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異世界転移ハイパー☆ラブホおじさん   作者: ラブホおじさん
第一章 誕生!?ハイパー☆ラブホおじさん
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異世界保護編

腹巻 清 45歳。美人の自称聖職者に保護されました。

確かな暖かな温もりを受けた右腕。


しかしそんな温もりをゆっくりと感じ続けることは許されなかった。


「よく魔法で生成された水なんて飲もうとしましたね!あなたひょっとして自殺志願者さんですか!?こんなラストマゲドンなんて遠いところまできて自殺ですか!やめましょうそんなこと!そんなことより他人に頼りましょう。一人ではできないことも他の方の力を借りればなんとかなります!さぁさぁあなたで私に救われるのは丁度20人目ですよ!それでは私についてきてください!」


やたらとテンションの高いいかにも聖職者という格好をした美人の女性。


そんな女性が表情豊かにまくし立てるかと思えば手を取るように促してきた。


疲れ果てて考えることすら難しくなってしまった私は救いの手を差し伸べてくれているであろう女性についていくことにした。


もちろん邪な気持ちも元気いっぱいになっていたのは言うまでもない。


___________________________


転送三日目


「おはようございます」


「おっ、おはようございますっ」


「昨日はよく眠れましたか?随分ぐっすりと眠ってらっしゃいましたね。顔色も昨日自殺しようとしていたときよりもいいですがまだまだですね!殴ってしまった事は謝りませんよっ、それでは人類のさらなる繁栄を神に感謝してただきますっ!」


おしとやかな朝の挨拶とは打って変わって随分と力強い神への感謝を祈っている女性はまさに昨日私に救いの手を差し伸べてくれた彼女だ。


でもやたらと推しが強いというかビンタの事は謝ってくれないらしい実はそれなりに痛かったのだが。


「ほらほら日も昇ってやることが多いんです、ゆっくりとはしていられませんよ!食事をしっかり済ませてやることやっちゃいましょう!」


口の中に次々とパンやスープをほおりこんでいくその様は昨今のテレビ番組の大食い企画物ですら許されないほど汚かった。


(あぁそうだ、もうあの世界にはいないんだった)


過去の世界の思い出をふと思い出しながら私はパンにありついた。


_______________________________


「さて、それでは何にお悩みなのか伺いましょう」


朝食を一人終えて女性は肘を机に立て両手をつなげた、その顔は険しいというより凄みを感じる。


「すいませんやることが多いって何か私もあなたのお手伝いをするのでしょうか?というかそもそも何をどうすればいいのかわからなくて」


正直凄みにプレッシャーのようなものを感じたというか朝目覚めてから母親以外の女性との会話をするという経験がなかった私である。


昨日導かれるままに女性についてきて明日朝からやることが多いからと部屋に案内されてベッドの上に寝転んでから少し考えていた。


実はこの女性こそ異世界転生した私のナビゲーター的な存在なのではと。


だが先程の凄みといいこのなんとも言えない身勝手さといい、ナビゲーターならわざわざこんな質問というか懺悔みたいなことさせるのだろうかいいやさせないだろう。


もしかしたら私が主人公として人生を送るためのヒロイン、それこそ将来のを誓う伴侶となる女性なのでは、そんな淡い恋心のようなちょっとした勝手な好意を抱き朝を迎えた私としてはこの状況はかなりがっかりした瞬間なのだ。


「そうでしたね、自己紹介がまだでした私はメアリー。このラストマゲドンカーパ教支部(仮)の神官代表(仮)を務める才女です!さぁ悩める汚い能無しっぽいおじさんあなたの悩みをお聞かせください!この才女たるメアリーが全てではありませんが少しは解決のお手伝いをいたしましょう!」


まるでステージでスポットライトにでも照らされているかのごとく突然両手を上に向け広げ立ち上がった彼女はメアリーというらしい。


その言動は私の心に不安の雲を生み出すのに十分なほど彼女の全てを否定していた。


そもそも助ける気があるのかないのかはっきりとしていないことと言い、この(仮)だらけの場所更にはさらっと私の事を罵倒している。


よくよく考えるまでもなく周りと同じような家に導かれた時は教会的なところじゃないのかと勝手に膨らませた期待を捨てたのもつい昨日のこと。


「パンまだ食べてないってことはいらないんですね!それならこのメアリーがいただきます!」


あまりにも一つ一つのテンションが高いメアリーの言動に呆気にとられていたら手に持っていたパンを強奪された(いや正しくは恵んでいただいたものなのだから私のものではないのだが)。


