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異世界転移ハイパー☆ラブホおじさん   作者: ラブホおじさん
第一章 誕生!?ハイパー☆ラブホおじさん
22/35

異世界ダンジョン探索編 その5〜発動、隠見な魔法【ウインド】〜

腹巻 清 45歳。まさかの隠しダンジョンBOSSとの戦闘です。

ホーリーアイとの戦闘が終わった時には日が暮れ始め私は失った体力と魔力を使い果たしイドに運ばれ採掘キャンプで未だにだらんと地面にうつ伏せていた。


しかし事態は急を要する訳で私達は勝利の余韻に浸る間もなくあの天然ゴーレムの対策を急かされているのである。


「もうこんなに日が暮れちまったが俺っち達はこれからラストマゲドンに引き返そうと思う。幸いイー・アル・カン・フー4兄弟は夜間専門の暗殺者だったわけだし夜間戦闘のプロがいるなら襲われても問題はないだろう。皆荷造りを手伝って貰ってさっさと逃げるぞ!」


「じゃあローク達がストレングス様達に救援を養成する伝令役だな!ピピッ、俺様は残るよ。」


「何言ってんだエスイー。お前さん一人残ったところであんなのどうしようも無いだろう。」


正にその通りであんな巨人どうやって一人で相手にしようというのか何かエスイーには秘策があるようにも思えないのだがエスイーは持ってきた道具を何やら漁っている。


「あったー!じゃーんこれこれ【遠視の水晶】」


「おぉー。でもそれは遠くが視れるだけの水晶だろ。エスイー俺っちをバカにしてもらっちゃ困るぜ」


「ちっちっちっ!これはアクル様に貸してもらった特別性でストレングス様のもっているもう一個の水晶と映像の共有が出来るんだぜ。これをもって俺様がここで監視をしておくよ。空を飛べるのも俺様だけだし皆は早くラストマゲドンまで早く帰るんだ。」


「え、エスイーなんでそんな道具いままで仕舞ってたのさ。というかそんなに空高く飛べたの?」


面白そうな道具見たさに私も体を起こし、そのついでに会話に混ざる。 


「てへっ、俺様ついさっきまで忘れてたの!それに俺様は全然高くなんて飛べないよ。ストレングス様だったら仲間を先に逃がすだろうし俺様もそうするのさ!」


今更怒ったところで何も変わりはしないしそんな元気も私には残されていないのだが、これをもって採掘していれば少しは状況が変わったかもしれない。


だがこの道具どうやら一方的に映像を映し出すだけで音は全く伝わらない代物だと言うから全く当てにならないものだった。


ただ驚かされたのはエスイーのウンケイへの”忠誠心”なのか、いいやきっとこれは”憧れ”の方が適切か。


そこから仲間を先に逃がそうなんて発想をこんな危機的状況ですら見習えるのだからエスイーはここにいる誰よりも勇敢なのは私は否定できない。


それこそ未だに心の奥底では勇者として活躍したいなんて思っているおじさんの私の方が見習うべき姿勢なのだがその欲望にはがっしりと蓋をする事にする。


「なら余計俺っち達とラストマゲドンに逃げるべきだ。ウンケイが見てる保証も無いんだからな。ましてやラストマゲドンまでは片道半日以上、援軍を連れてくるにも1日は絶対にかかる。天然のゴーレムってのは起きちまったら2日以内には活動を開始するからな。」


そもそもの疑問としてゴーレムとは本来魔術師が使役するような魔物という印象があるのだがこの世界では養殖モノと天然モノがいるらしくロークはやたらとその辺りの知識が豊富だ。


「キヨピー殿の記憶を見ましたがあの咆哮は活動を開始したわけではないのですか?ローク殿。」


「あれはあくまでも起動合図みたいなもんだな。あれだけの巨体既に動いてたら地響きぐらいするだろう。それにあんなゲロ鉱石で出来たゴーレムなんて危険すぎる。あそこにあんなどでかいホーリーアイがいたのも偶然じゃねーだろうな。」


