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8.《鍛冶》中の発見

 ゆかりとの食事を終えた後、俺は【工房】に向かうべく最初の小屋を出た。

 村長とのやり取りで【工房】を借用出来たことが関係していたのか、今のマップには表示されていなかった【工房】の位置がきっちり表示されている。

 その【工房】は【村】の南側の奥の位置にあった。今は亡き(失踪と言うほうが正しいのかもだが)主人たちを待つ数多の【工房】が建てられた、いわば【工房】街とでも言うべき場所にだ。

 最初はどこが借りた【工房】か分からず、その辺を右往左往していた俺だが、やがてマップに拡大機能が付いていたことに気付き、少し恥ずかしい思いをした。


「……はぁ……ここかぁ」


 位置が分かったのはいいが、もっと早く気づいておけばよかった。最初から生産職だった連中も、こんな感じだったんだろか。

 俺の目の前にあったのは、石造りの小屋だった。壁が大胆に取り払われ、《鍛冶》用の道具が丸見えになっている周りから見ても比較的小さめの【工房】。


「うわっ……ボロボロだな」


 少し近づいてみると、その【工房】が酷く劣化していることに気が付いた。石壁もそうだが、一目見ただけで設備と分かるモノにまでひびが入っている。確かに村長は整備もしてないし設備も最低って言ってたけど……これはあんまりじゃないか? 少し心配になりながら、落ちていたハンマーを拾う。


【初心者用《鍛冶》ハンマー】ランクE

≪効果≫ATK+4(-2)≪属性≫無≪装備スキル≫無

≪概要≫『武器製作』に必要不可欠なハンマー。殺傷能力は皆無に等しく、あくまで武器防具を作るためだけに使われる。『武具製作難度2』までの武具ならば製作可能。【工房】内でのみ使用可能。

≪必要STR≫20


 攻撃力は木剣より弱いくせに必要STRは20倍以上違うんだな。まあ、それでも初期値だけど。これはあくまで《鍛冶》用で、攻撃には使えないという事か。耐久力を見たところ、無限に設定されているため壊れることはなさそうだ。あと薄々分かってたけど、結局《粗雑貧乏》は装備品の攻撃力を半分にするって認識で合ってるんですね。

 それにしても……『武具製作難度』? ……分からん。


「……ん?」


 取り敢えずハンマーをアイテム欄にしまおうとすると、メニューに新たな項目が追加されていた。

 その名は、『工房』。その項目を開いてみると、ウィンドウには《製錬》《強化》の2つの項目が並んでいた。

 ん? 二つ? でも、『武具製作難度』って……だったら《武器製作》って項目もあるはずなんだけど。バグかな?


「まあ、いいか……」


 もしバグだったとしても、仕方のないことである。取り敢えず割り切って、俺は《製錬》メニューを開くことにした。《製錬》の項目をタップすると、新たなウィンドウが展開される。そこにはポツン、と『聖堂鉱石』と言う文字が浮かび上がっていた。


 『聖堂鉱石』……村長の家で購入した鉱石だ。


 よく分からないまま『聖堂鉱石』の文字列に触れると、【製錬しますか?】というメッセージが浮かんできたので、『YES』をタップする。すると小屋の中の設備の一つが、光を放ち始めた。


「お、おお……?」


 首を傾げながらその設備に近づいて見てみると、どうやらこれは鉱石を溶かして液状にしているようだった。……あー。これって多分……。

 薄々気づきかけていると、目の前にメッセージが現れる。


【『聖堂鉱石』の製錬が終わるまであと 24秒です】


「なるほど……これは『炉』か」


 現実とは少し違うけど、多分これはあれだ。鉱石をインゴットに変えるための施設だ。《強化》は多分そのまんまだろう。そこに金床っぽい置物があるから、多分あれでやるはずだ。《製錬》の項目を閉じ、《強化》の項目をタップする。案の上木剣が上に出てきたが、強化するのはやめておいた。どうせ新しいのを創るつもりだし。


