1/1
第零話 赤い雪
僕は1人だった。
そしてそれは寒い、雪の日だった。
隣には女の死体と赤い水たまり。
「おかぁ…さん。」
衝動的にそう呼びたくなる。
返事は返ってこないのに。
それでも呼びたくなるものだった。
雪の中の静寂は女の死体を違う世界へ連れ去ってしまうようで。僕は怖かった。
1人は怖かった。
取り残されたのはなんで。
なんで…
そう、そうだ…
理由ならお父さんが…
あれ。
「お……父さ………ん。」
何も思い出せない。
隣にある赤いのは何。
降ってる白いのは何。
ここは何。
僕の感じたあれは何。
僕は何。
そう考えていたら私の意識は真っ白く染まって行った。
隣の赤いものと切り離されるように。