「やはりあの二体は共に餌を待ち伏せしていたというわけですか。」


青いリザードマンのアルは如何にも納得した様子で話すが私には今一理解が追いつかない。


「ラストマゲドンまで来るような猛者は良い栄養になるだろうな。こうやって鉱山で一山当てようって連中は俺っちの他にもそれなりにいるんだ。ゲロ鉱石は質が高けりゃ魔法はどんどん吸収しちまうしあのデカさだ手を伸ばせば空洞の中ならやつの領域は魔法無効物理だけのバトルフィールドの完成よ。アイバットのあの群れはいくら採掘に来た連中の肉体が頑強だろうが確実に捌ききれない。数に任せて体当たりの連続を見舞われたらしっかりとダメージをもらうだろうな。そこにトドメであのホーリーアイだ、あいつに強制的にキュアなんてされてみろおそらく反撃できないように料理されてから食われるな。」


「魔法無効の強制物理戦闘。しかも相手は魔法を使い放題って条件が厳し過ぎますね。」


あのフラッシュの連続を思い出すだけで身震いしてしまう。私は意識して相手の魔法を防いだ訳ではないが自分の術を破られたのは初めての経験だったし本当に仲間が増えていて良かったと心底思う。


「しかも相手はゲロゴーレム。ゴーレムってのは作られたやつなら時間が経てば鉱物に戻るか粉微塵よ。しかし天然モノは唯一食欲の為だけに生きるようになる。ラストマゲドンまできて鉱山採掘をするやつならあのゴーレムにとっても相当いい魔力のご馳走が手に入ったのかもな。頭にのってたホーリーアイすらゴーレムに餌を渡す代わりにここら一帯にいろいろな鉱物を生成點せてた可能性も出てきたな。何より俺っちはそんな罠におめおめとハマっちまってこのザマよ、すまねぇ。」


「えぇ!?ゴーレムって人を食べるんですか?」


「ピピッ、違うと思うよキヨピー!多分ゲロ鉱石のゴーレムだから魔力も食べちゃうんだよ。イドは特殊で何もいらないけど天然のゴーレムは基本自分を構成している鉱物とか土とか岩を食べちゃうんだよね。しかも人なんて邪魔なだけだから踏み潰したり手で叩き潰してきたり結構人族も魔族も手を焼くんだー。」


うんうんとロークも頷いてみせる。


「これも推測だがキヨピーお前さんのあの時の様子、もしかするとやつに魔力を食われてたのかもな。俺っちがホーリバリアなんか張らせたばっかりに。」


そういえばもうあの時のような倦怠感が一切無く今はただ疲れているだけで異常な発汗も手の震えもない。


健康異常でもなんでもなく私はあのゴーレムに魔力を食われていたというのも頷ける。


しかしここで一つ嫌な考えが頭をよぎってしまうのだ。


「天然ゴーレムは食欲だけの為に生きるって、私は餌認定されてる可能性ありますかね」

「だからこそだキヨピー。いち早く俺っち達は逃げる必要があるんだよ。」


食い気味に答えられてしまったが十分その可能性があるというのはもうあれだけの健康異常を経験してしまったからこそ餌と認識された確信めいたものがある。


「あのー、それなら私もエスイーと残ります。」


全く空気を読まずに私は手を上げよぼよぼと頭の上のまで挙げると採掘キャンプに残ると堂々と宣言するのだった。


_____________________________________


昨日の出来事が嘘のような翌日の朝、すっかり疲れも回復して朝を迎えた。


「うーん、今日も良い天気だおはよう二人とも」


私が挨拶を交わしたのは残ると言っていたエスイーと私達に付き添ってくれたイドのいつもの面子。


昨日の夜結果としてゴーレム監視班として私達3人が残りローク達は荷車にホーリーアイの残骸をのせてラストマゲドンヘと向かっていった。


イー・アル・カン・フー4兄弟は私達がまるで殺されることが確定しているかのような挨拶をしていったがそんな不謹慎さが一瞬私の脳裏にメアリーのことを思い出させた。


やはりあれだけの大きさのアイバット・パテントことホーリーアイは存在自体が珍しいようでこの緊急事態を説明するのにもってこいの材料ということらしい。


あの残骸が万一動き出すかもわからないということでショッキングピンクの【封魔の羽織】を被せて帰っていったのだがこんなところで役立つとは持ってきてよかったとなんだか誇らしくなってしまう。