 そんなことをしている間に、炉からチーンと音が鳴った。近づいて見たが何もなく、アイテム欄を開いてみると『聖堂鉱石のインゴット』というアイテムが追加されていた。このまま全部自動でやってくれるのかと思いきや……見れば、炉の光は消えている。


 あっ、全部手動でしなきゃなんですね。


 慌ててウィンドウを開き、ひたすら製錬を始める。『聖堂鉱石』はまだ50個以上残っているのだが、どうやらこの製錬、一気に投入して製錬するということが出来ないらしい。つまり、一個ずつ入れて一個ずつ製錬しなければならない。

 あと《強化》するには【強化石】なるアイテムも必要だという事がわかった。言うまでもなく、俺の所持していないアイテムである。


 なんか想像してたのと違うんだけど……。


◇◆◇◆◇


 しばらく《製錬》ばかりしていたが、『聖堂鉱石』を10個ほど製錬した辺りで変化はすぐに訪れた。


〈【工房】がレベルアップしました!! Lv1→Lv2〉


〈《製錬》に投入できる鉱石の数が増えました!! 1→5〉


〈新機能《武具製作》《武具解体》が解放されました〉


〈詳細は【工房】画面でご確認ください〉


「レベルアップ……?」


 アナウンスに沿ってウィンドウを開くと、『【工房】』メニューの《製錬》《強化》の2つの項目のさらに下に新たな項目が出現していた。

 《武具製作》と《武具解体》……なるほどな。レベルアップすることで新しい要素が解放される仕組みなのか。しかも、《製錬》できる鉱石の量も増えている。


 ……生産系もレベリングを楽しめるとか、このゲームホントにやり込み要素高いな……。


 …………………………。


「と、取り敢えずあげられるとこまでレベル上げてみるか」


 どうせ、ジョブレベルは今のところ上がらないしな。……武器の開発のためだ。武器の開発のため。

 今回のレベルアップによって、どうやら金床が本格的に使えるようになったらしい。《武具解体》は名前から分かるし保留でいいとして、まずは《武具開発》からだな。


「っと、そういえば製錬しないと」


 危うく忘れるところだった。勿体ない。《製錬》を忘れず終えたところで、《武具製作》の画面を開く。『武器』と『防具』とで分かれてるのか……まあ、最初は武器かな。製作できる武器は剣、槍、斧、ハンマー、ナックル……うーん。例によってかなり多い。取り敢えず、今使ってる木剣に沿った新しい剣を作ってみるか。

 『剣』のジャンルをタップすると、リストの一番上に一つだけ製作できる剣が浮かび上がる。【ノーマルブレード】……えーと、普通っぽいけど性能は……。


【ノーマルブレード】推定ランクD

≪効果≫ATK+16(-8)≪属性≫無≪装備スキル≫無

≪概要≫基礎的な鉱石である『聖堂鉱石』と『加工石』のみを使用したシンプルな剣。模擬剣からの派生で殺傷能力が付与され、その切れ味はそこそこ。これを得て初めて【剣士】は初心者を卒業できたといえる

≪必要STR≫45 ≪武具製作難度≫1


 ふむ。威力はそこそこあるな。取り敢えず、これを作ってみるか。にしても、推定ランク? そんなものまであるんだな……ウィンドウを操作して、材料を確認する。


―――――

【ノーマルブレード】

『聖堂鉱石のインゴット』×3

『加工石』×1


【製作しますか? YES/NO】

―――――


 取り敢えず材料は揃ってるっと。じゃあ、作ってみますか。『YES』をタップすると、手元に光が収束し、ハンマーが現れる。ほぼ反射的に金床を見ると、その上には『聖堂鉱石のインゴット』と思しき金属の塊3つと『加工石』らしき一つのツルンとした石があった。


 ああ、つまりはハンマーで叩けと。ハンマーを振り上げ、下ろす。そんな作業を3回ほど繰り返していると、アナウンスが流れた。


【ここから先はスキップできます スキップする設定にしますか? YES/NO】


 生憎と俺は素朴な生産道は望んでいない。ここは運営の厚意に甘えてスキップさせてもらおう。いつもの如く『YES』をタップすると、金床に置いてあった材料たちが光り始める。一瞬の光の後、そこにあったのは一振りの剣だった。