「すいません、本当のことを言うと何もわからないんです。場所も何も私自身がいる場所のこともこれからどうすればいいのか。」


正直異世界からきましたなんて突然言っていいのかどうかそれすらもわからないから取り敢えず明言することは避けた、というよりこんなおじさんがそんなこと言っていいものなのか自分の常識が理性を働かせてしまった。


「やはりあなたも人生に迷えるお方なのですね。大丈夫です私は今までこの街で19人の迷い人を導いてきました。それもそうでしょう、このラストマゲドンは魔王ブレイン・ディッツが統治していた魔城ブレインキャッスルを中心に開拓された商業都市。勇者一行により魔王は討伐され8ノ刻が経ち人族と魔族は手を取り我々が住む美しき世界、このゲゲロード・ポポグロマに一つの全く新しい生態系を作り上げたのです!その恩恵に預かりたい皆様方が大いなる野望や理想を抱いてやってくるのは必然でしょう!そしてその溢れんばかりの富にありつけない悲しき人々が生まれてしまうことも。大丈夫ですよなんにも無さそうな汚いおじさん、どんな方でも人族であれば助けるのはカーパ教の教えです!さぁあなたも信じなければ救われません!汚い能無しっぽい不細工なおじさん、あなたも信じるのです。あぁえーっとそういえば名前をお聞きしていませんでしたね。それでは不細工なおじさんXということで。」


今度はミュージカルのように右に左に動き回ってはこの世界のことを話しつつ私を卑下してきた。


この世界のことを説明してくれているのはありがたいがなぜこんなにも馬鹿にされないといけないだろうか、この世界でもここまでバカにされなきゃいけないのは正直悲しいしかも名前を聞くまでもありませんというこの態度。


尚更こんな綺麗な人に面と向かって言われるのはどんな世界でも夢も希望もないのかもしれないと改めて心を暗くしてくれる。


「・・・お名前を聞くのを忘れていました。いえそんなに名前を聞いてくれないのと涙目で訴えられてしまってはこの清く美しく皆様の注目の的であるメアリーが聞かない訳にはいきませんからね仕方なくというわけではありませんよ決して、決して違いますからねっ。ラストマゲドンは元聖王カーパ・クレナイ様が目指した最終攻略地でありますから指名手配犯が罪を逃れて辿り着いてもおかしくないのです。いっつも人族を確認もせず助けてしまうのですがこのメアリー何と慈悲深いのでしょうか!それで汚い能無しっぽい不細工で不機嫌そうなおじさん、お名前は?」


「腹巻清です。」


「うーむ、嘘ではないようですね。というかあなたおどおどしまくってますし嘘なんてつけないでしょうそうでしょうそうでしょうそうに違いありませんっ!臆病で口数も少ない仕事にあぶれてしまって食べ物にもありつけない汚い能無不細工不機嫌ごま塩頭のキヨシさん、それではこの才女メアリーがなんとかなるかもわかりませんがなんとかしてあげましょうそうしましょう!ところで汚いおじさん代表のキヨシさん先程から気になっていたのですが左手の甲に昨日なかった傷がついていますがどうされたのですかキヨシさん?」


毎度の様に体も言葉も留まることを知らないメアリー。


そんな彼女が一瞬にして私の左手に釘付けになっていた。


「あぁこれはボールペンで書いた後でして」


「ぼーるぺん?なんですかそれは」


この世界に来たときに胸ポケットにつけてきたボールペン。


それで昨日ここまで連れてきてくれたおじいさんから聞いた街の名をメモ代わりにと書いておいたのだ。


私は手の甲に新しく線を引いてみせた。


すると彼女は目を見開いてこういったのだ。


「キヨシさん、それは他の人には見せないほうがいいですよ?」

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