「ねぇねぇキヨピー、キヨピーはなんでそんなに余裕なのさ。あんなデカブツが今にも襲ってくるかもしれないのに。」


「うぅーん、なんだかさ今日は大丈夫な気がするんだよね。動くとしたら明日っぽい?」


私は首を傾げながらエスイーに答えたのだがそれならもう逃げ出したほうがいいんじゃないかと昨日とは打って変わってかなりエスイーは弱気になっている。


「いやー、これも直感なんだけどさここから少しでも離れると一気にゴーレムが襲ってくるような気がして。」


こんなおっさんの直感だけでそんな心の不安は取り除けるわけもないだろうししばしの静寂が訪れた。


風も心地よく吹いては近くの木々が揺れているのだが実はかなり様子が違うことに朝になって気づかされる。


周りに栄えて生い茂っていた緑の木々や雑草、主食として食べていたルパンの木も辺り一面枯れ果てていたのだ。


「これって昨日のホーリーアイがやったのかな?」


「ホーリアイが俺様達に回復魔法をかけてきてたでしょ?拡散させてたみたいだしブラスト化させて使ってたのはこれを見ると間違い無さそうだね。」


「あぁロークがキュアブラストって言ってたね。そういえばウインドブラストなんてのもあったっけ。」


「ブラストは唱えるにしても魔力の消費量がバカにならないんだよ。ましてやあのホーリアイは俺様たちを一瞬で異常回復して動けなくするつもりだったんじゃないかな。」


異常回復なんてさらっと言ってはいるがトドの詰まり回復魔法を攻撃に転用するということだ。


元いた世界では回復魔法が効くのなんてアンデットくらいな物だったけどこの異世界ゲゲ・ポポは本当に色々な事が私のフィクションの前知識と違っているから若干解りにくいこともある。


「ゲロ鉱石は魔法が一切聞かないって言うし仮に私がキュアを使ったところで異常回復も出来無さそうだ。これは明日早朝逃げ始めますかねお二人さん。」

「俺様キヨピーのカンを信じるよ!」

「イド、賛成」


こうして一日私達は昨日の緊張感を忘れて明日までのんびりと過ごすことにした。


しかしダンジョン探索にいけるぞなんて思いっきり一人心の中ではしゃいでいたのに実際は採掘になったことに少し退屈していた。


私の想いをまるで汲み取ったかの如く実はラスボスを倒した後にしか入れない隠しダンジョンの様なところに来てしまったとはゲームで言えば魔王を倒さないで来ていることになる。


つまりチートを使っているようなものだろうか。


それならもっとチート能力が欲しいものだがそんなもの手に入るはずもなく焦燥感を通り越してただ終末を待つだけという呆れるほどのんきな自分に驚きつつもよく晴れた青空を仲間二人と仰ぎ見ることにした。

____________________________________


本来であれば採掘ことダンジョン探索7日目遠足の帰り道ぐらいにしか思っていなかった日である。


遂に大きな地鳴りが地響きと共に起こった。


予定通り朝日が登るのと同時に私達はラストマゲドンへと向けて逃げ始めたのだが遂に地上へと現れた天然モノのゲロゴーレムを見て唖然とした。


「あー、あれ2日前よりでかくなってるよね」


既に見えている顔が既に距離を取っているはずなのにかなり大きい。


確かに掘り当ててしまった時も凝視したわけではなかったがこんなに大きくはなかったはずだ、これがゴーレムが起動するということなのだろう。


実は昨日のんきに過ごしていた時に天然モノと魔力で造られる養殖ゴーレムの違いをエスイーに聞いていたのだが天然モノは放っておくとどんどんと鉱物や土岩を取り込んで巨大化していく、本当に食欲に純粋な暴君となる様であの空洞から出てくるまでにも相当の量を食べたというわけだ。


