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栄光の昭和  作者: 原幌平晴
第二部
30/76

第二話 一人の武将

 真珠湾奇襲が行われた十二月八日の早朝。

 草薙艦長は「わだつみ」の発令所で悩んでいた。

「進むべきか留まるべきか」

 これではハムレットだな、と一人で突っ込みを入れる。

 視線は海図に釘付けである。自艦の位置を示す印と、英国東洋艦隊の位置を示す印が記入されている。

 傍らの海野副長が、英国艦隊の位置を指でとんとんと叩いた。

「こいつを、どうにかしておびき出さないといけませんね」

 英国東洋艦隊はマレー半島の南端、シンガポールにいる。解読した暗号によれば、旗艦はプリンス・オブ・ウェールズ。キング・ジョージ五世級の二番艦で、英国が誇る最新鋭の戦艦だった。

「こちらの魚雷の射程距離内に捉えれば、一発で沈められるのだがな」

 その自信はある。実際、「くしなだ」はヨークタウン級を仕留めている。

 しかし、積極的に進撃できない理由があった。

 南シナ海の南部、タイからマレー半島に沿ってボルネオ島に至る海域は、平均水深六十メートルの浅海である。これは、潜水艦にとって苦手とする環境だった。潜航深度に気を付けないと海底に衝突する上に、南国の海は透明度が高く、条件が良いと数十メートルも見通せてしまう。しかも、これから日が昇り明るくなる。つまり、航空機からは丸見えになってしまいかねない。

 海軍の伊号潜水艦はそれでも進出しているが、「わだつみ」は浅海域の手前で停止している。巨艦ゆえに浅海の危険性が増すためだ。

「何より、石動閣下の予言から外れているのが不気味だな」

 熱烈な石動信者の草薙にしてみれば、極めて重大である。

 副長も同意した。

「空母がいるとは厄介ですな」

 石動了の世界では、このマレー攻略戦は、日本の航空部隊と航空支援のない英国海軍との戦いとなった。結果として、最新鋭戦艦プリンス・オブ・ウェールズが航空戦力に敗れるという衝撃的な出来事となり、大鑑巨砲時代の終焉をもたらしてその後の戦略を大きく変えて行くこととなる。

 しかし、歴史にはすでに大きな変化が起きていた。空母インドミタブルの存在だ。了の世界では、プリンス・オブ・ウェールズの護衛として随伴しつつも、途中で座礁事故を起こし、艦隊から脱落しているはずであった。

 芹沢のJM社が開発した兵器のいくつかは、アメリカの友好国イギリスにも一部が提供されていた。その一つが、航法レーダーである。これのおかげで、夜間でも陸地に接近しすぎたことがわかり、座礁事故は未然に防がれたのだが、草薙らはそのことを知らない。

 敵に空母がある以上、了の世界のように日本の航空戦力の一方的勝利となるとは期待できない。しかし、敵艦隊が出てこなければ、「わだつみ」から攻めるわけにも行かなかった。

 溜息をつくと、艦長は言った。

「やはりここは、陸海軍さんに餌になってもらうしかないな」

 副長も頷いた。

 全軍の暗号を砥論で統一しておいたことが役立っている。司令塔から放出された通信ブイが、ケーブルを引いて海面まで浮上し、砥論暗号の電文を送信した。

 陸軍のマレー半島上陸は、真珠湾奇襲より先に始まっていた。上陸そのものは成功したが、英国の陸上攻撃機によって輸送船に被害が出たため、一部の輸送船団は退避していた。小沢中将率いる南遣艦隊はこの船団を護送して東方へ向かうこと。これが「わだつみ」からの電文の内容だった。

