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3.《クロックワークス》―――■■■■

 戦闘が終了した後。

 俺のレベルは30上がり、【ムラビート】のジョブレベルは40にもなった。それで手に入れたステータスポイントは300、スキルポイントは24ポイントにもなる。《生まれながらの最弱者》や《未経験の成長速度》、《訓練》や《探求・学》といったスキル、【EXPERIENCER】とかの経験値増加の称号が豊富になってきたからな。正直、カンストもそう遠くないのではないだろうか。


 あと、何故か《ムラムラムラムラ・ムラビート》がレベル4にまで上がっていた。ログを見ると、レベルが10の倍数の時にレベルが上がっていたので、恐らくレベル50ごろにまたレベルが上がるのだろうと予測できる。


 そして今。俺は昼の時と同じく、ベンチに座って頭を抱えていた。


「うぅ~ん……」


 呻き声を漏らし頬杖を突きながら、『スキル取得』メニューをスクロールして眺める。

 悩んでいるのは例の状態異常スキルの件だ。目論見通り広範囲において【アングリ―ボア】を殲滅できたは良いものの、使い勝手は理想とほど遠いものになってしまった。


「一番の課題は……やっぱり自分のスキルで自分が状態異常を食らっちまうところだよな……」


 俺の想像内では、あの攻撃で敵は“麻痺”に動きを遮られながら、満足に動くこともできずに“毒”“やけど”の二重状態異常に為す術なく体力を削られていく……はずだったんだが。

 だが、現実(というより仮想)はそう上手く運ばないらしい。結果として、その状態異常は俺すら蝕んで戦闘自体を困難なものにしていた。

 というより、あのスキルは死ぬ間際に撃つような置き土産スキルなんじゃなかろうか。広範囲の敵に状態異常を付与する代わりに自分も状態異常に巻き込まれるという効果は対応したデメリットとも取れるが、《ポイズン・グレネード》や《パラライズ・グレネード》の元になった【毒拳士】って、名前からして一対一想定っぽいし、一対多を想定しているとは思えないしな。多分、【風炎術師】の《ファイアベール》にデメリットがないのはそこらへんも関係してるんだろう。


 ん? それか、投げることが前提のスキルとか?


 まあ、どちらにしても状態異常の弊害は改善しておきたい。“毒”のダメージは仕方ないにしても、具体的に言えば“毒霧”の視界不良や“麻痺”の行動キャンセルはどうにかしておきたいところだ。と言うわけで、今は状態異常耐性のスキルを探している。


 探して、いるのだが……。


「……さすがに、ずっと無効化できるほどのスキルはないか」


 数多くある状態異常耐性のスキルを見ても、根本的な解決になるようなスキルはほとんどなかった。パッシブなどであれば良いものの、アクティブスキルが異様に多い。これでは《ムラムラムラムラ・ムラビート》の恩恵があるとはいえ、耐性を獲得する以前にSP、MPが枯渇してしまう。それに、このスキルポイントの使い方は《ムラムラムラム(ry》のコンセプト的には恐らく間違えているだろうし。


 あと《状態異常強化》で強化された状態異常が、自分にも適用されてるのが地味に効いててつらい……。取り敢えず状態異常耐性のスキルは一旦諦めて、霧の中でも目が見えるようなスキルがあれば……お、あったな。


―――――

《霧視》

TYPE:パッシブ

※パッシブスキルは自動的に装備されます

≪効果≫霧に対して《透視》の効果を得る。

―――――


 このパッシブはレベルという概念が無く、取得しただけでその効果を得られるらしいからお得だ。……さて、これで霧の中でも目が見えるようになったけど……根本的な解決になってないんだよなぁ。いくつか良さそうなスキルはあったんだけど……。

 そして、はぁ、とため息を吐くと。


「……ん?」


 とあるスキルが目についた。


―――――

《クロック・ワークス》

TYPE:アクティブ

※アクティブスキルは『スキルセット』画面で装備する必要があります。

※アクティブスキルは再使用にリキャストタイムが必要です(リキャストタイムはINTの値が大きいほど短縮されます

≪効果≫半径十メトル以内の味方・敵のバフ・デバフの効果時間に対して、時を進める。レベル1で30秒、レベル2で35秒、レベル5で50秒

≪Recast time≫10s

―――――


「……これ」


 “時を進める”だよな……“省略する”ではなく。賭けの要素はかなり強いけど……さっき見たスキルと合わせれば、何とか行けるか……?

 先ほど見たスキルを、順々に確認していく。


 ……うん、多分いけるな。


 ただ、コレをしようにも“麻痺”で動けなかったら何の意味もない。“麻痺”で行動がキャンセルされる確率は3割……安全マージンを考えるとかなり危険だ。《パラライズ・グレネード》に使用者だけには聞かないみたいな効果があったらよかったんだけど……そう融通は利かないしな。


 何か、対策出来るスキルは……。


「あるにはあるんだけどな……」


 さっき探してた状態異常耐性のスキルの中で、思い当たるものはいくつかある。時間制限付きだが、上手くいけば回転率的に間に合わせられるか……?