ヴォォォォォォォォォォオオオオオオオ


ゲロゴーレムは全身を地上に出現させると私達、いやおそらく餌認定した私を見つけると咆哮し走り出した。


「イド、俺様達は昨日決めた通りラストマゲドンから救援が来るまでなんとか逃げ続けるんだ。でもなんだか凄く早いねあのゲロゴーレム。どうしようキヨピー?」


「後は本当に追いつかれそうになったらゲドン大森林に逃げるしか無いけどあの巨体だと全く関係なく突き進んできそうだしこれが本当の万事休すってことかな、ははっ。」


ローク達が無事にラストマゲドンへ着いていたなら昨日の昼過ぎには到着しているはずでもうこちらに援軍が向かってきていてもおかしくはないのだがしっかりゲロゴーレムが巨大化しておりこのままだと明らかに捕まってしまいそうだ。


しかし改めてイドの背中で思うことは彼はあのユニコーンが馬車を引くよりも速い、勿論馬車というより荷車には荷物も多く積んであるわけでこんなおじさんと浮遊目玉一匹なら比べ物にもならない重さだとは思うのだが。


疲れを知らないゴーレム・パテントのイドの全速力は元いた世界での乗り物で言えば車みたいなものだろうか、いや車だったら風よけも無いのにこんなに平然としていられるのかオープンカーなんて乗ったことがないやと今更気付いてしまう。


またしても元いた世界へと思いを馳せている所しっかりと地響きは私達に近づいて来ていた。


しかし二足歩行で走るのが得意ではないのか途中で何度も転倒してくれるお陰でまだまだ差は縮まりそうにない。


「あいつ歩き始めたばっかの子供かよ」


そんな幼子との追いかけっ子も暫く続き日も更に高くなっており空はしっかりと青く快晴になっていた。


「ピピッ!これならきっと救援が来るまで追いつかれないんじゃないかな俺様達助かりそうだね!」


私もエスイー同様これなら大丈夫だろうと言いかけた時、またしても私の手が震えだした。


まだ距離は離れているはずだしゲロゴーレムはまた転倒し地面に伏しているのだから鉱山の時とは違い魔力を吸われるようなことは何もしていない。


ただここまで身体が震えているのには何か訳があるのではと震える手を前に突き出すとその時である。


ゴーレムが上半身を起こし口をあんぐりと開けると口の中が光りだす。


「イド!左左っ!大森林の方に逃げてー!!!」


私の言葉よりも早くゲロゴーレムの口から光線が放たれると私達の右側の大地はえぐり取られ

る。


その光線の威力は絶大で直ぐ横を走っていた私達を地面をえぐるのと同時に吹き飛ばした。


頭を打つ経験をしたのはこれが二度目だろうか。


元いた世界で二十年ほど前調子に乗って熱々の風呂に長時間入ったことがある。


結果として逆上せてしまった私はあろうことか座っていた椅子の上で気を失いそのまま右前頭部からフローリングの床に崩れ落ちてしまったのだがその時同様音が全く聞こえない。


いいや頭を打ったのはゲドン大森林から馬車道へと転げ落ちた時にしていたのでこれで3回目だ。


あまりにもどうでもいい事を思い出すほど混乱している私の頬をエスイーは触手で触れる。


エスイーもイドも無事だったようで何を言っているのかまだ音が遠く聞き取れないが起用に動かすエスイーの触手のお陰で頭の混乱も少し治まり再びイドの上に乗ると逃走を再開した。


だがあの光線を撃った後のゲロゴーレムは更なる追撃の一手で私達を追い詰め始める。


まだ音を脳がちゃんと認識は出来ないのだが眼に映るものはしっかりと捉えることが出来た。


あろうことかゲロゴーレムはイドと同じように身体を砂状にして転けることのないように移動を開始していたのだ。


しかもやつは先程と同じように口の中を光らせている。


「エスイーあれって魔法で間違いないよね!?」

「何科かはわからないけど間違いなく魔法だよ!」

「ホリーバリアー!!!!!」


ヴォォォォォォォォォォ


咆哮とともに放たれた第二の閃光、それに対抗するために展開したホーリーバリア。


魔法の盾と言えるのかはわからないが精一杯の力で展開した青白い膜は数秒間その光から私達を守りつつ推進力となって恐ろしい速さで押し出す。


押し出すというのはあくまで気を失う前までの過程で私達は再び吹き飛ばされただけなのだがそれを認識したのは目の前にゲロゴーレムが再び二足歩行の人型になって佇んでいるという絶望的な状況に迎えられる。