 次に、小沢艦隊は同じ内容を他の味方艦隊へ、既に解析されているはずの旧式暗号で打電した。これも砥論暗号で送った要求の一部であった。


 小沢治三郎中将は、先ほど受けた暗号電文を苦りきった表情で見つめていた。

「閣下、その電文が何か?」

 副官の声に小沢は、ふん、と鼻を鳴らした。

「本土を出る前に受けた、山本長官直々の命令だ。この符牒がある電文には従えとな」

 電文の最後には「わだつみ」とあった。

「要するに、囮になれと言う事だ。まぁ、機会を見て魚雷をぶち込んでも良いんだがな」

 戦艦を擁する敵部隊に対して、こちらは重巡と駆逐艦。戦力差は歴然とはいえ、会敵が夜なら接近して水雷戦もあり得なくはない。

 しかし、小沢は英海軍がすでにレーダーを強化していることを知らなかった。


 イギリス東洋艦隊の司令官、トーマス・スペンサー・ヴォーン・フィリップス大将は、小柄な体格から「親指トム」のニックネームで呼ばれていた。先月末、大将に昇進し、直後に飛行機でシンガポールに降り立ったばかりであった。そして今月二日に司令官に就任。あまりに慌ただしいのは、ドイツと正面から戦いながらもイギリス連邦諸国を守らねばならないという、国全体の窮状を表していた。

 そこへ、八日未明の日本軍上陸の報告である。

「落ち着かないこと甚だしい」

 軍人である前に英国紳士であるフィリップスとしては甚だ遺憾ではあったが、朝の一杯の紅茶を諦め、やはり慌ただしく司令部に入った。

 そこへ、南遣艦隊東進の電文が舞い込んだ。興奮した副官が上申する。

「司令、これはチャンスです。被害を受けた船団を護衛する以上、速度も出ません。情報によれば、この護衛艦隊は巡洋艦が中心です。我らが最新鋭戦艦プリンス・オブ・ウェールズと巡洋戦艦レパルスにをもってすれば、赤子の手をひねるがごとしです」

 フィリップスはしばし考えた。まず落ち着くことだ。

「プリンス・オブ・ウェールズとレパルス、これらに随伴可能な速度の艦艇を選別し、出航準備をしたまえ」

 副官が質問した。

「部隊のコードはいかがいたしましょう」

 再び考える。この程度の敵戦力なら一撃で潰せる。そして、この海域から日本軍を追い払う。ならば、最初で最後の部隊編成になるだろう。

「Z部隊。それがコードだ。編成を」

 そして、不本意ながら付け加えざるを得なかった。

「大至急だ」


 〇八〇〇時、シンガポール近海まで展開した零式艦上索敵機彩雲から、英国艦隊の出港が伝えられた。

「食いつきましたね」

 地蔵とあだ名される副長は、細い目を一掃細くして言った。

 艦長は答えた。

「うむ。あとは射程内に入ってくれれば」

 小沢艦隊との速度のタイミングがすべてだった。速すぎれば追撃を断念するだろうし、遅すぎて捕捉されてしまえば全滅しかねない。

 しかし、「わだつみ」としては待つしかない。

「朝風呂でも入るか」

 艦長は言った。

「良いですね」

 総員に半舷休息を命じ、二人は発令所を出た。


 フィリップス司令率いる東洋艦隊は、マレー半島の東に浮かぶアナンバス諸島の東側を大きく迂回すべく、北東に向けて進んでいた。半島の沿岸に沿って北上すれば速いのだが、そこには日本軍がすでに機雷を施設していたため、航行不能であった。

 ようやく午後の紅茶を楽しむ余裕が出たフィリップスだが、頻繁に飛来する敵機のために何度も邪魔が入った。新型の索敵機らしく、インドミタブルから上がった迎撃機があっという間に引き離されてしまう。

「全く、うるさい蠅ですな」

 毒づく副官をたしなめると、フィリップスは言った。

「これで、もう一つの別働艦隊もおびき寄せれば、一石二鳥ですよ」

 近藤信竹中将率いる第二艦隊だ。金剛、榛名の二隻の戦艦が属する。どちらも艦齢三十年を超える老朽艦であり、近代化改装はされていても、そもそも巡航戦艦から改造されたために主砲も装甲もプリンス・オブ・ウェールズには遠く及ばないとされていた。

