表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/34

4:魔族、襲撃す その6

    ◇


 アンザークはグレンフォードの後を追おうとしたが、足を止めて南を見た。


「あっちが臭いな」


 つぶやいて飛び上がろうとしたところで動きを止める。


「飛ぶわけにもいかんか」


 今ここで飛べば正体がバレてしまう。面倒だなと思ったところで、いいアイディアを思いついた。


「シルヴィア! 来い!」


 アンザークはケンタウロスの名を呼んだ。

 蹄の音が聞こえてくるまで、ほんの数秒。大きな黒馬にしか見えないケンタウロス(呪いつき)が鼻息も荒く駆けつけた。


「ずっと会いにきてくださらないから、厩舎を蹴破るところでしたわ、我が主よ」

「オレも忙しいからな。南へ向かえ」


 アンザークは頭を垂れるシルヴィアに跳び乗った。


「魔界にお戻りに?」

「いや、なにかイヤな予感がする。急げ」

「承知しました。でも、首に腕を回すのは、今は……やめてください、我が主よ。たてがみにおつかまりください」


 シルヴィアはそう言うと、なぜか顔を赤らめたように見えた。


「よし、行け」


 アンザークがたてがみをつかんで合図を送ると、シルヴィアは一声上げて猛然と駆け出した。

 と、その前に人影が飛び出してきた。

 その後ろには剣を振り上げた兵士が迫る。

 人影がジークリットだとわかると、アンザークは腕を伸ばして抱きかかえると、後ろにストンと乗せた。

 シルヴィアは兵士を体当たりして駆ける。式典会場から外に向かう間、警護兵が暴れ回っているのが見えた。


「あ、アンザーク!? ありがと」


 ジークリットが驚いた声を上げたのは兵士の群れを突っ切ってから。一瞬のことでなにが起こったのか理解できなかったようだ。


「あの兵士はなんだ!?」

「いきなり襲ってきたのよ!」

「いきなり?」

「えっとね、そうだ! さっきの爆発の後!」

「魔法だな。爆発で発動するようにかけたか」


「どこに行くの!?」

「魔力が――」


 そう言いかけてアンザークは口をつぐんだ。


「いや、イヤな予感がしてな。とにかく、行くぞ! シルヴィア!」

「きゃっ!」


 振り落とされそうになったジークリットはアンザークの腰に腕を回して背中にしがみついた。


    ◇


「なんですか、これは?」


 寮の用事を済ませてようやくパーティに顔を出そうとした寮長があ然と口を開けていた。

 警護兵たちが会場にいた生徒たちに斬りかかっている。何人かは斬られて倒れている。


「私が預かる生徒たちになんという無体なことを! 生徒諸君、こちらへ参られよ!!」


 寮長は腰に吊した長剣を抜き放った。儀礼用などという代物ではない。ギラギラと刃が輝く物騒な得物だ。


「ジジイ、腰を痛めるぞ!」


 冷やかし声の方に視線を向けると、グラッドが引きつった顔で兵士に真鍮の燭台を突きつけている。フランツたち一〇人くらいの生徒を守っている。貴族の子弟もその中にいるようだ。


「なんの、まだまだ大丈夫ですとも!」


 軽口に言い返し、寮長はグラッドたちの方へ駆け寄った。兵士の剣を一撃で叩き落とし、拳で黙らせる。


「老いたりとて若造には負けんぞ!」

「口調が戻ってるよ、寮長」

「今は戦場だ! 寮長ではなく、隊長と呼べ!」


 フランツは怒鳴りつけられて首をすくめた。


「魔王が攻めてきたのかな?」


 寮長改め隊長の肩が震え始めた。


「魔王!? あの、傲岸不遜なヤツめ! 許さぬぞ!!」

「ジジイ、なんかあったのか?」


 あまりの剣幕にグラッドは思わず訊く。


「アヤツは斬りかかったワシには一顧だにせず、前線に突っ込んで行きおった!」

「ああ、相手にしてもらえなかったのか……。まあ、そりゃ腹も立つよな」

「今こそ見よ! ワシの恨みの太刀筋を!」

「いや、それ王国の兵士だから斬ったらマズいって」

「さあ、かかってくるがよい!」


 グラッドの言葉など耳に入らない寮長は啖呵を切った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