やつはやっと飯が食えるといった具合に笑顔を歪ませ私の方へと右腕を伸ばすがイドがそれを振り払うのも束の間、今度は左腕を突き立て彼を大地そのものへと変貌させてしまう。


皮肉なことにやつのまたの間から逃れようとしていた目的地であるラストマゲドンが小さく瞳に映る。


更にはラストマゲドンを囲む広大で壮大な山々、右手に見えますは未だ瘴気を放ち紫色に染まる広大なゲドン大森林。


だがそんな景色よりも私は欲望に忠実な様で


「メアリーのおっぱいデカかったな。」


私達三人の中でもっとも強いイドが消されてしまい遂には私も心を折られ欲望のまま現実逃避に走ってしまった。


現実逃避をしていた私をゲロゴーレムが無理やり現実に引き戻す。


やつは私を左手で掴むとそのにやけた面の前にまで運ぶとわざと大きく口を開けてゆっくりと中に運ぶのだ。


折角異世界に来たのにこのパターンは一体何回目だろうか。


嗚咽や小便を人前で漏らしナイフで108回も刺され続け良い気になってスケベなことも早数回。


確かに元いた世界と別の辛いこともあれば今までの人生にはなかった男として人として確実に満たされる生活がやっと始まったと思った矢先にまさか鉱物の化け物ゴーレムに食われて終わろうとしている。


しかも圧倒的な力を持ち弱者である私を舐め腐り余裕をかましているこんなやつによって人生の終わりは目前なのだ。


「お前みたいなブサイクな鉱物野郎に俺の人生終わらされるのかよ。しかもこんなナメプまでされて。食われるなら美人が良かったよ魔物でもなんでもさ。ファイヤーサンダーウォーターアイスーグランドーウインドー。」


一足先にあの世に行ってしまうであろう自分のために念仏代わりの使えない魔法の読経を始める。


実際使えたら良いなーなんて思っては昨日まで暇な時に唱えていたのだが当然使えた試しはない。


そしてジェットコースターの落ち始める時と同じように落下開始地点まで到達した時やつは私の身体を握っていた指を一斉に放すと私は重力のままやつの体内へと落下した・・・はずだった。


