第一章 記憶を失くした少女 八
死んでしまった人、『瑚珀』に似ている私。
・・・私、いったい誰なんだろう。
普段のこと、身の回りのことは覚えているのに、
自分の名前や、自分の家族、友達の名前・・・。
どれも、自分に関係するものだけ、切り抜かれたように覚えていなかった。
多分、瑠衣は勘違いしているだけで、私の知り合いじゃなかったかもしれない。
・・・。
謎だ・・・自分のことだけど・・・。
「んー。」
ふと、瑠衣が口を開いた。
「ったく、足が痛くなってきた。
これだから歩きでいくの、嫌いなんだよなぁ。」
・・・。
歩きで行くのが、嫌い。
てことは・・・。
「他に移動方法があるわけ!?」
ちょっとキレた。
こんな辛い思いして、足の豆がつぶれて硬くなっちゃうほど、散々歩かせておいて・・・。
「いっ!?
あ、あぁ、あるっちゃ有るんだけど・・・。」
あやふやな返事。
私、こうゆうの、大ッッッ嫌い!
「あるなら先に行ってよ!
ったく、気が利かないんだからっ!」
はき捨てるようにいっても、やっぱりまだイラッとくる。
こんな自分が嫌になる。
困り果てた瑠衣がいった。
「っても、瑚珀、お前何も覚えてないんだろ?
魔術使うにも、瑚珀の魔道がないと出来ないし・・・。」
・・・。
は・・・?
魔術は聞いたけど、魔道・・・って、なにさ。
瑠衣はつづけた。
「・・・あーっも、
つまり、瞬時に移動するには、瑚珀自身の能力が扱えないと、できないの!
今の瑚珀は、何も覚えてないんだろ!?
だから、全く使いもんにならないんだよっ。」
「・・・。
なにキレてんのさ。」
「・・・・・っ。」
早口になってる=イラついている。
瑠衣の行動パターンはこれで決定。
・・・。
ところで、能力を扱うってことって・・・。
「・・・こうゆうこと?」
まず、全身の力を抜く。
ここで抜きすぎると、波動がハンパないみたいだから、少し加減を加える。
んで、体の隅まで力が行き渡った・・・気がしたら、
それを一箇所に集中させて、形にする。
そうすれば・・・ほら。
「氷の刃の出来上がり♪」
私の手の中には、小さな、それでも十分鋭い刃を持った、
氷で出来た剣があった。
いってみれば、短剣の形をしている。
透き通ってて、少し冷気を発してる剣。
それが、二本、私の手のひらで浮いていた。
「・・・凄ぇ・・・。
そっくり。瑚珀の剣と瓜二つだ。」
「そうじゃなくて、これでいいんでしょ?
瑠衣のいう、能力・・・魔道の使い方。」
ハッとして、瑠衣は言葉をだした。
「あぁ。うん。それでいいんだ。」
「じゃあ、早く行こうよ。
歩くのはもうこりごり。」
「?
歩くよ?」
「・・・は?」
なんですと?
楽っていうのに、また歩くの?
・・・。
もう、嫌になってきた・・・。
「空を、空中を歩くのさ♪」
と、瑠衣は地面をトンッとけり、
そのまま宙へと舞い上がった。
んで、振り向いて私に言った。
「簡単だぜ、結構。
刃を作れるくらいなら、こんなの屁でもねぇし。」
・・・屁って・・・。
・・・馬鹿。
とゆうことで、同じように地を蹴った。
体が軽かった。羽根みたい。
浮いて瑠衣の隣に並ぶと、頭を殴った。
「いぃ〜〜〜ってっ!」
「女の子の前で、屁とか言うんじゃないっ!」
「っつぅ〜。
ゴメンナサぁイ・・・。」
「誤るならちゃんとしなさいっ!」
「わわわっ!御免なさいっ!お許し下さいっ!」
・・・ん?
この感じ、前にもどこかで・・・。
・・・。
気のせいか・・・な?
「んじゃ、あとは簡単。
瑚珀は俺の後をついてくればいい。
この移動法なら、太陽の周りを一秒でだっていけるんだぜ♪」
「え、嘘、それホント?」
太陽を・・・一秒で・・・って、
普通、ありえないでしょ・・・。
「嘘じゃねぇよ。
だって、瑚珀がやってのけたんだぜ、最初に。」
得意の笑顔で瑠衣は言った。
瑚珀が、最初に・・・ね。
すごい人だったんだ、瑚珀って人は。
その分・・・。
どれだけ周りの期待を背負っていたんだろ・・・。
我慢とか・・・沢山してたんじゃないのかなぁ・・・。
「ねぇ、瑠衣。」
「ん?何?」
一呼吸あけて、私は言った。
「・・・瑚珀は、幸せだったのかな。」




