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栄光の昭和  作者: 原幌平晴
第三部
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第十四話 一人の少将

 紺碧の珊瑚海、その海原に白い波を蹴立てて、巨大な黒鋼の城が夕日に向かって進んでいた。連合艦隊旗艦、大和である。

 今、その主砲三基がゆっくりと旋回し、右、中央、左に狙いを定めた。各砲塔の三連装の砲身が、それぞれ四十度の仰角に持ちあがると制止する。

 一瞬の間を置き、甲板に警告のサイレンが鳴り響いた。艦橋を取り巻く針山のような対空砲の要員が、一斉に艦内に駆け込み、扉が閉じられる。

 三つの砲塔、九門の砲身から、爆炎が放たれた。やや遅れて、耳をつんざく轟音が鳴り響く。

 それぞれの砲塔は、わずかに向きを変えながら、なお三度斉射した。

 砲撃の彼方の上空では次々に小さな爆発が起こり、バラバラと銀色に光る破片が海面に降り注いだ。飛来した米軍攻撃隊の残骸だ。

 しかし、その数倍の敵機が無数の黒点として迫ってくる。

「有効距離が固定なのは辛いな」

 双眼鏡を降ろして、艦長の高柳儀八は呻いた。大和の艦橋には、電探手からの報告の声が続いている。

 二式榴散弾の子爆弾は円錐状に広がるので、その面積が広すぎても狭すぎても撃墜率が下がってしまう。再装填には時間がかかるので、その間に高速の敵機とは距離が変わってしまい、同じ目標に連射しても効果は出にくいのだ。

 だから時間がない。敵機の来襲まで数分足らず。艦長は叫ぶ。

「対空砲火、準備かかれ!」

 艦内に退避していた乗員が甲板に躍り出て、至る所に装備された対空砲に取り付く。大和を取り巻く艦艇も、敵編隊へ向けて陣形を整えていた。

 その間も、駆逐艦隊は海中への警戒を怠らぬよう、神経をとがらせていた。加賀に手傷を負わせた敵潜水艦は、まだこの海にいるはずなのだ。

 やがて敵の攻撃隊が襲い掛かってきた。しかし、上空には味方の迎撃機は少ない。残る二隻の正規空母、翔鶴と瑞鶴は、被弾した赤城と加賀に着艦できなかった航空機の受け入れで、手いっぱいだったからだ。

 大和直援の小型空母、祥鳳と瑞鳳から五十機の零戦が飛び立った。しかし、F6Fの二機編隊による一撃離脱戦法に苦戦し、一機、また一機と落とされていく。

 高柳艦長は、右舷に併走する翔鶴を見た。着艦する味方の切れ目を狙って、迎撃隊が離陸を開始していた。まさにその一機目が離陸しようとする所へ、SBDドーントレスの急降下爆撃が襲う。

「やられたか!」

 爆弾の直撃で離陸直前の零戦が消し飛び、まき散らされた燃料で飛行甲板が火の海となった。

「瑞鶴は……」

 高柳が左舷を見ると、瑞鶴は厚いスコールに包まれて見えなかった。あれでは迎撃機を上げられないだろう。一方、敵からの攻撃も受けようはずがない。天然の煙幕だ。

 そこへ、昇降機から肇と吉岡参謀が駈け出して来た。

「翔鶴は、南雲さんは?」

 血相を変えてる肇に、艦長は右舷の窓を指さす。

「私の見たところ、爆弾は飛行甲板を突き抜けずに、その上で爆発したようです。昇降機の枠の鉄骨に当たったのでしょう」

 対艦用の爆弾は、甲板を突き破って艦内で爆発するようになっている。だが昇降機の周囲は鉄骨で補強されており、これが貫通を防いだようだった。

「と言うことは、火災さえ収まれば?」

 肇の言葉に、高柳艦長は頷いた。

「それに、瑞鶴はおそらく無傷です」

 左舷を指さす。スコールが切れ、まさにその中から夕日に輝く瑞鶴が現れるところだった。さっそく、その甲板から迎撃の零戦が次々と飛び立つ。

「頼むぞ、瑞鶴の飛行隊!」

 出来ることはすべてやった。肇にはもう、祈ることしかできなかった。


「潜水艦より母船を狙え、てのは確かにそうだな」

 肇からのI端末通信を見て、艦長草薙は呟いた。電池推進のため、低速だが極めて静粛な米潜水艦は、探知が非常に困難だった。ただそれは、充電を海上の母艦に頼らなければならないと言う制約があった。

