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3.【EXPERIENCER】

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「ふ、ふふふふ……!」


 笑いが止まらない。


 【アングリ―ボア】騒動の後、俺は広場のベンチでほっと息をついていた。広場には【アングリ―ボア】の姿はない。どうやら、プレイヤーの周囲では時間をかけてポップされるらしい。ウィンドウのリストには、20体の【アングリ―ボア】を倒して獲得した経験値やドロップアイテムが表示されている。

 避けることに必死だったのであまり覚えてはいないが、【アングリーボア】との戦闘では一度も見なかったので、もしかしたら戦闘が終了したときに初めて表示されるものなのかもしれない。


 しかし、そんなことはどうでも良い。


 問題は、獲得経験値の枠に表示された、「6797」という数字。


〈レベルアップしました!! Lv29→30 スキルポイントを3獲得しました!〉

【ステータスポイントを10手に入れました】


〈レベルアップしました!! Lv30→31 〉

【ステータスポイントを10手に入れました】


〈レベルアップしました!! Lv31→32 〉

【ステータスポイントを10手に入れました】


〈レベルアップしました!! Lv32→33 〉

【ステータスポイントを10手に入れました】


 その膨大な経験値量故に、俺の目の前ではレベルアップのアナウンスが流れ続けていた。


「……はぁ」


 本当に、良い音だ。

 視界に表示されている簡易ステータスのレベルは「38」。レベルアップの速度がアナウンスを超えている。驚異的なレベルアップ速度だ。どんなインフレだよ。

 戦っている途中手に入れたステータスポイントをINTに全部振ったり、《未経験の成長速度》の効果がなくなっている間、【アングリーボア】達を倒してしまわないように逃げ回った甲斐があった。

最後は上昇したステータスの影響か、【アングリーボア】たちに攻撃する余裕もできていたし、かなり効率よくレベリングを進めることが出来たと思う。


 まあ、かなり時間が掛かってしまったけど。主に前者で。


「えぇ……っと?」


 ドロップ品はほとんど『アングリーボアの毛皮』とか、『アングリーボアの牙』といった素材アイテムぐらいで、残りは『アングリーボアの肉』っていう食べ物っぽいアイテムぐらいだった。

 そのほとんどのレアリティはEくらいで、初期モンスターより少しくらい強いモンスターじゃ、この程度が関の山だろうという感じの微妙さだ。

 さて、手に入れたスキルポイントとかも把握してないし、とりあえずステータスポイントの確認を……。


〈称号【サバイバー】を入手しました〉


〈称号【闘イノシ士】を入手しました〉


〈効果は「称号」画面でご確認ください〉


「称号……?」


 えっ、そんなものがあるとか聞いてないんだけど。


 メニューウィンドウにはいつの間にか「称号」という項目が追加されていた。どうやら、レベルアップが速すぎてアナウンスが遅れていたらしい。そこをタップすると、新たなウィンドウが浮かび上がり、俺が手に入れた称号が表示される。


「詳細を見るには……これか」


―――――

【サバイバー】ランクB

≪取得条件≫戦闘開始前に自分よりレベルの勝る20体以上の敵モンスターと同時に敵対し、一度も死亡することなく勝利する。

≪装備効果≫自分よりレベルの勝る敵対象の数が、味方より多かった場合全ステータス小アップ


※称号は装備・非装備関係なく適応されます

―――――


―――――

【闘イノシ士】ランクE

≪取得条件≫イノシシ型モンスターを誘導して同種族モンスターにぶつけ、合計3体以上を倒す。

≪装備効果≫イノシシ型モンスターからのヘイト値が増加する代わりに、誘導ダメージが増加する。


※称号は装備・非装備関係なく適応されます

―――――


「……どうせなら経験値関連の方が良かったな」


 贅沢なのはわかっているが、正直そっちのほうがずっと良かった。


 【サバイバー】の方は結構使えそう。言うまでもなく、高レベルの狩場を見つけた時のレベリングに重宝するだろう。


 ただ、【闘イノシ士】は何と言うか微妙だ。 効果自体は限定的な上に、これまで以上に【アングリーボア】みたいなモンスターから敵対されるとなるとそこまで良い効果とは……それか、ランクEだからこんなもんなのか。


 装備してもしなくても同じって、融通が利かないシステムだな。


 とはいえ、新しい要素を見つけられたことは素直に嬉しい。


「さて、ステータスも確認してみるか……」


―――――

【キャラクター】

プレイヤー名:マト

性:男

齢:17

種族:人間(ヒューマン)

