2:淫魔、奉仕す その7
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下半身に妙な感じを覚えて、アンザークは目を開けた。
まだ窓の外は暗い。カーテンが揺れているのは窓が半開きになっているせいだ。
くすぐったいような、じれったいような、そして、熱い塊が股間に膨れ上がってくるような感覚。
エロイーズが足の上にまたがり、顔を股間に埋めていた。
「おふぁんでふ」
目が合うと、くぐもった声で爽やかな挨拶。
「なにをしてる?」
「なにって、ウチ、サキュバスやから、ご奉仕ご奉仕!」
「なにがご奉仕だ。やめろ」
「気持ちええやろ?」
エロイーズはなおも豊かな胸に挟んだものにぬらぬらとした舌を這わせる。
「だいたい、それは食い物ではないぞ。意地汚いヤツだな」
「食べへんよ? ウチが食べるのは、これから出てくる白いもんだけやし」
エロイーズはそう言ってアンザークの股間を舌先で突いた。
「魔王はんが友だちには手を出すなゆうたやんか」
「だからって、オレに手を出すヤツがいるか!」
「魔王いうんやから、きっと精力も凄い強いと思て。ウチが採るくらいやったらたいして減らへんやろ?」
「精力だと?」
「またまた~。かまととぶって。魔族の女ヒイヒイ言わしとったんやろ? こんなちっこい体でもスゴいんとちゃうの?」
「ヒイヒイ? なんだそれは?」
アンザークは眉間にシワを寄せた。その表情を見てエロイーズが真剣な目になった。
「……なあ」
「なんだ?」
「まさかと思うけど、魔王はん、童貞なん?」
「どうていとはなんだ?」
「……女とこんなことしたことある?」
「おまえが初めてだぞ」
「……童貞なんや」
エロイーズはぺろりと唇をなめ、アンザークの体の上を膝から腰に上がってきた。
「ほな、魔王はんの童貞いただきま~す!」
アンザークは言いしれぬ殺気のようなものを感じて素早く逃げ出した。
「なんだかわからんが、おまえには童貞はやらん!」
「え~っ!? 初めてのは美味しいのに……。寝てる間に食べてしもたらよかったわ……」
口惜しそうに言いながら、エロイーズはアンザークの股間を名残惜しそうに見つめる。
「それにしても、男の子は皆元気やのに、魔王はんのは元気ないなぁ」
じーっとアンザークの股間を見つめて、エロイーズが人差し指でピンと弾いた。
「なにをする!?」
アンザークは股間を守るためにベッドから降りると、タオルで隠してしまう。
「魔王はんて不感症なん?」
「なんだそれは?」
シャツを着ながらアンザークは意味がわからないと答える。
「それとも、誰か好きな相手いてるん?」
「知らん」
「わかった。ジークやな」
「どうしてあいつの名前が出る?」
「名前つけてもろて、仲ええし、美人やし。まあ、胸はウチの方が大きさも形もええけど」
「そうか? あまり変わらんだろ」
「って、ジークの見たん?」
「ああ。さわってみたぞ」
こんな感じだったかなと、アンザークは両手のひらでカップを作って、大きさと形を再現して見せた。
「で、その後は? 押し倒したりせんかったん?」
「押し倒してどうするのだ? 戦ってるわけでもないだろうが」
不思議そうな顔をするアンザークに、エロイーズは首を振ってみせた。
「わかってへんなぁ。もし、今度そういう状況になったら、押し倒すんや。女はそういうのを待ってるもんや」
「そうなのか?」
「そや」
自信たっぷりにうなずくエロイーズ。
「ふうむ……。人間についてはおまえの方がよくわかっているだろうしな」
「そら、長年、人間の精気を食べて生活してきたしな」
「わかった。次に会ったら試してみよう」
うなずくアンザーク。
「おもろなってきたなぁ」
後ろを向いたエロイーズはペロリと舌を出す。
「ほな、今夜のところは退散するわ」
窓から飛び降りると、背中から羽を伸ばして女子寮の方へ飛び去った。