 つまり、水上の充電母艦を撃破すれば、敵潜は浮上して自ら充電するしかなくなる。そして、水上母艦は特に静粛性を重視しているとは思えない。待ち伏せ時のように短期的に戦力を削ぐのであれば、母艦だけを潰しても意味がない。長丁場になった今でこそ、効果的な戦術だと言える。

 時刻は一六〇〇時。あと二時間ほどで陽が沈むが、もとより暗黒の海中では何の違いもない。しかし、海上の小型艦船は、明るいうちに空から探した方が効率がいい。そして、一旦その海域が特定できれば、「わだつみ」の聴音器で追跡できるはずだった。

 それゆえ、敵の攻撃部隊が来襲する前に彩雲索敵隊が出せたのは僥倖だったと言える。

「上では始まったようですな、ドンパチ」

 海野副長が天井を見上げた。見えるはずはないが、海上で始まった戦闘の爆発音がかすかに聞こえてくる。しかし、空との戦いでは「わだつみ」の出番はない。

「戦闘海域から離れよう。巻き込まれたら厄介だ」

 草薙の指示で、「わだつみ」は連合艦隊の前方に出た。そこへ、大和から早速I端末の通信が来た。

「彩雲が単独行動の敵駆逐艦を発見したか。まず、こいつに間違いないな」

 珊瑚海の北、ニューギニア島の南の沿岸海域だった。さすがに双方の艦隊がぶつかる場所では、落ち着いて充電など出来ないのだろう。

 早速、その海域への進路を取る。数十海里手前で速度を落とし、深度を変えながら敵艦の音紋を探る。

「感あり、例の旧式駆逐艦です」

 聴音手が音紋を捕らえた。馴染みの仇敵だった。

「さて、充電中かな?」

 草薙は聴音手の席まで行き、受像盤に表示される波形を眺めた。聴音手が波形の一部を指さす。

「このあたり、ディーゼル発電機ですね。かなり大きな音です」

 と言うことは、充電中に間違いない。方位の変化から、敵艦の速度は十ノットに満たないと思われた。潜水艦を曳航していればそうなるだろう。僅かに、二隻分の潜水艦の音紋も拾うことが出来た。

