ニート共に告ぐ。
「くっくっく。」
僕は、片手一杯のポテチを放り込むと「ボリンボリン」と噛み砕き、飲み込む。
笑いが止まらない。
僕は今日「なろう」の世界の神になるのだ。
きっと、僕の作品は「なろう」史上で、最高の………そうだな。きっと6億万ビューくらいを達成する事だろう。
これで、あっという間に、大手の数々の出版社から書籍化の依頼が舞い降りる事だろう。
「くっくっく。」
中学、高校と文系を選んだ事も無ければ、ずっと帰宅部だった。
しかし、我は神だった。
「才能の無い人達に、申し訳ないなぁ~~」僕は、なろうの底辺の作家どもをじろじろと、視姦するように眺めた。
「く、何だ?このジョセフ武園とか言う奴。評価、一桁とかゴミかよwwwwww」
しかし、僕は、彼にそっと囁いてやる。
「悔しがる事はない。何故なら、君を笑ったのは『なろう』の神だ。それは、僕だ。」
さて、ではそろそろ、この世界を変える作品を投稿しようではないか…………
僕は、マウスを動かす。
「まず、タイトル…………『なろう』の読者は、中高生のリアル厨二病患者さんだから………」
「ニートとか、勇者とかぶち込んでたら、すぐ見るだろ‼」
「あいつら〇〇だから‼」
僕は、インパクトの強いタイトルを一瞬で思いつく。
何故なら‼ほら、皆さんご一緒に。
「そう、神だから‼」
「ニートに告ぐ。うむ、なんて興味をそそるタイトルだ。」
「さすがは神‼」
因みに、僕の部屋には、僕以外に誰も居ない。
そう、誰も、僕の高みに到達出来ないのだ。産み落とした親でさえも。
やはり、神‼
「ひっかけるキーワード…………ふっ、こんなもの、今流行っているモノを適当にぶち込んでおけばいい‼どうせ『なろう』の管理者も忙しくて、そこまで見る事もあるまい。いや、例え見たとしても、僕の所業に歯向かうような事を、こんな素晴らしいサイトを作った様な賢者がするだろうか?
神を相手に?ふふふ、あり得ない。」
僕は、根こそぎ検索キーワードに『魔王』とか『無職』とか『転生』とかを記入する。
さて、次はあらすじか。
こんなものは、適当に人気があった物をコピペすればいい。最近アニメになったアレの主人公の名前でも入れておけ。
出来た。
出来てしまった………神の作品………‼
後は、一番「なろう」の読者の多い夕方に投稿すれば完了だ。
これにて、伝説へ…………神の伝説…………。
ふふ、僕は満足してチェアーに体重を掛ける。
「バキン‼バキン‼」と、背もたれの根元が激しく音を立てる。
ふむ、神の重さに耐えきれないか。貴様も所詮は地の生物に作られし、愚かな産物、と言う訳だな……
「ドンドンドンドン‼」
急にドアを叩かれて、僕は全身を硬直させた。
「タカくん?タカくん?起きてるんでしょ?出てきなさい‼」
「うっさーーーわーーーークソババーーーーー‼おまっ、おまっ、勝手に入ってきたらぶっ殺すぞーーーーーーーーーーー‼」
…………ドアの向こうで、哀れな地上人が崩れる様な音がする。
「タカくん………お願いよ………もう、お父さんの香典も、医療保険も………底を尽きてるの………お母さんのパートの給料だけでは………もう、あなたを養えないの………おねがい、出てきて。あなたは、もう今年で38でしょ?お願い。バイトでもいいの。お願い…………タカくん。もう、お母さんも死んじゃう………」
ふむ、どうやらこの地上人は、神である我を子と思うているようだ‼
無礼な‼
神である僕は、パソコンにもう一度向き直る。
危ない。
余計なジャマのせいで「なろう」のゴールデンタイムを逃す所だった。
現在、土曜日の18時1分。
これより、神による伝説が始まる。
皆さん、こんな大人になっちゃあ、駄目ですよ。働きましょうね?
真面目な作品を書いてたら、こういうどうしようもないバカな作品を思いつくのです。
もし、宜しければ、真面目に書いてる作品も見て下さいね。 ~ジョセフ武園~