界で語り継がれる【勇魔大戦】は終結しており私の活躍する出番は今の処皆無といった方がいい。
何より先輩転移者こと勇者ペーニは私と違い見た魔法を即座に模倣&発動出来る正しくチート能力【コピー&アッパー】で一時の世界平和をもたらしその人気も絶大、彼の模倣者をゲゲ・ポポに大量に生み出すキッカケにもなってしまったという。
丁度私の目の前にも物騒な鎧を着ているのに右手に杖だけをもった人やいかにも魔法使いの装いで巨大な剣を背負っているリザードマン等等余りにもあべこべな格好をしている彼らは”勇者ブーム”に乗っかり勇者願望を爆発させた者たちは”自称勇者”を名乗っている。
私も元いた世界では勇者になって世界を数多救った訳ではあるがそれは結局ゲームでの話で勇者願望の様なものはそもそも否定出来ない一人であり彼らの様なあべこべな装備は今一したいとは思えず哀憐の情にほだされてしまうというものだ。
ゲームならばキャラ毎に装備出来るものや職業事に設定で縛られていたりするものだがこの異世界ゲゲ・ポポの勇者願望を持った彼らは大体の役割を職業として扱っていただけらしいのでそれぞれが己の成りたい姿にカスタマイズしてしまうことが流行ってしまい能力以上に願望や外見を重視してしまう正に本末転倒な出来事となってしまっている。
装備すら各々が自由に選択し職業の名乗も本人の意志で自由に出来ることから終いには【勇者軍団】という詐欺集団が現れた事でギルドの信用も失墜、遂にはギルドという組織そのものが信用されなくなる事態すら招いてしまったらしい。
恐ろしい事にこの勇者ブームは魔族にすら広まり各々成りたい勇者像を自分自身で表現してしまうという正に悪夢という他無く、それぞれの得意分野すらも一見しただけでは不明瞭にしてしまいこのラストマゲドンではギルドといった組織への信用が失墜した後に個人すら信用出来なくなりその対策としてギルドに代わる組織でありハローワークの様な仕事斡旋場【エアーベイトサービス】が起ち上げられたという背景も勇魔大戦の終結がこの世界のあり様にすら影を落としてしまった訳である。
不思議な事に魔王ブームや聖王ブームが来ていないことは如何にその2名が独裁的かつ弾圧的な生活をこの世界に強いてきたのかが嫌でも分かってしまう。
つまり”勇者”は彼等にとって自由と強さのステータスだけではなく大革命を起こしてくれたスーパーマンな訳でそんな存在に憧れてしまうのは仕方がないのかもしれない。
このラストマゲドンの混乱具合はまだ良い方で先日私の事を好敵手認定した大きな蜂ことビッグドラゴンビーのアイビーや元貴族のアドラシオンによれば自警団同士の内乱や勇魔大戦によって次の覇権を握るべく他国への侵略から戦争に発展している国まである様でこの穏やかな日常を送れていることは正に奇跡といっても過言ではなくなりつつある世界情勢となってしまっている様だ。
ゲロ王国の統治にあったこの世界では聖王が倒された事と勇者ブーム到来も相まって貴族社会すら破壊されてしまいある種の自由が人にも魔族に遅れること2年でやってきてしまい、世の中の混乱もそれからは加速度を上げて一気に瓦解してしまったとなっては誰もこの状況を平定する事が出来なくなり、ある人にとってはこの世の春が訪れただの聖王がいた方がまだましだっただのとペーニの捉えられ方も十人十色ではあるらしい。
自由を保証されつつ許される範囲で自由を謳歌出来る事はやはり素晴らしいことであり集団での大規模な戦闘行為なんてものは未経験の私からすれば異世界に来た今でもラストマゲドン以外の人と魔のあり様については想像の域をでないのでそこはもう妄想で補う外なく今の安全安心の生活は本当にありがたい事だと思う。
ーーー のうキヨシよ、そろそろ一つにならぬか?ならぬか? ーーー
異世界ゲゲ・ポポの現状に思いを馳せていると隣を浮遊してついてくる杖に話しかけられた。
実はこの浮遊している杖は私がナケナシの金貨で買った【カッコイイ杖】と一応聖刀と呼ばれていた【ハヤト・ジーレン】を合成したニコイチ武器であり、かつて聖王を裏で操り続けてていた裏ボスであるハヤト・クレイナの魂が宿った正真正銘の【呪われし杖】である。
「しっかし見た目はそこそこカッコイイけど中身はおっさんの魂が宿りし杖ってのが本当に悲しいよね。どうせなら美少女の魂でも宿っといてほしかったわ。」
私は歩を止めその【呪われし杖】に急に恨み言を言い放つと杖からは驚きの声と戸惑いの反応で返された。
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数週間前、丁度嬢王蜂の元からラストマゲドンへと帰還した翌日早朝から私とほぼほぼ相棒と化しているアイバットのエスイーは共にある人物を訪ねていた。
「いや〜まさか俺っちの正体を見破るやつが出てくるとは驚れぇたわ。そうだよ俺っちがドワーフ・パテントなんだわ。」
「は?」「へ?」