「よし、泡沫遮音膜を展開。ゆっくり間合いを詰めるぞ」

 こちらも十ノットの低速で、真正面からそろそろと近づく。既に海上は夜のはずだった。

 機関音などから距離数海里に迫ったと判断し、草薙は下令した。

「魚雷、一番四番放流」

 左右の発射管から音もなく魚雷が水圧で放出された。推進器は止まったままで、そのまま漂う。「くしなだ」がパナマ湾で脱出時に行った、浮遊機雷設定だった。

「深度サンマルマル」

 無音潜航のまま、「わだつみ」は敵艦の遥か下を潜り抜ける。その背後には、浮遊機雷状態で残る魚雷二発があった。

 やがて、すぐ近くを大きな機関音で通り抜ける駆逐艦に、魚雷は目を覚まさせられた。推進器に火が入り、音源へと襲い掛かる。

 駆逐艦は即座に曳航中の潜水艦を切り離し、増速して回避行動に入った。潜水艦の方も回避行動に入ったが、ケーブルの回収に時間がかかる分、動きが鈍い。

 轟音。音紋の一つが消えたが、どうやら潜水艦らしい。駆逐艦の音紋は以前続いていたが、次の轟音で途絶えた。

「敵潜水艦、一隻が離脱していきます」

 聴音手の声に「追跡しろ」との指令が喉元まで出かかったが、通信手の報告に考えを変えた。

「I端末より、彩雲が別の駆逐艦を発見」

 顎鬚をしごき、指示を出す。

「よし、次の母船を潰そう。敵潜は、あの速度ではじきに電池が上がる。浮上すれば海軍さんが仕留めるだろう」

 どうやら、潜水母船を担っているのはシーウルフ艦隊の古参の艦らしい。と言うことは、例の軽巡を入れても六隻、その一隻はこれで沈めた。潜水艦そのものも九隻を沈めたことになる。

 さらに、今夜中に何隻潰せるかが問題だった。


 山口多聞少将は、空母飛龍の艦橋から指示を飛ばし続けていた。敵の第二次攻撃隊はさらに数が多く、対空砲火がいくらあっても足りなかった。

「右舷駆逐艦、弾幕が薄いぞ!」

 先ほど、待ち伏せしていた敵潜水艦からの魚雷と思われる雷跡があり、味方駆逐艦の対魚雷爆雷で破壊したばかりだった。注意が海中に向けば、どうしても対空砲火が乱れる。

 その指示が発光信号で伝えられている最中だった。右舷側を併走する空母蒼龍に、敵の急降下爆撃機が襲い掛かった。

「蒼龍、被弾!」

 飛龍の艦橋に、監視員の声が響く。山口多聞は窓に飛びついた。併走する蒼龍の飛行甲板に三つの爆炎が上る。あろうことか、三機の昇降機を直撃していた。

「やられた!」

 山口は毒づいた。敵の攻撃は蒼龍一艦に集中していた。しかも、敵潜のほかに攻撃機による雷撃もあり、対空砲火が低空を飛ぶ敵機に気を取られていた。痛恨の極みとはこのことだ。

 蒼龍の格納庫では激しい火災が起こり、航空燃料や爆弾などの誘爆が相次いだ。もはや通常の消火活動では鎮火は難しい。蒼龍艦長の柳本柳作大佐は特別消火を命じた。だが、艦首部に設置された爆薬は起動しなかった。三発の爆弾が、二重に張り巡らせた起爆の銅線を両方とも断ち切っていたからだ。

 死を覚悟して手動で起爆させようとする乗員もいたが、激しい火災で近寄ることもできなかった。

 さらに、最初の一発は下段の格納庫まで貫通してから爆発したため、これが主蒸気管を破壊し、機関が停止してしまった。機関部員は上階の火災で機関室に閉じ込められ、自力での脱出はほぼ不可能になった。

 機関停止により、全艦の電源が落ちた。消火ポンプも使えず、人力では到底延焼を食い止められないことは、それこそ火を見るよりも明らかであった。

 被弾から十五分後、柳本艦長は総員退艦を命じる。自身は炎に包まれた艦橋に留まり、艦と運命を共にする決意を表した。

 蒼龍からの発光信号を見て、山口は艦橋の壁を何度も殴りつけながら叫んだ。

「柳本! 貴様の命、もらい受けた! この仇は必ず取る!」

 そこへ見張り員が声を上げた。

「上空より、敵機!」

 またもSBDドーントレスだった。二十機以上の編隊が急降下爆撃に入っていた。

「対空砲火、真上だ!」

 山口が叫ぶや否や、飛龍の両舷から計四十三門の対空砲が火を吹く。近接信管の威力で大半のSBDは爆散したが、爆弾は既に投擲されていた。

 一発の爆弾が、飛龍の航空甲板を突き破り、格納庫で爆発した。衝撃で窓枠にしがみついた山口の面前に、ドンという響きと共に巨大な壁がそそり立った。爆発で吹き飛ばされた昇降機の床だった。