 こんな東洋の果てにまで出てきたのだ。このぐらいの手土産がなければ割が合わなかった。


 翌朝、夜明けとともに電文が「わだつみ」にも舞い込んだ。

「サイゴンからの陸上機が、英国艦隊の迎撃に出たようです」

 草薙は顔をしかめた。

「不味いな」

 副長も同意した。

「零戦の護衛はつくでしょうか……」

 長い航続距離を誇る一式陸上攻撃機だが、被弾した際の防火装備が不十分だと言われている。零戦による護衛がなければ、インドミタブルの艦載機の餌食となりかねない。

 サイゴンの元山航空隊からは九六式陸攻二十六機、そのすぐ北にあるツドゥムからは鹿屋航空隊の一式陸攻二十六機が飛び立った。副長が懸念した通り、零戦による護衛は無かった。ほぼ全機が真珠湾に投入され、南方戦線にはわずかしか配備されていなかったのだ。

 昼過ぎに入った暗号電文では、結果は最悪だった。爆弾装備の九六式陸攻九機は全滅。雷装の九六式と一式陸攻は半数が撃墜された。帰還機もほぼ全機が被弾し、うち三機は不時着して二度と飛べなくなった。

 敵艦隊の損害は、駆逐艦テネドスが魚雷の至近弾を受けてスクリューを破損し脱落、シンガポールへ引き返しただけであった。

「酷すぎる」

 草薙艦長が吐き捨てるように言った。

「空母艦載機の直援があるにしても、ここまでやられるものでしょうか」

 海野副長の疑問も当然だった。空母インドミタブルに搭載されていると見られた艦上機フルマーは、複座で鈍重な戦闘機であり、消して高性能ではなかったからだ。しかし、ここでも歴史改変は起きており、搭載されていたのは別の機体だった。

「仇は討つ」

 草薙はつぶやいた。


「全艦、最大戦速」

 フィリップスは勝利を確信していた。こちらのレーダーが敵の重巡艦隊を捉えたのだ。もうじき日が暮れる。日本の海軍は夜間戦闘を得意とするというが、レーダーがある以上、こちらに分がある。インドミタブルから出た索敵機によると、別な戦艦部隊もこちらに向かっているとのことだったが、こちらとの会敵は数時間後だった。各個撃破のチャンスと言えよう。

「しかし、先刻の攻撃機来襲にはヒヤリとさせられましたな」

 プリンス・オブ・ウェールズ艦長のジョン・リーチが述べた感想に、フィリップスは頷いた。

「空母インドミタブルの艦載機の活躍でしたね」

 旧式機フルマーに代わって配備されたのは、ホーカー・エアクラフト社のシーハリケーン艦上戦闘機だった。ベースになった陸上機ハリケーンは五年前に配備されたもので、胴体や翼は木材や帆布という、前時代的だが頑丈で故障の少ない機体だった。最新鋭のスピットファイアよりも扱いやすいとさえ言われている。

「何にせよ、航空機には航空機、戦艦には戦艦。それが最適の組み合わせです」

 そこに潜水艦が含まれていないのが、彼の運命を決めた。


「敵艦隊転進? 一体、何があった?」

 一夜明けて受信した彩雲からの電文に、草薙艦長は目を剥いた。こちらの射程距離の直前で、英国艦隊は突然進路を変えたのだ。しかも、向かう先はマレー半島の中部。日本軍が上陸した北部のコタバルと、南端にある英軍拠点のシンガポールの中間だ。

 通信士がもう一枚の電文を差し出した。

「おそらく、これが原因では」

 その電文は英文で「日本軍、新たにクランタンに上陸」とあった。クランタンは、確かに英国艦隊の向かう先にある沿岸都市だ。そこを押さえられたら英国の勢力圏は大幅に狭まることになる。

