3:、妹、来襲す その6
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「サナラだそうです。よろしくお願いします」
教壇の上からペコリと頭を下げる戦闘用アンドロイド。
「サナラちゃんはアンザークの妹さんです。仲良くしてね」
ジークリットが説明すると、サナラはアンザークの斜め下にある空いた席に移動する。
「自分の命を狙う刺客と一緒に勉強て、どんな気分なん?」
「訊くな」
アンザークはムスッとした顔でつぶやいた。
と、グラッドが冷やかし気味にアンザークに声をかけてきた。
「おまえにあんなかわいい妹がいたのか?」
「おまえは昨日のことを知らんのか?」
「……いや、俺たちは……」
グラッドとフランツが一瞬顔を見合わせ、バツが悪そうに顔を背ける。
「どうした、おまえら?」
「……いや、なんでもねぇ」
「なんでもないです」
まさかふたりで抱き合っていたとは言えるはずもなく、グラッドとフランツは引きつった笑いを浮かべた。
「なにかあったんですか? ケンカはいけませんよ?」
ジークリットが席に戻ってくるとそう言う。
「な、なにもないって! な、フランツ?」
「そそそそうだよ。なにもないよ」
グラッドとフランツは引きつった笑いを浮かべて、ぎこちなく肩をたたき合う。
「だったらいいけど……」
ジークリットはまだ不思議そうにふたりを見て席に着いた。入れ替わりにサナラが声をかける。
「変態のお兄様、よろしくお願いいたします」
「アンザークは変態なのか?」とグラッド。
「はい。妹の胸に指を這わせて興奮するくらいの変態です」
「おまえ……」
グラッドが氷のように冷たい目でアンザークを見る。
「たわいのない冗談だ」
「私は冗談なんか言いません」
「アンザーク……やっぱり……」
キッパリ否定したサナラに、フランツも疑いの目で見る。
「真剣な顔で冗談を言うのが、こいつの悪いクセなのだ」
アンザークは素っ気なく言うと、面倒そうに唸った。
「ええい、授業が始まるぞ!」
「あ、ごまかした」
「怪しいな」
「決定だな」
「アンザークは変態と」
「ねえ、変態って?」
ジークリットの大真面目な一言に全員が固まる。
「おまえ、説明してやれよ」
「ボクもイヤだよ」
グラッドとフランツが押しつけ合う間に教師がやって来た。
「では、授業を始めるぞ。今日は『魔族の歴史』についてだ。今は休戦しているが、敵の事を知らねば戦には勝てん。いいな」
「さあ、勉学だ!」
グラッドがわざとらしい声を上げて、広げた教科書に顔を突っ込む。
「もう、みんなしてのけ者にして」
ジークリットは頬を膨らませながら、教科書を広げた。
◇
「どうしたの、アンザーク?」
授業が終わった後、アンザークが額に深いシワを刻んでいるのに気づいたジークリットが声をかけた。
「むう……」
アンザークは唸るだけ。
「ひょっとして変態っていわれたんがショックやったんやろ?」
脇からひょいっと出てきたエロイーズに、アンザークは答えた。
「そうではない。なんだ、さっきの授業は!?」
「あ、魔族の歴史? あれはなぁ……」
なにか言おうとして、エロイーズが言葉を濁した。
「どうしたの?」とジークリットが訊く。
「い、いや、なんでもないねん!」
エロイーズはそそくさとその場を立ち去ってしまった。
(なにか避けられてるのかな、わたし?)
ジークリットはそう思いながらアンザークに言う。
「なにかわからないことがあるなら、わたし、聞くよ?」
「そうだな。おまえの意見も聞いてみたい。行くぞ」
「え? どこに? もう授業始まるよ?」
「次はいい。数字ばかりで頭が痛くなる」
アンザークは算数の授業など受ける気もないようだ。
「え? いや、わたし、生徒会長だし、無断欠席はちょっと、ダメなのに――」
ジークリットの抗議などどこ吹く風とばかり、アンザークはジークリットの手を取って強引に駆け出した。
「うわっ、さぼりかよ!」
「先生には上手いこと言っとくな~」
グラッドが声を上げ、エロイーズが手を振ってウィンクした。
◇