ジョブ:【村人】Lv38

【ステータス】保持ステータスポイント0

HP :248/248

STR :58

END :58

DEX :58

INT :58(+760)

MEN :58

AGI :58

LUK :58

SP :48/48

MP :48/48

【スキル】保持スキルポイント16

《生まれながらの最弱者》Lv5 《未経験の成長速度》Lv3 《住人たちの結託》Lv1 《粗雑貧乏》《豚に真珠》

【称号】

【サバイバー】【闘イノシ士】

―――――


「……」


 【村人】のステータスは一レベル上がるごとにHPを除いた全ステータスが1上がるという認識で多分間違いない。実に、バランスがいい伸び方だといえる。


 問題は、スキルがもう一ついつの間にか増えていることだ。


「《住人たちの結託》? ……勿体ないことしたかも」


 ぶわっと汗が噴き出してくる。もしこれが経験値系のスキルなら、どれだけの経験値を損したことだろう。


 そう考えて―――


―――――

《住人たちの結託》Lv1

TYPE:アクティブ

※アクティブスキルは『スキルセット』画面で装備する必要があります。

※アクティブスキルは再使用にリキャストタイムが必要です(リキャストタイムはINTの値が大きいほど短縮されます)

≪効果≫半径30メトルに存在する味方の全ステータスを一パーセント上げる。

≪Recast time≫10min

―――――


 良かったぁぁぁああああ!!


「はぁ、はぁ……危ねぇ」


 そりゃ経験値スキルのほうが嬉しかったけど、正直ほっとした。


 これは全体バフかな? でも、レベルを上げる利点は今のところない感じだ。メトルってメートルのことだろうか。


「んじゃ、気を取り直して……スキルポイントは16、か……」


 気を取り直して、手に入れたスキルポイントの使い道について考えることにする。16ポイント、使いようによっちゃかなり重要だろう。ほかの職業の利点は分からないが、【村人】に利点の一つはスキルポイントの手に入りやすさらしいし。


 「スキル」の項目を開いて、良さそうなスキルを見繕うことにする。


 すると、あるスキルが目についた。


「《ソード・オブ・ウィンド》……」


 アーツスキル。システムのアシストを受けることで通常攻撃よりも与えるダメージや攻撃する速度が飛躍的増加する、いわば必殺技のようなスキルだったはずだ。

 この《ソード・オブ・ウィンド》は【風剣士】のアーツスキルなのだが、ジョブ名を見る限り、風に特化した【剣士】のジョブなのだろう。


 かっこいいが、ぐっとこらえて別のスキルを探す。


 【村人】のアーツスキルも探してみるが……ない。まあ、【村人】の必殺技ってのも変か。


 それにしてもスキルの数が多すぎる。スクロールするだけでも十分はかかりそうだ。


 ある程度絞るか。


「ソート……『経験値』」


 リストの一番上に、二つのスキルが表示された。


―――――

訓練(トレーニング)

TYPE:アクティブ

※アクティブスキルは『スキルセット』画面で装備する必要があります。

※アクティブスキルは再使用にリキャストタイムが必要です(リキャストタイムはINTの値が大きいほど短縮されます)

≪効果≫範囲内の自分を含めた味方の得られる経験値を30秒間の間増やす。Lv1で1.6倍、Lv2で1.7倍、Lv5で2倍。

≪Recast time≫2min

―――――


―――――

《探求・学》

TYPE:アクティブ

※アクティブスキルは『スキルセット』画面で装備する必要があります。

※アクティブスキルは再使用にリキャストタイムが必要です(リキャストタイムはINTの値が大きいほど短縮されます)

《効果》自分一人の経験値を1.1倍増やす。Lv1で1分間、Lv2で2分間、Lv5で5分間。

≪Recast time≫10min

―――――


「う~ん」


 何と言うか、やっぱ【村人】は優秀だったんだなと感じた。

 この二つ、それぞれ【指揮官】と【学者】のスキルの一つらしいのだが、両方《生まれながらの最弱者》とか《未経験の成長速度》の【村人】スキルの完全下位互換じゃないか。


 にしても、【村人】以外のジョブの経験値スキルってこんなもんなんだな。数も少ないし、もうちょっとあるもんだと思ってたけど……。


 取り敢えず取得だけしておく。


―――――

訓練(トレーニング)》Lv1(-3)