 しかし、そんな作戦は日本側には無かった。上陸できる部隊もあるはずがない。明らかに誤報だった。

「やばいぞ、これは」

 艦長は海図の一点を指さす。近藤中将の第二艦隊と、途中で進路が交差する。

「近藤さん、やる気満々だ。参ったな」

 こめかみを押さえる。副長が聞いた。

「いかがしますか」

 草薙は右の拳を左の掌に打ち付けて言った。

「撃って出る。深度サンマル、両舷全速!」

 浅深度に浮上し、「わだつみ」は浅海へと突入した。


「何だあれは!」

 索敵中の彩雲の監視員は、海中を猛スピードで進む巨大な黒い影を目撃し、思わず叫んだ。朝日にきらめく海面越しに、西へと猛進していく。速度は三十ノット以上は確かにあった。

 この発見を基地に報告したところ、意外な返事があった。

「ただちにその海域を離れよ」

 ただ、それだけであった。釈然としないながらも、指示に従うしかない。

 しかも、帰投したのちには緘口令までしかれる有様だった。


 準急航行を続けて数時間後、ようやく「わだつみ」は英国艦隊を射程距離内に捉えた。

 間髪を入れずに、艦長の号令が飛ぶ。

「両舷停止。全魚雷発射管、諸元入力。近接信管の感度最大」

 装填済みの魚雷に設定が入力された。最大射程なので外すわけには行かない。感度最大なら、少しでもかすめれば爆発するはずだった。

「入力完了」

 各魚雷発射室から報告が上がる。

「全発射管、内扉閉じ注水、発射口開け」

 再び報告が上がる。

「外扉開け」

 三たび、報告が上がる。

「全門、発射!」

 全六門の発射管から魚雷が放たれる。

「反転、全速で離脱する」

 巨艦にも関わらず、「わだつみ」は驚くほど小さな半径で旋回すると、深度のある北東海域へと向かった。


「魚雷走行音、後方より多数」

 随行する駆逐艦からの報告に、フィリップス指令は文字通り飛び上がった。

「さては潜水艦か?」

 だが、最大戦速の艦隊に追いすがれる潜水艦などあるはずがない。待ち伏せなら、命中率の高い真横から狙うはずだ。

 あくまでも常識では。

 リーチ艦長は伝声管に向かって叫んだ。

「後方監視楼、何をしている!」

 艦の後方にある監視楼から報告。

「雷跡は見えません」

 艦長は混乱した。魚雷なら雷跡があるはずだ。だが、日本が雷跡の生じない酸素魚雷の開発に成功したことを、英米は知らなかった。

 フィリップス司令を振り返る。司令官もまた、硬直していた。

 プリンス・オブ・ウェールズの副長が叫ぶ。

「艦長! 回避行動を!」

 だが、全ては遅すぎた。

 ずん、と重い爆発音とともに、艦尾が高々と持ち上がった。全員が艦首方向に投げ出される。感度を高めた魚雷が、艦尾の下に達した瞬間に起爆したのだ。発生した巨大な気泡が艦尾を持ち上げ、気泡が潰れた穴に今度は落ち込む。

 そこに爆発、二発、三発。後続の魚雷が、海面下深くに沈み込んだ艦尾に直撃したのだ。

 傍らでは僚艦のレパルスが、同じように艦尾に複数の魚雷を受けていた。

「こちら後方監視楼、艦尾が……ありません!」

 泣き叫ぶような声で報告が上がった。複数の魚雷の直撃で、艦尾は粉々に吹き飛んでいた。そして機関室では、へし折られたスクリューのシャフトが鞭のように周囲の隔壁を乱打し、破壊の限りを尽くしていた。さらに艦の全体にわたって無理な力がかかったため、いたるところで亀裂が生じ、浸水が起こっていた。