 続けて、さらに三発が着弾。一発は艦橋のすぐそばだったが、奇しくも昇降機の床が爆風を遮ってくれた。

 格納庫内で爆発した四発の千ポンド爆弾は、致命的な破壊をもたらしていた。日本の空母の弱点と言える、損害制御能力の不足だった。僚艦の蒼龍と同じく、艦内の電装の架線が爆発で切断されたため、艦首部に設置された特別消火の爆薬が起爆できなかった。また、格納庫天井の消火装置も全滅だった。

 唯一、機関部の損傷は限定的で、速力は落ちるが自力航行は可能だった。しかし、ここで問題が生じる。舵を動かすための電力線が爆発で切断されたため、蓄電池に切り替えられたのだが、この蓄電池は艦内通話にも使われていた。折しも、機関長の相宗邦造中佐は艦橋の機関参謀と通話中だったが、突然通話が途切れて愕然とした。

 やがて、上階の火災の熱が右舷機関室にもおよび、右舷側を放棄して左舷機関室に移らざるを得なくなった。また、通話が途絶えたため何とか艦橋へ伝令を送ろうとしたが、これも火災で道を塞がれてしまった。同様に、艦橋側からも機関室に人を送ったが、やはり災に阻まれた。

 結果、飛龍艦長の加来止男大佐は、機関部員が存命なのを知らずに、総員退艦を下令することになった。

 しかし、山口少将と加来艦長は、二人とも退艦を拒否した。山口は艦橋の一同を集めて語った。

「皆で一生懸命努力したけれども、この通り本艦もやられてしまった。力尽きて陛下の艦をここに沈めざるをえなくなったことは極めて残念である。どうか皆で仇を討ってくれ。ここでお別れする」

 山口が一同と水盃をかわそうとしていた時、艦橋に一人の長身の男が駈け込んで来た。私服の裾が焼け焦げている。

 男を見るなり、山口の眼が見開かれた。

「石動閣下……なぜここに?」


 その半時前、肇は大和の艦橋で戦況を見つめていた。敵攻撃隊は、ようやく引き返していくところだった。何とか飛行甲板の火災を消し止めた翔鶴と、無傷の瑞鶴から、反撃のための攻撃隊が飛び立とうとしている。

 その時、脳内で了の声が響いた。

(蒼龍に続いて、飛龍がやられた)

 総員退艦の指示と共に、飛龍から最後の無線が大和の戦闘情報室に届き、I端末経由で了に伝わったのだ。

「山口少将は?」

 猛将の誉れ高い武人だった。

(史実のままなら、自決するだろう)

 肇はよろめいた。それこそ、恐れていた歴史の揺り返しに違いない。これを見逃せば、娘の光代には残酷な未来しか残らなくなる。そう、肇は確信した。

「艦長!」

 肇は高柳に向かって言った。

「飛龍に行きます。偵察機を貸してください」

 艦長は頷き、後部甲板へ指示を出した。それを背に、肇は階段を駆け下りていく。昇降機を待つのも、もどかしい。

 空の旅は、肇にとっては鬼門だった。高所恐怖症は未だにあったが、光代を待ち受ける運命の方が余程恐ろしい。座席に付き安全策を確認すると、了が脳内で言った。

(空を飛ぶ間、私に身体を貸すといい)