 えーと効果は……と確認しようとしたところでチーンと音が鳴る。《製錬》の完了した音だ。慌ててメニューを操作し新たな『聖堂鉱石』を《製錬》にぶち込んだところで完成した武器の詳細を確認する。


【ノーマルブレード】ランクD⁺

≪効果≫ATK+18(-9)≪属性≫無≪装備スキル≫無

≪概要≫基礎的な鉱石である『聖堂鉱石』と『加工石の』みを使用したシンプルな剣。模擬剣からの派生で殺傷能力が付与され、その切れ味はそこそこ。これを得て初めて【剣士】は初心者を卒業できたといえる

≪必要STR≫46 ≪武具製作難度≫1


 あれ? 作る前の性能よりちょっと良くなってるな。ランクD⁺ってなってるけど、これが関係してるのかな? それにしても、今までランクEってのしか見てこなかったけど一気にランクD⁺って結構強い武器? 


「……いや、違うだろ」


 同じく《武具製作》で【ノーマルブレード】を作ってみると、出来上がったのは攻撃力+14のランクE⁺の剣だった。やっぱり、ランクは全体的な強さを表してるんじゃなくて、あくまでもその武器での品質という事か。

 と考えているとまたチーンと《製錬》の完了した音が鳴る。……ああっ! 忙しいな!! 悪態を吐きながら《聖堂鉱石》を《製錬》に投入していると、再びアナウンスが流れた。


〈【工房】がレベルアップしました!! Lv2→Lv3〉


〈《製錬》に投入できる鉱石の数が増えました!! 5→10〉


〈《武具解体》で得られる『強化石』の数が増えました! 1→1.5倍〉


〈詳細は【工房】画面でご確認ください〉


 どうやら今回のレベルアップは新たな機能解放とかはないみたいだ。ただ、《製錬》できる鉱石の数が増えたという事で、《聖堂鉱石》を再び《製錬》にぶち込む。にしてもこれ、《聖堂鉱石》割とすぐに全部《製錬》出来るんじゃないか……? 俺が買った鉱石の数は意外と少なかったのかもしれない。


 あと今さらだが、『強化石』って《武具解体》で手に入るんだな。解体するのは、もう1レベルぐらい上がった頃にしておこう。『強化石』が勿体ない。……さて、取り敢えず防具も作っとくか。結局俺ずっと無装備だし。もう体力気にして戦いたくないし。

『防具』の項目をタップして候補を絞る。すると、【ボアシリーズ】なる装備が出てきた。


【ボアシリーズ】ランクD(シリーズ製作は自動的にランクDで固定されます)

≪効果≫DEF+45(-23)≪属性≫無≪装備スキル≫《猪突猛進》《寒冷耐性》≪シリーズ達成スキル≫《突進》

≪概要≫【アングリ―ボア】の素材を使用した防具全身。装備すると直情的な性格になり、突進を繰り返すと言われている。

≪必要STR≫60 ≪製作難度≫2


 おお、なんかスキルが3つも付いてるし結構いいな。素材も余ってるし、作ってみるか。ちなみに、これより防御力の高い【ボアシリーズ・ブロンズ】なる防具もあったが、素材を消費しすぎる上に知らない鉱石を使うらしかったので、どちらにしても出来なかった。

 レシピを見たところ、この普通の【ボアシリーズ】ですら【アングリ―ボア】の材料は問題ないが『聖堂鉱石のインゴット』が15個も必要という事で、しばし《製錬》の終わりを待つことになったのだが。


 にしても……結構『聖堂鉱石』の消費が激しい。生産ってお金がかかるんだなあ……としみじみ思っていると、チーン、と完了の合図が鳴る。あとは残りの『聖堂鉱石』を《製錬》にぶち込み、『聖堂鉱石のインゴット』を取り出して、【アングリ―ボア】の素材と一緒に金床の上でカンカンするだけの簡単なお仕事だった。


