4:魔族、襲撃す その1
4 魔族、襲撃す
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学園の空気はどことなく不穏な様相を呈していた。
生徒たちはざわざわと落ち着かない。それどころか教師まで浮ついた様子だ。
「なんなのだ、この雰囲気は? 居心地が悪いぞ」
食堂で昼ご飯を食べながら、アンザークはどうにも気持ちが悪いとブルッと体を震わせた。
「アンザークは知らないんだ。パーティがあるんだよ」
フランツがパンをちぎりながら言う。
「パーティとはなんだ?」
「金持ちのするこった。俺たちにゃ関係ねぇよ」
シチューの肉を口いっぱいに頬張って、グラッドは肩をすくめた。
「そんなことないわ。今度の式典はこの学園開校記念だから。生徒は全員招待されるはずよ」とジークリット。
「旨い物たらふく食って、どこかに逃げるか」
「偉い人の話聞いてもおもしろくないよね」
「それ言えてるわ~」
エロイーズが相づちを打つと、空かさずグラッドは身を乗り出した。
「だろ? だから、オレとどっかフケないか?」
「遠慮する~」
エロイーズは苦笑しながら、グラッドの顔を押しやった。
「グラッド、速攻でフラれたね」
「やかましい!」
グラッドはフランツの頭に拳骨を押しつけた。
「オレは行かんぞ」
アンザークは面倒そうに吐き捨てた。いっそのこと、その間に王都に飛んで行って図書館に侵入してやろうかと考える。
そこにジークリットが声をかける。
「グレンフォード様も来られるのよ」
「誰だ、そいつは?」
眉をしかめたアンザークにグラッドとフランツは呆れ顔。
「知らないのか? グレンフォード・ウィルシャーって言ったら、魔王と一騎打ちした勇者だぞ」
「今じゃ王女様の婚約者だよ」
「あいつ、そんな名前だったのか。出世したものだな」
アンザークは感心した顔でつぶやき、不意に思いついたように声を上げた。
「そうか! その手があったではないか。ヤツに訊けばいいのだ」
小声でブツブツ言うアンザークをグラッドたちはちょっと引いて見ている。
「よし、気が変わった。オレもパーティに出席して勇者に会ってやるぞ」
「おまえが会えるわけないだろうが。俺たちだって無理なんだぜ」
グラッドにせせら笑いを浴びせられ、アンザークが不機嫌な顔をする。
「なんだと!?」
「でも、ジークリットなら会えるんじゃないの?」
黙って聞いていたアーニャがさりげなく言うと、アンザークが食いついた。
「なに? そうなのか?」
「フェルトバーン家って言ったら王家に連なる名門貴族だよね?」
アーニャの言葉にジークリットは困ったような笑いを浮かべた。
「そんなに大したものじゃないけど……」
「会えるのか?」
勢い込んで訊くアンザーク。
「どうして会いたいの?」
「うむ、ちょっと確かめたいことがあってな」
「それだけじゃ難しいよね」
「そうか……。まあいい。他にも手はある。他人の手を借りるのも気が進まんしな」
「言っとくけど無茶はしないでね、アンザーク」
「心配はいらん」
不安そうな顔をするジークリットに、アンザークは不敵に笑って見せた。
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