 渡りに舟とはこの事だろう。接続が繋がっていて何よりだった。意識の切り替えでがくりと頭を垂れたのち、落ち着いた声で了が言う。

「では、頼みますよ」

 前席の搭乗兵は、頷くとカタパルトの操作員に合図した。

 ガン、と一瞬の衝撃の後、零式水偵は空に舞い上がった。

 敵機がまだ上空にいるかもしれないため、水偵は海面すれすれを飛んだ。やがて水平線の彼方にたなびく煙が見え、近づくにつれて燃え盛る飛龍の艦影が眼前に聳え立った。

 機関が停止し漂流する艦体は、退避中の内火艇などが周囲を取り巻いていた。そのただなかに水偵が舞い降りる。索具を解くと搭乗兵が立ち上がり、叫んだ。

「そちらに一人移る! 係留索を頼む!」

 言うなり、飛龍のタラップ上にいる水兵に向けて綱を投げた。係留が済んでタラップに横付けされると、身体を返された後席の肇が立ち上がる。

「ありがとう、後は自分で何とかします。ここで待っていてください」

 返事を待たずに、肇はタラップに飛び移った。

 艦内は火災に追われて脱出しようとする乗員たちで騒然としていた。その中を縫って上へと走る。焼け焦げた飛行甲板に出ると、破口を避け、飛び越して艦橋へとさらに走る。くすぶる甲板の炎が肇の衣服を焦がしたが、気にしている暇はない。

 艦橋の入り口は、巨大な鉄板で塞がれていた。防弾板の代わりとなった昇降機の床だ。が、艦橋の後部に外階段を見つけ、そこを駆け上がる。

 艦橋に飛び込んだ肇に、山口少将は驚き、手にした水盃を落とした。構わず肇は少将に駆け寄り、その両肩に手を掛けて言った。

「山口少将、お戻りください」

 その手を振り払い、山口は言った。

「それはできません。今回の攻撃は、私の独断によるもの。責任は全て私にあります」

 なおも肇は詰め寄った。

「死ねば責任が取れるのですか?」

 肇の気迫と言葉に、山口は僅かに怯んだが、押し返すように叫ぶ。

「ここで生き延びては、死んでいった兵達に申し訳が立たない!」

 その時、大きな爆発が起こり、艦の後部から火柱が上がった。よろめいて数歩下がった石動は、心を決めた。

 もう時間がない。

「貴方を死なせるわけにはいかない。ご同行を」

 山口は腰の軍刀を抜くと構えた。

「閣下の言といえど、こればかりは」

 肇は前のめりに体勢を崩すと、そのまま突進した。意表を突かれた山口は咄嗟に軍刀を振り下ろすが、逆に肇は懐に飛び込み掌底を下から顎に突き上げた。

 意識を失った山口を担ぎ上げると、傍らに立ち尽くす加来艦長に怒鳴る。

「まだ死に急ぎますか!」

 毒気を抜かれた艦長は、同行に同意した。床から山口の軍刀を拾い上げ鞘に納める。

 そのまま、肇は全員を促して飛行甲板に降り立った。しかし、艦内に降りる昇降口からは、どれも炎が噴き出していた。

「こっちです!」

 水兵の一人が舷側に向かって駆け寄り、身を投げた。あっと思った肇が舷側に駆け寄ると、飛行甲板の下に対空砲の銃座がバルコニーのように張り出していた。肇も山口を背負ったままそこに飛び降り、加来艦長らが続いた。

 艦内の舷側寄りの階段を下り、何とか二式水偵の係留されたタラップにたどり着く。搭乗兵に声を掛け、波に揺れる水偵の中央座席に山口を座らせた。安全策具を搭乗員に任せると、加来艦長を振り返る。艦長は言った。

「私は内火艇に移ります」

 加来の言葉に、肇は答えた。

「必ず、大和でまたお会いしましょう」

 敬礼する加来に頷くと、肇は水偵の後部座席に飛び乗った。

 水偵が離水する時になって、肇は了との接続が切れていることに気づいた。おかげで大和に戻った時にはすっかり消耗しており、意識のもどった山口の手を借りなければ、座席から立ち上がることも出来ないほどだった。そのため、行きと帰りのあまりの違いに、搭乗兵は首を傾げることになった。

 既に夕日は没しており、薄暮の中に帰還した攻撃隊が翔鶴と瑞鶴に着艦するところだった。

 一八〇〇時、戦闘は終盤へと向かう。


登場人物紹介


実在する人物には【実在】としています。


相宗邦造

【実在】空母飛龍の機関長。階級は中佐


加来止男かく とめお

【実在】空母飛龍の艦長。階級は大佐。


次回 第十五話 「三人の去就」


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