「おお……」


 完成した防具を見て、俺は素直に感動した。これがシリーズかと防具の一つを掴み、手で広げてみる。それは鎧と言うより毛皮に近かったが、全身揃っているというのはなんとも感慨深いものがある。

 久方ぶり(といっても現実世界ではまだ1日も経っていないのだが)に『装備』のメニューを開き、ボアシリーズを装着する。


「…………」


 全身を包んだ光が晴れた瞬間、俺はなんとも言えない気分になってしまった。その、何と言えば良いのか。【ボアシリーズ】が予想以上に『毛皮』だったからだ。比喩でもなく全身は防具の毛皮に覆われ、視界を遮らないよう透けて見えるものの目すら毛皮に覆われている。

寒冷地帯の狩猟民族に見えなくもないが、これではほとんど雪男だ。


【《豚に真珠》により≪装備スキル≫《寒冷耐性》と≪シリーズ達成スキル≫《突進》が削除されます】


「……」


 そういえば、【村人】って装備スキル付きの武具の場合は装備したときにランダムで消えるんだっけ。ってか、普通の≪装備スキル≫ならまだしも≪シリーズ達成スキル≫も含めて1つずつ消えるのかよ。何とも言えない気持ちになっていると、チーンと《製錬》が終了すると共にアナウンスが出てきた。


〈【工房】がレベルアップしました!! Lv3→Lv4〉


〈《製錬》に投入できる鉱石の数が増えました!! 10→15〉


〈《武具解体》で得られる『強化石』の数が増えました! 1.5→2倍〉


〈詳細は【工房】画面でご確認ください〉


 ……うーん。防具はこれで良いとして、武器がそもそもあんまり強くないというか強くなくなってるから、一先ず『強化石』で【ノーマルブレード】を一並みになるまで強化していこう。《武具解体》からさっき余分に作った【ノーマルブレード】を解体する。


―――――

【ノーマルブレード】

『聖堂鉱石のインゴット』×1

『強化石』×3


【解体しますか? YES/NO】

――――


 『YES』をタップし、次に《強化》でランクD⁺の【ノーマルブレード】を強化する。……必要な『強化石』は一つか。ウィンドウを操作して金床の上に【ノーマルブレード】が現れると、ハンマーの振り下ろしを二回続けて《強化》は終わった。

 『強化石』がまだあるので、さらに《強化》しておく。その結果がこれだ。


【ノーマルブレード+2】ランクD⁺

≪効果≫ATK+22(-11)≪属性≫無≪装備スキル≫無

≪概要≫基礎的な鉱石である『聖堂鉱石』と『加工石』のみを使用したシンプルな剣。模擬剣からの派生で殺傷能力が付与され、その切れ味はそこそこ。これを得て初めて【剣士】は初心者を卒業できたといえる

≪必要STR≫48 ≪武具製作難度≫1


 まだ《粗雑貧乏》なしの本来の攻撃力には届いてないな。『聖堂鉱石』はもう全部『インゴット』に変えたから、どうせしばらくは使わないだろうし作れるだけ【ノーマルブレード】を作って解体していくか。それで『強化石』を作りまくって強化しよう。


 と、《武具製作》でひたすらに【ノーマルブレード】を作っていると、突然見慣れたアナウンスが目の前に流れた。


〈レベルアップしました!! Lv45→46 〉

【ステータスポイントを10手に入れました】


「……え?」


 何でレベルが上がってるんだ? ……まさか。ログを開いて『取得経験値』の欄を見る。


〈《武具製作》により経験値『461』を獲得しました!〉

〈《武具製作》により経験値『461』を獲得しました!〉

〈《武具製作》により経験値『461』を獲得しました!〉

〈《武具製作》により経験値『461』を獲得しました!〉


 461。今俺が【アングリ―ボア】を倒しても経験値増加付きで『170』程度の経験値しかもらえなかったはずだ。《鍛冶》でも経験値が手に入るってことか。それでこの量の経験値が手に入ったという事は……なるほど、つまり……。


「俺の時代が来たってことか」

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