「は?」


黒い景色の中に落下させられたと思いきや私は大地に足をつけ立っていた。


まずは右足で地面を踏みつけるが今回の作業用にもらっていたブーツがしっかりとその感触を伝え、次は左足ついでに両足でジャンプをして着地と間違いなく生きている。


そして何より私の目の前にはあの憎き鉱物野郎が私を食って満足した顔をしているではないか。


鉱物野郎は表情を器用に変えられるらしく私を発見すると流石に動揺したようで元々そんなに大きくない丸い目をものすごく大きくして口まであんぐり開けてこちらを見ている。


一体何が起きているのかは私自身もわからないのだが鉱物野郎が何かしたわけではない様だ。


今度は鉱物野郎は私をにらみつけると再び私目掛けて歩き出したのだが流石に私も捕まりたくないので来た道を全力で走った。


ただ今度は相手の巨体から繰り出される歩行に伴って起きる地面の揺れのせいで私が転倒してしまい立場は本当に逆転していることを思い知らされる。


「ちくしょう。」


ヴォヴォヴォヴォヴォヴォ


こんな唸り声をあの鉱物野郎は今まで上げていなかったからこそわかるのだが怒髪天を衝いてしまっだろう。


再び巨大な腕が迫りくるのは風圧でわかるのだが地面が急にふわりとした覚えのある感触になると動き出した。


「イド、キヨシ無事か」


あの強烈な突きによってぺちゃんこにされてしまったと思っていたイドが生きていたのである。


「ピピッ、俺様もいるよキヨピー!それにしてもさっきのどうやったのさ!もう一回出来ないのキヨピー!」


エスイーも吹き飛ばされたのに戻ってきたようで私が瞬間移動したのを見ていたらしい。


「エスイーは俺がなにかしたってわかるの!?」


「キヨピーこそ魔力を使って何かしてたじゃない!」


「何かって欲望をぶちまけてたくらいで後は使いたい魔法を呟いてたくらいで、何かしてたの!?」


「キヨピーもう一度!もう一度それをやるしかないよ!」


正直気まずいが鉱物野郎は再び身体を砂状にして移動をスムーズにしているのを見ると躊躇している暇はない。


「どうせ食われるなら美人の魔物が良い!ファイヤーサンダーウォーターアイスーグランドーウインド!」


何も起きない、何も起きないのだ。


「ねぇなにも」


景色は変わる。


「起きないよエスイー!!!嘘じゃんって、あれ。」


すると今度は私達を追っていたはずの鉱物野郎の後ろに瞬間移動していた。


言葉を続けてエスイーに文句を言っていたのが情けなくなる。


「ピー!キヨピーさっきウインドの時だけ魔力が消費されてたよ!」


「エスイーそんなこともわかるの。わかるのか。ははっ、【ウインド】。えっこれ【ウインド】なの。【ウインド】ってもっと前見た時かっこよかったけど。ほんとにこれが【ウインド】。」


今正に危機に直面しているはずなのだが新たに習得した魔法がまさか瞬間移動するだけ、どーなっているんだという勝手な絶望感に打ちひしがれてしまう。


何よりゲロゴーレムには魔法が効かないということすら今の私には頭の中から消し去っていた。


「キヨピーそんなに落ち込まないで!個人での転送魔法なんて聞いたことも見たこともないよ俺様っ!それにこれで一杯逃げる時間を稼げるじゃない!」


勝手な絶望と勝手な高揚を感じる私達二人は実はこの時またあの極太レーザーもとい光線の危機にさらされていたのだがまたしても時間差で次々と景色が変わり正に鉱物野郎の股からラストマゲドンを眺めていた辺りまで瞬間移動したようだ。


しかしそれと時を同じくして私は一昨日のホーリーアイとの戦闘の時と同じく体から力がごっそりと抜けてしまっていることに気づいた。


「キヨピーさっきウインドっていったの全部発動してたみたい!魔力大丈夫?」


「大丈夫じゃ、ありません、もう、ムリ」


「イドしょうがないから大森林に逃げてー!」


イドはエスイーの指示に従いゲドン大森林へと方向を変えた。


鉱物野郎も既に私達が何度か瞬間移動しているのを理解しているのか的確に私目掛けて追いかけて来る。


イドは遂に瘴気の濃いゲドン大森林へと突入したのだが私はゲドン大森林の瘴気の恐ろしさを甘く見ていた。


まるで超高温のサウナにでも入ったっかのように肌もひりつき息は熱く元々乾いていた喉をもっと乾かしてくる。


それだけではなく眼も開けていられないほど痛い、痛いのだ。


しかもその痛みは時間が過ぎるほどに増していきこのままでは確実に死を迎えるだろうという恐怖も私を支配し始め身体は純粋に自分の危機を察知して震える。


「キヨピー!ごめんホーリーバリアも貼れないほどに消耗していたんだった!!!イドこのままじゃキヨピーが死んじゃう!!!」


だがゲロゴーレムはゲドン大森林へとたどり着くと二足歩行になり腕で木々を振り払い始めた。


木がなぎ倒される音が聞こえはするが目を開けて見る余裕もなく私はただ息がしたいと都合の良い神頼みをするしか無い。


あぁでも息をしないともうムリだ、あんなに痛い瘴気を吸い込むのは嫌だが息を吸わないと死んでしまう、いやもう死んだか死んでしまったのかどうせなら最期はメアリーに会いたかった。