 英国の誇りである戦艦は、見る見るうちに船尾から沈み始めた。レパルスを見ると、すでに半分以上が水没している。

「艦長」

 フィリップス司令は口を開いた。倒れたときに額を打ち付け、血が流れていた。しかし、拭おうともしない。

「総員退艦だ」

「司令……」

 リーチ艦長も頭から血を流しながら返事をした。爆発で弾き飛ばされたときに頭を負傷したのだろう。顔色は真っ青で、既に死人のように見えた。

「総員退艦。君もだよ、艦長」

 もう一度、繰り返す。言葉を失う艦長に代わり、副長が指示を叫んだ。

「総員退艦、急げ!」

 甲板からは、早くも自ら海中に飛び込む水兵もいた。雷撃を免れた駆逐艦とインドミタブルは、必死の救助作業を行っている。

「左舷前方、敵艦隊です!」

 ああ、止めを刺しに来たか。

 フィリップス司令は絶望にかられた。女王陛下から預かった貴重な戦艦を失うばかりか、兵士たちまで皆殺しになるだろう。すべては、自分の責任だ。

 副長が叫んだ。

「司令、あなたも早く退避を」

 フィリップスは、振り返ると言った。

「私はいい。さらばだ」

 副長に向かって敬礼する。副長も敬礼を返し、他の士官を急き立てるように艦橋を後にした。

 足元には艦長が倒れていた。頭の負傷のためか、既に意識がなかった。傍らに膝をつき、語りかける。

「君とは短い付き合いだったな。せめて最期は共に過ごそう」

 愛用のティーカップは粉々だった。紅茶が飲みたかった。

 ふと、窓の外を見ると、日本の戦艦が迫っていた。あれは金剛か榛名か。こちらと並行するように艦を向けている。全砲門で狙うための基本だ。せめて、退避した乗員だけでも助かって欲しいものだが、叶わぬ望みか。

 その時、敵艦の舷側から、何かがいくつも海面に向かって落とされているのが見えた。

 フィリップスは驚愕した。

「あれは……」


 敵戦艦二隻の被弾の知らせに、近藤信竹中将は地団太を踏んだ。

「くそ、潜水艦に手柄を取られたか!」

 壁を殴り続ける背中に、通信士が声をかける。

「司令、長官からの命令文です」

 山本五十六からの電文だった。しかも、暗号ではない平文だ。作戦行動中では異例なことだ。

 命令の電文を読み、近藤の怒りはあきれ顔に変化した。

「なんてこった」

 しかし、命令は命令である。従うしかない。指示を出した。

「全速前進、敵戦艦の横につけろ。金剛はデカい方、榛名は小ぶりな方」

 旗艦金剛の横に沈みつつある英国戦艦が見えると、次の指示を出す。

「艦内のすべての救命胴衣を、敵戦艦側に投下せよ。内火艇、救命艇も全部おろし、総員で敵兵を救助せよ」

 なんで敵に塩を送らねばならんのだ。助けたこいつらは、また武器をとって攻めてくるに違いないのに。

 そんな思いで苦虫を噛み潰していると、双眼鏡を手にした監視員が指をさして叫んだ。

「司令! あそこをご覧ください!」

 渡された双眼鏡で敵戦艦の艦橋を見ると、ひとりの男がこちらを向いて立っていた。額に流れる血を気にもせず、敬礼をしている。

 あれがあちら側の司令官か。

 近藤は、敵側にも武人がいることを悟った。

 彼はそのまま、敵艦の艦橋が海面に没するまで微動だにせず、敬礼を返し続けた。


 翌日、一機の日本機が二隻の戦艦の沈んだ海域に飛来し、白い花束を投下して何度か旋回すると、飛び去った。

挿絵(By みてみん)


登場人物紹介


実在する人物には【実在】としています。


小沢治三郎おざわ やさぶろう

【実在】南遣艦隊司令官。階級は中将。


トーマス・スペンサー・ヴォーン・フィリップス

【実在】イギリス東洋艦隊の司令官。階級は大将。

小柄な体格からあだ名は「親指トム」。


近藤信竹こんどう のぶたけ

【実在】第二艦隊司令官。階級は中将。


ジョン・リーチ

【実在】プリンス・オブ・ウェールズ艦長。階級は大佐。


次回 第三話 「二匹の虎」


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