TYPE:アクティブ

※アクティブスキルは『スキルセット』画面で装備する必要があります。

※アクティブスキルは再使用にリキャストタイムが必要です(リキャストタイムはINTの値が大きいほど短縮されます)

≪効果≫範囲内の自分を含めた味方の得られる経験値を30秒間の間増やす。Lv1(-3)で1.6(-0.3)倍、Lv2(-3)で1.7(-0.3)倍、Lv5(-3)で2(-0.4)倍。

≪Recast time≫2min

―――――


―――――

《探求・学》Lv1(-3)

TYPE:アクティブ

※アクティブスキルは『スキルセット』画面で装備する必要があります。

※アクティブスキルは再使用にリキャストタイムが必要です(リキャストタイムはINTの値が大きいほど短縮されます)

≪効果≫自分一人の経験値を1.1倍増やす。Lv1(-3)で3(-2)分間、Lv2(-3)で5(-3)分間、Lv3(-3)で10(-5)分間。

≪Recast time≫10min

―――――


「え」


 めっちゃマイナスついてるんですけど。


 確かに【村人】のスキルに【村人】以外のスキルとか装備品にマイナス補正が付く《粗雑貧乏》っていうスキルがあったけど、これほどの倍率とは思ってなかった。


「lv1引く3ってそれもうマイナスいっちゃってんじゃん……」


 唯一の幸運はレベルがマイナスでも効果はプラスになっていることか。というより、これレベル4まで上げないと本来のレベル一の効果すら出せないぞ。


 幸い、スキルポイントはそこそこにあるので、両方のスキルをレベル5(-3)まで上げた。


 すると、またもやアナウンスが。


〈称号【|EXPERIENCERエクスペリエンサー】を入手しました〉


〈効果は「称号」画面でご確認ください〉


 お……? これは英単語的に……?


 称号を確認する。


―――――

【EXPERIENCERエクスペリエンサー】ランクA

≪取得条件≫下級ジョブの経験値スキルを全て取得し、最大レベルまで上げる

≪効果≫手に入る経験値が常時1.5倍

―――――


 すごい。と小学生並の感想が口から出そうになった。

 称号に経験値系の称号があったことにも驚きだが、その倍率にも驚く。なにせ常時1.5倍だ。これは結構大きい。


 あと、「下級ジョブの経験値スキル」ってことは、中級職にも経験値スキルがあるってことかな。楽しみだ。


 そろそろ経験値スキル以外にも手を出してみたいけど。


「よし! 経験値も集まったことだし」


 またレベリングしよう、と意気込んでベンチから立ち上がる。すると、視界の右下に四角い枠がせり出してきた。


 そこにはこう書かれていた。


【【ライフ・オブ・ファンタジー・オンライン】正式サービス謝辞と【LOFO】メインコンテンツ【8th Darkness World】〈ストーリークエスト〉解放のお知らせ】と。

【ライフ・オブ・ファンタジー・オンライン】の裏設定➀


【LOFO】に置いて獲得できる経験値の量は、こんな計算で算出できる。


レベル一のモンスターの基準レベル×モンスターのレベル×{1-[(α―β)×0.025]}×(1+0.00025Σ)×経験値スキル補正(αはプレイヤーのレベル、βはモンスターのレベル、ΣはINTの数値 α―β≧40の場合、前半の計算の値は強制的に1で固定)


ややこしいですね。あと、結構穴がありそうです。


ちなみに、必要な経験値の計算方法は初項20、公比1.15の等比数列になってます。


つまり、 20・1.15ⁿ⁻¹


これが【人間(ヒューマン)】だと、必要経験値は


20・1.14ⁿ⁻¹です


あんまり違いがないやんと思われるかもしれませんが、これがレベル50の場合、


必要経験値は【人間】以外の種族は18846、【人間】の場合12285


と、割と違ってきます。

かと言って、別に【人間】ばっかり強いわけじゃなくて、【人間】以外の種族もステータス補正とか、種族限定スキルとか持てるからそこまで変わんないです。


【メデューサ】の【石眼】とか、【竜人ドラゴニックヒューマン】の【竜化】とか。


ちなみに普通にステータス振り分けてる一般プレイヤー(レベル38)の場合、INTとかの要素を含めてもレベル38の【アングリ―ボア】を倒して得られる経験値は「456」程度ですが、今の主人公の場合(分かり易く比較するため)、【未経験の成長速度】を除いたアクティブスキルなしでも「4925」は手に入ります。


ぱっと見チートですけど、【村人】はデメリットも多いので、その穴埋め的な効果だったり……。

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