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「マリアンヌ様ではありませんか?」








そう言って人だかりの中から彼女に近づこうとする女の子が現れた。




魔法学園の学生さんらしく、制服姿の女の子は素朴ながらも可愛らしい顔立ちをしていた。




マリアンヌ、と呼ばれた彼女は慟哭を止めたが、女の子の方を泣き腫らした目で無表情に睨み付けていた。








「良かった、無事で。あのパーティーの最中に突然いらっしゃらなくなったので心配しておりました」








嬉しそうに彼女に近づく女の子は旧知の間柄なのだろう。




だが決して仲が良さそうには見えなかった。








女の子はにこやかで友好的だか、彼女は憎悪に濁った目で睨み付け一言も発していない。








これは一波乱あるなと思い何時でも動ける準備をする。




具体的には近づいてくる女の子に今にも飛びかかろうとする彼女を取り押さえるために準備する。








「きっ、貴様がぁあーっ!」








行くぞ行くぞと思っていたら、案の定、彼女は女の子に襲いかかった。




奇声を上げ、顔を真っ赤にした憤怒の表情は非情に危機迫るものがある。




彼女の強襲を考えだにしなかったであろう女の子は驚いて体が硬直してしまい動きを止めていた。




僕は彼女を後ろから羽交い締めにして取り押さえる。








「離せっ!下朗がぁっ!」








暴れる彼女はその細い体のどこにそんな力があるのかと不思議に思うほど強烈に抵抗した。








意外に思ったのは女の子を守るため三人の男の子が女の子の前に立ち塞がったことだ。




女の子と似たデザインの学生服を来た彼らは各々に個性豊なイケメンだった。








インテリ系、ワイルド系、キザ系、それぞれ分野するならそんな感じだろうか。








顔立ち優れた彼らだが皆表情険しく彼女を警戒している。








「マリアンヌ!貴様、二度とアンの前に現れるなと言っただろうが!」




ワイルド系が吠える。








「マリアンヌ、まだ生きていたのですね」




インテリ系が冷笑しながら言う。








「マリアンヌ、今の君は見苦しいよ」




キザ系が髪をかきあげながら言う。








彼らも彼女とは旧知だろうが決して好意的では無く、批判的な目線で彼女を睨む。




そんな彼らだったが、彼女には眼中に入っていないようで女の子だけに執心し一心に睨み付けていた。








「ふーうっ、ふーうっ、・・・今からでもいい、王子との婚約を解消しろ」








少し落ちたのか彼女は言葉を話し出した。




声は低く、相手を威嚇するように見据えている。








「申し訳ございません。それは出来ません」








女の子はきっぱりと断った。




それを聞いた彼女は再度僕の腕の中で暴れだした。








「マリアンヌ様の婚約者でいらした王子様と結ばれる事はマリアンヌ様に対し申し訳ない気持ちで一杯です・・・しかし、私たちは愛し合っているんです!」




「平民風情がぁっ!」








言い切った女の子は堂々としていた。




対して彼女は若干怯んだが直ぐに吠え返した。








「マリアンヌ、平民風情と言うが今の貴様の立場はどうだ?今の自分の格好に気づいて無いのか?」








インテリ系が彼女に話しかける。




言葉には侮蔑の色が混じっていた。




彼女はインテリ系を一瞥した後、顔を項垂れ自身の格好を確認し、悔しそうに唇を噛んだ。




え、それさっき買った服で値段も高く良い服のはずなんだけど・・・








「マリアンヌを取り押さえる冒険者よ、貴様の手助けには感謝するがこの女とは関わらない方がいいぞ」








キザ系が僕に話しかけてきた。




彼らの中では僕はその場に居合わせて暴れる彼女を取り押さえた冒険者なのだろう。








「その女はな、元は公爵家の令嬢で王子の婚約者だったが、その性根の悪さに王子から婚約を破棄され、更に実家の公爵家からも捨てられたどうしようもない女だぞ」








ワイルド系が情報をくれる。




なるほど、彼女は乙女ゲームの悪役令嬢がエンディングを迎えてる感じかな?




悔しそうに唇を噛み、顔を俯けたままの彼女を僕は見る。




険しい表情を浮かべる彼女と、不安そうにしながらも彼女を心配してそうな表情の女の子とを比べるとどちらがヒロインかは一目瞭然だ。








「おい、お前達、何を騒いでいる!」








衛兵が騒ぎを聞きつけやってきた。




「ちっ、これ以上の騒ぎは面倒だ。帰ろう」




インテリ系がこの場の解散を提案してくれた。








「でも私、マリアンヌ様ともう少し話がしたいです」








女の子がインテリ系に反論した。




出来れば空気を読んで解散にして欲しい。








「マリアンヌは少し感情的になっている。少し時間を開けた方がマリアンヌのためになるんじゃないかな?」








キザ系が説得に回る。




ナイスアシストと言いたい。








「・・・分かりました。マリアンヌ様!近いうちにきちんとお話しましょう!」








そう言って女の子とイケメン三人衆の学生グループは去っていった。








「僕たちも戻ろう、マリアンヌさん」








残された僕は、無表情に涙を流し続け、学生グループが去った方向を見つめる彼女に声をかけ手を差し出す。








「気安く名を呼ぶな」








差し出した僕の手は彼女に振り払われた。




僕は強引に彼女を立たせ、手を引いて歩き出す。




彼女はもう抵抗しなかった。




ただ前の無気力な状態に戻ってしまったが。




僕は彼女をどうすればいいのだろうか。




そんな事を宿屋に戻る道中、ずっと考え続けていた。

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