私の自慢の武器こと【カッコイイ杖】の製作者がドワーフであると言うこととドワーフがこの世界では伝説上の生き物と呼ばれていることを知った私はなんとなくこの杖を売ってくれたこの男ローク・ロツを訪ねてどこで手に入れたものなのか聞いてみたいというただ純粋な興味から話をしに来ただけだったのだが、事もあろうに自分がその製作者のドワーフであってしかも特異個体のパテントだというものだから私も頭上のエスイーも一言発してただ彼を見つめた。
「今まで誰にも見破られなかったしドワーフパテントである俺っちは外見上人族と変わらないとばかり思ってたんだがな〜。うんうん、さすがはあのゲロゴーレムだけじゃなくビッグドゴンビーとまで死闘を繰り広げたキヨピーだ。キヨピーほどのやつに見破られるなら納得だなガハハッ!」
ロークは一人勝手に納得をして腕を組むなり豪快に笑っているのだが私とエスイーは狐につままれてしまい少しの間おっさん同士で静寂の中お互いを見つめ合う。
「ところでキヨピーその呪われた刀どうしたんだ。」
「えっ?呪われた刀ってロークさんこの包の中身わかるんですかっ?」
「そんなに禍々しいものいくらなんでもドワーフである俺っちには隠し通せないぜ。ちょっと見せてみっ。」
言われるがまま包の中で相変わらずカタカタと動き続ける【聖刀ハヤト・ジーレン】を取り出すとロークは近くに顔を近づけ唸ってみせた。
「まさかこんなところでお目にかかれるとは。こいつが俺っちの種族に伝わる【呪われし刀ハヤト】か。」
「呪われし刀?えっやっぱこれ呪いの装備なんですか、女王様は聖刀と言ってたんですがやっぱり呪いの装備なんですか!」
「ドワーフってのは基本呪いを扱う種族でな、俺っちはそんな陰気臭いのが嫌で人の世界に紛れて暮らしてたんだがここまで見事な作りだとは。ご先祖様の技術も中々侮れん。だがこいつを折ったやつも折ったやつだ、こんな呪いの武器壊したら普通は生きちゃいられないだろう。」
ーーー ふふふ、やつは未だにピンピンしている。だからこそ復讐し甲斐があるというものよ! ーーー
やたらと喜んでいる呪われし刀の主の声が頭上にいるエスイーの触手によりロークにも中継される。
「魂の声がこうして聞こえるってのも不思議なもんだな。うーん、どうだキヨピーもうこの伝説の呪われし刀も折れちまって元の姿には戻してやれねぇ、だが俺っちならこの杖とそれなりに上手く改造ならできそうだ。こんな呪物を扱うことも貴重な体験だし俺っちの正体を口外しないでいてくれるならタダでこの仕事請け負ってもいいんだぜ?」
「タダでいいんですか、タダかぁ。じゃあお願いしちゃおうかな、お願いします。」
いつまでもカタカタと付いてこられても困ることに加え元々この呪いの装備を受け取った理由も元の姿に戻してほしいという依頼ではあったもののそれも叶わない、というより元の姿に戻すのは抵抗があったのでこの好機を逃さずにはいられない。
それに元々貧乏性なところがあってタダと言われてしまってはそれを無下にすることもないだろう。
そんなこんなで元聖刀こと伝説の呪われし刀は【呪われし杖】へと転生を果たしたのであった。
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【呪われし杖】と穏やかな日差しを浴びながらマイペースに歩いているがそろそろ腹も減って来た昼飯時。
泥パックの本日分の運搬と売り上げの回収をしてから偶々ベイルと遭遇した後イドとエスイーが昼飯を買って来て合流、それから北側の農園へといく
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農園でアドラシオンと会い頼まれていた泥パックを渡す。そこでメアリーとも合流し農園の花畑の側で昼飯を食っているとびびっとおじさんはドラゴンビーが此方へ来ているのを感じ取る
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暫くしてアイビーが群団を率いてやってくると最近寿命削りのホーリバリア以外でなんとか戦闘というか逃げる術を確立すべく【ウインド】等を使う特訓を訪れる度に頼んでいるので丁度昨日出来た【呪いの杖】の性能テストも兼ねて闘うことに
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自分の身長より若干短い150センチ程の杖をハヤトとの連携により手の動きやおじさんの思考と同調して巧みに動かし近接戦闘を演じてみる(アイビーの爪や顎の一撃すらも杖の回転運動を使った突きやウインドかけたディレイアタック、更には常に浮遊した杖の特性を活かした空中戦法でアイビーとも空中戦闘をやってみせる
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ただ余りにも高く舞い上がってしまい地面に着く直前で自由落下から転落してしまったので顔面から落ちてしまいおじさんは瀕死に、結果メアリーにキュアをかけてもらって元通りに
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アイビーは今日の模擬戦に満足して帰っていくとそろそろおじさん達も宿屋で仕事が始まるウンケイの元へ