 スクロールを巻き戻し、先ほど見たスキルの中で気になったものをピックアップしていく。


――――――

《アンチバインド》

TYPE:アクティブ

※アクティブスキルは『スキルセット』画面で装備する必要があります。

※アクティブスキルは再使用にリキャストタイムが必要です(リキャストタイムはINTの値が大きいほど短縮されます)

≪効果≫スキルレベルに応じた一定時間、状態異常による“拘束”効果を無効化する。レベル1で3秒、レベル2で4秒、レベル5で7秒。

≪Recast time≫30s

≪消費SP≫10

――――――


――――――

《ファーストバインド》

TYPE:アクティブ

※アクティブスキルは『スキルセット』画面で装備する必要があります。

※アクティブスキルは再使用にリキャストタイムが必要です(リキャストタイムはINTの値が大きいほど短縮されます)

≪効果≫“拘束”効果を持つ状態異常を敵に与えた最初の判定において、100%の確率で“拘束”効果を与えることが出来る。

≪Recast time≫30s

≪消費SP≫10

――――――


 一応、上手くはいきそう……かな。

 《アンチ・バインド》はともかく、《ファーストバインド》の方は《霧視》と同じくスキルを取った時点で効果を発揮するタイプなので、コスパも非常によろしい。

 問題はリキャストタイムだが、それはむしろ【ムラビート】のスキル+INT極振りビルドたる俺の領分だろう。


 スキルポイントを消費して、この二つのスキルを取得、《アンチ・バインド》の方はレベル1のままでは《粗雑貧乏》の効果減衰のせいで使い物にもならなかったのでレベル5(-3)まで上げた。

 あとは、俺もダメージはくらうだろうから、対策用スキルを取っておくか。


 よし、準備は整った。早速エネミーを見つけて試してみよう。


◇◆◇◆◇


 しばらく歩いていると、纏まった数の【アングリ―ボア】を見つけた。その数、5体。まあ、先ほどのように二十匹もいらないので、ちょうどいい数ではある。【アングリ―ボア】の索敵能力は夜で研ぎ澄まされている故か、夜なのにバカみたいに光るこの剣のせいか、すぐに俺を見つけ、唸り声を上げてきた。


「ボアァ……」

「さーて。んじゃ、試させてもらおうか」


 その声が聞こえたわけではあるまいが、【アングリ―ボア】たちは突進を仕掛けてくる。開いた距離は20メトル……15メトル……【アングリ―ボア】たちが全員効果範囲に入りきるまで、距離感はきちんと測らなければならない。14メトル……12メトル……11メトル!!


「《アンチ・バインド》《ファーストバインド》」


 【アングリ―ボア】が十メトル以内に入る直前、自分にスキルでバフを掛ける。これから4秒間、俺は“麻痺”による拘束効果を受けない。加えて、状態異常を与えた最初の判定で、敵に対して確実に拘束効果を与えることが出来る!!


 そして……10メトル!!


「《パラライズ・グレネード》!!」


 5体の【アングリ―ボア】全てが10メトル以内に入ったタイミングを見計らい、《パラライズ・グレネード》を発動させる。右腕に集まった金色の光を地面に叩き付けると、同じく金色の半透明ドームが展開され【アングリ―ボア】たちの動きを止めた。“麻痺”による拘束効果は俺には反映されていない。よしっ!


 この残り3秒間を無駄には出来ない。俺は早速次の行動に移った。


「《ポイズン・グレネード》……《ファイアベール》!!」


 展開される半球円状の“毒”の霧。そして、そこからなお溢れ出すほどの広範囲の炎。“麻痺”の拘束効果に苦しむ【アングリ―ボア】たちに避けようが無く、たちまち“毒”“やけど”“麻痺”の三重状態異常に罹ってしまう。

 しかし、拘束効果はそろそろ切れてしまうだろう。一度目は確実に“麻痺”で動きを遮ることは出来ても、二度目の判定では7割の【アングリ―ボア】が“麻痺”の裁定から逃れてしまう。


 しかし、それでいい。残り二秒で、全て終わるんだから。……予想が正しければだけど。


「《クロックワークス》」


 毒霧の中で指を鳴らすと、幾何学模様の魔法陣が浮かび上がる。それは俺の足元から浮かび上がり……【アングリ―ボア】全体を包み込んだ。


「フッ、フィニッシュだ!!」


 格好つけたように気障な息を吐き、内心アテが外れたらどうしようかとビクビクしながら掲げた右腕を振り下ろす。そして、《クロックワークス》の『半径十メトル以内の味方・敵のバフ・デバフの効果時間に対して、時を進める』という効果が発動し……


 瞬間、5匹の【アングリ―ボア】が消し飛んだ。

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