「あっあれ?」


恐る恐る目を開けると私達は鉱物野郎を一人ゲドン大森林に残し再びラストマゲドンを眺めた場所へと転移していたのだ。


「ピピピッ!キヨピーのウインドがまた発動したみたい!大丈夫?瘴気はやっぱりきつかったよねごめんよぉ。」


エスイーは涙目で謝ってくるのだがもうそんなことはどうでもいい、こうして息が吸えるだけで私は幸せだ。


しかし怒髪天を一度衝かれた鉱物野郎からは更なる怒りを買ったようで咆哮はこれまでで一番大きく如何にも怒ったぞといった格好で腕も力強く握りしめ顔は天を仰ぎ見る。


そうして再びあの恐ろしい光が開けた口から見えてきたのだがこれまた大声でも精一杯あげようかという前傾姿勢になり私達に放たれようとしていた。


「今度こそだめかも」


またもや私の直感でしかないがもうこれ以上の奇跡は起こらないと悟ってしまった。


勿論今回ばかりは私だけではなくイドも同じように感じたのか私とエスイーを守ろうとして覆いかぶさるってきたのだ。


「俺様はまだ諦めないよ。きっとストレングス様なら最後まで諦めないもん!」


エスイーはイドの行為も虚しく体を半分ほど眼球を丸ごと外に出した。


もう鉱物野郎は私のことを餌などと思っていないのか確実に殺すために今までとは全く違いかなり長い時間あの光線をチャージをしているようだ。


「でもまぁ、美人に食われる最後以外にこんな結末もありかもしれないね。」


私もエスイーに続いてイドの行為を軽く拒否する形で顔を出して最後を迎えようとしたのだ。


鉱物野郎のありえないくらいの前傾姿勢で気張った光線は満を持して遂に放たれる。


(あぁこれが本当の死なのか)


いっそ晴れ晴れしい気持ちになった時頭の上のエスイーが光った気がした。


また目の前の地面にも謎の魔法陣のようなものが現れ地面から空へと光の柱が昇る。


するとどうだろう私達を残して周りの地面はえぐられている。


「なっ、なにが起こったの」


勿論誰もそれに答えられるはずもなく三人全員が誰が何をしたのかわからず動揺してしまった。


とんでもない姿勢から渾身の光線を放った鉱物野郎はまたしても仕留めきれなかった私達を見るとゴリラのドラミングの様に胸を叩いて怒ってみせる。


「さっきから感情も仕草もバリエーションが豊富すぎるでしょ。」


私はそんなことを言いながら乾いた笑いしか出せなかったのだがやつはドスンドスンと怒りの形相で私達に近づいてきた。


「流石は俺様の部下なだけはある。よく耐えたなお前ら!後はこの俺様にまかせなっ。」


突然後ろから全く予想できなかった人物の声が聞こえる。


幻聴かと思いきやウンケイ本人がスタスタ歩いているのだ。


予想できないというより救援を頼りにしていたのは間違いないのだがでは先程の光も彼なのだろうか。


いやでも元四天王といえどもあんな化け物に勝てるのかといった私の疑問も余所にいつの間にかウンケイは空高く飛び上がっていた。


「イド全速力で逃げて〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」

「イド、死にたくない」


どうゆうことなのだろうか私にはこの突飛な景色は全く理解が出来ない。


エスイーは完全に泣いている。


先程まで泣いたことなんて一度もなかったのに。


イドまで急に死にたくないだとか。


「二人とも急にどうした、のぉぉおおおおおおおおおお!!!!!!!!」


ウンケイの登場に私は気が緩んでいたのだが二人は彼の本気を知っていたのだろう。


あのままあの距離で彼の攻撃を見ていたら私達が粉微塵に消し去られていたことを。


とんでもない爆風に私は言葉を遮られイドが支えてくれなければ吹き飛ばされて死んでいたかもしれない。


ウンケイも信頼をしているからあんな恐ろしい技を放ったのかわからないが鉱物野郎とゲドン大森林の一部が焦土と化している。


しかもウンケイが攻撃を仕掛けた中心地は明らかに凹んでた。


私はこれをなんと言うか知っているそう“クレーター“である。


「ふぅー。久々に力を出しちまった。お前たち何あんな少し強いだけのやつに苦戦してんだよ。ったくベイルやペーニ級の猛者でも現れたのかと思って全速力で走ってきたのによ。ん?キヨシのじじい何漏らしてんだ、汚ねーな!」


そう私は漏らしていたのである。


再び人前で漏らしていたのだ。


しかしこれは決して我慢していたものが限界に来てしまったとかそんなものではないのだ。


元魔人四皇が一人 力大の四皇ストレングス・ヴィゴーレこと現在の雇用主(仮)ウンケイ氏。


彼を絶対、絶対に起こらせてはいけないと言う戒めと誓いの失禁を私は笑顔でして気絶したのであった。


恐怖ではない、恐怖ではないのである!!!

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