4.〈ストーリークエスト〉解放のお知らせ
なんか違う、と書き直しとも言えぬ修正を加えました。
実は、マトにメールが届く現実世界での5分前。
ネット上のゲーム口コミサイトで、【LOFO】の数少ないプレイヤーのレビューがネットゲーマーたちに反響を与えていた。
そのレビューにはこう書かれていた。
『【LOFO】の発表で語られた要素は全て真実であり、【LOFO】こそ“本物”の【VRMMO】である』と。
これを始めに閲覧したネットゲーマーはせいぜいが数千人程度で、そのほとんどは疑心暗鬼であったが、レビューを書いた数人が一致して肯定的なレビューを書いていること、また【LOFO】の発表が真実であると言っていることから半信半疑で情報を拡散した。
拡散された情報は瞬く間に広がっていき、多くのネットゲーマーの興味を引くことになる。
『スクショのグラフィックきれー』
『え? マジで? 本当にちゃんとした【VRMMO】なん?』
『あっ、俺今すぐ買ってくるわ』
『いや、このスクショどうせ加工した奴だろww お前ら騙され過ぎww このレビュー運営のサクラだろどうせ』
『全員☆5評価……神ゲー確定なのでは』
運営が用意したサクラだと非難する意見もあったが、そのレビューを見た人々の大半の反応は「もしかしたら」という期待だった。
そうしてレビューを閲覧し、【LOFO】は“本物”であると信じた何割かの人間はショップへ赴き、【LOFO】を購入しようと腰を浮かせる。
そうして【LOFO】の正式サービスから30分が経過する頃、メーカーの公式サイトから第2回目の発表が突如為されることになった。
それは、ゲームの内容についてのもの。
『【ライフ・オブ・ファンタジー・オンライン】メインコンテンツ【8th Darkness World】〈ストーリークエスト〉解放のお知らせ』だった。
◇◆◇◆◇
【【ライフ・オブ・ファンタジー・オンライン】正式サービス謝辞と【LOFO】メインコンテンツ【8th Darkness World】〈ストーリークエスト〉解放のお知らせ
本日、2071年6月3日(土)で【ライフ・オブ・ファンタジー・オンライン】(以下【LOFO】)は正式サービスを迎えました。
職員一同、無事にサービスを迎えられ、ほっとしております。
プレイを始めていただいた皆様には心から感謝いたします。
さて、既にプレイしている皆様におかれましては十分にこの世界について知っていただけたかと思います。そこで、本日5時30分現在より【LOFO】メインコンテンツ【8th Darkness World】の〈ストーリークエスト〉を解放いたします。
降臨した【魔王】と、その眷属【魔族】との闘い、世界の存亡をめぐる壮大な冒険をどうかお楽しみください。
※〈ストーリークエスト〉は各ジョブ毎にストーリーの内容に変化があります。
また、正式サービスを記念しこれからログインなさる新規の方々も含め、プレイヤーの皆様方に冒険に役立つアイテムを配布する<初心者スタートダッシュキャンペーン>を開催いたします。
配布するアイテム
【Eランク称号】【初心者プレイヤー証明書】
【ステータスポイント獲得ポーション】×1
【粗雑な経験値ポーション】×3
このゲームは時期に成長していくでしょう。
これからの成長を見て頂ければ、今後もさらに面白くなっていく【LOFO】にご期待いただけるのではないかと思います。
そして、私たち【アナザー】の開発、運営チームもまた成長を続け、常に改善を目指してまいります。
皆様の“世界”として【LOFO】を愛していただけるよう、今後皆様と共に、歩んでいきたいと考えております。
あらためてこの正式サービスの開始と皆様のご愛顧に心から感謝するとともに、これからも【LOFO】をご愛顧いただけますよう、どうかよろしくお願いいたします。
【アナザー】代表取締役社長 広瀬幸一】
「〈ストーリークエスト〉、か……」
そう呟き、メニューの『クエスト』に追加されていた〈ストーリークエスト〉という項目をタップして見る。すると、第一目的「村長の元へ訪れる」と書かれた『第一章【脅かされる村】』という名のクエストが追加されていた。何だか、旧世代RPGゲームが思い出されて、切ない気分になる。
まあ、【VRMMO】にありがちな『マップが広すぎてどこに行けばいいのか分からなくなる』が解消されていいのかもしれないが。
「ヘルプ」で追加されていた〈ストーリークエスト〉について調べてみたところ、どうやらこのクエストは『このゲームの世界観に入りたい人向け』らしい。エリア自体は『エリアボス』と呼ばれる特殊なボスモンスターを撃破することでクリアは可能だが、〈ストーリークエスト〉を受けながらエリアを進めると様々なイベントが起こったり、〈ストーリークエスト〉限定の特殊なスキルや装備が手に入ったりすることもあるようだ。
これは是非とも受けておきたいところだろう。
「えーと、配布アイテムは……」
配布されていたアイテムを見ると、【ステータスポイント獲得ポーション】は服用することでステータスポイントを20増加させるアイテムだった。残す必要が見当たらないので、すぐさま服用してINTに全振りする。これでまた経験値が上がりやすくなった。
大体の効果が察せる【粗雑な経験値ポーション】はレベリングにつぎ込むとして、手に入った称号の確認をする。
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【初心者プレイヤー証明書】ランクE
≪取得条件≫【LOFO】にログインする
≪装備効果≫STR+1 END+1 DEX+1 INT+1 MEN+1 AGI+1 LUK+1
※称号は装備・非装備関係なく適応されます
―――――
ふむ……【村人】の1レベルアップ分だし、結構いいんじゃないか? 取得条件がこれってことは、多分【LOFO】の全プレイヤーが持つことになるのだろうが。じゃ、知らせも受け取ったことだしレベル上げるか。
「にしても、まだあっちじゃ30分しか経ってないんだな」
現実世界の4倍の速度で時間の流れるこっちで過ごしたのは2時間ほど。だというのに、俺が“ディストピア”を装着してベッドに入ってからまだ30分しか経っていないと思うと、少し不思議な気分になった。
まあ、真実は起きてから確かめることにしよう。俺はウィンドウを閉じ、腰の鞘に入れておいた木剣を水平に構える。
たくさんの経験値スキルも手に入れたことだし、レベリングを再開しよう。
「《未経験の成長速度》、《訓練》、《探求・学》」
これまでに獲得した、経験値関連のアクティブスキルをすべて発動させる。
「よし! 狩るか!」
獲得できる経験値の量を想像して顔が緩まるのを押さえられないまま、俺は木剣を掲げて街道の【アングリ―ボア】に突撃を仕掛けていった。